※この作品はR-18です。

東方色贄録   作:猫毛布

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前述
主人公は男です。正確に言うならば、男の娘気質の男の子です。


01 終わったセイカツ、始まるセイカツ

 とある里。

 とある郷。

 とある村。

 

 古くからの言い伝えと、不可思議な洞窟。

 

『

 その洞窟には入ってはならない。

 その洞窟からは出てはならない。

 その洞窟には贄(にえ)を捧げなければならない。

 洞窟の贄は村のモノから選ばなくてはならない。

 贄は神により選抜され、証を身体に刻む。

 神より選ばれし贄は、生まれ十度冬を迎えた後に贄として捧げなくてはならない。

 

 

 

 八百万(やおよろず)の神々と幾多(いくた)の妖(あやかし)との契約をここに誓う。

』

 

 コレが、先ほど見せられた古文書らしきモノ。更に言えば、僕という存在が神に選ばれた贄らしい。

 族長である叔父は非常にニンゲンらしく笑んでいる。

 

「…………了承致しました」

 

 古文書らしきモノを返し、額を床につける。彼の顔は見ない。

 叔父の家から出た空は、冬だと言うのに低い空と黒い雲。息を吸えば、冷たい空気が肺に入り込んでくる。

 自宅とも言える小屋までに雨が降ることはないだろうが…雨は嫌いだ。

 

 小屋まで歩く僕の耳にはニンゲン達の声が聞こえる。

 異口同音で喜々とした噂。

 

―ようやくアレが何処かへ消える

―あぁ、とても残念だ

―アレがなくなるのは非常に残念だ

―早く消えてしまえ

―消えろ、消えろ

―ケガレめ、さっさと消えてしまえ

 

 クスクスとした声と一緒に背中から突き刺さる視線。

 いつもと違うのは、手を出してくるニンゲンがいない、という事だろうか。

 言われるもなく、消えてやろう。なんせ僕は、僕なのだから。

 

 開きにくく泥棒の入りにくい扉。風通しのいい壁。太陽と月の見やすい天井。

 この愛すべき自宅とも、どうやらお別れらしい。

 幾つかある本を持って逝っても、大丈夫だろうか。贄に選ばれたのだ、少しぐらいの我侭は許してくれるだろう。

 両親の遺品らしい本の一冊程度、許してくれるだろう。

 

 

 肌寒くなり、開きにくい扉が強引に開けられる。

 

「出ろ」

 

 叔父はそれだけを告げて踵を返した。扉の向こうには松明を持った男達。

 何も考えず、無言の叔父の後ろを歩き、叔父が止まれば、僕も止まる。

 

「ここだ」

 

 叔父は、一言だけそう呟いた。

 叔父が横に移動すれば、隠れていた洞窟が僕の目の前に現れる。

 暗く、野暮ったい、恐らく普通の、装飾もない洞窟。申し訳程度に注連縄(しめなわ)と紙垂(しで)が入口に垂れ下がっている。

 

「贄は贄らしい格好をしろ」

 

 渡された白い布。地面に態々投げ捨てられたモノを拾い上げれば布ではなく、白い着流しだとようやく認識出来た。

 着ている服を脱ぎ、肌を晒し、そして着流しを着る。

 

「おー!!神よ!!この贄を捧げます!!どうか、我ら哀れな人間に幸を!!」

 

 あたかも神に祈るように十字を切り、天に向かい手を合わせる。

 自分の口から出ている白い息と一緒に天を見上げる。冬の空に輝く満月と煌く星達。

 二度ほど白い息を辿ってから、突然水を掛けられる。汚れた身体を清める為、と分かってはいる。が、せめて一言あってもいいんじゃないか?

 持っていた本はずぶ濡れになり、水を掛けていた男の一人が良かれと思い、僕の本を預かった。もちろん、返される事などない。

 

「さぁ!!贄を捧げます!!」

 

 いい加減に飽きた口上。

 ガサリと枯葉を踏んでいた足の裏にヒヤリとした感触が広がる。尖った小石を踏んで、更に足が少しだけ暖かくなるが、すぐに熱が奪われる。

 ペタリ、ペタリと進んで、既に入口の光は見えない。足は冷たいと感じる事を諦めて、小石を踏んだ時に痛い、という感じるだけになった。

 

「けほ……けほ……」

 

 目が痛くなり、思わず踞る。

 ヒヤリとした空気が肌を撫でる。何かが焼けている匂いが歩いて来た方向から漂う。咳が止まらない。

 頭の中で何かを理解して、振り向く事も諦めて、僕は前に進む。

 

 

 

 既に小石を踏んだ事さえわからなくなった。一体、どれほど歩いたのだろうか、それともそれ程歩いてないのだろうか。

 壁に体を凭れさせて、いや、コレは壁なんだろうか?床なのだろうか?平衡感覚も消えて、暗闇で何も見えない。

 震える身体をかき抱いて、湿った着流しを握る。

 

 グラグラとする頭の中、ようやく僕は死ぬんだ、と理解した。理解して、なんとも呆気ない、とも思った。

 見えない視界の中、僕は瞼を下ろし、意識が遠のいていく感覚を実感する。

 出来る事ならば、次の意識浮上は来世と呼べる場所がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました。

 ボゥ……とする頭。白い靄の掛かる視界。

 痛みも、冷たさすらも感じない。死んだ感覚とは、こういうモノなのだろうか。

 きっと、そうなんだろう。

 

 だから靄の中、日傘を差し洋服を着た人に、あのニンゲンを皮肉ってこう言ってしまう。

 

「―――アナタが僕を食べる妖怪さん?」

 

 出された声はか細く、意味も八つ当たりに近い、さらに言うなら意識も絶え絶えである。

 重い瞼に身を任せて、もう一度意識を沈める。

 来世では嫌われなきよう、頑張ってくれたまへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再度、目を覚ました。生憎にも布団の中で。

 

「目を覚ました?」

「…………」

 

 声の方向、隣を見れば赤い瞳、緑の髪、そして肌色。ニッコリと笑っている、女性。

 布団に隠れていて分からないが、恐らく僕は裸体なのだろう。彼女の後ろにある椅子の背凭れに見覚えのある白い布が垂れ下がっている。

 

「熱は……下がったわね。気分は?」

「……普通」

「そう。で、なんで向日葵畑に落ちてきたのかしら?」

「……単なる生贄」

 

 無表情で淡々と言う僕に対して、彼女は眉間を寄せて顎に手を置き、溜め息を吐く。

 

「へぇ。じゃあ、また人間が落ちてくるのね…」

「……ないと思う」

「あら?生贄なんでしょう?」

「嘘で捧げられた生贄だから」

「ならよかった」

 

 ニッコリと笑い、顎に置かれていた手が僕の頬を滑る。細い指が鼻から唇に、まるで愛おしい相手にするモノの様に。

 そして顎を伝い、喉に手の平が触れる。何度も体験した、自分が絶対的優位状態であり、相手へのサイン。

 ニッコリと笑った口と、薄らと開かれた瞼。真っ赤な瞳がコチラを見つめる。

 

 捕食者が愛しい餌を嫐る様に、首を触れていた手に少しだけ力が加えられる。

 ゆっくり、ゆっくりと呼吸が難しくなり、浅い息を何度も繰り返す。

 

「怯えないのね」

「……」

 

 僕は答えない。応えられない、というのが正しいのだけれど、応えれる状態であれ、答えることはなかっただろう。

 さらに力が加えられて、息苦しさと共に痛さが増していく。

 チクリと首に鋭い痛みを感じて、僕の喉は突然解放される。

 

「けほ…ッ、…」

「……」

 

 彼女は先程まで僕の生死を文字通り握っていた手を見つめていた。指先に付いた、僅かな赤色。

 まじまじと、その赤色を見てから指先を自身の口に近づけて舌で舐めとる。

 先ほどまでの加虐的な嗤いが更に強くなる。

 

「……美味しい…」

 

 ニヤリと、口角を上げた彼女が僕に顔を寄せて耳元で囁く。

 熱っぽく、艶の含んだ声と息。耳に鋭い痛みが走り、そしてヌルりと熱い何かが耳朶を這う。

 ヂュ、という水気の多い音が大音量で耳に響き、彼女の熱っぽい息が離れていく。

 ようやく見えた彼女の顔は、少しだけ赤らんでいて、潤んだ瞳が更に歪む。もちろん、加虐的に。

 

「美味しいわ……どうしてこんなに美味しいのかしら?」

「…………」

 

 僕が知ったことではない。

 バサリと布団が剥がれ、少しだけ冷たい風が僕の体を撫でる。

 

「抵抗、しないわよね」

 

 問いとも言えない言葉だったけれど、僕はコクリと頷く。問いがなんであれ、僕に否定する権利などない。重々に承知している事だ。

 そんな答えとも言えない応え方に、彼女は更に口角をあげて顔を歪める。

 爪を立てて僕の肌を這う手、手を這わせた所を熱く湿った舌が舐めとる。

 

「…っ、ン……」

「感じてるのかしら?犯されているのに?フフッ」

「ッ、んッ……ァッ」

 

 軽く裂けているであろう肌を触られ、背筋にゾクゾクと快感が走る。

 だんだんと声が抑えられなくなる。が、顔は無表情を貫く。貫く、というか、既に癖になってしまっている事だ。

 

「いいわぁ、感じていても無表情を貫こうとするその顔……」

「ンッ……はぅ、アァ」

「だからこそ、啼かせたくなるッ!!」

 

 クスクスと楽しそうに嗤う彼女。そんな声が耳を打ち、手は徐々に下腹部に迫る。

 抑えようと腕を下に伸ばせば、その両腕を片手で絡め取られて頭の上に抑えられた。間近で見る彼女の顔は嗜虐的に歪んでいて、潤んだ真っ赤な瞳が楽しそうにダラシない顔をした僕を映し出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三度、目を覚ます。

 いつの間にか意識を落としてしまったらしい僕。隣には誰もいない。

 布団から出て気怠い体をどうにか動かして、椅子から着流しを奪う。

 

 恐らく一つしか無いであろう扉を開けば、フワリと花の香りが鼻を刺激する。

 眩しくて細めた視界には、黄色い景色。一面に広がる黄色、ソレを支える緑色。

 太陽に向かって、自らを誇り、胸を張るように、垂直に並ぶ向日葵達。

 

「あら、逃げるのかしら?」

「………」

 

 いつの間にか隣にいた彼女が声をかける。

 向日葵に目を奪われている僕は、そんな声に首を軽く横に振るだけの否定をして呆然と向日葵を見続ける。

 

「家事はできるかしら?」

「一応」

「ならココにいなさい」

 

 提案、などではなく命令。僕に拒否権などない。今に始まったことでは無く、昔からだ。

 所詮十年しか生きていないモノの考えなのだけど。

 ようやく向日葵から目を離し、彼女の顔を見上げる。チェックの上着とスカート。緑色の髪と真っ赤な瞳。

 

「風見幽香よ」

「…………レン」

 

 そんな、僕よりも背が高い風見幽香を見上げながら、僕の生活は激変する事になる。

 加えて、僕らの生活が始まった。




後述

作者です。開いていただき感謝です。
過去に書いていたモノの改正モノです。完結していなかったので、コチラで書こうと思います。
完結までお付き合い頂けると、ありがたいです…。
エロ要素は大体今回な感じです。私のレベルが上がれば、どうにかできそうですが……。

シリアス7割、三割無駄、そしてほんのりギャグとほのぼのが隠し味程度に入ってます。

主人公に関して。
可愛い男の子が書きたかったんだよ!!悪かったな!!

( 猫)<ゆうかりん可愛いよゆうかりん
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