中華料理→韓国料理
報告感謝です。
七色の人形遣いはまだ出てこない。
グロ注意
と入れるのを忘れていましたごめんなさい。許してください。なんでもry
雨だった。確かに、その日は雨だった。
頭を打つ雫も、頬に流れる熱い水滴も、しっかりと覚えている。
膝を着いて、綺麗な着物を泥で汚して、空に向かって叫んでいた。
意味も無く、意図も無く、ただただ叫んでいただけなのだ。
目の前には、凡そ何か解らない物体達。
けれど、僕にはわかってしまった。僕だからわかってしまった。
頭を撫でてくれた手が。左手に簡素な指輪をしていた手が。ただ直感的に、頭の中に叩きつけられた。
顔が潰されていても。
僕の着物と似たような着物を着た女性が裸に剥かれてようと。
ソレに寄り添うグチャグチャになった赤黒い何かがあろうとも。
女性の脚がもがれてようが。
まるで当て付けの様に、二人分の左手がそこに転がっていて、同じ指輪をしていたのだから。
僕を打ち付けていた雨が止んだ。
番傘を持ったあの人が居た。
あの日から、僕は変わった…………。
いや、変わらざるを得なかった。
目を開いた。
目の前には真っ赤な瞳が覗いていて、幼くも端整な顔がそこにあった。
しっかりと僕を映していた瞳は彼女がニパッと笑うと同時に瞼で僕を消した。
「おはよう、レン」
「……おはよう、フランドール」
「フランでいいよ?」
「…………おはよう、フラン」
「うん。ごめんね」
謝られた。朦朧とした頭を動かして理由を探るけれど、見つからない。僕はわからないけれど、フランの謝罪を受け取った。
僕が何も答えなかったからだろうか、フランは次第に泣きそうな顔になっていく。かと言って、僕は何かを応えれる訳でもない。
誤魔化すように、彼女の頬を撫でて、『むにぃ』と抓ってみた。おかしな顔だった。
「
「………………ふふ」
思わず出てしまった笑いを隠す事も出来ず、僕は口を抑えてそっぽを向くことにする。フランに背を向ける形で体を動かせば、お燐が居た。その横に十六夜咲夜が控えていた。
お燐は溜め息を吐き出して、十六夜咲夜は鼻血を出していた。いや、出していなかった。見間違いのようだ。
「レン……何かいう言葉はあるかい?」
「…………おはよう?」
「あぁ、おはよう。……ハぁ、自覚は無しかい」
「?」
「いんや、いいよ。わかってた事だし。いや、わからない事なんだけどさ」
少し怒っていたらしいお燐は溜め息を吐き出した。怒っていた顔は今は呆れで染められている。
半身を上げて、伸びをする。少しだけ痛む首筋に手をやれば包帯が巻かれていた。どうやら処置は終わっているようだ。
「いたい……?」
「痛くない」
フランが心配そうな声を出して僕に聞いた。僕は当然の様に応えた。当然なのだから、応えた。
フランはどうしてか視線を下に向けて、僕の顔を見ようともしない。そんなフランの頬に手を添えて、顔を上げる。
「レン?」
「…………」
僕は何も言わずに、ただ彼女の顔を持ち上げた。
頬を撫でて、また『むにぃ』とフランの頬を抓った。今度は両方である。
次は、笑わなかった。笑わずに、ただ微笑みを貼り付けた。笑いを堪えていたと言えば、それまでである。
「…………大丈夫」
そう、一言だけ呟く。
フランは泣きそうな顔を、僕が抓ってすこし可笑しな事になっている顔を、笑みに塗り替えた。
「ありがとう……レン」
まるで太陽の様に明るい笑顔で、彼女はそう言った。もちろん、皮肉ではない。
時間が朝へと変わり、眠そうなフランは当然の様に僕を抱き枕に所望した。僕は当然了承したのだけれど、十六夜咲夜がソレを止めていた。僕はお燐に止められていた。
フランに言い聞かせるように説得をする十六夜咲夜と溜め息混じりに僕を正座させて説教をするお燐。
僕とフランは目を合わせて、思わず苦笑してしまった。
ともあれ、フランは一人で寝る事を了承して、僕はフランの部屋から出る事を強制された。
そして、どうしてだか興奮していた十六夜咲夜に連れられて、僕は図書館に戻ってきた。図書館に入る時に十六夜咲夜が親指を立ち上げて拳を握っていた事以外はオカシナ事は無かった。
「あら、生きていたのね」
随分な挨拶で図書館の主は僕を歓迎してくれた。ふわふわと中空に腰掛けたパチュリー・ノーレッジこと『もやし』。フランと話している時に『もやし』の事を話すと思いっきり笑われて、お燐の頬が引き攣いっていた。
ゲラゲラと笑うフランはベッドを叩いて、お燐は改めて僕に
「本人の目の前でその発言をするんじゃないよ」
と言いつけた。結構目が真剣だった。
「どうかしたかしら?」
「…………」
僕は首を横に振って、お燐は安堵か何かの息を吐きだした。
僕は数時間前まで居た場所に戻ろうと足を向ける。
「あぁ、待ちなさいな」
と、二歩程進んだところで、『もやし』に僕の足は止められた。ふわりと僕の後ろから僕の前に飛んで移動した彼女は視線をようやく本から僕に向けた。
「今日は私の客人が来てしまうの」
「…………」
「歓迎はしてないのだけど、来てしまうものは仕方ないわ」
と、溜め息。面倒そうな言い回しだけれど、本当に面倒では無いらしく、少しだけ楽しみにしているのだろう。
「だから、今日だけは少し奥に居てほしいのよ」
「……わかった」
「助かるわ。道案内は……猫が出来るわね」
「まぁ、飽きるほど歩いているからねぇ」
「読む事に飽きなければ大丈夫よ」
「なら私は一生大丈夫にさえ至れないね」
猫は欠伸をしながらそう言った。その言葉に肩を竦めた魔女は溜め息を吐いて、僕に一冊の本を渡す。
中空を移動した本は僕の目の前で止まり、ゆっくりと僕の手に収まった。
「…………?」
「贄……私達の言い方では器に関して書かれた本よ」
「…………そう」
「探していたんでしょう?」
「…………」
僕は答えずに、本を近くの机に置いた。
パチュリー・ノーレッジの言葉通り、正しくソレを探していた、という話だ。今は読む事はしない。
贄の在り方なんて、つい先ほど体験したばかりなのだから、ソレでいいのだ。僕にとって、僕はそれだけでしかない。
踵を返して、僕はお燐と一緒に図書館の奥へと向かう。仄暗い世界と埃まみれの空気が僕を飲み込んでいく。
「いいのかい? アレを読まなくて」
「…………いい」
「そうかい。なら何も言わないさ」
隣に歩くお燐はいつもの様に溜め息を吐くことは無かった。代わりに僕の頭を撫でた。
遠くで爆発音が聞こえて目を覚ます。
積み上げた本が僕が起きる事で崩れ、僕を中心にして広がった。
寝ぼけた視界と相変わらず明るい光源。その下でお燐が歩いて寄る。
「あぁ、目が覚めたのかい」
「……ん」
「
「…………」
霧雨魔理沙。文曰く、普通の魔法使いで異変の解決者の一人であるらしい。尤も文は彼女の事を『野次馬根性の強い魔法使い』とも愚痴っていたけれど。
お燐の言葉に頷いて、僕は崩れていた本を一冊取り、また本を読み始める。
そんな僕を見て、安心したのか、それとも呆れたのか、やはりお燐は溜め息を吐き出して爆発音のする方へと向かった。
お燐曰く、僕は突然眠ってしまうらしい。そして眠れば何をしても起きないらしい。それこそ、指を噛んでも起きなかったと言われた。
本で得た知識を噛み砕く作業に必死で眠るのだろう、と『もやし』に言われ、お燐は何処か納得していた。
僕にとっては眠っている時間の話なので、至極どうでもいい話だった。
僕は思わず溜め息を吐きだした。それはもう、お燐の様に呆れてモノも言えない、という風に吐きだした。
目が覚めた時に最初に見たのは、よくわからない部屋の中だった。寝呆けた眼を擦りながら、周りを見渡す。
本棚に溢れた本。床に積み上げられた本と、フラスコ?そして、色とりどりのキノコ。ツバが広く黒い三角帽子。使い古した箒。
ガチャガチャと何かを探る音がして、その音の方を向けば白黒の服を着たニンゲンが居た。金色の髪を垂れ下げて、何かに気がついた様にコチラを振り返った。
目が合う。
数秒固まったようにコチラを見たニンゲンはニパッと屈託のない笑顔をコチラに向けた。
「おぉ、生きてたんだぜ」
全く動かないから、人形かと思った。と付け加えられたその言葉に僕はどうすることも出来なかった。
そんな僕は当然のように放置して、彼女は当たり前のように名乗った。
「私の名前は霧雨魔理沙。見ての通り、普通の魔法使いだぜ」
「……レン」
反射的に名乗った僕を見て、霧雨魔理沙はやはりニパッと笑いながら僕を見続けた。
「いやぁ、埃臭い所で横たわってる人形があったら持って帰ったら人間とは驚いたんだぜ……」
「…………本」
「ん? あぁ、パチュリーのとこから借りてるんだぜ」
「……借りてる?」
「一生借りてるだけだぜ」
あそこは貸出もしているのか、と思った後に思考を否定した。それは借りる、という動作ではない。盗むという行為だ。いや、一生を終えて返すのだから、借りるで合っているのだろうか。
どうでもいい。
「しっかし、困ったな……パチュリーのモノを盗んじまったぜ」
「…………本は?」
「本は借りてるだけだぜ?」
「…………そう」
僕は言及するのを諦めた。
そんな僕を見て、少しだけ眉間を寄せた霧雨魔理沙は、あぁそうだ。と何か思いついたように拳を手のひらに置いた。
「こういう時は
「…………れいむ……はくれい、れいむ?」
「そう、知ってるのか? ならやっぱり霊夢のところだぜ!」
掛けてあった三角帽をひったくる様に掴み、右手に箒、左手に僕の腕を掴んで外へと出た霧雨魔理沙。
扉を出た先は、鬱蒼と生い茂った森の中で、ぽっかりと家の周りだけ木が生えてなかった。
箒に跨り、三角帽を被り直した彼女を見て、思わず「おぉ」と声を出してしまう。図書館で読んだ魔女そのものだったからだ。
そんな声を聞いて魔法使いは得意げな顔をして、ニッと歯を見せた。
~~
上空。空。風が当たるのを感じながら、飛翔する。
三日、そう、三日だ。非常に長くツライ三日を過ごした。この三日を私は忘れる事は無いだろう。
すっかりレンさんを抱きしめて眠る事に慣れてしまった私は一日目にして枕を涙で濡らした。二日目にはレンさんの服を枕にする事を学び、目が覚めると虚無感と罪悪感を得た。
別に、罪悪感を得た理由が、レンさんの匂いを“使ってしまった”から、という理由では無い。決して、断じて、私はそんな事はしていない。こう、あれだ、手が勝手に私を慰めてしまったのだ。
“どうしてだか濡れてしまっていた”レンさんの着流しと同じく“どうしてだか濡れてしまった”自身のショーツを洗った、なんて事実は無い。神奈子様に見られて溜め息を吐かれたなんて事も一切無かった。私の記憶ではそうなっている。
そんな、在った現実を非常にリアリティのある想像に置き換えて、我慢していた感情を発散する為に私は飛んでいる。ただ、抱きしめたい。肺一杯に彼の匂いを取り込んで、眠りたい。
きっと彼には安眠作用があるのだ。まさに安眠枕。一家に一台。いや、守矢神社だけにあればいい。
実際は夕方辺りに迎えに行くつもりだったのだけど、はやる気持ちを抑えられずに私は紅魔館へと到着した。
太陽は真上に位置している。
「こんにちはー、レンさんを迎えに来ました」
「あ……東風谷さん……あー、えっとですね」
「?」
心底困ったように美鈴さんが髪を掻いている。私は小首を傾げて、何があったのか言うのを待つ。
「いいですか、落ち着いて聞いてください」
「なんですか? 勿体ぶって……まさか、告は」
「レンさんが攫われました」
私の思考が止まった。同時に泣きながら何者かに攫われるレンさんを想像して、とりあえずお姫様のような格好をさせた。悪役は便宜上、韓国料理の名前をした亀でいい。
そんな亀に攫われたお姫様ことレンさんが泣きながら私を呼んでいた。きっとその先ではドレスを破られたレンさんが触手とか亀とかに犯されてしまうのだろう。
うん、いいかもしれない。
いやいや、何を考えている東風谷早苗。しっかり犯されたレンさんを助け出し、そして私に甘えてくるレンさんを想像するのだ。
うん、最高だ。
「あの、東風谷さん?」
「はっ!? …………いえ、で、えーっと、亀に攫われたんですか?」
「かめ?」
「いえ、コチラの話です」
危ない危ない。これではまるで私が危ない人みたいではないか。私は至って健全である。
ようやく冷静で緻密に計算された愚かな妄想から帰ってきた私の思考が、今の状況を頑張って理解した。
「レンさんが触られたって……まぁ確かにあのお尻は非常に触り心地がいいですから」
「触られたんじゃなくて、攫われたんだよ」
「あ、お燐さん」
「スマナイね、本当に」
お燐さんは頭を下げて私に謝る。そこでようやく現実を受け入れてなかった頭が冷静に現実を受け止めた。
「……誰に攫われた、とかは?」
「霧雨魔理沙に」
「魔理沙さんですか……うーん、お燐さんはとりあえず神奈子様達に報告だけしてください。たぶん夕方には戻れると思いますから」
「大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよ。侵入者を軽々と通す門番じゃないんですから」
「ぐっ……心が痛い」
「早苗……えっと、怒ってる?」
「オコッテナンカナイデスヨー、ヤダナー」
「ウン! イソイデ神様タチニ伝エテクルヨ!!」
お燐さんはいつもよりも三割増で空を飛んでいった。私は笑顔だ。
どうしてか胸を抑えた美鈴さんに一度だけ会釈をして私はふわりと宙へと舞い上がる。
どうして彼はこれ程厄介事、というべきか何処かへ行ってしまうのだろう。いっその事、首輪でもしてしまおうか……。
いや、待て、首輪をするのなら犬耳も必要だろう。もちろん、垂れ耳である。そしてフサフサの尻尾も付けてしまうおう。あとは……そう、執事服だ。いやいや、違う。メイドかメイドなのだろうか。いっそ裸でも……いいや違う裸は確実に違う。
まずは落ち着いて考えるんだ東風谷早苗。レンさんが和装以外を着るかどうかだ。いっそ和装のままでいいかもしれない。犬耳巫女か……。
「ふむ……よし」
私は何かを決心して、おそらく誘拐犯がいるだろう場所に向かう。返す、という事はしないだろうし、私自身の用事も今しがた出来た。
やはり、袴の色は青よりも赤の犬耳巫女が見たいのだ。
~~
美鈴「魔理沙さんは大変なモノを盗んで行きました……」
早苗「……」
美鈴「アナタの、妹です」
早苗「……はい!」
お燐「おい」