【短編集】東方夏淫夢 作:命楼
A.……あっそっかぁ。
初投稿です。
「其れじゃあ気を付けるんだぞ」
「先生さようなら〜」
子供たちが帰っていく、其の後ろ姿を見送り寺子屋の中へと入る。
「お疲れ様です」
廊下を進んでいると女性が声を掛けてきた。
「其方は終わったのですか、上白沢さん」
「あぁ粗方ではあるが」
上白沢慧音、其れが彼女の名前だ。青みが掛かった銀の髪、青の服に青の帽子。全体的に青い此の人は俺の事を助けてくれた人だ。面倒見が良く何でもかんでもやり出してしまうのが玉に瑕である。彼女を堅いと言う人が居るのだが、そういった印象は受けなかった。周りが勘違いしているだけなのか、其れとも俺に気を遣い優しくしてくれているのか。後者なら俺の為に気を使わせてしまった事を謝らなくては。
「ん?如何したぼーっとして。体調でも悪いか?医者の所へ行くか?」
最初に出会った際の俺の顔を見た事で此処迄心配をしている、そう言われたのを思い出す。何処かも分からぬ土地に居たのだから誰かに話掛ける事にはなっていただろう。そう考える事が出来ていれば可笑しな表情を見せてしまう事はなかったのだろうか。
「大丈夫ですよ、心配のし過ぎですよ」
だが今更こうしておけばと考えても意味が無い。
「そうか、もし何かあれば言ってくれよ?」
「上白沢さん、其の言葉は少し前にも聴きましたよ」
「だ、大事な事だからな!」
心配してくれるのは有難い、有難いのだが毎日何度も言われてしまうと耳にタコが出来てしまう。
「体の調子が悪ければきたんと言うんだぞ?」
「上白沢さんこそ気を付けてくださいよ?最近いつも働きっぱなしではないですか」
何かに役立つと思い外ではどんな授業が行われているのか、勉強方法等色々と話してみた所。
『そんなやり方があったのか、さっそく練り直さなくては!』
と授業方法を考え直している。授業以外の時間の殆どを机に着いており、満足な休息が取れているのかと思う程に働き詰めだ。家に帰っても寝る時間を削っているのではと疑ってしまう。
「私は周りよりも頑丈だからな、此の位は平気だ」
「頑丈?」
「あ……こ、言葉の綾だ気にするな」
まだやる事が有ると寺子屋の奥へと向かう上白沢さん。早足で去っていく彼女に疑問が浮かぶ。
言葉の綾、そう言う上白沢さんの様子を見て『はいそうですか』とは信じられる訳がない。
其れに彼女の髪の色だ。此処では妖怪や神が暮らしているという。まだ見た事はないが、相対した時私は勝てるのであろうか。山を砕き、海を割り、大地を創る、そんな伝説や神話の生物に勝てる気がしない。
閑話休題
詳しくはないが彼女の髪の色は生物学上あり得ない色合いの筈。人では無いのだろう。
如何して人の中で生きているのか。
何故人間の子供に勉強を教えているのだろうか。
人に紛れ人に仇を成そうとしている様には見えない。害を加えようとするのならより人間に擬態する筈、なのにあの髪色だ、此処で生きる人間が人外だと気付かない訳がない。態々自分から人外だと広めるか?
「如何いった存在なのか、知らなくてはな」
短い間しか過ごしていなかったとはいえ彼女の事を知らなさ過ぎる。あまり詮索するものではないのだろうが、不確定要素は排除しておきたい。
「共存出来るのなら其れで良い、敵対するのなら……」
敵対するのなら?十日と数日過ごしてきた彼女を殺すのか?俺の為に手を差し伸べてくれた人を?
「敵対するのなら……」
人類の敵になるというのなら殺すしかない。其れが正しいのだから。俺は此の力を正義の為に使う、そう決めたのだから。
だが正義とは何だ?敵を全て殺す事なのか?殺すだけではない筈だ。話し合いで解決出来るのでは?
「先ずは知らなくては」
荷物を纏め外へと向かう。聴き込みだ。
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「今のは迂闊だった……」
ついつい口が緩んでしまった。あの言い方ではバレてしまったのではないだろうか?草薙は聡明だ、気付くだろう。隠していた訳ではないのだ、唯……。
「恐れられるのが嫌なのだ」
私は半人半獣、人で在り人ではない存在。今でこそ言われる事がなくなったが、昔は化け物だ何だと嫌われ恐れられていた。
「だから言えなかった」
私は弱いな。唯一人に嫌われる事を怖がっているのだ。
だが隠すのはもう終わりだ。怖がられるのなら私から話そう、私が如何いう存在なのかを。恐れられるのなら離れなくてはな、新しい仕事を紹介しなくては。もしそうでなかったら……。
「受け入れてくれるのだろうか」
あの優しき男なら私が人でなくとも受け入れてくれるかもしれないな。如何しようもないお人好し、困っている者が居れば駆け付け手を差し伸べる。
彼なら時間を掛けずとも私を……。
「何を言ってるんだろうな……」
先ずは私の事ではなく子供たちの事だ。草薙が教えてくれた事を有効に活用しなければな。彼のおかげで子供たちにより良い授業が行える。先ずは情報を整理してと。
草薙なら……。
優しい彼なら……。
私を怖がらずに……。
「ん、うぅ……此処は?」
此の感覚、如何やらねむっていた様だ。今日は昨日程作業を行っていない筈だが。
「疲れて、いたのだろうか」
時間が惜しいと睡眠時間を削っても作業していた所為だろう。
働き続けている事を言われ注意された直後に此れとは、子供たちを導く立場に居る者が此れでは示しが付かん。折角授業について分かったというのに、其れを行えなければ意味を成さないのだから。
「草薙はもう帰っているか」
暗い、既に日が落ちているのが分かる。子供たちが帰り作業を始めたのが昼間だった筈、かなり寝てしまっている。早く荷物を纏めて帰らなくては。
「草薙はきちんと食事を摂っているだろうか……うん?」
机から上体を起こした際にバサリと何かが落ちた、何かが覆い被さっていたのか。落ちた物を手に取ると見知らぬ服……いや、見た事が有るような。
「此れは草薙の?」
確か草薙がやってきた日に着ていた物だ。だが何故此れが此処に?何時?何故掛かっていた?
暗くては何も見えん、そう思い灯りを点けると又しても眠る前になかった物が在った。
「……草薙」
机の上に置いてあったのは草薙からの手紙。内容は忘れ物を取りに来たら眠っていた事、上着を掛けておいた事、最後にはしっかり休息を取る事と書いてある。
「心配を掛けてばかりだな……」
しっかりしなくてはと思った途端に此れだ、然も日に何度も。
「有言実行。言葉に出したり思ったりするだけではなく、きちんとしなくては」
荷物を纏め寺子屋内の戸締りを行う、鍵が閉まっている所を見るに草薙がやってくれたのだろう。身形を整え忘れ物が無いかを確認、寺子屋を出る。
「すっかり日が暮れているな」
日が落ちて代わりに星々が空を飾っている。今迄の連れが全て伸し掛ってきているのか身体が思い、早く帰って寝たい。其の前に晩ご飯を食べてお風呂に入らなくては。
「私が億劫だと感じるとはな」
此れが面倒という感覚か、長らく思わなかった感情に思わず笑ってしまう。だが悪くは無い。私も半分とはいえ、元とはいえ人間なのだと感じる事が出来るから。
「草薙のおかげだな」
早く帰ろう。食材は何が有ったか、今日は鍋にしよう。
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あれから人里中を訊いて回ろうかと考えたのだが、人里の一員である上白沢さんの事を根掘り葉掘りと訊くのは拙いと判断した。新参者の俺が訊き回っているなど直ぐに広まる、怪しまれあらぬ疑いを掛けられてしまう。
取り敢えず、上白沢という人物がどんな人なのかと住人に何となく訊いてみた。
『あん方はオラたちを守ってくれる守護者様だぁ、失礼のねぇようにしろよぉ?カッカッカッ』
『おおお兄さんかい!今日は此れなんて如何だい!上白沢さん?真面目で礼儀正しく誠実な方だよ?』
『あ、草薙先生だぁ!先生?悪い事すると怖いけど優しいよ!』
隣のご老人、八百屋の女主人、子供、他にも老若男女問わず訊いてみたが似たような解答が帰ってきた。分かった事は三つ。
一つ、俺のイメージ通りの人であった。
二つ、人外であると知れている。
三つ、其の力で人々を守っている。
異形の存在ながら人の中で生き、人を守る存在。まるで、まるで──。
「──俺ではないか」
出自は知らないが、お互いに人ではない。だがやっている事は同じではないか。人里の人間全てを騙せるとは考え難い。此の世界には賢者と呼ばれる存在が居るのだから、彼女が何かしようとすれば排除する筈。
「良かった、本当に良かった」
此れで彼女を殺さなくて済む、そう思うと何だか身体が重くなってくる。改造人間とはいえ疲れる、肉体疲労なら兎も角精神的な疲労は如何にもならない様だ。
さて、其れでは住居へ帰るとするか。其の前に上白沢さんの様子を見に行こう。彼女は今日も遅く迄働こうとするだろうから、帰る様に伝えなくては。
「……此れは」
歩く事十分、寺子屋に着き職員部屋へと向かった俺の前に現れたのは。
「すぅ……すぅ……」
机に上体を預け眠りに就く上白沢さんであった。書きかけのプリント、離さず手に持つ筆、暗くなってきているというのに灯りが点いていない部屋。如何考えてみても寝落ちだ。疲れから睡魔に抗う事が出来ず夢の世界へ、何とも彼女らしくない。
起こすべきか、此の儘寝かせてあげるべきか。
「君主危うきに近寄らず、知らぬが仏、触らぬ神に祟りなし。書き置きだけは残しておこう」
筆を取り上げ俺が所持する紙に休めと書いておく。其れでは帰るかと立ち上がり部屋を出る……。
「風邪を引いてしまうかもしれん」
辺りを見渡しても使えそうな物が無く、着ていた上着を被せる。
今度こそ部屋を出て行く。人外とはいえ女性一人を其の儘にしておくのは拙いだろうか?寺子屋内の戸締りをして侵入者は居ないか見回る。異常無し。
「其れでは失礼します」
聞こえないとは分かっているが声を掛けておく。
寺子屋に合鍵でロックを掛ける。此れで一安心だ。人里の守護者を襲う様な者は居ないであろうが、用心する事に越した事はない。
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落ち着け上白沢、何を緊張する必要が有る。唯何時もの様に戸を叩き、声を掛け、挨拶を交わし、寺子屋へ向かえば良い。道中は他愛ない話をしながら歩き、子供たちに授業を行えば良い。其れだけだ其れだけ──。
「──なのだがなぁ……」
其れだけだというのに、幾ら言い聞かせても私の身体は動かなかった。
一夜明け、身形を整えやってきた草薙の家。昨日の事を謝り感謝を伝えなくてはと思い、私の事を話さなくては意気込んでいたのだが、いざ戸の前に立つと身体が動かない。心臓は激しく脈打ち動悸は荒い、汗が流れ手が震える。
痴態を晒してしまった恥ずかしさやら拒絶されるかもしれないという恐怖、身を案じてくれた事に対しての感謝や人々を助ける姿勢への憧れ。色々な感情が浮かび上がり私が考えた完璧な計画を打ち砕いた。
「最大の敵は自分とは良く言ったものだ。初めて分かった、体験して気付いた」
さて、そろそろ現実逃避は止めよう。家の中の気配が此方に近付いているのを感じる、足音も聞こえる。
さて、如何しようか……さて、さて……さて…………。
何時も通りにするとは、如何すれば良いのだ?
「普段通りとは……」
意識せずに話せば良いのか?意識してしまっているのだが如何すれば良いのだ?
気配が戸の向こう側で止まる。あ、展く。
「お早う御座います」
何時も通りに言葉を掛けてくる草薙。
「お、お早う御座います。草薙さん!」
何時も通りに話せない私。
「?」
如何したと目が告げてくる。返事を返さなければいけないのに何を話せば良いのか。ええい侭よ!如何にでもなれ!!
「体調が優れないのなら休むべきです」
「大丈夫です!心配は無用!」
「そう強く否定されると怪しく感じてしまうのだが」
「ほ、本当に大丈夫です!」
現在寺子屋へ向かっているのだが、此処まで来るのに此れ程疲れる事はもうないだろう。
冷静に心配をしてくる彼と慌てて否定する私、無理をしている様に見える事請け負いである。如何してこうなった。国うなる筈ではなかったというのに。
「やはり今日一日はお休みになった方が」
「大丈夫です!本当に!」
心配し過ぎだと言われたがこんな気持ちだったのだろうか。
寺子屋に着いた、中へと入り窓を開けていく。そして今日一日の授業について話しをしていく。もう此処迄来ると落ち着いてくる、普段通りに話を進める事が出来て本当に良かった。
「おはようございま〜す!」
「先生おはよー」
「おはよう」
「おはよう」
子供たちが次々にやってくる、出欠を確認したが全員居るのが分かった。
「其れでは頼みます」
「行ってきます」
教材を手に取り子供たちの元に向かっていく草薙。最後迄心配していると表情に出ていた、其れが何だか嬉しかったのは内緒だ。
「あぁそういえば、あの事を話していなかったな」
私の事を話そうと思っていたのだが、空いている時に話してみよう。
如何話そうか、聖獣について話すとなると長くなってしまう。経緯について話すのも同じだ。簡潔に其れでいて分かり易く。
「纏めておかなくてはな」
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幻想郷、異形の者たちが生きる土地。妖怪の賢者と呼ばれる存在が結界を張った事で作られた土地。だが其れはあくまで妖怪や神か消えるのを防ぐ為のもの、人間には関係ない筈だ。
「利用する為に人間を閉じ込めた、としか思えない……」
「如何したの先生?」
「何でもないぞ、其れじゃあ此の問題の答えが分かる者は居るか?」
自分たちの都合の良い様に利用している?だが人里の住人が外に出たとして生きていけるだろうか?戸籍もない、時代錯誤な者たちが受け入れられるだろうか?いきなり現れた存在を怪しむだろう。
外に出てもまともに生きられない、此処で生きるしかない。此れを見越して結界を張ったのだろうか。
「侭ならないものだな」
幻想郷の仕組みに疑問を持った俺が辿り着いた答え。背中に氷柱を入れた様にゾクリと肝が冷えた、妖怪とは恐ろしいものだ。
だが人間は如何だ?自然を破壊し、動物を管理し、地球を我が物顔で占拠している。人間も変わらないではないか。
やはり人外は生かしておくべきではないのでは?いや此れも一種の共存なのだ。いや此れは単に利用しているだけだ。
「私は如何すれば良いのだろうな」
「?」
「何でもないぞ、其れじゃあ次は此れを教えようか」
今は目の前の事に集中しよう。
「先生さようならぁ!」
「バイバ〜イ!」
「気を付けて帰れよー」
無事に授業が終わり子供たちが帰っていく、此の見送りもすっかり見慣れた。何時になるかはわからないが、此処から去らなくてはならないと思うと寂しく感じる。人ではなくなった私でも寂しいと感じる事が出来る、人の心が残っている。
「兵器ではなく人として。其れに気付く事が出来た」
平穏をもう一度味わう事が出来た、人間なのだと再確認できた。此処にやってきた事にも意味が在ったという事か。
「草薙さん」
背後から声が掛かる、振り返れば上白沢さんが居る。其の顔は意を決したという表情をしている、如何したというのか。
「何の用でしょうか?」
「話したい事が有る」
「話したい事とは?」
「中で話そうと思うが、良いか?」
中で話したい事?子供たちの教育の事か?そんな空気ではない。何か、真剣に話そうとしているのは分かる。もしや俺が訊き回っていた事に気付いたか!
「此処では駄目なのでしょうか?」
「重要な話なのだ、私の事を話そうとな」
上白沢さんの事、警戒しておくに越した事はない。相手がどの程度出来るかは分からない今狭い空間に行きたくないが、仕方ない。
「分かりました」
「其れでは行こう」
職員部屋へ向かう上白沢さんの後ろ姿を見つめながら考える。
『見た目に油断するな、姿形が幼く見えようと彼等彼女等は人外なのだ。小さな少女に見えるが強大な力を振るい大地を砕く、そんな存在だというのは良く有る』
此処にやってきて二日目に話したある女性が教えてくれた事だ。もし人里から出たら、出会う者全てを人外だと思えとも教えられた。彼女とは其れ以来会っていない、もしや妖怪なのでは?
そうこうしていると部屋に着いた。中に入り向かい合う様に椅子に座る。距離は2メートル弱。襲われた際に如何対処するかと考えていると、向こうから話しても良いかと問われた。
「外から来て、未だ妖怪に出会っていない貴方に話しても信じられない様な事だが。本当の事なのだ、信じてほしい」
「分かりました」
「有難う。単刀直入に言おう、私は人ではない」
「……」
「驚くか訝しむかと思ったが、やはり気付いていたか」
表情に出さない様にしたが気付かれなかったか。正直言えば内心驚いていた。自らの事を話すとは言ったがいきなり過ぎないだろうか。
其れからは驚きの連続だった。彼女は元々は一人の人間であった。だがある時傷付き今にも死にそうな異形の存在に身体を乗っ取られた。幻想郷を治める博麗の巫女によって異形の魂は退治されたが力は残った。
「信じられない様な事だが本当の事なのだ」
そして次に語り出したのは、自らの事を語ろうと思った切っ掛けについて。此の力故に当初は人々から恐れられ排他されていたが、今は受け入れられた。だが其処に至る迄に長い年月が掛かった。俺に知られて恐れられる事に恐怖し、最初の頃は話す必要はないと思っていたという。
「だが気付かれたのではと思う時が何度か在った、其の考えは当たっていた様だ」
其れならば自分から話してしまおう、在るが儘を見せよう。そう考え着いた。
「私は、化け物だ。人間ではなくなった、人外だ。だが私は私なのだ。人間の心を持った存在なのだ。だから、私を……」
俯き身体を震わせる上白沢さん。ポタリと膝の上で固く握られた手の甲に涙が落ちる。
「…………」
「私は……私は……」
はぁ……俺は一体何をしているのだ。立ち上がり、彼女へと近付く。
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私は弱いな、溢れる感情に負けてしまった。涙が止まらない、体の震えもだ。頭で分かっているのだが心が止まらない。
「はぁ……」
彼が息を吐く。こんな私の姿に呆れてしまったのか、其れとも隠していた事に対しての怒りからか。どちらにしろ見限られても文句は言えない。
何故だろうな、今迄何十何百という人に拒絶されて来たというのに、唯一人に此処まで心を乱されるとは。
「……」
彼が立ち上がる、帰るのか。見送った方が……いや、私に見送られるなど。
「上白沢さん」
「は、はい──ッ!?」
名前を呼ばれ思わず顔を上げてしまう。そして、目の前に立つ彼にとって驚く。立っていた彼は膝を着き、椅子に座る私と目線を合わせる。
『知っていると思いますが、子供と話す時は視線を合わせる事が大事です。此れは子供に限った話ではないですがね』
彼がそう言っていたのを思い出す。
『安心させる為に笑顔も忘れずに』
微笑みを浮かべ真っ直ぐに見てくる。
『最後に優しい声掛けを心掛ける』
「上白沢さん、話してくれて有難う御座います。貴方は嫌われるかもしれないと恐怖しながらも勇気を振り絞り話してくれた。貴方がどんな存在であれ、嫌う事などしません」
だが、私は……。
「子供の為に勉強を教え、人間の為に人里を守る。自分の事で苦悩しながらも人の為に頑張っている。そんな貴方を誰が拒絶出来るか」
わ、私は……私は化け物なんだぞ……。
「子供たちの成長に一喜一憂し、困っている人を心配し、人の為に尽力する。貴方は化け物なんかじゃない」
あ、あぁ……。
「私を、拒絶しない……?」
「はい」
「私を、否定しない……?」
「はい」
「私を、受け入れてくれる……?」
「はい」
「私、を……う、うぅ…………」
身体を包み込む何か、彼が抱き締めてくれたのだ。涙が止まらない、嗚咽が止まらない、なのに嫌じゃない。胸の奥が温かくなって──。
「──有難う、ケン」
有りの侭の私を受け入れてくれて、有難う。
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俺の胸なら幾らでも貸そう。其れが正義の味方、いや……一人の人間として当然の行いなのだから。
10分、泣き続けた上白沢さんは涙を拭い顔を上げた。
「良い笑顔です、美人な貴方には笑顔が似合う」
「な、何を言ってる!」
正直に思った事を言ってみたのだが怒られてしまった、自分でも恥ずかしい台詞だと思うが。まぁ暗い雰囲気よりは良いだろう。
「あの、その、もう抱き締めるのは良いのではないか?恥ずかしいのだ……」
顔を更に赤らめる上白沢さん、椅子に座る彼女を俺が抱き締めているのだ俺から離れなくては離れようがない。
離れる俺と立ち上がる彼女。いきなり抱き締めるのは拙かっただろうか?見ず知らず、という程知らない訳ではなく、かと言って旧知の仲ではない。そんな男に抱き締められても嫌なだけだろう、だが上白沢さんを励まそうとした結果なのだ。
「本当は普通に、普段通りに話すつもりだったのだが……こうなるとは」
「私もこうなるとは思っていませんでしたよ」
「うぅ……すまん……」
其の後は資料を片付けたり明日の事を話し合った。時間が過ぎていき夜の帳が降りてくる頃、二人揃って寺子屋を出る。
「其処の通りに飲み屋が在るのだが行った事は?」
「基本的に自炊派ですから、無いですね」
「そうか、其処のお店の料理は美味いぞ。そうだ、今度の休みにでも行ってみよう。予定は?」
今度の休み、やる事はないから行けるだろう。
「其の日は大丈夫ですよ」
「うむ、休みが待ちど──」
──ドオォン!!
遠足前日の子供の様にはしゃぐ上白沢さんの言葉は最後迄続く事はなかった。
「な、何だ!?」
「此れは!?」
爆発音、続いて地響き。何が起きたのかと辺りを見渡せば通りの向こうから煙が上がっている。
『グワッハッハー!!』
「に、逃げろー!妖怪だぁ!!」
「キャー!!」
高笑いと人々の叫びが木霊する。
妖怪。妖怪がやってきたと聴こえた。人里は妖怪が手を出せない不可侵領域ではなかったのか!
上白沢さんの方を向くが、姿が無い。何処へ行ったのか、視線を巡らせば煙の方へと向かう後姿が。
「上白沢さん!」
声を掛けるが返事は来ない。上白沢さんがどれ程の腕を持っているのか知らないが、正体不明の敵に近付くのは危険!俺も後を追う。
建物を飛び越えて向こう側へと向かう上白沢さんの様には飛ばず、建物と建物の間を駆け抜ける。
通りに出たが其処には逃げ惑う人々しか居らず、遠くから建物が崩れるのが見える。
「嫌な予感がする!」
走る、走る、走る。走り続け漸く戦闘が行われる場へと辿り着いた。其処で見たものは。
「私が、人里を護る!」
『貴様程度、屁でもないわァ!』
其処で見たのは二足歩行の異形。傷付き今にも倒れそうな上白沢さんであった。
『此の程度か半端者がァ』
「くっ!」
膝を着き今にも倒れそうな上白沢さん。降り上がる妖怪の腕。
振り下ろされた腕が大地を砕く。
『手応えが、避けたか!』
何とか間に合った。ギリギリで助ける事が出来た。良かった、本当に。
「く、草薙……なのか……?」
腕の中の上白沢さんが困惑の声を上げる。後ろへと跳び距離を離す。
上白沢さんを降ろし妖怪へ近付いていく、危険だと声が掛かるが迷いなく進む。
『貴様、何者だァ』
まさか此処で力を使う事になるとは。だが人々の為、躊躇う理由は無い。
「俺は、貴様を倒す者だ」
怪人の前に立つ。妖怪、どれ程の力を持っていようが倒すのみ。
「変身、Z!」
辺りを光が照らす。
〜次回予告〜
遂に妖怪と対峙した草薙。其の身を包む紅蓮のスーツに驚きを隠せない妖怪。
『姿が変わった……?』
「行くぞ!」
草薙の姿を見て騒めく周囲。
「「「「ざわ……ざわ……」」」」
妖怪と戦う草薙を心配する上白沢。
「草薙……」
迫る妖怪の攻撃を避けていく超人サイバーZ一号、草薙ケン。
『何故、攻撃が当たらん!!』
「……」
妖怪の強靭な肉体を穿つ為、正義の鉄槌が振るわれる。
「食らえっ!」
妖怪からの誘い。
『お、俺に着けばNo.2の座をやろう!』
「断る!」
此れによって幻想郷に名が広まってしまう草薙。
「此れは……」
「如何いう事だ……」
次回【草薙の力、妖怪戦決着!そして、新たな物語の風が吹く!】
9781文字、普通だな!
パパッとバトルして終わり!って思ってたのにグダグダ長過ぎな文章とか、ほんまアホくさ。
ちゃんと考えて書かなかった結果だよ?(BRNT並感)終わりの2000文字くらいからは適当とかアホくさ。