で視点移動
誤字訂正
芽を覚ます→目を覚ます
二週間程しか経過→二週間程経過
2013/03/06訂正
2013/05/17
視点移動を
◆◆→~~
へ変更。理由は活動報告にて
目が覚めた。
目の前には緑色の髪、真っ赤な瞳は長い睫毛の付いた瞼によって隠れている。
静かに上下する胸と聞こえにくい寝息を確認して布団と腕の拘束から逃れる。
細い腕のどこにそんな力があるのだろうか…平然と僕を抱き上げたり、拘束したり、いや、ダメだ、思考が変な方向に暴走している。
頭を何度か振って、どうにか思考を朝に戻す。夏の気候、といってもまだ肌寒い朝だ。流石に肌を晒していると寒い。
相変わらず椅子に掛けられた白い着流しを奪って外へ出る。
出迎えてくれた向日葵達はまだ眠っている様だ。日が昇れば、また自己を誇る様に胸を張り出すだろう。
近くにある井戸から水を組み上げて、頭から被る。冷たい水が少し熱っぽい頭を冷やして、ナニかと汗が乾いて張り付いて、赤い線がいくつか走る肌を滑り落ちていく。
髪の先から水滴が落ちて、地面に出来た水溜まりに波紋を作る。
ポタリ、ポタリと四滴ほど見送ってから、息を吐く。どうしようもなく、熱っぽい頭がようやく通常運転を再開した。
昨晩の情事から始まり、反省点を頭に書き込んで、今のやること、そして朝食まで考えてから思い出す。
「あぁ、まずは草を抜かないと……」
そう、向日葵達が起床する前に、足元で栄養を奪っている草たちを保護してやらなければいけない。
着流しに腕を通してフラフラと移動する。
向日葵達の足元にひょっこりと芽を出している若草達。尤も、彼らは向日葵達の栄養を横取りしている不届きモノらしいので、早々にここから退去してもらう。
優しく土を少し削り、若草を根から引き抜く。少しでも残るとまたココに戻ってきてしまうし、傷つけるのは本意ではない。
ある程度保護して、近くの茂みの中に植えなおす。彼らならばここでも生きていけるだろう。幽香に知られた時どうなるかは知らないが……まぁ植物好きの彼女だからどうもこうもしないだろうけれど。
何度か草達の移動をして、ようやく日が顔を出し始めた。うっすらと出ている汗を拭って、向日葵達が起きる前に主を起こさなくてはいけない。
少し急ぎ足で家に戻って、シーツに包まれている緑の髪を目指す。
身体を少しだけ揺らして声を掛ければ目を覚ます筈だ。
「幽香、朝」
「んぅ……レン…?」
「朝」
こちらにスルスルと伸びてくる白い手をパシンと払ってベッドから遠ざかる。
手に捕まえられて、そのままベッドへと拘束されたのはまだ新しい記憶だ。
目も覚めたことを確認したので朝食を作ろう。
前掛けをして、キッチンに立っていれば後ろからキュッと抱きしめられた。
「危ない」
「んー……」
「危ない」
「んー……」
手に持った包丁を少しだけ強くまな板に叩きつける。
「危ない」
「……もう少し可愛いエプロンでも買おうかしら」
「ソレで抱きつかれる事がなくなるなら」
「いや、でも白いエプロンでも……裸エプロン…いや、それでも……」
何かブツブツと言い出した幽香は椅子に座ってコチラを見ている。正直、何を言ってるかは分からないけれど、その、裸エプロンを着た時点で幽香はきっと抱きつく事をやめないと思う。
まぁ、いつもの事なのでいいとしよう。
僕が幽香に拾われてから、たぶん二週間程経過した。
前半の一週間は、ドロドロになってしまう程に交わった。朝も、昼も、夜も、時間なんて関係なく。たぶん、と言ったのはこの期間で僕が何度も気を飛ばしていたからだ。
気を失っていた僕とは違って、幽香は外出していた様だけど。
凡そ、二週間という時でようやく一日の日常が決まりつつある。
朝は幽香を起こし、昼になるとフラリと幽香は何処かへ行ってしまい、夜には文字通り食べられている。
幽香曰く、『妖怪なら誰もが求める味』をしているらしい。ここで幽香が妖怪だと知ったのは余談。
この世界、幻想郷と呼ばれる世界での力関係上、上から数える方が早い幽香……自分で言っていた事だが、その名前の御蔭でこの向日葵畑にいる限りは他の妖怪が来る事はないらしい。
敷地から出ればわからないと言われたけれど。
ともあれ、昼時の今。暇を持て余している僕は持っている暇、ではなくて本をパタンと閉じて、棚へと戻す。
元々行動に制限がかかっていた僕が既に日課とも言える様になった読書。どうやらこの世界でも出来る様で安心している。
尤も、文字を追うだけの読書を読書と言えるのだろうか。ただの知識の暴食、いや、感情の冒涜、とでも言おうか。
そんな、どうでもいい事を考えていれば、コンコン、と木製のドアが叩かれる音が家に響いた。
考え事はその音によって消されて、意識がそちらに向く。
客人?と思考が動いて、言伝なら聞かなければ……と思考が動き、ドアノブを回し、少しだけ扉を開いた。
「どうもこんにちは。文々。新聞、記者の
ニッコリとした顔でツラツラと出てくる言葉。どうしてか、頭の中で幽香にごめんなさいしている。新聞の勧誘は断ったほうがいいのだろうか…でも読める物をもらえるというのは、けれども、いやしかし。
「こちらには撮影許可をもらいにきました。新聞の勧誘ではありませんよ?」
よかった。いや、よかったのだろうか。
少しだけ複雑な気持ちになりながら、撮影許可、という言葉が引っかかる。
撮影…ならば、向日葵なのだろうけれど。僕に彼らを被写体にしていいか、という許可を出す権限などはない。
待たせるのも悪い、断ろうとしても僕が言いくるめられる可能性の方が高いと思う。かと言って、幽香の家に押し入られる、というのも……。
「もしよければ、そこの椅子をお借りしてもよろしいですか?」
彼女が目を向けているのは、恐らく家のそばにある椅子。外でお茶を飲む時に幽香が使っていた物だ。
あの場所ならばいいだろう……たぶん。
コクリと首を縦に動かして、扉が閉められる。そして外で鳴る木が少し軋む音。
お茶を淹れる程度…するべきなのだろうか。
パタパタとお茶を入れて、扉を開ければ相変わらず向日葵達が背筋を伸ばしている。
首を横に動かせば、先程の女性が椅子に背筋を伸ばして座っている。
その伸びている背中には黒い翼。
「?」
「あやや、これはどうも」
持っていたお茶を渡して、また彼女の背中に視線が行く。
人だと思ったのだけれど、
「ん?あぁ、私は烏天狗なんですよ」
「なるほど」
ようやく納得する。パタパタと翼を動かされて証明もされた。
烏天狗…といえば妖怪だった筈。危ない……という事もないだろう。血も出てないし。
「ところでアナタは?」
「レン、人間」
「あやや、人間さんでしたか……人間にしては」
「?」
「いえ、何でもありませんよ。改めまして、射命丸文です」
笑顔の顔に手を伸ばしている彼女。握手すべきなのだろう……。
かしげた首を戻して彼女の手を恐る恐る握る。
少しだけ彼女が握る力を強くした、と思う。気のせいかもしれない。
「しかし、どうして人間が風見幽香の所に?」
「……」
「いえ、スイマセン」
カラリと笑ってごまかす射命丸文。個人情報に当たるのだから、質問を取りやめたのだろう。
幽香のところにいる理由…。なんだろうか……行動を考えれば付き人や嫁…いや、性別的には婿なのだけれど、そういった関係ではない……あぁ、なんだ、いい言葉があるじゃないか。
「幽香の餌」
「餌……ですか」
烏天狗はやや顔を顰める。自虐にでも聞こえたのだろうか。無表情で行っているから尚の事自虐に聞こえるだろうし。
自虐でもなんでもなく、事実なのだけれど。
「うーん、ソレにしてもただ待つというのも疲れますね」
「……」
「出来れば話し相手がほしいのですが」
「僕でよければ」
「ありがとうございます」
片や無表情、片やとても笑顔を貼り付けて。
烏天狗の対面にある椅子に腰掛けて、彼女の口が開くのを待とう。
~~
私は話をする。
目の前にいる少年が幻想郷について知りたい、と言ってくれた事を理由にして彼に向かって口を開いている。
こういう時に普段は無駄に回る舌が非常にありがたい。あった事を盛りに盛って語る。
語ったところで彼は無表情で話を聞いている訳なのだけど。
少し視線を下げれば、着流しの間から見える病的に白い肌。その肌に残る青い痕と複数の細く赤い傷痕。
ゾクリと背筋に何かが走って、頭に警鐘が鳴り響く。危険、というモノではなくて彼を求めろと本能がうるさいのだ。
そんな本能を隠すためによく回る舌が仕事をしているのだけれど、深い黒色の瞳から目が私をずっと見ているし、私は覗く肌にゾクゾクしている。
その瑞々しい唇はどれ程柔らかいのだろう。
その喉からはどれ程甘い声を奏でてくれるのだろう。
流れる血液の味はどれ程甘美なのだろう。
無表情が崩れたとき、蕩けきった顔はどれ程私を狂わせてくれるのだろう。
ダメだ、これ以上いたら、確実に人間を一人殺してしまう。一度だけのご褒美よりも、何度も味わえる報酬の方がいい。いいに決まってる。
落ち着け、落ち着いてここから離れよう。
「おっと、すいません。そろそろお暇させていただきます」
「……撮影許可は?」
彼と会う為にテキトウに立てた建前が少しだけ厄介に思う。これならばいっそ新聞勧誘でも良かったのでは?いや、門前払いは勘弁してほしい。
少しだけ頭を動かして、テキトウな理由を作り出す。
どうすれば彼を犯せるだろう。いや、違う、こっちじゃない。
「ソレは風見幽香さんを探してまた伝えますよ」
「そう」
建前、と言っても、これ程淡々と返されると流石に気落ちする。まぁソレがいいんですけど。
そうやって、冷たい態度を取られると、甘えた時のギャップがですね…。
「お茶ご馳走様です。美味しかったですよ」
「お粗末さま……また、話を聴かせてくれる?」
「えぇ、それはもちろん!!」
アチラからの誘いに明らかに隠しきれなかった歓喜の気持ちを少し抑えて話す。
これで次は余計な建前なんていらない。
「待ってる、文」
……いっそ攫ってしまっても、いや待て、まずは情報操作をして私の責任の消してしまうところから…ゴニョゴニョ。