【短編集】東方夏淫夢 作:命楼
古の時代、人の歴史が産まれるよりも更に昔の時代。月の民が地上を去る前から存在したモノ達が居た。青年は其の力を内に秘めていた。
初投稿です。
ミーン!ミーン!ミーン!ミーン!ミーン!!ミーン!!ミーン!!(迫真)
ブロロロロロ……ブロロロロ……(重低音)
喧しく蝉が鳴き、天狗が飛んでいく音が響き渡っている。
今は夏真っ盛り。太陽は燦々と輝き、日陰から出て来た間抜けな蚯蚓を焼き殺している。其の茹だる様な暑さに人間処か妖怪すらぶっ倒れている、だというのに森の中に存在する獣道を往く者達が居た。
「暑いっすね〜」
「本当にね……でも随分余裕そうじゃない……」
「ああ……」
多少はね?そんな顔をして額に浮いた汗を拭く前を向いている男を見上げながら、お前男みたいな恰好してんなと言われそうな緑髪の少女、リグル・ナイトバグは考える。此奴はどんな妖怪なのだろうと。
「あんた、強いでしょ」
「いやそんな事ないっすよ……」
首の後ろに手を回し困った様な顔をする男。
「嘘が下手くそね、まぁ機嫌損ねて殺されたくないから詮索はしないけど」
「う、うん……」
今度はあたふたとし始める男の姿に笑ってしまう少女。遊ばれたのかと少しだけ顔を赤らめそっぽを向く男。其の仕草がセクシー、エロい!
「あぁ……有難う御座います」
「ん?別に良いのよ、此の程度の手伝い。でも私は手を貸さないからね。目的地に着いたら自分で、どうぞ」
「はい」
大学の帰り道、金髪のチラシ配りの女から怪しげなチラシを受け取ったばかりに強制的に送り込まれた男。何故怪異だけを転送する術式を施された筈のチラシで学生であった彼が送られてしまったのか、其れは彼が怪異で在ったからだ。
外に帰ろうとすれば数日空けて来いと博麗の巫女に言われた男は、渋々此処で生活を送る事になった。勝手に送り込んでおいて直ぐに返せませんとか、恥ずかしくないの?
「ほら此処等辺ならいっぱい居るから見つかるでしょ」
「はえ〜、すっごい多い……」
怪異だろうが何だろうが外では学生である、夏の課題を終わらせなくてはならない。ある程度終わらせたが、座学だけでは達成出来ないものが有る。
「虫取りなんてまるで子供みたいね」
「はい……」
「帰り道は分かるでしょう?其れじゃあね」
「有難う御座います……」
昆虫採集及び虫の観察とかいうくっそ暑い中を長時間散策させる課題とか許せるぞオイ!(夏のおもひで)
此の男の課題の幾つかは外に出なくてはならないというもの、だが男は苦言を漏らす事なくこうして虫取りにやってきている。
「本当に大きいっすね〜」
幻想郷特有の異常な育ちを見せる木々に驚きを見せる。上を見上げれば蝉やら何やらが止まっているのが見える。
「見られないすかね……?」
辺りをキョロキョロと見渡し誰も居ないのを確認し巨木へと手を伸ばす。如何やら登ろうとしている様だ。自らが宿す異常な力を見られてしまわないかと思っているのだろうが、此処では人外が闊歩しているのだから拒絶される事は少ない。
強大過ぎる力を持っていれば話は別だが。
ミシリ、手を掛けた木が軋む。次に足を掛け少しずつだが上へと登っていく。気配を消し次々に虫を捕まえていく男は機嫌が良いのか、時折歌を口ずさんでいた。
其の日、人里から離れた森の中に住む妖怪や動物達は聴いた、まるで心を洗い流す様な美しき歌を。
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「おお、帰ってきたか。ささ入ってくれ」
「おじゃましまーす」
何とか日が落ちる前に虫を捕まえ、観察課題を終わらせた男。帰り道くっそ汚らしい妖怪に襲われたが、返り討ちにした。人里に着くと働かせてもらっている酒屋の家へとやってきた。
「暑い中よくもまぁ森間で行ったな」
「今日は本当疲れましたよー」
「外は危険だからな、あまり外には出ないでくれよ?」
「そうですよ……」
「まぁ此れで課題って奴はお終いなんだろ?」
「ふぁい……」
幻想郷にやってきて一週間、男は外に出なくてはならない課題を全て終わらせた。残りは半分だ。此の電波が届かないし充電も出来ない所ではスマホも満足に使えない、故に店の手伝いか課題をするしかないのは仕方ないね(レ)
ぐるる〜……
「あっ……」
「ははっ、腹が減ったか
「あー、お腹減りましたね……」
腹の虫がドデカイ音を鳴らし恥ずかしそうにする男。
「飯の準備は出来てるぞ、勝手に食っててくれ」
そう言い残し店の方へと向かっていく店主を見送り台所へと向かう。テーブルの上には料理、漂う匂いによって更に腹が鳴いている。
「いただきまーす」
座布団の上へと座り晩飯を食べる。食べ終われば次は風呂だ。さっさと終わらせて寝ようと少し疲れた身体を動かし風呂場へと向かう。
「ああ、いいっすね〜」
湯気が立ち込める風呂場、暑いお湯が身体を包み込み声が漏れる。
お湯を手で掬い顔を濡らす、此処で一つ大きな息を吐き明日は如何するか考える。此の一週間、朝起きて店を手伝い、昼を過ぎれば外に出ていた。其の時間が空いてしまうのだが此の時間を如何しようか。店を手伝うのも良いだろう、残りの宿題を行う時間に割り当てても良い。
そういえば、先輩と顔合わしてないな、何処かに遊びに……。
「あっ……そうですよね……」
会えないというのに何を考えているのかと男は溜息を吐いた。外に帰れないと考えれば考える程に胸が苦しくなってくる。自分では大丈夫だと思っていたがホームシックになろうとは。
「先輩駄目っすよ……」
頭の中に尊敬し愛している先輩の姿が浮かぶが頭を振り消し飛ばす。
「二週間くらい……大丈夫です……」
二週間、其れが博麗の巫女が男に提示した期限。二週間経てば帰れる、帰る事が出来る。何を恐れる事があるのか。
「フッ……」
帰る前に課題を終わらせて、しっかりと働いてお給料で先輩や知り合いにお土産でも買っていこう。そんな事を考えながら高い位置に作られた格子窓に視線を向ける。
「はえ〜」
窓の向こうには、満天の夜空が広がり無数の星と緩やかな曲線を描く月が輝いていた。
『■■■■■……』
『■、■■■■■、■■■■■……』
『■■、■■、■■■■』
『■■!■■!■■!■■!』
『■■■…■■■■』
光の存在せぬ闇の中、潜みしは強大な力を持つ■。光差す外界へ出る其の時を唯只管に待ち続ける。
2476文字、普通だな!
東方札竜人〜レシートリザードが幻想入り〜