※この作品はR-18です。

東方色贄録   作:猫毛布

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何かといって、いいお姉さんをしている巫女様
発情兎はまた今度で。

喜劇調な文章だからこれ程の更新速度です。

いつもの毛布より、ずっとはやーい!

訂正
別に――、別に――」→別にを一つにしました
感謝です。


33 兎林檎とカゾク

 目が覚めた。

 握っていた筈の手はなくて、何処か空虚を掴んでいる様に、何かを失くした様な感覚が僕に広がった。

 ぼぅっとした思考を溜め息で切り替える。いない事を悲しむ事はない。ソレはいつもの事なのだから。

 

「あ、レンさん。起きたんですね」

「……」

 

 左側から声が聞こえた。顔をズラして見ればソコには淡い緑の髪。手には刃物と林檎。

 ニコッと笑う早苗。目は笑っていない。初めて外出した時に似ている。

 半身を起こして、改めて早苗に向く。

 

「また私に黙って行きましたね? 神奈子様も諏訪子様も知っていたのに……また私だけ」

「……」

 

 本当は神奈子にも諏訪子にもバレない様に出ていくつもりだった。なんて事は口に出さないでおこう。

 ワナワナと刃物の柄を握り締める早苗。きっと早苗にも迷惑を掛けてしまったのだろう。

 

「……ごめん」

「ごめんもお面も無いです! いいですか! 私は絶対許しませんよ!!」

「…………」

 

 フン、と鼻から息を出してそっぽ向いてしまった早苗。どうしよう。早苗が怒っている。それも、とても怒っている。

 どうすればいいのだろう。どうすれば早苗に許してもらえるだろう。

 

「……そんなにオロオロしても私は許しませんからね!」

「……」

「しょんぼりしたってダメです!! 絶対(ぜぇったい)! 許しません!」

「……」

「しかぁし! そんなレンさんにチャンスをあげましょう! さぁ、この犬耳と首輪を装ちゃグァッ」

 

 何かが飛んできて早苗の顔に当たった。コロコロと畳を転がるソレは、竹だった。尖ってもなく、綺麗な切り口のソレがコロコロと転がり、早苗の手元で落ち着いた。

 飛んできた方を見れば、障子に穴が空いていて、穴の先には真っ赤な瞳と深い緑の髪がチラリと見えて、そのあとは光が見えた。

 一体何が起こっているというのか。

 

「うわっ、早苗が死んでる!?」

 

 襖を開けて入ってきたのは不思議な帽子を被った神様だった。

 諏訪子は倒れている早苗を見て驚愕はしていたけれど、数秒して何かを察したのか、それ以上早苗を見ることは無かった。

 

「あー、レン。目が覚めたんだね」

「……諏訪子」

「そうだよー。アナタが置いていった諏訪子さんだよー」

「……ごめん」

「冗談だよ。ま、命に別状がないならいいよ」

 

 溜め息混じりに肩を竦めた諏訪子は水差しに新しく水を入れてきたらしい。

 水差しを僕の近くに置いて、よっこいしょ、と呟きながら隣に座った。

 

「……怒らないの?」

「あー……まぁ、なんというか。 怒るタイミングなのはわかってるんだけどね。今怒っちゃうと……ねぇ」

「……」

 

 どこか遠い所を見るように目を細めて溜め息を吐いた諏訪子。向いた先は障子の向こう側。

 開いた穴からは先程から光が溢れている。

 

「あぁ、そうそう。起きたんだったら暇にもなるでしょ? だから本を色々持ってきたよ」

「……」

 

 まるで僕の意識を障子の外から逸らすように、思い出したように言ってみせた諏訪子。本、という単語で思わず頬が緩んでしまう。

 

「あぁもう、やっぱり可愛いなぁ」

「……?」

「いんや、いいよ。レンはそのままでいいんだよ」

 

 どうしてか満足したように僕を見ている諏訪子。僕にはさっぱりわからないので首を傾げてしまう。

 そんな変な空気は障子が乱暴に開いた音で霧散した。

 

「おい合法ロリ! 私のレンに何してるのよ!」

「諏訪子! 私がレンを賭けてコレと戦ってるってのに何ホッコリした空気を醸し出してんだ!!」

 

 幽香と神奈子の叫びが部屋の中に響く。

 諏訪子は面倒そうに頭を掻いて、溜め息を吐いた。

 

「別に二人が戦ってようが、私には関係ないでしょ」

「いいやあるね!! 私だけに戦わせやがって! 美味しいところは一人占めかい!? そうかい! ミジャクジ様ってのはヒドくがめついね!!」

「いや、なんで神奈子が私を挑発してんのさ」

「別に私はいいわよ。今のうちにその貧相な身体でレンを魅了してなさいな。 貧相なりに頑張りなさい」

「よぉし、わかった、わかったよ。アンタ達は私に喧嘩を売ってる訳だ。つまりそういう事だね? 違ったとしてもどうでもいいよ! 表に出やがれ!!」

「諏訪子が出てないだけじゃない!」

「うっさいガンキャノン!!」

「言いやがったわね!!」

 

 バタバタと外へと繰り出した諏訪子。数秒後には庭が光に埋め尽くされた。フランが見せた弾幕とかいうモノなんだろうけど。この部屋に入ってこない、という事はきっと戯れてるだけなんだろう。たぶん、きっと、うん、そう思おう。

 

「んぅ……イタタタタ……竹?」

「……おはよう」

「あ、おはようございます? ん?」

 

 竹を手に持った早苗が起き上がる。竹を見ながら首を傾げていたけれど、気が付かない方がいいのかもしれない。

 ジィっと竹を見て、思い出すのを諦めたのか畳の上に竹を置いて、改めて林檎を剥いていく。

 

「迷いの竹林ですからねー。飾り切りはウサギ一択ですね!!」

「……おぉ」

 

 しっかりと耳の付いたウサギを模した林檎。生活には一切必要のない切り方だから知らなかったけれど、こういうモノもあるのか。

 八羽の林檎のウサギが皿に並べられる。そしてそれを一羽摘んで早苗はニッコリとコチラを向く。

 

「あーん」

 

 まるで目が輝いている様に非常にいい笑顔だ。早苗の言葉に従って口をなるべく大きく開く。

 そして口の中に入れられる林檎。シャクリと音を立てて、果汁が口の中に広がる。水気のある果肉を砕けば更に濃い果汁が溢れ出て、ソレを飲み込んだ。

 

「うん、いいです。コレ、凄くいいですね!!」

「……」

「いやぁホント、昔からカップルが『あーん』だのなんだのしてるのを見て『××が……爆発しろ』とか思ってましたけど。なるほど、コレはとっても幸せな気持ちが広がります!」

 

 よくわからない事を言っている早苗を無視して僕はお皿からウサギを摘んで咀嚼していく。

 甘い。砂糖みたいな甘さではないけれど、甘いと感じれる。

 

「そんな幸せな気持ちに倍プッシュ!! さぁ今ならウサ耳も準備できてますよ!!」

「……」

 

 どこからともなく取り出した白く長いウサギ耳。また何かが飛んできそうな気がした。

 僕に寄る早苗。ウサギ耳の付いた髪飾りを握り締めていたその姿が、飛来物に当たって消えた。

 

「あぁ、くっそ。あの二人は手加減ってモノを知らないのかい!!」

「……神奈子」

「あぁ、レン。おはよう」

「……下」

「下?おぉう!? 早苗!?どうしたんだい!? 誰にやられた!!」

 

 きっとそれは馬乗りになっている神様だと思う。トドメをさすかのように早苗を揺らす神奈子。どれ程の意思があったのか、早苗は真っ青になりながらもウサギ耳だけは手放さなかった。

 

「あぁ、そうだ」

「ふぎゃ!?」

 

 パッと早苗を持っていた手を放して、コチラを向いた神奈子。畳に落とされた早苗は変な声を上げて動かなくなった。けれどウサギ耳だけはしっかりと握っている。

 

「レン、早苗には怒られたかい?」

「……うん」

「なら、きっとそういう事なんだよ」

「…………」

 

 別れた時のように僕の頭をポンポンと撫でた神奈子。

 そういう事、というのがあの時の言葉を指しているなら、と思うと、ゾッとしてしまった。

 既にあの人は居ないとわかっているけれど、ソレでも、僕はあの日を思い出してしまう。

 そんな僕を知ってか知らずか、神奈子はズイッと僕に顔を寄せて笑う。

 

「少し先の話、アナタは選択を迫られる。それはきっとアナタの人生に関わるモノだ……けれど忘れてはいけない。選んだ先が何であろうが、どれであろうが、私達とは繋がっている。繋がってしまっている」

「……うん」

「……ま、アレだ。変に考えすぎも駄目って事よ」

 

 グシャグシャと僕の髪を乱したあとに神奈子は立ち上がり、溜め息を吐いた。

 僕は自身の頭を触りながら、あの時に声で伝えれなかった言葉を出す。

 

「……ありがとう」

「どういたしまして。まったく、もっと頼ってもいいんだよ」

 

 それはソレ。コレはこれである。

 そんな僕に苦笑して、神奈子はまた庭先に向かった。

 

「何を、しているのかしら?」

 

 いや、向かおうとしていた。

 声が響いたと同時にビクンと肩を揺らした神奈子。まるで首が錆びたように、ぎこちなく声の主を確認している。

 確認すれば、ソコには笑顔の八意永琳がいた。

 笑っている、笑っているのに、それはもう怖かった。

 

「さて、神様。問題です。 ここは何処で、誰が主でしょう?」

「……いや、待て。待つんだヤゴコロ。私は違う、外の二人が」

「二人? 誰の事を言っているのかしら?」

「へ?」

 

 神奈子が外を見れば、そこは言うのも恐ろしい惨状だけが残っていて、光もなければ音もない。

 いつの間にか早苗の姿も消えていた。

 

「アイツ等、私が捕まえてやる!」

「はいストップ」

「デスヨネー」

 

 今にも飛びたたんとする神奈子の肩を片手で抑えた八意永琳。僕からは顔が見えないけれど、きっと変わらぬ笑顔を浮かべているのだろう。

 その笑顔がコチラに向いて、思わず僕も肩を揺らしてしまった。

 

「病人は眠ってなさいな。眠ってる間に終わらせるから」

「ちょっと待て、それだけしか時間を」

「何か言ったかしら?」

「諏訪子ォォォオオオ!! 覚えてやがれぇぇぇえええ!!」

「そんな三下以下の悪役のセリフはいいわ。ほら、早く作業をしなさい」

 

 そんな声が遠くなり、神奈子が八意永琳に連れられて消えていった。

 八意永琳に抵抗するのはやめよう。そう心の奥にしっかりと刻み込んで、僕は八意永琳の言いつけ通りに瞼を落とした。

 

 

 遠くで神奈子の叫びが聞こえた気がしたけれど、いや、きっと幻聴だと思う。布団をしっかり被って眠ろう。




何かと言ったけど、いいお姉さんをしていた変態
××の所には『ク』から始まって『ソ』で終わる、そんな文字が入るんじゃないかなぁ。

チラチラとシリアスっぽい雰囲気が垣間見えているけれど、そんなことは無かった。
ただ単にシリアスっぽく言っているだけであって、一切そんな事はないんです。

>>神奈子様が永琳を呼ぶ時に関して
原作で出てるならそっちに訂正するけれど、苗字読み、というか、神様つながりだったらコッチの方が合ってるんだろうなとか妄想した結果です。
まぁ、面倒なのでテキトウな解釈をして頂ければ。

>>ウサ耳と犬耳の阻止
予定ではもっと先に装着を決めている。相手はまだ出てない。予定は仮定なので、どうなるかは不明。
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