※この作品はR-18です。

東方色贄録   作:猫毛布

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うーん、なんといいますか。文章が行ったり来たりです。
シリアスならシリアスのまま、ギャグならギャグのまま、ってのが中々難しいです。

読みにくくてごめんなさい。

誤字訂正
釘を打つ→釘を刺す

多様な楽しみ方を楽しむ→多様な方法を楽しむ
報告に感謝。


36 姫とスキマ

 目を覚ました。

 いやにスッキリとしている頭と視界。眠った時を思い出そうとしても思い出せない。

 真っ赤な光が二つ、僕の前で揺れていた。僕にはそれが夢か、真か、わからない。

 けれど、思い出そうとすると頭がズキリと感覚を伝える。

 

「あら、起きたのね」

 

 首を動かして隣を見れば、煌びやかな着物を着た輝夜がいた。

 ジッとコチラを見て、少し心配そうな顔をしていた。

 起きた、と言われたのは僕が眠っていたからなのだろう。輝夜が言うのだから、きっとそうだ。

 

「大丈夫かしら?」

「……うん」

「そう、何かオカシイ所は無い?」

「……無い」

 

 自分には何も異常はない。

 その事を確かめたらしい輝夜は「そう」と再度呟いて残念そうに溜め息を吐きだした。

 輝夜が言う様なオカシナ所なんて一切ない。痛む頭もゆっくりと波は引いている。

 輝夜? あれ? 僕はいつから輝夜の事を輝夜と呼ぶようになったんだろう。

 輝夜と伽を交わした覚えも無い。彼女に名を許された覚えも……ない。

 

「どうかしたのかしら?」

「……何も」

 

 輝夜に呼ばれて思考から意識が引き戻される。別にいいじゃないか。輝夜がいるのだから。

 そう結論付けて、意味も無い事を棄てる。

 

「ふむ……じゃぁ私は戻りましょうかね」

「……ん」

 

 輝夜が立ち上がり、いや立ち上がろうとして、中腰で止まる。

 そして視線を下げて、吐息と一緒に笑いを漏らす。

 

「あらあら、放してくれないと行けないわ」

「……」

 

 しっかりと輝夜の裾を掴んでいた僕の手。

 顔が熱くなるのを感じ、握っていたソレをパッと放す。そのまま顔を見られるのを防ぐ為に布団を顔まで上げる。

 

「フフフ、ここに居てもいいのよ?」

「……それは、いい」

「あらあら」

 

 ずっと笑っている輝夜を少しだけ布団を下げて見つめる。ジッと僕を見ていたようで、また愉快そうに笑った輝夜は布団から出ていた僕の髪を撫でて顔を近付けてくる。

 

「おやすみなさい」

 

 耳元で囁かれたその言葉。どうしてか、胸の部分に温かい気持ちが広がり、また顔が熱くなっていく。

 そんな顔を見られない様に、寝返りと一緒に布団を巻き込んで僕は必死で瞼を落とす。

 

 クスクスと笑う声が遠のき、畳を踏みしめる音も遠くなり、襖が開かれ、閉じられた。

 まだバクバクと鼓動を叩く心臓を落ち着けるように深呼吸を繰り返す。

 コレは、一体何?

 

 

~~

 

 襖から出て、まるで至っていつも通りを振る舞い歩く。

 足は徐々に早足となり、後ろを振り返る。彼の部屋からは結構な距離になるはずだ。

 

「――――――っしゃぁ!!」

 

 溢れ出た気持ちが思わず声に出る。しっかりガッツポーズまでしてのけた私は鼻を抑えている。

 キュンってしちゃったよ。キュンって。

 くぅ~!! 疲れました! これにて催眠完結です!!

 

「だって、だって、無表情なショタが私に対しては表情浮かびまくりで顔真っ赤にして布団からチョイ出しよ」

 

 不老不死でもキュン死は適応されるのだろうか。キュン死でリザレクションってのも中々変態的で面白いと思うけれど、きっと違うのだ。

 キュン死で横たわって鼻血を出していたい。そしてあの無表情ショタをアワアワさせたい!!

 

「うっ……ふぅ、落ち着きなさい。落ち着くのよ私」

 

 そう、冷静になるんだ。よく言うだろう、賢者タイムなるモノが必要なのだ。我が月の賢者はバッチリ煩悩まみれという事が証明されていたけれど。

 まだこれは序章なのだ。そう始まり。

 エロゲ的に彼の常識を非常識にしようと思ったけれど、きっとソレは違うのだ。全裸が常識の世界に恥じらいと萌えなど存在しないのだ。チラリズムが最高に決まってる。

 それに、どうしてか催眠の効きが悪かったらしく私や永琳そして今回の功労者への信頼度とか依存度を少し上げるだけで精一杯だった。

 彼自身に対する変化はあまり出来なかった。出来たのは表情を柔らかくする程度だ。意外に自分を保った性格らしい。ブレない、と言った方がいいのか。もしくは最初からブレ過ぎなのか。

 ともかくとして、信頼度を上げて催眠を解いた私は半信半疑だった。もしかして効いていないんじゃないか? とか普通に考えてたし。

 ところがどっこい。催眠は意外にもバッチリだった。それこそ驚く程の効力だった。

 鈴仙、お前の犠牲は無駄にしないぜ!! 私達の冒険はまだ始まったばかりだ!

 何も異常らしい異常がないと言われた時は、本当に残念だった。

 残念過ぎて部屋に戻ってスレ立てをしようとしていた所に裾に違和感。Oh……。

 キュってされてる! キュって!

 しかもソレを指摘してあげたら顔を真っ赤にして布団に隠れるのよ! ワザとだと思ったわよ、えぇ当然ワザとだと思ったわ。

 顔を覗かせて私を確認した彼を見て誰かが囁いた。

 

『逆に考えるんだ、もうワザとだっていいじゃないか』

 

 きっとナイフが死因な誰かは本当にどうかしてたと思う。もちろん、その言葉に従っている今の私もどうかしてる。

 でも、逆に考えるんだ。どうかしちゃってもいいさ、と考えるんだ。

 

「随分なご身分じゃない、輝夜」

「あら、お姫様なんだから当然でしょう? で、そっちはお仕置きは終わったのかしら?」

「私の業界ではご褒美よ」

「あ、そう」

 

 心の中で鈴仙の冥福を祈りながらどこか肌のツヤのいい従者を眺める。どうしてウットリしてるんだろうか、私にはサッパリワカラナイナー。

 キッパリ、ハッキリと言い放ちやがった我が従者はとってもいい笑顔でした。まる。

 

「で、永琳にしては珍しいじゃない。『素』だなんて利用価値の高そうなモノを寝取ら、げふん、手にいれないんて」

「色々と考えがあるのよ……尤も、私の考えではないのだけれど」

「へぇ、じゃぁ誰のかしら?」

 

 私は視線を永琳からズラす。

 空中に真一文字の線が入り、それがクパァと開く。見えた空間には多数の目が存在していて、そこから出てきた金を細くした様な髪の美女。

 

「ねぇ、八雲紫さん?」

「……」

 

 いつもの日傘は何処かへおいてきたのか、手には扇子を持ち、そしてその扇子は開いて口元を隠している。

 閉じられた瞼が上げられ、髪と同色の瞳が露わになる。

 

「月の姫様に呼ばれるだなんて。感謝の極みですわ」

「そんな事どうでもいいのよ、八雲紫」

「あら、そう。面倒な嘘を吐かなくてもよかったのね」

「見て取れる挑発も必要ではないわ」

 

 私は肩を竦めてワザとらしく溜め息を吐きだした。思考を巡らせればある程度の話は出来るけれど、目の前の妖怪や永琳を相手にするには面倒が過ぎる。尤も、あちらが遊んでくれているだけなのだが。

 実際の所、私が挑発されようが侮辱されようが、今はどうでもイイ事なのだ。

 

「さっきの少年がすっごく可愛かったんだけど、録画とかしてないの!?」

「…………」

 

 思いっきり呆れ顔になっている従者なんてそれこそどうでもいいんだ。今、私にはしなくてはいけない交渉があるのだ。

 そのために態々クッソ面倒な言い回しまでして目の前に録画してそうな妖怪を呼んだのだ。

 どうせ今の今まで見ていた筈だ。きっと、いや、絶対に。

 そんな覗き魔妖怪は少しだけキョトンとして、ニヤリ……ではなくてニタリと顔を歪めて、扇子を閉じた。

 

 そして黙って拳を握ってコチラに向けた。親指は天を指している。私も同じ行動をとる。

 

「流石はお姫様。私の出来ない事を平然でやってのけますわ!」

「ええ! そこにシビれて憧れて頂戴!!」

 

 お互いに鼻息を少しだけ荒くしてグヘグヘと笑ってしまう。視界の端で永琳が手を顔に当てて溜め息を吐いている。そのまま「八意永琳が命じる!!」とかやってほしい。

 覗き魔妖怪、否、スキマ様と熱い握手を交わして口を開く。

 

「あの子、頂戴な」

「嫌よ」

 

 ニッコリ。別に貰えるとも思っていなかったけれど、まさかこれ程の返答を貰えるとも思っていなかった。

 交渉なんて更々する気は無かったけれど、こうも即答されると困ってしまう。

 ソレに、わかった事もあるのでソレでよしとしよう。

 

「あらそう残念」

「えぇ残念ね」

 

 肩を竦めてから握っていた手を離す。ヒラヒラと手を振って痛みを逃がしていく。

 相変わらず笑顔で表情を隠して八雲紫を見てコチラも笑んでみる。

 

「ウチにいる間は好きにしてもいいんでしょう?」

「えぇ、手を落とすなり、足を落とすなり、好きにしてもよろしくてよ」

「そんな嗜好は持ち合わせてないわ」

「戯れでされては嫌ですもの」

 

 つまりは、釘を刺された訳か。

 思わず溜め息を吐いてしまう。その溜め息で丁度話し合いという名の一方的な要求は終わった。

 つまり、あとに残るのは、アレだ。

 

「録画は任せたわ」

「えぇ、俯瞰、二者視点、全て完備して、編集して送るわ」

「編集だなんて、そんな面倒な事しなくてもいいのに」

「うちの式にやらせるから大丈夫よ」

 

 流石スキマ様である。お互いにもう一度グッと拳を握って意思表示する。

 そのままスキマに飲まれる様に消えた八雲紫。『I'll be Back』とでも言うのだろうか少しワクワクしてしまった。

 そんな手が完全に消えてから私は溜め息を吐き出す。

 

「残念だったわね、輝夜」

「笑いながら言わないでくれるかしら?」

「これは失礼、姫様」

 

 とか言いながら一切笑いを隠そうとしない従者。別に何処かの戦闘ロボットおなじみの言葉が出なかったから拗ねている訳ではない。

 

「まぁいいわ。彼を巡っての戦いだなんて真っ平ごめんだもの」

「あら随分乗り気だったみたいだけど?」

「それこそ見てる分にはね」

 

 ニコリと笑って、従者に返してやる。二重に意味が掛かってそうだけど、それはそれでいいのだ。

 楽しみは長いほうがいいに決まっている。

 観客にでも、役者にでもなれる舞台なのだ。多様な方法を楽しもう。

 

「あぁ、本当に、残念ね」

 

 そうは言いながらも、やっぱり私の顔は笑みに歪んでいたと思う。




アイエエエ! スキマ!? スキマナンデ!!

贄録の裏舞台をチラリと見せた程度です。まぁこれで分かる人もいるんだから、中々に皆様を騙すというのは難しいモノです。


そういう推理系の感想は受け付けてません。あれです、頭の中で「こうなんだろ?どうなんだよ猫毛布」と留めておいてください。
ネタバレとかそういう理由じゃなくて、私のはぐらかしが中々に滑稽だからに決まってます。
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