またギャグ→シリアス→ギャグな面倒な話。実際、シリアスなのかどうかも私には曖昧です。
要は、認識の違いの話。
目が覚めた。
どうしてか鼻を抑えた輝夜が出て行った所まで記憶は残っている。
頭が締め付けられる感覚がして、手を頭に伸ばせば未だに猫の耳が付いていたらしい。
頭からソレを外して首を横に振る。髪を軽く整えて、手に持った猫耳をジッと見つめる。黒く三角形の耳。そして髪を抑える様に湾曲した留め具。
少しだけ前髪が視界の端にチラつき、ソレを手で掻き上げながら留め具で止めてみる。目の前から髪が消えてよく見える様になった。尤も、片方の視界だけだけど。
「――――あ、わ、わ、わ……」
ガシャン、と硝子細工を落とした様な音が聞こえそちらを見ると、どうしてか狼狽している早苗がいた。そして足元に広がる透明の破片達と水溜まり。
僕の方を指差して、口をパクパクと動かして、そしてそんな自身を落ち着ける様に深呼吸を何度も繰り返し、深い息を最後に一つ吐きだした。
「いいですか、
「りぴぃ、と?」
「そっちじゃない!! でも可愛いからいいです!!」
フンス、フンスと鼻息荒くコチラに顔を寄せてきた早苗に少し引いてしまう。
第一、今の言葉に何の意味があると言うのだろう。言葉を聞いた限りで意味も分からなければ、「な」が連続していただけの言葉だ。
「……ななめななじゅうにゃ、」
舌を噛んでしまう。言葉の意味を聞こうと言い直そうとしていただけなのに。ヒリヒリと痛む舌を少し出して冷やしていると、早苗が急に拳を出して来た。親指は上を向いている。
近頃よく見てしまうこれは一体何なのだろうか。上に何かあると言うのだろうか。上を向いてみてもあるのは天井板の木目だけだ。
「何してるのよ」
「あぁあ、幽香さん見てください!! この愛らしいレンさんを!」
「……」
幽香がコチラを見て少し止まる。そして苦虫を噛み潰した様に眉間にシワを寄せてツカツカと歩いて僕の頭から猫耳を掴み、少し止まってから丁寧に外した。
外れた、という感触を得て垂れ下がる前髪。そして耳鳴り。
バリッ、と紙が破ける様な音を立てていつの間にか障子に穴が空いていた。ぽっかりとだ。
幽香を見れば何かを投げたかの様な格好で止まり、出てもいない額の汗を拭う。
「ふぅ……で、何の話だったかしら?」
とても綺麗な笑顔で何事も無かったかの様に喋りだす幽香。
少しの沈黙。そして早苗が震え出して立ち上がる。
「何やってんですかー!!」
「い、いや……つい」
幽香の胸倉を両手で掴みよって言葉を荒げる早苗。座っている僕からは見えないけれど、きっと憤怒の表情なのだろう。
幽香はどうしてか胸倉を掴まれてても抵抗をせずに気まずそうに顔を背けている。
「つい、でやってイイ事と悪い事があるんですよ!! いいですか! あんな乗り気なレンさんここから先見れるかどうかわからないんですよ!! しかも猫耳ですよ!!猫耳! 別に私だって獣姦とか一切興味もないですけど萌えには興味しかないんですよ!! レンさんが猫耳装着して猫語を喋るとかもはや夢とか理想の話になるんですよ!? ソレを易々と潰してくれやがりましたね!! レンさんが『にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくこにゃくにゃくにゃにゃふんにゃにゃびょうにゃみだをにゃがしてにゃがれてく』なんて聴けるチャンスもう一生ないんですよ!!」
「いや、何を言ってるかさっぱりだけど、そんなに泣かないでよ」
「泣いてなんかいません!」
幽香の言葉は尤もだった。一体いつの間にそんな呪文めいた言葉を言わせるつもりだったのだろう……。僕が呪文を唱えた所で意味はないと言うのに。
泣いているらしい早苗はソレを否定して幽香をグワングワンと揺らしている。何か思うところがあるのか幽香は抵抗らしい抵抗をしていない。
「まぁ捨ててしまった物は仕方ないです……」
「えっと、ありがとう?」
「
「……」
きっとニッコリと笑っているだろう早苗の顔から逸らす様に幽香は顔を横に向けた。
早苗が迫っているけれど、その確認に改めて返事をする事は無かった。
ようやく早苗の手を収める様に胸倉から退かした幽香がニッコリと笑って口を開く。
「私のモノに勝手な事はやめなさい」
「―――は?」
次は早苗が固まった。
立場が逆転したように次は幽香が早苗に顔を寄せていく。顔は笑っている。
「レンは私の所有物よ。勝手に自由に扱わないでもらえるかしら? 第一、アナタ達がレンに取り付いている時点で不愉快だと言うのにソレを許容してやってるのよ? 感謝はされど文句を言われる筋合いはないわ。殺すわよ?」
「……レンさんをモノ扱いしましたね? この子はれっきとした人間です! 物だなんて失礼な事を言わないであげてください!」
「それこそ愚問ね。妖怪と人間如きを同じ扱いにしないでもらえるかしら? 嗤いが
「そんな妖怪にレンさんの面倒を任せる訳にはいけません」
「アナタの了解を得る必要なんてないでしょう、人間」
「あります! なんたって私はレンさんの、……レンさんのお姉さんですからね!」
「あー、えっと、そのいいですかね?」
非常に入り難そうに、躊躇した声が部屋に響く。
二人が睨む様に、僕は至って普通にそちらを向けば面倒そうに、やる気なんて感じられないヘタレた兎耳を頭に装着した鈴仙がソコには居た。
二人の睨みに少しだけ尻込みして、溜め息を吐いた。
「発情兎、何か用?」
「用がないならさっさと出て行ってください」
「私だってそうしたいのは山々なんですがね、まぁ二人とも落ち着いてくださいよ」
「落ち着け? 私は至って冷静よ。目の前にいる人間をぶち殺す算段は既にできているわ」
「あら奇遇ですね。丁度私も目の前の妖怪を滅却する準備が出来たところです」
「あー、もうめんどくさいなぁ」
本当に言葉通りなのか、深い深い溜め息を吐いて頬を指で掻いた鈴仙。持ち直すように改めて息を吐き出して、口を開く。
「大体の話は聞きました。というか、叫ばないでください。 どうしてか二人の叫び声で起こる悪影響が全部私の責任になってるんで、マジでやめてください」
「だ、そうよ人間。口を永遠に閉じて、息も永遠にやめなさいな」
「言われているのはアナタでしょう?」
「あー、はいはい、喧嘩の安売りはいいんですけど、ここじゃない何処かでやってください」
二人の間に入って両手で制する鈴仙。ようやく早苗と幽香の少しの距離が保たれた。鈴仙はやはり面倒そうに肩を落として溜め息を吐いた。
「話の内容は語りませんけど、二人共自分の会話内容を思い出して彼を見てください」
「――――あ」
「……」
二人がようやく思い出したように僕を見つめる。声を出したのは早苗で、幽香はバツの悪そうな顔をして顔を背けた。
そんな二人を確認したのか鈴仙は改めて溜め息を吐いて落として肩を持ち直す。
「その……すいません。カッとなっちゃいました」
「……いいわ、私も少し言いすぎたわ」
「はい、二人はちゃんとレン君に謝って今回の事は終わりです」
「レンさん、ごめんなさい……」
「……ごめんなさい」
どうしてか二人に謝られた。
鈴仙はようやく終わったか、と息を吐き出して障子を見てから再度溜め息を吐きだした。
「第一、なんでレンに猫耳なんか付けてたのよ」
「いえ、私が来た時には既に装着済みだったんで……」
「……なら投げて正解ね」
「何を言ってるんですか! レンさんが猫耳を付けるだなんて、」
「落ち着きなさいな、山の巫女。 レンには犬耳の方が似合うに決まってるじゃない」
「幽香さん、ちょっとお話しましょうか。たぶんきっととても盛り上がりますから」
「ええ、きっと有意義な時間を過ごせると思うわ」
「もうお前らさっさとどっかいけよ」
急に盛り上がりだした二人とその間に挟まれた鈴仙がいつもの敬語も忘れて至極面倒そうにそう言った。
「そういうアナタはどう思うのよ」
「……当然、兎耳に決まってるじゃないですか。出来れば燕尾服も着用させた方が可愛いです」
「ダメね。垂れ犬耳一択ね」
「いいえ、ここは両方捨てがたいところですよ……あっ」
「どうかしたかしら?」
「わかりました。ここはレンさんに直接付けてもらう事で結果をはっきりさせるべきだと思うんですよ」
「……なるほど、一理ありますね」
「山の巫女にしては冴えてるじゃない」
「では幽香さんの了承も得たと言う事で」
「……で、アナタ達三人は病人に何をしようとしているのかしら?」
嬉々としてコチラを向いていた三人の動きがピシリと止まる。まるで時が止まったかのように止まった。
三人共似たような動きで、まるで首が錆び付いたようにゆっくりと後ろを振り返る。そこに居たのは素晴らしい笑顔の永琳だった。
笑顔だと言うのに、怖いと思える何かを背負っていた。
「モウ! オ二人トモ! ケンカはヤメテクダサイネ!」
「そうね……さて、私は花に水をやりにいかないと」
「そういえば私も神奈子様達にお土産を買ってこないと」
「わ、私は、そうだ! てゐを探さないと!」
「呼んだかい?」
「てゐィィイィイイイイイイ!! なんでこんな時に限って出てくるんですか!!」
「いや、鈴仙が呼んだんだろう……珍しく出てきたらこんな言い草だよ、まったく」
「時と場合ってものがあるんですよ!!」
「安心なさいな、優曇華。三人とも説教してあげるから」
「やめてください! ヤメロー!シニタクナーイ!」
「花に水をやりに行かないといけないのよ!?」
「アナタ、この子と花と、どっちが大切なのかしら?」
「フンッ、説教を受けてやってもいいわ。感謝しなさい」
「あーはいはい、じゃぁちょっと別室に行きましょうねー」
ぞろぞろと永琳に連れて行かれる三人。因幡のてゐと一緒にソレを見送りながら、どうしてか分からず首を傾げる。
そんな姿をてゐに見られていたのか、思わず苦笑される。
「ま、あれだ。予定調和ってやつさ」
「……そう」
「尤も、お師匠様に報告したのはあたしだけどね」
含み嗤いをしている因幡のてゐ。口元を隠そうともせずに面白そう、という理由で説教を見に行くらしい。
頭の何処かできっと彼女も説教に巻き込まれるんだろうな、なんて考えつつ僕は近くに積んである本を手に取った。
きっと猫耳で眠ってしまったレン君は布団を抱くようにして丸くなって眠ってたんだと思います。というか作者はそう言ってるんだからきっとそうなんです。今そういう事にしました。作者ってサイコーね!
ゆうかりんが猫耳を捨てた理由
単なる独占欲です。姫様との会話からの猫耳ですから、少しの嫉妬も加えてます。
斜め七十七度~
はただ単に『な』を言わせたいだけなので、別段意味なんてありません。
てゐの一人称
巫山戯ている時はあたし、とかあたしゃ、とか、まぁそんな感じかなぁとか。
シリアス部分では私とかだと思います。いっそ「あたし」で統一した方がいいのかしら。