sideアーシア
「……あれ?此処は……」
目が覚めると、私はどこか知らない館の一室のベッドにいました。いえ、少しだけ見覚えがあるような気がするんですけど……私、まだ寝ぼけてるのかな……?
それに、今まで私が何をしていたのかもいまいち思い出せません。名前はアーシア・アルジェント、職業は……元シスター……と言ったところでしょうか。確か、
そこまで考えてから部屋の外から足音が聞こえてきました。もし、入ってきた人が私を警戒したのならきちんと理由を説明すれば恐らく分かってくれると思います。
そうして、私の部屋のドアが開きました。
「やぁ、起きたかい?アーシア・アルジェントさん。どうかな?少しだけ記憶が混濁していると思うけど……まず、僕が誰か分かるかい?」
そう、目の前にいる男の人が聞いてきました。この人も見覚えがありました。確か━━━
「ディオドラ・アスタロト……さんですよね?私が以前助けた悪魔さんだったはずです。」
「良かった……覚えてくれていたんだね。とりあえずここが何処なのか、どうして君がここに寝ているのか経緯を説明しておかないとね。」
そう言って彼は私に何故私がここにいるのかの説明をしてくれました。
何でも、私が彼を助けてしばらく時が経った後に私を攫った堕天使の一味と戦っていた、らしいのです。
何故さらったことを知っていたのか?という事を何となく聞いてみたら、どうにも私のことが心配だったらしく使い魔で時折見張りをさせていたらしいのです。
「……ありがとうございました、そんなことも忘れて私はお礼を言いそびれていました。」
「いいえ、僕は気にしていませんよ。
それで……アーシアさん、一つだけ相談があるんですが……宜しいですか?」
彼は、ディオドラさんは真面目な顔で私に話しかけました。凄く真剣な表情でしたが、私を助けてくださった恩人の話を聞かない訳が無いので私も真剣な表情で頷きました。
「僕の……眷属になってくれませんか?ここには女性も沢山いますから……アーシアさんの居場所になってくれる人は多いと思いますよ?」
それは、私にとっては主を捨てろ……と言っていることと何ら変わりありませんでした。
しかし、ディオドラさんは私のことを考えてくれているのもとても分かっています。ディオドラさんの、悪魔の眷属になるという事は人間ではなく悪魔になると言うこと。悪魔になれば主への祈りが行えないどころか教会にすら近づけなくなると私は知っていました。
それと同時に、私にはディオドラさんの眷属になる話を断れば、私は孤独のまま死んでしまうということも分かっていました。
魔女と蔑まれている私はミサに参加出来ない……それどころか、教会に近づけば異端者がいるとエクソシスト達に良くて捕縛、悪くて処分されてしまうのも理解しています。
「……すいません、少しだけ考えさせてください。」
だからこそ私は、この話の答えを保留にした。
主への祈りは私には捨てられない。けれど、ディオドラさんの私を守ろうとする意志は伝わってきました。それに私も応えないといけない……だから私はしばらく悩むことにしました。
私には主しか居場所が無かった……けれど、それを捨てれば新しい居場所が手に入る……教会から追われる日々に摩耗していた私の心は、その選択にぐらついていました。
あれから数日が過ぎました。
流石に住む場所が無い、というのは心配だったらしく私はディオドラさんの家に住み込むことになりました。ディオドラさんだけでなく、眷属の皆さんも赤の他人同然である私にまるで家族のように接してくれました。
そしてそうやって皆さんと一緒にいて、私は心に暖かさを覚えていました。
そしてそれ以上に……ディオドラさんに恩を感じていました。ここまでさせて頂いて私は何もしない……と言うのは一番いけないことです。
だから私は決断しました。
「……ディオドラさん、私は貴方の眷属になります。」
「……本当ですか?!ありがとうございますアーシアさん!」
彼は私の手を握ってブンブンと振り回しました。よほど嬉しかったのだろうか、嬉し涙を流していましたが、それにつられて私まで涙を流しました。
ここまでされた私なりの恩返し……けれど、いつか悪魔の身なれど私は主に祈りを捧げることが出来るようになると信じています。
「それじゃあ……早速
入れる、と言っても所謂魔術的な要素でアーシアさんの体の中に溶け込ませる様な感じです。ですのであまり気をはらないで下さいね、すぐ終わりますから。」
「は、はい。」
それからすぐにディオドラさんとの眷属としての契約を結び終えました。そしてその後から聞いた話なんですが、悪魔の眷属となったものはどうやら偶に駒の交換を行うらしいです。
その目的はディオドラさんが言うには『他のチームの見学』を行うことらしいです。見聞を広めるという目的でそれが行われ、ゲームを通じて悪魔同士の連携を高めるという目的らしいです。
私はまだ悪魔になりたてになったばかりなのでそういうのはまだ早いので数ヶ月の間はここにいることになりそうです。それに、また後から聞いた話ですがディオドラさんの眷属や眷属でないけれど家にいる人達は皆さん元教徒らしいのです。ディオドラさんは教会から見捨てられた人達を囲っている、と聞きました。
私は彼のことをより好きになれました。だからディオドラさんのためなら私は何でもしたい……そう思えるようになるまでになりました。
そして、私がディオドラさんの眷属になってからさらに数日の時間が経過しました。
「あの、すいません……ディオドラさんはどこにいますか?」
「ご主人様……は見ていませんね。ごめんなさいね?アーシアさん。」
「いえ、大丈夫です!」
私は今度行われるゲームの話をする、ということでディオドラさんを探していました。お屋敷にいるメイドさん達(その人達も元教会の信者の女性達でした)は皆さん何故かディオドラさんの場所を聞くと軽く顔を背けてしまいますが……とりあえず知らない、と答えていたので会う人会う人皆さんに聞いて回っています。
ディオドラさんの部屋は最初にノックしましたが返事はありませんでした。
「ディオドラさーん?どこにいるんですかー?」
小走りでディオドラさんの名前を何度も呼びながら屋敷中を回っていきます。どこを探しても見つからない彼に私は次第にどこを探せばいいのか分からなくなっていました。
それに、ずっといたとはいえ私は未だこの屋敷に不慣れなのでこの広い空間で私は道に迷ってしまいました。
すると、突然目の前に魔法陣が現れました。どうやら私の元に文字通り飛んできてくれた人がいたみたいです。
「あぁ、ようやく見つけました。ディオドラ様はもうお部屋にいらしてますよ。アーシアさんが探し始めた後入れ違いで来たのですよ。
ほら、この魔法陣で早く……んん!」
「ど、どうしたんですか!?」
突然、私を迎えに来てくれたメイドさんがうずくまってしまいました。少しだけ顔も赤くなっていて、私はこの時は風邪を引いているのだと思いました。
私は心配して駆け寄りましたが、それを静止するようにメイドさんは手で私を制して少しふらつきながらも立ち上がりました。
「だ、大丈夫……ちょっと足がもつれただけだから……」
私はその言葉を信じて彼女と1緒にディオドラさんのところへと行きます。部屋についた後、無言で私の方を見て軽く微笑んだ後、眷属の皆さんに真剣な表情で話を始める。
ディオドラさんは優しいだけでなく、少しだけ厳しい面もあります。しかしそれは、彼が優しい性格だからこそ出る『厳しさ』なのではないか、と私は思っています。
そうして私はディオドラさんの主たる姿を見た後に声をかけようとしました。しかし、先程私を迎えに来てくださったメイドさんと共に魔法陣を使ってどこかへと消えていきました。やはり彼女は具合が悪かったんでしょうか?私はそう思っていました。
side?
「こんのバカメイドが!彼女にはまだ僕を探させるような真似はさせるなと言っておいたはずだろうが!!」
男は、ディオドラ・アスタロトはメイドを全裸に剥き自室で拘束して鞭打ちを行っていた。
何故ディオドラはアーシアと入れ違いになったのか、それはディオドラが女と『お楽しみ』をしていたからにほかならないからだ。
では何故それを見られるのを拒むのか?今、彼は彼女を堕とす準備をしているのだ。その為に、今見られて軽蔑の眼差しを見られるわけにはいかなかったのだ。ディオドラ・アスタロトという男はアーシア・アルジェントと行為に及びたかったのだ。
「ひんっ!はひっ!も、申し訳、ございません……んぎぃ!!」
ディオドラ・アスタルトの屋敷の部屋はすべて防音となっている。故に鞭打ちなどをしても、例えドアや壁に耳を当てていても絶対に聞こえることのないように出来ている。
だが、念には念を入れなければならない。100%聞こえないと言っても見えない訳じゃないしなにか不慮の事故が起きるかもしれないからだ。
故に彼は慎重になっていた。
「はぁはぁ……まぁいい、今日はこのくらいにしておいてあげるよ……彼女を僕のものに出来るのなら……構わないさ。」
息を荒らげ、メイドをそのままにして彼はベッドへと横たわって寝始めた。彼の部屋は少し特殊な作りをしており、隠し部屋が仕込まれている。メイドはそこで鞭打ちしていたので問題無いのだ。
彼はアーシアをどうやって自分に依存させるか……それだけを考えていて眠りについた。
sideアーシア
「おはようございます!」
「はい、おはようございます。」
朝、目覚めた私はディオドラさんのところへと走っています。どうやら私になにか用事がある様です。
もしかしたら何か私を必要としてくれることがあるのかもしれない、そう考えて私は喜んで走っています。
「ディオドラさん!おはようございます!」
「アーシアさん、急に呼び出してごめんね?それと、おはよう。」
にこやかに微笑んでくれる彼はとても魅力的な様に思えてきました。恐らく、私が知っている限りの男性の中で一番優しい人なのではないでしょうか?そう考えられます。
「それで……今日は何の話ですか?昨日の話では次のゲームに私は出ない、と聞いてたんですけど……」
「……うん、呼び出したのは別の件なんだけど……とても大事な話なんだ。」
そう言ったディオドラさんの表情はとても真剣な顔をしていました。それを見た私も思わず唾を飲み込んでしまうほど緊張しました。
そしてその空気がしばらく続いた後、彼は決断をしたかのようにゆっくりと口を開いてこう言ったんです。
「……アーシアさん。僕と付き合ってくれないか?」
「……ふぇ?」
一瞬、彼が何を言っているのか分かりませんでした。付き合う、とは何に付き合うのかというのを真剣に考え始めるほどには思考が飛んでいました。
そして、数分経ってからようやく彼の言っていることを理解して自分でもわかるくらいに顔を真っ赤に染めていました。
「……つ、付き合うというのはその……こ、こここ、恋人になる、ということですか……?」
私がしどろもどろになりながら言うと、ディオドラは無言で顔を俯かせながら深く頷きました。
それを見た私はますます顔から湯気が出るほど熱くなる感覚を覚えて恥ずかしくて顔を背けたくなりました。勿論、恥ずかしさで、です。私は今まで誰かと付き合う……ということを考えたことがなかったからです。
「そ、その……ディオドラさんは確かに魅力的で伴侶にするのなら貴方みたいな人が私はいいんですけど……その、私では貴方とは釣り合わないかもしれないですよ?」
「そんなのは関係ない!私はあなたに一目惚れしたんだ……悪魔であった私を助けてくれた貴方を……私は愛したんだ……だから私は貴方が欲しかったんだ……私は、貴方が愛おしくて愛おしくて仕方ないんだ……それでも、駄目ですか?」
私は答えに精一杯、精一杯悩んだ。今ここで保留にすることも私にはできた。しかし、眷属になる時に既に1度彼の意見を保留にする、ということをしてしまった以上二度も連続で保留するわけにはいかないと私は思っていた。
「……そ、その……恋人で、いいなら……そ、そう言う愛す人との行動は順を追ってゆっくりと……するって事なら……OK、です………!」
彼は私のその答えを聞いて笑顔で抱きついてきました。嬉しさを体全部で表現するかのような行動に私は凄くドキドキしていました。
この時、私はまだ知らなかったんです。ディオドラ・アスタロトという悪魔のことを━━━
……主人公喋ってねぇ………真相は早くて次回、もしかしたら次々回の可能性も……