【短編集】東方夏淫夢 作:命楼
二人、獣の如く勇しき者。
三人、空の如く変わる者。
同じ大学に通い同じ部活に入っている三人、何時も通りに部活を終えそれぞれの家に帰ったのだが……。
初投稿です。
「此処は何処だゾ?」
博麗神社から人里へと向かう道中、見知らぬ服装をしている男が妖怪に襲われていた。助けなくてはと駆け寄った次の瞬間目の前を血飛沫が舞った。
耳を劈く悲鳴を上げて後ろへ退がる妖怪の腹から血が溢れていた。
何が起きたのか分からなかった、鬼の目を持ってしても認識出来ない何かが起こった、其れ位しか分からなかった。
「何だ此の生き物」
妖怪の血をもろに浴びている男がそう呟いたのが聴こえた。
ぼんやりと妖怪を見上げる姿を見て、此の男が妖怪を攻撃したのかと疑ってしまう。襲われても何の感慨も抱かぬ者は自分の記憶の中には何人も居る、だがそういった者たちは其れ相応の力を有していた。視線の先に居る人間からは何の力も感じない、疑問に思うのは仕方のない事だろう。
隙だらけな男に向かい再度妖怪が腕を振るう。だが私は動けなかった。未知の存在を警戒したのかもしれない、実力を見ようとしたのだろうか。
「?」
男は如何したのかと首を傾げるだけで動こうとしない。振るわれた腕が当たる。だが。
「……………………あっそっかぁ」
其の腕が弾き飛ばされた。グチャグチャの肉片となった腕が宙を舞い草の上へと散らばる。
「お前KMNライダーに出てた怪人だろぉ?TDKRの言ってた事は正しかったのかぁ」
『せんぱぁい、怪人は本当に居るんすよ〜。なぁKMRぁ?』
後輩がそう言っていたのを思い出す男。後輩の言う事は勿論嘘なのだが、純粋な男はまんまと騙されてしまい目の前の妖怪を怪人だと勘違いしてしまっている。
「AKYS先生が言ってたゾ、悪は許しちゃ駄目だって」
特撮では殆どの怪人は悪である、武術の師匠は悪は滅ぶべしと言う。此の二つから男は『怪人=倒す』という答えを導き出す。
男が腰を落とし腕を引く。雄叫びを上げる妖怪に向けて一歩踏み出す。
「基本だゾ!オルァ!」
男から力が溢れる、妖力でも神力でも霊力でもない力。あれは気だ、体の内に流れる生命力。だが此れ程迄の膨大な気、人間に出せるのだろうか。
気に思考が向いてしまい気付いた時には遅く、悲鳴を上げていた妖怪は肉片となり散らばっていた
膨大な気を纏い高速で殴り飛ばしたのだろう。あれ程の一撃私でも受ければ一堪りもない。
「シャツがもう、血塗れだゾ……どうすっかな〜汚れな〜」
頭を抱える男、如何やら服を血塗れにしてしまった事を嘆いている様。話し掛けるのなら今か。
「あのう……」
「ん?誰、すげ〜髪の色してるゾ〜」
人里に居る大抵の人間は私の事を知っている。知らないという事は世俗に疎い人間か、他の所で生活を送っている者。もしくは外から来た者。
「幻想郷って知っていますか?」
判断するにはこう質問するのが一番だ。此処の住人なら何を言っているのだと言い、其れ以外を返せば外から来たのだと分かる。
「ゲンソーキョー?」
「そうですか」
「あ、おい、待てぃ。何も答えてないゾ」
此れで分かった。外から来たのだ、然も迷い込んだらしい。
「貴方名前は?」
幻想が薄れた世界で此れ程の力を持った人間がまだ居るとは。先ずは名前を聞いておこう。
「俺か?俺はMURだゾ」
「私は茨木華仙です」
此れが彼との出会いであった。まさか此の男があれ程の騒ぎを巻き起こすとは、私は露程も思わなかったのである。
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「んあああああああああああああああ!」
日が射さぬ森の中、男が叫びを上げていた。
「体が痛いし苦しいもおおおおおおおおん!」
此の森、唯の森ではなかった。其処彼処に漂う怪しげな烟り。此れは瘴気、吸えば忽ち身体を蝕み死へと至らしめるとされる毒。男は其れを吸ってしまった、例に漏れず瘴気が身体を蝕む。
身体は痺れ指一つ動かす事は叶わずぬかるんだ地面に倒れている。肺が麻痺してきたのか息を吸う事すら出来なくなり始めていた。
「ハァ、ハァ……アアッー、アッ、ンアッー、ンッ……ォゥ、ォウ、オォン!アォン! ハァ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ、アッ……」
突如として喘ぎ出す男、周りに誰か居れば遂に瘴気で呼吸が出来なくなったかと思ったかもしれない。
「アアッー!ハァハァ、イキすぎィ!イクゥ、イクイクゥ……」
「Foo↑ねー慣れる迄キツかったねー」
先程迄の凄まじい苦しみ方がまるで嘘の様。何でもないかの様に一言口に出すとすくっと立ち上がる。
男はキョロキョロと辺りを見渡すと首を傾げた。
「これもうわかんねぇな」
先程迄自分の家に居た筈だ。部活が終わり早々に帰ってきた。風呂に入ってさっぱりし、ビールビールとキンキンに冷えたビールを飲んでいた所だった。何時の間にやら此処に居た。
「ん~。こういう時って結構ヤバイね、結構ねぇ」
少し前恋人と見た都市伝説を取り扱った番組、其の時の事が記憶の底からよみがえる。確か神隠しだったか、良く覚えていないが人が突然居なくなって少ししてから戻ってくる、そんな内容だったと男は考える。
「大丈夫でしょ……まあ、多少はね?」
戻って来れるのなら心配は要らないだろうと男は言う。此の男、物事を楽観視する傾向にある。其れによって犯罪紛いの事を行なってしまう事もざらだ。
「嫌な空気だぜ。漂ってんなぁ、おい」
男は帰る迄の間の事、現状の事を考える。何処だか知らないが雨風を凌げる場所、飯が食える場所に行きたいと考えた。だが今は辺りに漂う瘴気だ。慣れたとはいえ視界を遮って邪魔で仕方ない。
「煙いねー。煙晴らそっかぁ?」
「払ってやるわ」
瞬間、男の身体から光が溢れる。其れと同時に轟々と風が吹き荒び、瘴気を散らしていく。
「すっげえ見え易くなってる。はっきりわかんだね」
身に纏っていた光を消し、男は笑顔を浮かべそう呟いた。
「其れじゃあ行きますよ〜行く行く」
何処とも分からぬ土地、だが躊躇う事なく進んでいく。何処か分からない、飯は如何すれば、そういう心配はしている事にはしているが男は大して気にしていなかった。
「ヌッ!」
突然男がしゃがんだ。すると其の上を何かが通り過ぎた。視線を向ければ男程の大きさの岩が地面を跳ねているのが見える。
「お前、今投げたか?投げたんだろ?」
背後を振り返る、其処には化け物が居た。だが男は初めて目にする存在に怯える事なく、静かに構えを取る。
「ちょっと力入れるけど、良いかな?」
此の男。楽観的であり、身勝手な部分がある。思い通りにならなければ怒りを見せるし、何かされればやり返す。今男の中にあるのは喧嘩を売ってきたのだからボコボコしてやるという考えだ。
雄叫びを上げて襲い掛かる化け物の攻撃を避け。腕を、足を、物を、良く分からぬ光の玉を。襲い来る攻撃が百を超えた所で男が反撃に出る。
「この辺が、弱点で……柔いっ」
化け物の体を見て、弱点は何処だろうかと考えていた男。此処だと思う所に当たりを付け、迷いなく其処を穿つ。
「死んだかな?ちょっと……」
辺りに音を響かせて吹き飛ぶ化け物。木にぶつかり止まる其の姿を見て思わず眉を顰める。
「おっ。やり過ぎたか?やり過ぎたか?」
グチャグチャになった化け物を見ながら男が考えた事、其れは力を入れ過ぎたという事であった。人間よりも強そうだと普段は使わぬ力を使ってみたら呆気なく潰れてしまい拍子抜けしてしまった。
「クゥーン……」
見た目から人間ではないのだから殺してしまっても問題はない、筈だ。だがこんな猟奇的な場面を見られたら拙い。男は此処から早く離れる事に決めた。
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幻想郷の異変解決人の一人である博麗霊夢、彼女は今奇妙な場面に遭遇していた。
簡単に纏めるのなら、外来人が妖怪を倒した場面、である。服装から外から来たと分かり、面倒だが博麗の巫女として助けなければと思っていたのだ。
「あんた、何者?」
「え!空から人が……巫女さん?」
混乱した様子、自らの勘が告げている此奴は外来人だと。だが妖怪を一蹴出来る程の存在が外に居るのだろうか。幻想の薄れた世界では名の知れた神ですら逃げてくるのだ、此れ程の力を秘めた存在が生まれるか?
「止め止め」
「?」
考えても外の事等分からないのだから。何の得にもならない。外にどれ程の存在が居ようが私には関係ない。
「えぇっと、此処は何処でしょうか?」
年下であろう私にも礼儀正しく聴いてくる。外から来た者たちはパニックになり取り乱し暴れるか浮かれるか呆然とするか、まぁ色々と反応を示すがまともに話してくるのは珍しい。
だから如何だという話ではないが。
「説明するのも面倒ね、付いてきなさい。其処で疑問に答えてあげる」
「わ、分かりました…」
「あら、素直なのね?」
「いや、そんな……今はそれしかないと……」
「そう、現状を把握出来てるみたいね」
何も考えずに従う奴等とは違い、今の状態を正しく認識し今出来る最善策を取れる者が居る。私としてはそういう外来人はやり易くて良い。そういった奴等は腹の中に黒い物を抱えている奴が居る、だが私には関係ない。私には力が有るのだから。軽く捻ってお終いだ。
其れじゃあちゃちゃっと紫を呼んで外に帰らせましょう。
「そういえば、あんたって飛べる?」
「えっと、飛翔ですよね?飛ぶのは無理です……跳べますけど」
「とべないけどとべる?とぶって、跳ねるの方?」
「そうですね、跳ねるですね」
何を言い出すのやら、頭のイカれた奴ではないと思ったがそんな様子はない。いや能力だろうか?
「そう其れじゃあ私の後に付いて来てくれる?」
「分かりました」
私が宙へ浮くと足に力を溜める青年。此の力は……気?紅魔館の門番以外で使う者が居ない力を使う者がいるとは。
「まぁ人間に宿っている力で多いのは気だから、外では普通なのかしら?」
「何ですか……?」
首を振って何でもないと返す。まぁ薄れたとはいえ、幻想が完全にという訳ではないのだ。数少ない力を持った者が偶然此方に迷い込んだのだろう。
いや、そんな事有り得るのか?外の世界で数の減った異能者、迷い込む者の少ない幻想郷。迷い込む確率が低いのに此の青年がやってくる確率は更に低いだろう。紫の仕業か?何の為に?分からない。此奴が意図的にやってきたのか?私の勘も何も伝えてこない。
まぁ私に害をなさなければ良いわ、もし何かすれば退治すれば良いのだから。
「ほら行くわよ」
「分かりました」
我が家である神社へと向かい飛んでいく。青年は私の後を付いて来ている、地面を跳んで。
大地を踏みしめ跳ぶ。木々よりも高く空を跳び離れた場所へと着地する。そして再度地を蹴り木々を超えてくる。其の姿を見て抱いた印象は。
「まるでバッタみたいね」
「え、僕の事ですか?」
困惑を浮かべる青年。誰が如何見てもバッタだろう。普通の魔法使いや山の風祝が見れば私と同じ事を思う筈だ。
「あんた以外に誰が居るのよ、あんたには他に何か見えてる訳?」
「え、違いますけど……」
語尾に向かうに連れて小さくなる声。大人しい奴で楽だと思ったけど、ナヨナヨしている奴はシャキッとしろと言いたくなる。
「あんたって……いや何でもないわ、後で聞けば良いもの」
「?」
そういえば何も言わなかったが、あれは何だったのだろうか。妖怪を倒す前、青年が攻撃を放つ前のあの変わり様は。
『嘗めてんじゃねぇぞ……』
小さな声だが確かに聞き取った。
『もう終わりかい?ザコの兄ちゃん?』
空気が変わったのを感じ取った。そして静かな怒りが生まれ、燃え上がったのが見て取れた。
次の瞬間には力が溢れ妖怪が死んでいた。雰囲気に気を取られてしまった結果見逃すとは、何者にも捉われぬ私がだ。
少し位警戒をしようかしら、そう思ったが勘が何も告げぬのなら大丈夫かと考えを終わらせる。
「彼処が私の家、博麗神社よ」
木々を超えた先に見えてきたのは博麗神社。何度か潰れその度に建て替えてきたので新しく見栄えが良い、筈なのだが参拝客が全く来ないのが悩みだ。
はえ〜と感嘆の声を上げながら神社を見ている姿に、そう大した物じゃないんだけどねと返す。先程のアレが嘘の様な代わり映えに思わず笑ってしまう。
境内に降り立つと裏の住居スペースへと案内していく。お茶、面倒だけど出さなきゃね。
4890文字、普通だな!
語録だけで書くとか割と難しいっすね、特にKMR。先輩は簡単だったけど。