※この作品はR-18です。

【短編集】東方夏淫夢   作:命楼

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初投稿です。


暇潰し

「へ〜此処が幻想郷か〜」

「誰よ、あんた」

 

 何時もの様に境内を掃除してたら目の前に男が現れた。何だ此奴。

 服装と言っている内容からして外から来たと分かる。まぁどんな奴が入って来ようと、面倒事を起こさなきゃ何でも構わないけど。

 私に背を向けて辺りを見渡している。

 

「で、此処は神社。するとお前、博麗の巫女だよな?」

 

 此方を向く事なくそう言ってくる男。

 

「そうよ?で、あんたは何者な訳?」

 

 外から来た奴は大体異変を起こしている。此奴も例に漏れないのだろうか?其れならば今此処で釘を刺しておこう。

 

「大丈夫だって安心しろよ~。平気平気、平気だから。異変なんて面倒でしょ面倒」

 

 ──ッ!

 

 ドガガガァン!

 

「人の考えを勝手に読むなんてね」

「まあそう焦んないで」

 

 何も言っていないのに異変という単語を出した。人の考えを読む奴に良い奴なんていない、心を読んできたんだから攻撃されても問題ないでしょう。

 効かなかった様だけど。ムカつくわね。

 

「名前、名前何て言うの?」

「……読めば良いじゃない」

「御免よー。ハイッ、もう読まないから安心して」

 

 まるで悪戯が見つかった悪ガキの様にヘラヘラと謝る男に苛立つ。

 

「博麗よ」

「いや、下!」

「……霊夢よ」

「霊夢でいいね。じゃあ霊夢……ふーん。歳は幾つ?」

「掃除が終わってないからさっさとどっか行ってほしいんだけど」

 

 掃除なんてしなくても良いんだけど、こんな身元不明な奴を相手したくない。

 すると突然、突風が吹いた。手に持つ箒を強く握り、顔を腕で覆う。風が止んだ頃になり腕を下す。

 

「……」

「そんな警戒しないでよ。風、吹かしてぇ、こうやって集めただけ。で俺ちょっと、まぁ風操る事出来んだけど、

大した事はないんだけど。此れで掃除終わるから、お喋り出来るから」

 

 目的は不明、神力とか霊力とかを感じなかったから恐らく能力なのだろう。思考を読む程度の能力と風を操る程度の能力、此の二つであろう。二つも能力を持つ奴はそうは居ない。

 

「此れでちょっと軽く談笑して、パパッと話して、終わりっ。其れで此処を離れるから」

「馬鹿な真似はしないでよね」

「いや大丈夫だから、大丈夫大丈夫。平気平気」

 

 

 

 

 

「んー、ふふ。良い関係築いてんねぇ!ホントに……」

 

 人間と妖怪の様子について訊かれたので私から見た感想を言うと面白いと言う。変わった男だ。

 

「うーん、誰も来ないねー。なんかやってたの?悪行」

 

 参拝にやってくる者が居ない事を話すとそう言ってくる。そんな訳ないじゃない、誰が自分の首を絞めるもんですか。此処にやってくる人外共の所為よ。

 

「じゃあさ、じゃあ自分でさ、宣伝して……」

 

 何時の間にか話は神社再建に移っていた。まぁ色々とアドバイスされたから良いけど。実行するかは分からないけど。

 

 話をしていたらそこそこ時間が経っていた、男は話を聞かせてくれて有難うと言うのでアドバイス有難うと言うと大した事ないと返された。

 

「妖怪には気を付けなさいよ」

 

 能力持ちとはいえ危険なのに変わりはない。歩いて境内を出ようとする男の背に向かいそう言ってみたが大丈夫だと軽くあしらわれた。

 

「ふー、久しぶりに長く喋っちゃった。疲れたから明日は寝て過ごそうかしら」

 

 最初は話す事に抵抗が有ったけど、時間が経つに連れて自然と話す様になっていた。喋りが上手かったわね。

 

 あ、そういえば。

 

「何で此処に来たのか聞くのを忘れてたわね。如何して来たのかしら、あの神様」

 

 

 

 

 

「あ~、凄いね~。良い勘してるよ~」

 

「嗚呼~、道理でねぇ~」

 

「凄いねぇ、此処は。凄いね〜……ちょっと行ってみる?じゃあ……そうそうそうそうそうそうそう……」

 

「じゃあとりあえずさぁ、此処じゃなんだからよぉ、あっち行くかぁ。行こうぜ。よし、行くぞ」

 

「じゃあ人里に行ってみよっか。じゃあ」

 

 

 

 

 

 人里。宗教家が増えた事で弾幕ごっこが中で見られる様になり、一種の娯楽と化していた。今日も弾幕が空を駆け鮮やかな花を咲かしている。

 

「いいね〜。あっついな〜」

 

 観客の中、少し前博麗神社に居た男の姿が其処には在った。他の人々とは違う種類の服装の所為で周りから浮いていた。だが其れに意識を向ける者は居なかった。頭上で行われる戦いに目を奪われているから、だけではない。

 

「いやぁ凄いもんだ。だけどこっちに飛び火しねぇか心配だべ」

「そうだなぁ、兄ちゃんも気を付けとけよ」

「ぬー、ちっと触るよ」

 

 隣の男が話し掛けてくる、服装を気にした様子はない。するといきなり其の男の額に人差し指を着けた。

 ほんの一瞬だけだが額を触られたのだ、如何したと聞くだろう。だが話し掛けた男は気にする事なく、弾幕ごっこに視線を向けるだけ。

 

「お〜、良いねぇ」

 

 男の頭の中には先程話し掛けてきた男の記憶が在った。数十年分の記憶を一瞬の内に見た男はニヤリと笑う。

 

「はい。うん。うん。わかった。あ、ん、色々と居るねぇ。うん」

 

 記憶の中には此の人里に居る宗教家の事や守護者、偶にやって来る薬売りの兎や白髪の少女、フラワーマスターと呼ばれる大妖怪。色々と入っていた。

 記憶に無い存在も居るだろう、どんな奴が居るのか、どんな思想を持っているのか、どんな能力を持っているのか。楽しみだ。

 

「だからさ、今から出会う面白そうな奴に話し掛けてくっからさあ」

 

 男は笑みを更に深める。暇潰し程度には成るだろうと。其の為には力を制限するかと。もしかしたら自分と同等の存在が居るかもしれない。

 

「どっかテキトーに其の辺、歩いてれば、ほら」

 

 人混みを抜けて人里を進んでいく、横道に入り暗がりを進んでいると面白いものを見つけた。

 

「んー、んんー!」

「あー?何だテメェ」

「ヤベェよ見られちまったよ、如何する?」

「如何するもやるしかねぇだろ」

 

 むさ苦しい柄の悪い男が三人、其れに加えて口を抑えられている女。穏やかな光景ではない。

 だが暴漢三人は如何でも良い、やって来た男は涙を流して震えている女だけを視界に映した。

 

 濃い紫の髪、高そうな着物。そして何より、何かを秘めていると一目で分かった。

 此方に助けを求めているのだろう、助けてくれと視線が語っている。少女を見ていると、視界の端で何かが動いたのが見えた。

 

 

 

 

 

 

「シィッ……!」

 

 ドゴォン!

 

「羽虫程度にしかなんねえな」

「な、何をしやがった!」

「ひ、ヒィ!」

 

 ドドゴォン!

 

 音のを殺す為に刃物を持ち駆け寄ったゴロツキが地面にめり込んだ。其の様子に驚く二人。次の瞬間には最初のゴロツキと同じ様に地面へとめり込んでいた。

 

「……あ、貴方は」

 

 ぼんやりと倒れ伏す暴漢たちを見つめる男性に如何声を掛けるか悩んだ。自分を助けてくれたのだろう、恐らく。だがこんな事は今迄体験した事が無いのだ、故に如何すれば良いのか分からない。

 

「ん?あぁご免ご免、待たせて」

 

 此方の視線に気付いたのか男性が此方を向く。整った顔、焼けた肌。綺麗な人だと場違いな事を考えてしまった。笑顔を浮かべ此方に歩み寄ると手を差し出してくる。

 其の手を取り立ち上がろうとするが足を挫いたのか痛みが走る。そんな私の様子を見て背負うと言ってくる男性。

 

「そ、其処迄してもらうのは……」

 

 だが如何してもという男性に折れてしまい背負ってもらう事に。男の人の背中って大きいんだなと初めて知った。

 其れから男性に家まで運んでもらったのだが、巡回中の人里の守護者に見つかり心配され落ち着けるのに時間を掛け、家に帰れば家の者たちが騒ぎ出し其れを抑えるのに時間を掛けてしまった。其の様子を微笑ましいものでも見る様にしている男性に見られて恥ずかしくなった。

 此の儘帰ろうとする男性をお礼がしたいと引き留め客間へと通す。

 

「命の恩人に何もせずに帰らせるなんて、きちんとお礼をしなくては……」

「ん?」

「な、何でもないですよ〜」

 

 今頃気付いたが此の人の服装からすると外来人でしょう。ならば博麗の巫女の力で外の世界へ返す、其の為に尽力しましょう。他にも謝礼を渡さなくては。

 

「助けて頂き有難う御座いました」

 

 客間に着き、向かい合った所で話を始める。少しばかりのお礼だと金銭を渡し、此の世界について話す。外に帰す為に手伝うと言った辺りで男性が声を挟む。

 

「え、其の必要は無い?」

 

 自分は此の世界に興味が有る、少しの間滞在させてもらうと言う。

 

「人里の中に居れば妖怪に襲われる事は少ないでしょう、ですが先程の様な輩も少なからず居ますよ?」

 

 外でもそういった者たちは居る、其れに能力が有るから平気。外の世界とは生活が違い困るかもしれませんよ?え、何とかする?

 

「そう、ですか……貴方が其処迄言うのなら。其れなら住居は私たちが探させてください」

 

 せめてもの恩返し、仕事の方も取り繕っておきましょう。

 何から何迄済まない?いえいえ!此れは私たちの、いえ私の勝手なのです!貴方が気に病む必要は!むぅ……笑わなくても……。あたふたとしてしまい笑われた、恥ずかしい。

 はい?妖怪や神について知りたい?何か方法は有るか?フッフッフッ、其れならばお役に立てます!

 

「えぇっと、此れです。此の本は妖怪や神について纏めた書物です。まぁ私が見て聞いたものなので正確か如何かは」

「失礼します。住居が見つかりました」

 

 外から声が掛かる。良かった早く見つかってくれて。

 

「其の本は貸しておきましょう。必要がなくなったら、外へ帰る前にお返しくだされば。はい、其れでは」

 

 使用人に連れられ新たな住居へと向かっていく男性。外から来た麗しき殿方に救われる私、文字に起こすとまるでお伽話の様……は、恥ずかしい!あの方を英雄の欄に加えようと思っていたけど、此れは恥ずかしい。

 

「ちょっと改変すれば載せても恥ずかしくないかも」

 

 もしあの時あの方があの道を通らなければ如何なっていた事か。殺されでもしたら長い年月を掛けてきた事全てが台無しになってしまう所だった。

 

「迂闊な事はもう避けるべきね」

 

 そう言えば此方が話してばかりで向こうの事を訊くのを忘れていた。物書きとしてあるまじき行い。其れに興奮していてきちんと話せていなかったかもしれない。あの方にはきちんと話が出来ていたのだろうか。

 

「今度、時間が空いている時に伺おう……」

 

 

 

 

 

「其れでは」

 

 使用人が帰っていく。狭くもなく広くもない平屋だが内装は悪くない、男からすれば住めれば多少ボロくても問題はないと考えていので此れは思っていなかった事だ。

 綺麗に掃除された部屋の中、座布団の上に座った男はペラペラと本を捲り中身を見ていく。最後の項に目を通すと机の上に本を置いた。

 

「あのさ、俺、チラチラ……見られるの嫌なんだよね」

 

 男以外誰も居ない筈の部屋、見てくる者など居ない筈。

 

「あらあら、此れは失礼」

 

 静まり返る部屋に女の声が響き、続いてトサリと畳の上に何かが落ちる音が聞こえた。

 

「お前、スキマ妖怪とか言う奴だよな?」

「ええそうよ」

「何やってんだお前?」

「不穏分子の調査ですわ」

 

 不穏分子、男の事だろう。仕事が早いと男は考える、結界を通る際にバレない様にしたのだが。博麗の巫女だろうか。

 

「大変だなお前、毎回毎回。どれ位続けてきたんだ、二百年?」

「毎回?霊夢が貴方の事を話しているのを聴いてしまいまして」

 

 やはり博麗の巫女か。男は小さく笑みを浮かべた。

 

「自己紹介がまだでしたね。私は幻想郷の管理人、妖怪の賢者八雲紫ですわ。あ、貴方の名前は知っているので結構ですよ?」

 

 さて、妖怪の賢者。スキマを操る者。神をも超える力を持つ大妖怪。呼び名を数え上げればキリが無い存在。そんな存在を前にしても男は笑っていた。如何出るのか、どんな事をしてくれるのか楽しみで仕方ないという風に。

 此方も胡散臭いながらも笑みを浮かべる八雲紫だが、内心困惑していた。何故此の男が笑みを浮かべているのか、理解出来なかったからだ。笑みの奥に何かを隠しているのか、唯単に純粋に楽しんでいるのか。思考の淵に落ち掛けていた。

 

「貴方は一体何処の神様なのでしょう?神力を感じませんが、博麗の巫女は神だと話しています」

「……」

「博麗の巫女の勘は良く当たりますから」

 

 幻想郷にやってきて半日も経っていない、なのに其処迄バレている。そして神をも超える力を持つ存在に目を付けられている。

 絶体絶命。だというのに男は笑みを浮かべるだけ。

 

「嗚呼、此処で殺すのか?害に成るのなら」

「幻想郷は全てを受け入れますが、幻想郷の為には受け入れられない事が有りますから」

「其れで、ガバガバな覗き見していたんだ。如何いう判断をしたんだ」

 

 ピリピリとした威圧感が部屋を満たす。妖怪の賢者からの一方的なもので在るのだが、其れだけで近隣の者たちが泡を吹いて倒れるには十分であった。

 

「物騒な事はしませんわ、外に出て行ってもらうだけです」

 

 賢者が手に持った扇子を横に振るう。すると男が座っていた座布団の下が割けた。

 

「へ〜」

 

 闇が広がっていた、其の闇の中にはギョロギョロと目玉が蠢いている。座布団が重力に引かれて闇の中へと落ちていく。男も又割けた空間へと堕ちていく。

 

「ふぅ如何にかなりましたわ」

 

 何の目的でやってきたかは定かではなかった、故に排除する。妖怪の賢者としての仕事、幻想郷を愛する一人としての行動。一時は神を相手にするからと博麗の巫女と式に遺言紛いの台詞を吐いてきた、こっ恥ずかしいが無事終わった事を伝えなくては──。

 

「──此れがスキマか〜」

「ッ!?」

 

 先ずは博麗神社かとスキマを開いた瞬間、目に飛び込んで来たものに衝撃を受けた。

 スキマに落とし外へと送った筈の男が開いたスキマから出て来たのだ、驚くなという方が酷だ。

 

「何故、貴方が……」

 

 如何やって?風を操り心を読む程度の能力ではなかったのか?何を如何すればスキマから出てきたのだ?此のスキマは人里から博麗神社迄のスキマだ、外の世界へのスキマからはやってこれない筈。

 八雲紫は考える、もしかしたら自分は厄介な存在に手を出してしまったのかもしれない。何処の誰とも知れぬ神を侮っていた、スキマから外に送り結界を強化すれば解決すると簡単に考えていた。

 目の前で起きた理解不能な出来事から後悔へと変わる思考、立ち向かうという考えが出来なくなる程の焦燥。大妖怪八雲紫は嘗て無い程の恐怖の中に居た。

 

「まあそう焦んないで」

 

 男がスキマから出てくると同時にスキマが閉じた。八雲紫が手を加えていないというのにだ。スキマを操ったのかと更に困惑し足を後ろへと引いてしまう賢者に向かい男が前に出る。

 

 男が一歩近付く、賢者は一歩退がる。

 

 更に一歩出て来る男、又してて一歩下がる賢者。

 

「ねえないの?面白いの」

 

 其の言葉にぐっと唇を噛む。そうだ自分は一体何をしていたのだ、危険な存在を排除しようとしたのだろう?スキマから送っても戻ってくるのなら他の手段を取れば良い。

 怖い、だが作り上げた幻想郷に魔の手が伸びるのはもっと怖い。決意を新たに背後に大きく飛ぶ。背後には壁、だがスキマを開き異界へと飛ぶ。今は無理でも策を練ればきっと勝てると祈りながら。

 静まり返る部屋、重苦しい空気が無くなった事で外が騒がしくなった。やれ人が倒れている、やれ妖怪の仕業だと。

 

 一人となった部屋の中、男は大きく息を吸って溜息を吐いた。妖怪の賢者が何処へ向かったのかは大体察しが付く、恐らくは博麗神社かマヨヒガと呼ばれる八雲の住処、もしくはどちらも。他に在るかもしれないがまぁ如何でも良い。スキマを使い迅速に動いている姿を想像し思考する、如何動くか。

 

「スーッ…」

 

 危険だと判断して排除に乗り出した幻想郷の管理人、其の対象の自分。もしかすると他の住人も自分を排除しようとするやもしれない。

 

「ん、いいね〜」

 

 男は笑う、自らに降り掛かるものがどれ程のものだろうと笑う。此れなら暇潰しになりそうだと笑みを浮かべる。

 畳の上に横になると目を閉じる、必要は無いが睡眠を取る事は出来るからだ。今日はもう遅い明日になる迄寝て待とうというのだ。

 無防備に無警戒に男は眠る、自らにを見ている者たちの視線に晒されながら。




6396文字、普通だな!
GO is GOD
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