「…………俺で試そうってか? その劣化バージョンで? 俺にも大して力がある様にも見えねぇその鎧が一体どんな力を持ってるっていうんだ…………よっ!!」
最後の『よ』の瞬間に飛び出してブン殴ろうとしてくる匙。
匙、お前の敗因はたった一つだぞ? 『必ずしも基本性能が弱い鎧が絶対に弱いという発想』に辿り着いてしまったお前の負けだ。
『
この鎧の独自能力が発動する。俺も今さっき知った能力の一つだが…………これがあるせいでステータスは皆無といっていいほど無くなってしまってる様なものだ。だがその分強力な能力である事は俺自身がよく分かっている。
「なっ…………!? 鎧の炎が…………!?」
そして能力が発動した瞬間に匙の呪いの黒炎は姿を消す。
こいつに説明するとまた変な突破のされ方をしそうなので黙っておこう。
にしてもこの鎧の力…………しかも今のが最初に発現した能力とは思えないほど強力だ。
まずこの鎧が持つ力は…………『消去』、音声はZERODIVIDEと言っていたが簡単にいうと『
「試運転はこんなものか…………存在を消す事も容易いけど流石にそれは会長…………ってか生徒会に悪いし俺も後味が悪い…………せいぜい後で記憶を書き換える程度にしてやるよ」
まぁ本音を言うと兵藤達になるべく感付かれたく無いからなのだけど…………強過ぎるから対象間違え無い様にしておかないと。
「そうだ、匙…………今俺の味方になれば会長をお前の好きにさせてやるよ。足りないというのなら他の生徒会女子も魔王セラフォルーも加えてやるよ。お前の好きな会長を姉妹丼で好きなだけヤレるんだから文句は無いと思うんだが?」
「………………舐めんなよ……てめぇなんかに…………てめぇなんかに…………頭を下げてたまるかよ!! 俺が許せないのは会長の心を弄んでいる事だ!! 俺はてめぇを!! ぶち殺して!! 会長達を元に戻す!!」
咆哮…………悲しみと怒りと恨みと…………色んな感情が混ざってるがともかく匙は叫びながら俺に特攻を仕掛けてくる。しかしもう頼みの綱の炎は出せない。だがまだ俺は鎧が怖い…………ならば。
『ZERO DIVIDE!』
鎧を消そう…………まだ俺の時止めは作動しているから鎧が無くなった瞬間…………匙は今日の事を全て忘れているだろう。
「ーーーあれ、俺何してたんだっけ」
「おいおい匙、何言ってんだ…………お前学校の様子を見に来たって言ってたじゃないか。んで俺に付いて来て欲しいって言ったから付いて来たのに…………お前案外酷い奴だよな」
「え……あ、そういえばそうだったっけ…………いやぁ! すまんすまん! ちょっとぼーっとしてたみたいだ! 大丈夫大丈夫、お前にもちゃんと手伝わせてやるから!!」
「へいへい………………」
「…………にしても、何かを忘れてる気が…………まぁでも思い出せなくてもその内思い出すし問題無いか…………忘れたならそこまで重要に思ってないって事だろうし…………」
そう言いながら匙は
傘は開いていない、寧ろ開く必要が無いくらいに晴れていた。という事はあの大嵐は誰かの能力だと考えられる。流石に局地的過ぎるしな…………という事は能力の持ち主はあの青年の方だと考えるのが妥当か? 俺より年上って感じだが………………じゃあ残っているミカエルかジョーカー………………いや、多分ジョーカーの可能性の方が高いな。
「んじゃ迎えに………………何だこのシャボン玉」
気付けば辺り一面にシャボン玉が浮かんでいた。確かに今この学校は俺と匙だけでは無い、ちゃんと他の生徒もいるが…………先生だっているんだ。という事はこれを飛ばしているのは少なくとも生徒じゃない、勝手に飛ばしたら怒られるしここら辺に理科関連の部屋も無いのは確認出来ている。んじゃ誰だよこれ飛ばしてるの。触らないからいいけど。
「ーーー触れなくても、そのシャボン玉は持ち主の意志によって動く様になってるんだよ。だから…………閉じ込めろ!
長ったらしい技名を唱えている間に逃げれそうなものだがよくよく考えてみれば周りに飛んでるのが全部そうである可能性があるため迂闊に触れられない。時を止めてもいいが触れた場合恐らくやばい…………つまり今の俺は軽く詰んでいるといっても過言では無い状況に陥っているのだ。
そしてシャボン玉が俺にまるで自分からぶつかりに来たかの様に当たり、そのまま俺の体をすっぽりと覆うくらいにデカくなっていく。そこからが個人的には滅茶苦茶酷いある意味で地獄の始まりだった。
いくらでっかくなったといってもせいぜい俺が体育座りで膝に顔が当たるくらい背を丸めなければ入らないくらいだ。しかもこのシャボン玉の中ではありとあらゆる天候が俺に襲いかかってきている。なるほど、これがジョーカーの力…………んでもってさっき聞いた声は教会にいた奴と同じ声、つまりあいつがジョーカー・デュリオって事か。
だが…………今の俺には!
『退化覇龍《ディジェネレーション・オーバードライブ》!!』
「ふんっ!!」
『
鎧を身に付けてシャボン玉の存在を0にした。この鎧はそういう事も可能って事がよく分かった。だがまだいけそうだな………………なにせ今俺は詠唱無しで鎧を纏う事が出来た。つまりこれは覇龍の様に詠唱を必要としないだけか? それとも怪物と化したアルビオンを呼び寄せる為に詠唱が必要なのか? 多分後者だな。さっきまでの俺は一時的に鎧を外していた様なもんだし。外したらまた纏うのに詠唱が必要かと思っていたがそうでもなさそうだし………………これ便利だな結構。
「…………まさかヴァーリどんの力まで奪ってるなんてねぇ…………正直、元人間とは思えないくらい膨れ上がってしまってるよね、君」
「え? 俺そんなに太ってる様に見えるの? この前体重計った時55くらいだったんだけどそれって人外レベルだったのか…………」
「いやいや、体重の話じゃなくて君の感情の話さ。もっと詳しく言うのなら…………欲望だね、主に性欲と支配欲」
なんだ欲望の話かよ。それなら人間というかあらゆる種族の男がみんな持ってるものだし切っても切り離せないだろうな、性欲は。支配欲は知らん。
というかぶっちぎって出てきた割にはこいつそんなに焦ってねぇな…………ってそこまで俺は考えてふと気付いた。
「ここどこだよ。俺さっきまで学園にいたはずなんだけど…………」
気付けばどこかの荒野…………というより砂漠か。あれもしかして俺知らない間に学校を砂漠化出来る能力でも持ったって事? やべぇな。地球温暖化無茶苦茶加速するじゃねぇか。ん? という事はつまりーーー
「俺逆に砂漠を自然豊かな土地に変える事も可能って事!?」
「なんでそうなったのかを教えてほしいところだけど残念ながら転移させたんだよ、被害のない砂漠のど真ん中にね」
「え? 砂丘じゃなくて砂漠? んじゃここ海外? 待ってどうやって帰ろう。」
「いやいや、そもそも帰れないよ……君は今からここでおとなしく封印されるのさ。ここを選んだのは俺が全力で戦った場合一つの街が吹き飛びかねないから…………だからここを選んで全く被害が出ない様にした。それに君の時を止める術は確かに厄介だけど…………」
気付けば周りにシャボン玉が舞っていた。数える事が面倒臭くなるくらい大量のシャボン玉だ。確かにさっき触れたみたいな事が同じ様に起こった場合一々無効化していかないといけない。それはそれで面倒臭い。
「なら…………さらに退化、させてみるか。この鎧の名の通りに」
「…………退化?」
「イメージとしては…………触れたらアウトって感じだ…………けど、早く動きたいって事もある………………こんなところか。んじゃいくか」
俺が魔力を込めると鎧の各部分が前に押し出される様に持ち上がる。そして更に魔力を込めるとその持ち上がった部分が吹き飛んで直線上に飛んでいく。デュリオにも当たり掛けるがシャボンに包まれて災害に遭いまくってる。ありゃ中身ボロボロだな。まぁ別にリサイクルする訳じゃないからいいけど。
「…………その鎧は?」
「兵藤風に名付けるなら…………そうだな、
だがしかし、戦車の名を冠しているのにその見た目はほぼ体に張り付いているかの様な薄い鎧がある程度の防御力しかない。もう一つ、敢えていうならばこの鎧にはろくな攻撃力も備わっていない。
「…………ルークって普通攻撃力と防御力を備えているものだよ、まぁこれはイッセーどんから聞いた話だけれどもね。けれど君のその鎧はお世辞にも防御力と攻撃力を備えている様に見えない。という事は…………その鎧自体に何かあると思っていいのかな?」
「なら、試してみたらどうだ? 案外通用したりしなかったり…………するかもよ?」
俺の鎧に何かあると一発で見抜いたあたり全然焦っていない様だ。そりゃそうか、はっきり言ってさっきまで着てた鎧の方が強そうだしな。そして警戒しつつ、なおかつ俺を倒さんとする意志で俺にシャボン玉を向けてくる。だがしかし、そのシャボン玉はこの鎧に触れた途端に消え去る。
「…………参ったな。触れた途端にアウトってこういう事だったんだ。これなら確かに防御力や攻撃力なんていらないね。なにせ、触れた途端に消滅してしまうんだから」
「そういう事だ、早く降参した方がいいんじゃない? 俺は一応誰も殺したくないし消したくもない。早くミカエル呼んでくれよ…………じゃないとあんたを倒さないといけなくなる」
「そうなりたくないと思っていたら今頃こうなってはいないと思うね」
そりゃそうだ、考えてみたら始めからこんな能力でビビる様なやつがジョーカーやってねぇわな。肝っ玉が座ってるって言うのか? いやほんと…………さっさと諦めて欲しいわ。
「…………ふっ!」
「無駄無駄、無効化というより触れた存在の抹消に近いんだからどれだけぶつけても許容量なんて存在しないからいくらでも消せるぞ」
「そんなのは分かってるよ…………けどね、要は触れられなきゃいい訳だから…………もう、終わりだよ」
ふと気づけば俺の周りを既にシャボンが覆っていた。しかも特大サイズのデカいヤツ。だがシャボンにさえ触れられれば。
そう思って俺は手を伸ばすがギリギリ届かない。というよりも、
「………やっぱり、君がその鎧で無効化出来るのは魔力のこもった目に見えるものだけの様だ。そのシャボン内で作られる天候は本物の天候だ、けど再現する為の魔力は消費されてる。けれど天候そのものには何ら鎧は免疫が無い。つまりそのシャボンに囚われている間に、暴風とかまいたち、落雷で責められれば君は一溜りも無い訳だ」
なるほど、こいつ俺より俺の鎧の把握が上手いみたいだな。おかげでシャボンに閉じ込められて今の俺は電撃とかまいたちで鎧が切り裂かれつつあるな。ええい、薄すぎて全然意味無いな。天候を無効化出来ないか…………なら今度は分厚く、元の形が分からなくなるくらい分厚くいこう。どれだけ強い武器だろうが絶対に通さない位の分厚い鎧にな。
そうイメージした俺は更に魔力を込める。すると一度元の鎧の姿に戻った後、両腕、両足、胴と頭のパーツから小さなパーツがパージされる。
そのパーツは一度魔力で太い樹木の幹の様に太くなり各パーツが繋がっていく。その繋がったパーツはずんぐり丸々とした鎧の様な形で繋がった直後にその中心部が開いて鎧を纏った俺を収納する。
そしてそこで中から体を動かすとそのどデカくなった同じ部分が動き出す。これで天候すらも凌駕する強靭な城壁の完成って訳だ。
「っ!? まだ強化されるのか…………」
「違う違う、これは退化だ。
圧倒的防御力で物理攻撃ならいくらでも無効化出来る。天候攻撃ももう無駄だ。ただしこれは本当にただの鎧になっている。目立つ様な特殊能力も何も無いただ防御力だけが高くなっただけだ」
ずんぐりとした見た目でかなりの大きさがある為か視点がスゴく高いところにあるな。3~5mくらいはあるんじゃないかこれ。すげぇ適当に高さの見当付けたけど。
「要するに何者をも寄せ付けない鉄壁の鎧を作ったって訳か…………けれどその実特殊能力らしい能力は無い……確かに後者の文だけ見たら退化してる様にしか見えないね」
「そうそう…………一応魔力での攻撃も防げるぜ。まぁどのくらいの防御力があるのかは俺にも分からないがな」
対艦ミサイルとか核とか使われて生きてたら最強の鎧なんだけどな。まぁ吹き飛びそうではあるけど。
「少なくとも…………今この場においては攻撃が効かないっていうのは無しの方向だった方がどれだけ嬉しかった事やら…………」
「触れたら包み込むシャボン玉を無効化出来る様になった…………というより、もうこの鎧で全て解決なんだよ、例え包み込まれてもお前の天候攻撃はもう俺には通用しない。防御力だけ上げているだけで俺はもう勝てるんだからな」
実際、取り込まれ様がこの鎧の防御力ならば安心してコントローラーを使う事が出来る。しかも今こうやって動かせてはいるが、はっきりいってしまうと中で篭城する事も出来る様になっている。だから天候攻撃されてもコントローラーを使う術はあるって事だ。少しでも動けばシャボン玉に当たって中に取り込まれる…………なんて事はもう無い。何故なら簡単に突破する事が出来る様になったからだ。
「さて……俺が勝った訳だけど……知ってるかな? ミカエルの居場所…………黙ってても無理やり口を割らせるんだけど、まぁ出来るだけ今の内に喋ってた方が楽になるかもよ?」
「…………クソくらえ、って言っておくよ」
「そうか、んじゃな」
そう言って俺はコントローラーをポチポチした。
「ありがとうな、デュリオ。わざわざ送ってもらって悪いな」
「いやいや、金男どんの為なら何してもいいくらいさ」
「じゃあまたな」
「あぁ」
短く会話を終えてデュリオは天界に、俺は家へと帰った。
もう一つついでに言うとデュリオは洗脳済み、もう二度と俺と戦う事は無いだろう。しかし洗脳した後でもミカエルの居場所は喋らなかった…………いや、寧ろ知らないといった方がいいのだろうか。俺がコントローラー込みで聞いても知らないと言っていたから本当に知らないのだろう。
だがこれはこれで好都合だ。ミカエルの居場所を知らないという事は天界にはいないという事になる。今どこにいるかは知らないがすぐに邪魔をされる様な場所にはいないという事だ。
んじゃま…………明日は少し行くのがかったるいがまぁ…………行ってみるか、例の場所に。楽しみだ。
『
対象を消す。但し視認できるものじゃないと消せない。
『
とんでもなく薄い装甲だが触れたものだけを消すことが出来る。しかし触れられるものであり、魔力が入ってないと消えない。銃弾などの攻撃がいい例である。
『
とんでもなくぶ厚い装甲をまとっている。ただぶ厚いだけである。如何なる攻撃も鎧の下に通さないように出来ているが、羽を出して飛べないし足も物凄く遅い。
能力の補足の説明としてはこんなところです。
次回主人公がどこに行くのかは内緒です。