って書いてればいいって慧音先生に教わった。
ドシリアスにしようと思ったらギャグテイストになった。
ある程度の回収も終わったので、次でレン君を返します
2013/9/19
誤字訂正
モフモフを堪能して数時間。
藍が料理をする、という名目で少し怒りながら去ったのを確認した。その様子に紫はクスクス笑いながら「美味しい夕飯をよろしくね」と軽々しく言ってのけた。
当然、僕も藍に付き従うように移動しようと思ったが、足元に浮遊感を感じ、いつの間にか紫の膝に座っていた。
首を動かして紫を見れば、むふぅ、と鼻から息を出して満足気な顔が見れた。同時に僕の口からは溜め息が出てしまった。
「ダメよ。一応客人なのだから、家主のもてなしは受けてもらわないと」
「……」
「というか、私がこうして抱きつきたいのだから、我慢なさいな」
どうやらソレが本心らしい。実に正直なことだ。
ともあれ、離すつもりが毛頭ないらしい紫に背中を預けて、のんびりと空を見る。青色が広がり、所々に雲が千切れている。
こうして空を見上げるのはいつ以来だろうか。本を読んで過ごしている僕にしては珍しく、それ以前の僕にしては奇跡とも言える時間だ。ただ単に空を見上げる、という行為だけならば腐って落ちる程繰り返したけれど。
「そういえば、この日記なんだけれど」
いつの間にか紫の手に掴まれていた見覚えのある表紙。僕の日記だ。
開けば日記らしくない日記が読めるだけの単なる本だ。
「こうして、アナタに直接会って、藍を嗾けてまで試したのだけど……」
「……」
「いったい
紫は悪戯気な声ではなくて、真剣な声で僕に問うた。
その問いに僕は応える術はない。当然である。その答えを僕は知らないのだ。
もしかしたら日記以前かもしれないし、或いは日記を書いてからかもしれない。
そう思っていれば、紫が溜め息を吐いて諦めた様に日記を隣に置いた。そのまま僕の肩に顎を置いてゆっくりと息を吸い込んだ。
「いいのよ、言わなくて……いいえ、この場合、言えないのかしら」
「……」
「コッチはアナタが助けを求めるまで動けないのよ。ごめんなさいね」
「……いい」
「あら、そう」
我ながら原因がわかっているのに、ソレに甘えているのだ。
だからこそ、
上書きをすればきっと僕は人形へと戻ってしまう。それを忘れる為に、忘れた事になっている記憶を忘れる為に自身に更に催眠を掛ける。
なんとも自虐的な行為だ。
「先も言ったけれど、アナタが助けを求めれば私は動くわ。アナタの為に、アナタだけの為に、日記の端書きにでも書いていればいいわ」
「……忘れない」
「もしかしたら忘れるかもしれないでしょう?」
それ程底抜けな記憶は持ち合わせていない。持ち合わせていないのだから書いていた方がいいのだろうか。
僕の首筋に吸い付く紫が助けてくれるとは思えないけれど。
そこでようやく思い出した。
「……妖怪?」
「……っぷ、アハハハハハハ」
耳元で大笑いされた。
明らかな人型である紫を見て妖怪と言える方がオカシイのだ。けれど僕を僕として見えているという事は妖怪なのだろう。
確認の為に出した疑問は笑いに一蹴されてしまったけれど。
笑って出てしまった涙を拭って紫は「そうよ」と肯定してくれた。
「神でも無く、私は妖怪。尤も、巷では神隠しの大半の原因が私だとか言われているらしいけれど……そこも否定はしない事にしましょう」
「……しないの?」
「本当の事を否定する事はないでしょう?」
やはり悪戯気に笑った紫は僕の目の前にスキマを開き、銀色の円柱を取り出した。
英語で何かが書かれているけれど一瞬見えただけで僕には見える事が無かった。
その円柱を掴んで、紫は掴んだ逆の手で天面にあるツマミを爪に引っ掛けて引いた。
パシュ、と空気の抜ける音がしてシュワシュワと白い泡が天面から溢れ出た。
「おっとっと」
「……」
天面から溢れて白い泡を口に入れてそのまま煽る紫。
ゴクゴクと喉が動き、そして口を放してプハァー、と勢いよく息を吐き出した。吐き出した息には僅かにお酒の匂い。
手に持った銀色の円柱には先程見落とした英語が並べられており、黒い文字で『生』と書かれていた。
「いやぁ、一仕事したあとの一杯は最高ね!」
一体何をしたというのだろうか。
いや、実際の所、大結界の修復という作業をしたのだろうけれど。それでも、おそらく昼もすぎ夕方近くの時間から酒を呑むなんて事はあってもいいのだろうか。
更に言えば肴も無しに酒を呑むなんて。
そんな僕の考えなど当然紫には知られないのでグビグビと円柱を煽って、空になっただろうソレをまたスキマの中へと放り込んだ。
更に放った筈の手には既に新しい銀色の円柱が握られており、またプシュ、と空気が抜ける音。
「……肴」
「贄の匂いがあれば問題なし」
贄ってスゴイなぁ。
なんて半分程現実を受け入れる事をやめた。更に言えばこうして酒を飲んでいるのに彼女は決して僕を襲うことはない。
贄と妖怪の関係でありながらも、彼女は僕に一線を引いている。
こうして耳を甘噛みされたり、首筋に吸いつかれたり、髪に顔を押し付けられたり、胸を押し付けたりしていても、彼女は一線を引いていると思いたい。
廊下をドカドカと歩く音が聞こえた。
「真昼間から、何してんですかッ!!」
「見て分からない? 飲酒よ!」
「見栄切って言える事かぁッ!!」
藍がお盆を投擲。けれどそれは紫の前でスキマに飲まれて、藍の頭の上に出来たスキマから落ちてきた。
そのお盆を藍が掴んで、また投げる体制に入ると紫は僕を前にして後ろへと隠れた。
「ハーッハッハ! 藍よ、彼を盾にした私は強いのよ!」
「客人になんて事してんだよ!!」
「……」
主の事なんて知ったことか、と九本の尻尾を逆立てた従者。綺麗に整った顔が怒りと呆れで染まっている。
後ろから聞こえるクスクスとした笑い声を聞いていると、自然と頬が緩んでしまった。
どうしてか油揚げの多い料理に舌鼓を打ち、藍と紫とお風呂に入って、現在湯上り。
日記も一通り書き込んだので、夜風に当たり火照る体を冷ます。
日記に書いた内容は日記に挟まれていた上白沢慧音の紙の内容。そしてここで過ごした内容を少し。
「……ふぅ」
夜風に当たりながら息を吐き出した。吐き出した息は消えた。
こうして自覚してしまえば、随分と幼稚な催眠だった。
僕の催眠もそうだし、鈴仙のズレはまた違う。だからこそ理解するのに遅れてしまった。
あれだけの頻度で輝夜に僕の意識をずらされれば気がついてしまう。根本的にはずらされたままだけれど、きっとコレはこのままである方がいいだろう。
覚えてない内容は思い出すことは出来ないけれど、催眠を掛けられた瞬間は思い出すことが出来た。
思わず苦笑して、同時に理解した。
「夜は眠らないのかしら?」
こうして登場した紫はきっと僕の状態を知っているのだろう。だから、少しだけ眉間にシワを寄せて僕を見ている。
僕はそんな紫に対して笑顔を作り、そして溜め息を吐かれた。
「まったく、月のお姫様も困ったものね。あまり贄に手出ししないように言ったのだけれど」
「……気にしない」
「アナタはね。私にとってはとても重要な事なのよ。面倒な催眠も、面倒な術式も、更には面倒な存在も、壊れ方も、私にとってはとても重要だったの要素だったのだけれど……どうやら手遅れだったようね」
「……」
「アナタから贄という要素を取り除きはしないけれど、それはアナタにとって悪影響よ」
「……気にしない」
そうでなければ、今の僕は価値すら無いのだ。
人形だった頃は価値があった。ソレが贄へと変化した事で僕は変わってしまった。
変わってしまった僕から贄という要素を省いてしまえば、僕はきっと何も無くなってしまう。それこそ、亡くなって、失くなってしまう。
紫が隣に座り、また溜め息を吐き出した。
「私が求めたヒトは、アナタよりも随分利己的だったわ」
「……そう」
「尤も、アナタぐらい笑顔の作り方が上手かったし、アナタよりもお人好しだったけれど」
「……そう」
「ええ。本当に……ヒトの為に死んで、自分の幸福なんてコレっぽっちも望まない……馬鹿だったわ」
「……そう」
「ねぇ、贄さん」
「……何?」
「どうして…………いえ、いいわ」
紫は疑問を飲み込んだ。飲み込まれた疑問に答える術は僕は持たない。
目を伏せた紫から察する事は出来るけれど、おそらく彼女からの疑問の答えを僕は持っていない。
持っていない、というのは少しオカシイけれど答えようが無いのだ。
僕にとって、ソレは当たり前の事なのだから。
人に尽くす事が、僕には当たり前の事なのだから。
そうして、夜はゆっくりと深くなっていく。
目を伏せた紫が僕に抱きついてくるまで、この沈黙は続く事になる。勿論、その時点の僕はそんな事一切知らずに月の見えない空を見上げていた。
困った時は
『助けてユカリン!で登場。』
『』内のみ違う文字で書かれている。
日記の端書より抜粋。
~~
二度目の風呂描写は無い。
勿論全裸の紫様と藍様は登場して。目を瞑って頭を洗われてるレン君と頭を洗う藍様。それを湯船でニタニタと笑いながら酒を猪口で飲んでる紫様なんて容易く想像出来るけれど、書きません。
平凡な日常は書けないんですよー。エロなんてなかったんですよー。
―銀色の円柱型の酒『生』
ここまで暈せば大丈夫だと信じている。無理そうならもう普通に品名じゃなくて飲料名を書きます。
どうしてか、あの酒を思い浮かべたら一番最初に思いついたのがコレなんですよね……ハァ
たぶん、後ろを振り返れば誤差があるだろうけれど、ソレももう引っ括めようと思います。
バレなきゃいいんですよ。
ってナイラルラトホテップ様が仰ってました。