いや、待て、よく考えるんだ。意味を求める事はないんだ。意図も求める事は無い。
大変趣がありますね!
目が覚めた。
本を閉じた時には永琳が幽香を帰していたので、今は僕一人だけだ。
揺れる頭を支えて、息を吐き出す。
相変わらず、本を読み過ぎると寝てしまうらしい僕。文章の濁流は今は落ち着き、しっかりと溶け込んでいるとわかる。
もう一度息を吐き出して、ようやく目の前の存在に視線をやる。
月を背中に背負った小さな体躯に布を被せた様な服。黒く短い髪の上にはちょこんと兎の耳が乗せられている。
「やぁ、贄さん」
「……こんにちは?」
「こんにちは」
ニコリとも笑わず、表情はなく冷たい瞳が僕を貫く。どうしてそんな瞳をしているのだろう。
「はっきり、先に言うんだけど。私はアンタらの事が大嫌いだ」
「……」
「勝手に不幸をばら撒いて、勝手に犠牲になって、勝手に死にやがるアンタらが大嫌いだ」
「……」
「おぉっと、謝る事はないよ。どうせ、アンタもそうなんだから」
謝る事すら許してくれない女の子は僕を見て変わらず無表情を貫かれている。
おそらく、贄となって短い僕からすれば彼女の言葉はさっぱりわからない事だ。
「そのくせ……人間に嫌われても幸せそうに笑いやがる」
同じ人間な筈なのに、と少女は付け加えて舌打ちをした。
彼女が何を思って僕にこんな話をしているかは分からないけれど、僕の事を僕と見れているという事はたぶん人ではないのだろう。
僕にはそれだけしか分からない。
「人間な筈なんだ……私はアイツを助けてやりたかっただけなんだけどなぁ……」
「……アイツ?」
「あー……なんでもないよ。昔に蛇如きの贄になりやがった元人間の話さ」
やはり吐き捨てるように言ってのけた兎は言葉のあとに溜め息を吐きだした。
何かを思うように髪を掻いて、一言、スマナイと頭を下げられる。
「別にアンタには関係のない話だったね……さて、初めまして少年、因幡のてゐと名乗らせてもらってるよ」
「……レン」
「そうかい。先にも言ったんだけど。私は贄って存在が大嫌いだ」
「……そう」
「そうさ。なんてたって人間の癖に妖怪や神に尽くしやがるからね」
「……」
「……っと言っても、私も似たようなモンか」
諦めた様に溜め息を吐いた因幡のてゐ。少しだけ目を伏せて、改めて僕の方を向いた。
先程までの無表情はどこへ消えたのか、ニッと歯を見せて困ったように笑った因幡のてゐは言葉を迷う様に、あー、と声を出した。
「まぁ……あれだ、さっきのは忘れておくれ」
「……贄嫌い?」
「そこは覚えておいておくれ」
「……うん」
「まったく……昔の事をズルズルと引き摺って……何百年前の話だってね」
「……何百年?」
「おっと、女の子に年齢を聞くのはタブーだよ」
「……たぶぅ?」
「駄目って事さ。殊更に妖怪って存在は生きた年月を誇ろうとするんだけど、時折自分の年齢を忘れてたり聞かれたくないって事もあるのさ」
「よっこらせっく、っと」と漏らして僕の隣に座った因幡のてゐは僕の事をジッと見た。
顔は笑顔だと言うのに、僕を映し出す瞳に感情は一切篭ってない。
「たぶん、もう遅いと思うけど……妖怪や神様の願いなんて物はあんまり叶えなくてもいいんだよ」
「……?」
「アイツら、自分で出来る癖に出来ないから贄に頼ったり、贄の力を得たいから頼ったり……ともかく、傍目から見てると面倒そうなんだよ」
「……神様、嫌い?」
「嫌いっていうか……苦手だね」
「……そう」
「どうせ無意味だろうけど、心の端にでも置いておいておくれ」
「……うん」
「さて、そろそろ時間切れっぽいし、出て行くかね」
そういって立ち上がった因幡のてゐは来た時と同じように障子を開け、僕に手を振って部屋から消えた。
小首を傾げて時間切れという言葉が引っかかりを覚えた。が、その疑問は直ぐに解けた。
「あ、レン君。ここにてゐ……えっと、ウサ耳つけた女の子来ませんでしたか?」
ひょっこりと襖を開けて顔を覗かせた鈴仙。そんな鈴仙の問いに僕は首を横に振ってしまう。
来たけれど、今しがた出て行った。とも言わない。どうして言わなかったかなんて分からないけれど。
「うーん、まぁそうですよね……何かと言って贄の事毛嫌いしてましたし……うーん、何処に行ったんだろ」
「……どうか、した?」
「あぁ、地上の……いいえ、えっと、兎が少し慌ただしくなってたので」
何かを言うのを止めて、改めて言葉を進めた鈴仙にやはり首を傾げてしまう。
そんな僕を慌てて何もないですよーと取り繕う鈴仙。
鈴仙?
何かの引っかかりを覚えて再度僕を首を傾げる。
「あ、そういえばそろそろお薬の時間ですね。持ってきますから待っててくださいね」
「……うん」
結局何が引っかかったのか分からず、僕は鈴仙に流される様に頷いた。
襖をぴっちりと閉じられて、また部屋が薄らと暗くなる。
障子越しに月明かりが照らし、僕が眠る布団の手前で丁度影と灯りの境界線が見える。
境界、と言えば八雲紫には会っていない。好んで会う様な事はないけれど、顔を見せる程度もしていない。文の話を信じるならば、見られている事は確かだろうけれど。
そんな思考を遮断するように、襖が開かれた。
そこに居たのは鈴仙ではなくて、
「こんばんは、レン」
黒い髪のお姫様だった。
~~
「こんばんは、レン」
私が現れた事に驚いたのか、レンは少しだけキョトンとして私を見つめている。
右手で襖を閉じて、彼に寄る。
左手に持っているのはコップ。中身は白濁とした液体……いや、ドロリとしているから固体なのだろうか。
ともあれ、ゲル状のそれが大量に入ったコップが私の手に握られているのだ。
そのコップの中に右手を差し入れる。人肌よりも少し温かいそれがぬるりと指に纏わり付いて私の指を汚す。
コップから放しても纏わり付いたままのソレ。右手にドロドロとした物を付着させて、私は手をレンに向ける。
「お薬の時間よ。 舐めなさい」
一種の命令。内心、拙いかなぁ……なんて思いつつも、決して表には出さない。
私が近づいたからか、彼は立つ事もせずに四つん這いでコチラに寄り、膝立ちになり、私の腕を掴もうとする。
避ける。
「ダメよ、私の腕を掴んだら。 舌と口だけで舐め取りなさい」
言葉に素直に従う様に彼は手を畳に付けた。私が立っているから、彼は自然と少し上を向く形になり、真っ赤な舌を伸ばして私の指を舐める。
彼の舌の上にドロリとしたゲル状の白濁液が乗る。乗ったと同時に彼は少し眉間にシワを寄せて口を離した。
おそらく、苦いのだろう。
舌に乗せたソレを唾液を溜めて、嚥下した彼はまた私の指へと舌を伸ばす。
中指の先を舐めて、人差し指の中程を舐めて、薬指と小指の間を綺麗に舐めとった。
随分と苦いだろうソレを私の手から全て舐めとった彼は、慣れたように唾液を溜めて嚥下した。
口の中にありません、という風に私に向かって大きく口を開いて証明までしてみせた。
少しだけ、考えてしまう。
そこで、私はようやく気がついた。彼には何かが足りないのだ。恥じらいとか、そういうのではない。決定的な、ソレが足りないのだ。
私は彼に視線を合わせる様に膝を折り曲げ、彼の髪で耳を隠す。黒く少し長い髪は容易く彼の耳を隠す事を成功させた。
そのまま私は見舞い品を漁る。数少ない見舞い品の中からカチューシャを取り出す。カチューシャには三角の耳が二つ程ついている。色は黒。
ソレを彼の頭に装着させて、一歩後ろに下がり、確認。
「レン。にゃぁ、と鳴いてみさなさいな」
「にゃぁ?」
「―――――ッ!!」
我慢する。私は今我慢出来る子になった。きっと今も見ている筈のスキマ妖怪も私と同じ状態だと思う。
録画して!早く!録画するのよ!
きっと今、私と彼女はとても素晴らしい関係で結ばれたと思う。
スキマ様が見てる。
「―――……ふぅ。 さて、薬をもう一度上げるわ」
「……」
「あぁ、そうそう。このカチューシャをしている時の返事は『にゃぁ』か『にゃ』でよろしくね」
「……にゃぁ」
「――――」
もしかして、私は今とても罪深い事をしているのでは無いだろうか。
冷静に考えるんだ。いたいけな少年にこんな白濁液を飲ませながら猫耳カチューシャを付けさして猫語の伝授だ。はっきり言って犯罪者である。
けれど、考えてほしい。こんな可愛い子に猫耳カチューシャをつけない理由があるのだろうか?いや、無い。つまり付ける事は必須、むしろ常識だ。
つまるところ、私の行為は正しい事だ。
薬と偽って、葛湯にニガリを入れたこの液体を指に付けて舐め取らせているこの行為も、至って正常の行いである。
うむ。
という事で、私は右手に再度ドロドロの液体“括弧”葛湯“括弧閉じる”を付着させて、舐め取らせる。
彼は再度同じ様に中指を舐め始める。舐め始めて、
「はぁ、む」
口に含んだ。
熱い彼の口内が私の指を包み、更に熱い舌がまとわりつく。
そのまま吸い付きながら顔を指から放して、ジュルと唾液を吸って、彼は中指から口を放した。
そのまま彼は人差し指にまた吸い付いてくる。
汚れた私の指を綺麗にするように、じっくりと隅々まで、指と指の間までしっかりと舌を這わせてくる。
素晴らしいの一言である。
今も尚私の指を吸っている彼を見下してみる。どうやら私の視線に気がついた様でちゃんと上目遣いでコチラを見上げてくる。
「にゃ?」
「――――――――――――――……………………ふぅ」
長く、辛い、戦いだった。
今、心の中で葛藤が始まっている。
そう、スキマ様に編集済みの映像を渡されるのか、それとも未編集で渡してもらうべきなのか。
非常に悩ましい。
いや、いっそのこと両方もらうのが一番の解決なのではないだろうか。
ともあれ、まるでそれが当然かの様に小指まで舐め取られ、私は人差し指と中指に薬(笑)を付着させる。
そのまま彼に差し出し、二本まとめたそれを当然の様に彼は受け入れて口に含んだ。
内心、抵抗無いのもなぁ……とも思いつつ、ちょっとした悪戯心が湧き上がる。
グイっと、指を更に口の奥へと突き入れる。
「ふぐっ、んぅ!?」
涙目になりながらも私の指を喉奥で締め付けたり、舌でしっかりと舐めている辺り、本当に彼は年齢通りなのかが不安になる。そして、性別が合っているのかも。
こんなに可愛い子が女の子なワケがないじゃないか。
彼の口端から唾液がとろりと溢れ、顎を伝う。指をゆっくりと引き抜けば、私の指と彼の唇の間に銀色の橋がかけられ、私の指はドロリとした白濁液ではなくて、テラテラと透明度の高い唾液に変わっている。
ペロリとそれを舐めて、思い出してしまう。
ヤッベ、レンの体液って私達にとって媚薬じゃん。
道理で指が敏感になっていた訳だ。下腹部がキュンと収縮した感触がした。
いやいや、流石に待て、待つんだ私。今、ここで襲っていいのか? 確かに猫耳は素晴らしい。あぁ、素晴らしいさ。
けれども考えるのよ。彼を襲う事よりも、彼に奉仕させる方が絶対に萌える。コレは確実だ。
深く呼吸をして、どうにか色欲を放り投げる。後で満たしてあげるから、今は待つのよ。
そんな私を見てか、潤んだ瞳で小首をかしげながらも心配そうな顔でコチラを見るレン。
大丈夫だと言ってみると、彼は微笑んで、口を大きく開けた。白濁液は、無い。
「にゃぁ」
彼が猫だったなら、褒めて褒めてと擦り寄ってきているのだろう。いっそ来て欲しい。こいよ。
いやいや、ある意味猫らしいのだからそれでいいじゃないか。
と、兎に角、今は襲わないようにしなくてはいけない!!
姫様との絡みはこんな感じに絡め手……というか、奉仕する形になると思います。
今までは責められるだけだったので、こういう形もいいなぁとか、なんとかかんとか。
ちなみに、輝夜様は薬(笑)がなくなったのを言い訳に部屋から逃げ出します。
レン君を襲わない為にですけどね。
薬(笑)の作成方法
準備するもの。
片栗粉。水。ニガリ。砂糖少し。
片栗粉と砂糖とニガリを入れて水を少し入れます。
残りの水をお湯にして、少しずつ、混ぜながら入れていきます。
葛湯の完成です。これで擬似的に指フェ○とかもできますね!!