悪魔と相乗りする勇気 ★
side?
それは築城金男がセラフォルー・レヴィアタン……否、セラフォルー・シトリーの洗脳に成功してすぐの事だった。
「はーい、それじゃあ収録始めまーす! セラフォルー様、準備は宜しいですか?」
「はい☆今日もバッチリお願いしますね監督さん♪」
その日、セラフォルーはいつも通りの高いテンションで自分が主演のテレビ番組の収録に来ていた。番組の裏方であるスタッフも全員揃っていて今日は一段と撮影が成功すると監督は確信していた。
脚本家もここに来て台本の文字だけでは伝わらない細かい仕草、キャストのアドリブの合否などを判断する為にこの場にいた。
そして、その撮影が始まった…………いつも通り、監督や脚本家などが適度な激励を飛ばしつつ撮影は順調に進んでいた。
だが……撮影中、一人のスタッフがとある言葉を口にした。
「なぁ…………セラフォルー様、今日下着付けてるか…………?」
「…………お、お前は一体何を言ってるんだ…………魔王様に向かってお前……下手すりゃ侮辱罪だぞ?」
魔王に対する侮辱罪なんて最早かなり昔、新魔王体制になった時に形骸化してるものなので実際は何もないのだがそれでもスタッフの一人が口に出したこの言葉からスタッフ全員に動揺の波紋が広がっていく。
『付けている』『付けていない』などの話が撮影中、合間の休憩中でもセラフォルーの耳に入らない様にしながらも言われ始める。
そして、そのままその日の収録は奇妙な興奮の中終わりを迎えた……
「……監督、本当に確認するんですか?」
「なんだかやぶ蛇……どころかヤブを突ついたら天使が出てきたなんて事にならなければいいんですけど……」
その日、疑問に思った事を監督は数人のスタッフと共に確認する事にした。今日撮った分の映像データを試写室で流してノーパンが本当であるかどうかを確認する為だ。
人間界のドラマ収録の場合だとカメラで撮ってる時に異変に気付くものだが、冥界ではこういう派手目な番組はリアリティを上げる為に魔力による自動撮影、そしてセラフォルーには実際に大魔力をぶんまわししてもらってる為にスタッフは離れて見ている事が多い為、試写室で確認する事が多いのだ。
この場にいるスタッフ全員がそれぞれ別の事を考えていた。本当に注意をしようと思ってる者、勝手にコピーしてオカズにしようと思ってる者、隠れて脅して自分の女にしてやろうと思っている者、怒鳴り散らして自重してもらおうと考えている者。様々である。
「それじゃあ……流すぞ」
そして監督は再生ボタンを押した。そして流れ出す今日の分の映像、しかし序盤は何事も無くスムーズに流れていた。
そもそも今日の収録は子供用の番組なのでそんな危ないアングルでは撮らないせいもあって下着が見える事すら少ないのだ。
「…………なんだ、これなら問題無いじゃないですか監督」
「そうですよ、そもそもそんなシーンがあったらテレビ問題どころか魔王としての責任問題にもなりかねないじゃないですか」
しかし、このスタッフ達の言葉はすぐに訂正される事となる。
「ここだっ!!」
スタッフ達の言葉を無視して監督は遂にその映像を見付け一時停止をする。そのシーンを見たスタッフ達は一様に口をあんぐりと開け呆然としてしまっていた。
その映像には『スカートが捲れて生尻が見えてしまっているセラフォルー』がいた。見えているといっても正面からの映像なのでほんの少ししか見えないがもしこれを流してしまった日には魔王としての在り方を冥界中から問われる事になっていただろう。
「こ、これは…………どうしたら、いいんですかね…………」
「…………とりあえず今回は合成で隠す様にして我々も見なかった事にしよう、何、ほんの少し労力が増えるだけだからな……」
「……あの、勘違いかもしれないんですけど……やっぱり服の上からいつもよりハッキリ見えてますよね、乳首のポッチ…………やっぱりそれも隠すんですか……?」
「……あぁ」
番組の制作に当たって彼らがいつも行ってる合成は偶然見えてしまったところへの合成である。それに関してはいつも服の上から若干乳首のポッチが見えてしまっているセラフォルーの格好を微妙に合成で修正して目立たない様にしてきたのだ。
そもそもあの服を提供したのはこちらだからこれに関しては文句は言えない…………が、いつもよりその存在を主張している勃起した乳首や今回見えた生尻に関しては例外である。
合成だってタダじゃない、下手に合成すれば映像とズレてしまうかもしれないからだ。だから丁寧に合成する事は労力を使う事となる。
だが、この映像をどうやってかセラフォルーに向けて脅しの材料に使えないかと考えるスタッフも当然いた。
魔王を蹂躙する事が出来るチャンスだと…………魔王を蹂躙してどうにかして自分だけの『牝』に出来ないかと、画策していた。
「それで? 話ってなんだよ」
映像を見終わった後に、ある程度つるんでいるスタッフ達が集まっていた。彼らは真面目に仕事しているものの全員現在の監督に何かしらの恨みを持った連中ばかりであった。
今回彼らを集めた首謀者もそれを承知でその面子を集めていた。
「……今回の、映像……今は敢えてスルーしておこうと思ってな」
「は? 生尻露出させてる映像だぞ? これ以上ない脅迫の材料になるかもしれねぇのにスルーする必要性がどこにある?」
「まぁ落ち着け、いいか? 今から俺が言う事をよーく聞けよ?
今回のこの映像だけじゃあシラを切られる可能性があるんだよ、履き忘れたは流石に無いだろうが……何かしらの理由で汚れてしまって履くには適さないとかな。そもそも尻だけじゃ脅迫には弱いだろ、今後も履いてないならま○こもその内絶対映るしなぜ履いてないのかも分からん。
だから敢えて映像のコピーだけ取っておいてこれ以降も続く様なら何かしらの裏があると見ていいだろう。因みに、もうコピーは取ってある」
全員を呼び集めたこの男、才能こそあれどその行動や性格を咎められて中々昇進出来ない人物であり、そのせいで監督に殴られている事もあり根に持っている人物である。勿論、それは完全な逆恨みなのだが。
「裏があるってなんだよ、まさか今回のこのノー下着の件にセラフォルーにやれと命令したやつがいるって話か? そういう事なら有り得ねぇだろ、魔王だぞ? 魔王に命令出来るなんてそれこそ大王とかその辺りだろうよ。セラフォルーの親にしてもそんな馬鹿な命令しないだろうしな」
「おいおい、『魔王に命令する奴』って考えるからそういう考えになるんだよ。別の視点で考えろよ、魔王じゃなくて『女に命令できる奴』って考えてみろよ」
「……男ができたってことか? 魔王様に…………それも大分変態の部類の男にかなりご執心になってるレベルって事か?」
「まぁそういうこった、魔王がご執心になる男なんだ……ぶん殴って……あわよくばセラフォルーを奪い取ってもいいかもしれないな」
スタッフルームに置かれているソファに深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべながら今回のお宝映像が入ったディスクをテーブルに滑らせる様に置きながら彼は妄想する。
魔王とまで言われた美少女が自分に向かって尻尾を振り犬の様に彼の肉棒にしゃぶりつく姿を。そして犯されて喜んでいる彼女の姿を…………だが彼は知らないその妄想が直に叶う事を………………
「…………まぁ、本当に偶然が悪い方向へ重なっただけってんなら忘れた頃にでも今回のケツ映像を脅しの材料として出せばいいしな。コピーを取られた時点であの魔王はアホだったって事だ」
「んじゃあしばらくは様子見って事か……ま、確かに男がどれくらいのやつか確認しとかねぇといけねぇしな。俺らより弱いなら殺ったところでそんな奴気にする奴もいねぇだろうしな」
「そういうことだ、んじゃあ解散解散!」
そうやって話が終わり全員が部屋から出ようとして一人が扉に手を掛けようとした瞬間━━━
「こんの……! アホどもがぁ!! 歯を食いしばれぇ!!」
「うごぉっ!?」
勢いよく扉が開かれ、扉近くにいた男達は皆現れた人物に次々殴り飛ばされていく。
その人物は彼らのよく知っている人物であり、ついさっきまでいた彼らの上司…………監督である。
「げっ!? 監督ぅ!? な、何しに来たんすかここに!!」
「お前らがセラフォルー様を侮辱なさっとるのを偶然聞いたんだ!! お前ら!! もう一度言う!! その腐った根性を叩き直してやるわァァ!!」
その後、別段集団だったから打ち勝ったとかは無く……逆に監督一人にボコボコに殴られていた。しかしそれで反省する様な彼らでは無く、寧ろ憎悪を燃やし始める。『何とかしてこの腐れ監督を追い出してやりたい』と考え始めるのだ。
これがこの事務所で起こった最初の混乱…………騒動である。しかしこれ以降最早埋まる事の無い亀裂が出来て水面下での派閥が出来る様になってしまった。
『何も見なかった事にしていつも通りにする派』という欲望を抑えた偽善者達と『脅して無理やりにしてセラフォルーを鳴かせたい派』という欲望に忠実な悪魔らしい後先考えてない小悪党達に。
それから数日後、未だにセラフォルーの脅迫のネタ探しにケツを追っかける小悪党達は収録後にどこかへ出かけるセラフォルーの後を尾けていた。あの混乱の後もセラフォルーは我関せずといった感じで下着を付けないで収録を続けている。あの後監督の采配でスカートが捲くれそうなシーンを極力排除した為か『もしかしたら?』程度のものしか出なくなり偽善者達は段々とその事を忘れるが小悪党達は段々とその欲望を募らせていっていたのだ、あの監督さえいなければ絶対ま○こが映っているはずだという根拠の無い恨みと共に(たしかに監督の采配がなくあのまま撮影を続けていたらセラフォルーのま○こは数日と経たずにスタッフ全員の前に晒されていた)…………
あの後は監督に仕事を減らされた事もあり時間に余裕が出来ていたので彼らはこうやって後を尾ける事も可能になっていた。
欲望を滾らせていた数日間、小悪党達は自慰行為での妄想が全員セラフォルーへと変わっており良くも悪くもセラフォルーに染まっていたのだった。
「おい……あの女どこまで行くんだ……?」
「きっと男のところだろうよ……こんな人気の無いところに来るなんて余程の大物かそれとも俺達みたいなのを恐れてるくらい地位や力が下の奴か……まぁどっちにしろ魔王が一市民を贔屓してるって言いふらすぞって脅せば勝手に従ってくれるだろうよ。弱そうならぶっ飛ばしゃあいいしな」
「まぁ確かにその通りだな」
そうしてしばらくストーカーしている内にセラフォルーは歩みを止めてキョロキョロ辺りを見回し始める。男達は急いで隠れて難を逃れる。
「おーっす、待たせたかセラフォルー。いや待たせても俺は謝らないけどな」
「あ☆ご主人様〜!」
しばらくすると一人の男がセラフォルーに近付くのが見えた。話声もバッチリ聞いており、セラフォルーの事を呼び捨てにしている事に大層驚いたのだ。何せ、隠れて呼び捨てにするならまだしも目の前で堂々と呼び捨てにしているのだ。そしてセラフォルーのご主人様呼びも相まって男達は男の事を彼氏ではなく主導権を握った別の何かだと確信。
しかしセラフォルーの顔にはどうにも嫌そうな表情は見受けられないので彼女も今の境遇を悦んで受け入れている事だと確信する。
「……と言うか、あの男人間じゃね? どう考えても誰かの眷属にゃあ見えねぇんだけど」
「それは俺も思ってた……転生悪魔って感じはしないしどう考えてもただの人間だよな…………どうなってんだ…………?」
小悪党達は困惑していた、何せどう考えてもただの人間でしかない様な男がセラフォルーに『ご主人様』と呼ばれて慕われている事が。
「……まぁ、もしかしたらあの女が人間界に行ってる時に何か洗脳でもされた可能性だってあるし……エクソシストやその類の人間の可能性もある。
けど……こっちだって数がいるんだ……今俺ら全員で攻めたら案外勝てるんじゃねぇか?」
「……そう、だよな。あいつら俺らに気付いてる様子はないしいけるだろう」
小声だが彼に反対するものはおらず、そればかりか全員でやる事が決定付けられた様な空気になっている。集団心理が同調し、全員が出来ると勘違いしてしまったのだ。
「それじゃあ…………あの男を仕留めるぞおおおお!!」
「うおおおおお!!」
「え、何!? 何なの!? 気持ち悪っ!!」
そして驚く男に小悪党達は飛び掛かって━━━
「う…………うぐぅ…………!!」
「つ、つえぇ…………!!」
━━━ボコボコにされていた。
「えー……何なのこいつら……何でこんなところにいる訳? お前後、尾けられてたんじゃねぇのか?」
「そ、そんな事は……………ってあれ……スタッフさん達?」
「え? 何? こいつらお前の知り合いのスタッフなの?」
そして二人はなにか相談を始める。その間、男にボコボコにされた小悪党達はその話を聞く余裕すら与えられずにしばらく呻いていたのだが……
「なぁ、お前……監督候補だったんだよな? 今の監督引き摺り下ろして……自分が監督になりたいんだろ?」
「あ、あぁ……」
彼らの中心となっていた人物、その彼に男は話し掛ける。驚きながらも恐る恐る彼は頷いていく。
そして自分の欲しい答えが返ってきたから満足したのか男は満面の笑みを浮かべながらこう言う。
「この女使って裏物無修正撮ってみろよ、まぁせいぜいネット動画程度に収まるだろうが……お前の腕が良かったら動画の再生数も伸びるだろうし試してみる価値はあるぜ?」
男は……彼に欲望の手伝いをさせる交換条件を出した。それが男の気紛れかどうかは分からない……だが、その願いは彼が自慰行為での妄想で散々望んでいた美しく歪んだ欲望に支配されるには充分な内容だったのだ。
困惑………と言うかこれだと仲違いもいい所でしたね。