※この作品はR-18です。

東方色贄録   作:猫毛布

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魔法少女回だと思ったァ!? 残念! パンドラちゃんでしたァあああ!!

ざまぁみやがれぇ! 読者どもぉおおお!!


ってパンドラさんが言ってました。私は何も言ってません。
読者まで絶望へと陥れるとは、いったい彼女はナニなんだー(棒

2013/10/25
誤字訂正
紫「残念ならが~」
↓
紫「残念ながら~」
報告に感謝です。ご迷惑を云々


61 イラクサ

「くふ、くふふ、くっひひ」

 

 パンドラと名乗ったレンが嗤う。両手を頬に当ててまるで照れるのを隠すようにして、自身の口元を隠してみせた。歪んだ眼と眉がパンドラが愉悦の中にいる事を見ただけで理解させる。

 興奮しているのかほんのりと赤い頬が指の間から見えている。潤んだ瞳が下瞼を押さえる事で歪んでいる。

 

「あぁ、素敵(すってき)な死体をありがとうっ! 今日ほど神様に感謝した時はありませんッ!! クヒッヒ」

 

 引き攣る様に嗤って天へと叫んだパンドラ。周りにいる八雲紫とギロリと彼……いいや彼女を睨んでいる。その隣に控えた藍も同様に彼女を睨んでいるけれど、唯一地面に膝を着いている幽香は彼女を見て唖然としている。

 そんな幽香の事なんて視界に入れる事もなくパンドラは両手を広げる。

 

「本当(ホンット)素敵(スッテキ)ッ! 神様ありがとうッ! 今から殺してあげるから感謝してよッ! ぁぁああああああああああああ!! 今から殺してあげるわ! 全部壊してさしあげるわッ!!」

 

 イーッヒッヒッヒ。

 辺りに響く高い笑い声に八雲紫は眉を寄せた。実際はこうなる訳ではなかった。幽香が彼を助け、それで終わり。そうなるべきだった。

 ともあれ、現実は非常である。紫は隣にいた藍に目配せをする。藍はその視線に気付いたのか顔を伏せて後ろへと下がり出されていたスキマの中へ入り込んだ。

 

「あぁ、ねぇ妖怪共ォ! ワタシの為に死んでくださらなぁい?!」

「あら、どうしてそんな事をしなくてはいけないのかしら?」

「贄の頼み事だからに決まっているじゃない。アナタもしかしてバァカァ?」

 

 舌を出してケラケラと下品に嗤うパンドラ。着流しが片方ずり落ちて肩から外れていてもそんな事は気にしていない。肌が見えた所で彼女には対して関係はない。むしろ贄の肉体が見えた方が彼女としても有利に働く。

 ニンマリと笑って腕に付いていた紐を外す。白い蛇を象った紐はパンドラの手から落ちて、贄の認識がズレる。いいや、正確に認識されるようになる。

 紫は舌打ちをしてパチンと指を鳴らす。パンドラの周りを包む淡い光。

 

「あら、コレは何かしらぁ?」

「アナタを閉じ込める箱よ。名前通りで満足でしょう?」

「あら、とってもステキじゃぁない。けれども、あぁ、弱いわ。弱い、弱い弱いよわいよわい弱いッ」

 

 親指の腹を歯で噛み切ったパンドラはその親指を淡い光の壁へと押し付ける。円を描き、その中に六芒星を描き、円周に様々な文字を描いていく。最後の一筆を描いた瞬間に壁はガラスの様に散って、霧散する。

 

「あらぁ? 贄が魔術を使って不思議ぃ?」

 

 何事もなかった様に両手を広げて一歩前へと踏み出したパンドラ。ゲラゲラと下劣に嗤い、引き攣った笑顔が紫の視界に入った。翠の瞳と黒い瞳が紫を写し込む。

 

「その瞳ね」

「ご明察(ゴッメイッサツ)ぅ! ワタシの部下にならないかしらァ?」

「嫌よ。ブラック企業に勤める気はないの」

「あら、超(ちょー)ホワイトよ。一日三十六時間労働休憩無し給与固定(ステキな職場)である事は保証するわぁ!」

「あらそんなに働いた死んでしまうわ」

「そう言ってるんだよぉおおおおおおおお! わかってるんだろぉ?」

 

 タガが外れた様に嗤うパンドラ。そのパンドラを呆然と見ていた幽香がようやく口を開いた。震える声をなるべく抑えて、呟く。

 

「なにこれ……どこまでがアナタの手の平?」

「……残念ながら私の手から盤が離れたの」

「そっしてワタシが今からゲームマスターであぁる!! クッヒヒ、あらぁ? 息をしているわぁ、ルール違反よ! 死ね! クフ、クヒッヒッヒッヒ」

 

 引き攣った高い声の嗤いを抑える事もせずにパンドラは笑ったみせた。そして足元に崩れていたパチュリーを足蹴にしてゴロリと転がす。

 

「コレのお陰よぉ。 まったく全部うまくイったわ。ワタシの短い研究もどうやら成功してみたいでなにより」

「うぅ……」

「果たしてワタシはれっきとしたパンドラなのか、はたまた別の何かなのか……贄であり贄ではない状態のワタシにはわからない事だわ」

 

 唸ったパチュリーを素足で軽く踏みながらパンドラは少し目を伏せて言葉を続けた。少しだけ俯いた顔から表情は見えない。パンドラの肩が動く。痙攣するようにピクピク動いて、結んでいた口から嗤いが漏れ出す。

 

「けれど成功したッ! クゥヒッヒッ! ワタシってば天才すぎるわぁ! いいえ、本当に天災すぎるッ!」

「高説も愚説も、ましてや説教なんて聞きたかないわ」

 

 赤い方陣がパンドラの足元に出現し、それが幾つも重なり彼女を縛り上げる。赤い方陣を出現させた本人はフワリと紅白の巫女服を揺らして地面に脚を付ける。隣に降りてきた白と青の巫女服を焦げ跡で汚した風祝は渋い顔で地面に足をつけた。

 赤い方陣は霧の様に霧散して拘束を開放した。パンドラは埃を払う様にして着流しを払う。

 

「ククク、クヒッヒッヒ。 残念(ざぁんねぇん)でぇしたぁあああああ! 人間如きにワタシは止めれねぇええええよぉおおおおおおおおお!」

「あぁ、そう。そんな事はどうでもいいわ。さっさと目的を言いなさい」

「あらぁ? 簡単よぉ。とっても簡単な目的。それこそ簡潔的な完結で間欠泉みたいに突然に襲来するような事よぉ」

 

 パンドラは舌をベロリと出して目的を言ってのける。

 

「人間は贄(ワタシ)を虐めたわ。

 神様は贄(カレ)を貶めたわ。

 妖怪は贄(カノジョ)を食らったわ。

 

 どうして贄(ワタシタチ)がこんな目に合わなくちゃいけないの?

 どうして贄(ワタシタチ)が不幸であるべきなの?

 贄(ワタシタチ)が何かしたかしら?

 今までを捨ててまで人を救ったのに罵声を浴びせられ、今からを求めて神に会えば物を見るように眺められ! 今も諦めて妖怪と遭遇したらソコでバッドエンドッ!!

 ねぇ、ワタシタチが何かした?

 ねぇ、ワタシタチが何をした?

 ねぇ!ワタシタチが何か答えろよぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

「……贄なのだから、仕方ないでしょう?」

「そう、そう! そうさ!! ワタシタチは贄だった

! 贄でしか無い!! だからこそ、ワタシが叶えて上げる。ワタシが叶える。叶えてやるッ!!

 

 復讐を!

 世界全てを絶望で包んであげる! あぁ、とっても素敵! 素敵すぎてヨダレがでちゃうわぁ」

「身勝手な理由ね」

 

 そんな博麗霊夢の言葉にヨダレを拭っていたパンドラの手が止まる。そしてニヤリと嗤う。笑ってしまう。

 

「身勝手な理由よぉ、当然じゃない。ワタシタチは理不尽に贄に落とされたのよォ? だから、理由を求めない。理解を得ない。理屈なんてそっちのけ。身勝手な理由で、理不尽な理由で、大した理由なんて無くワタシはこの世界を絶望で包んであげる。

 

 仕方ないでしょう。だってワタシが贄で、アナタ達はソレ以外ですもの……

 

 

仕方ねぇよなぁあああああああああああああああああああああああ!! ヒッヒヒッヒッヒヒッヒィ、ゲホゲホ」

 

 引き攣った嗤いを出して天へと咆哮したパンドラ。眉を歪めて霊夢はパンドラを見ている。

 

「やっぱり、封印するわ。そのまま還しましょう」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ霊夢さん! あんな性格でもレンさんなんですよ!」

「アレを見てまだあの子とか言うんなら眼科に行くか永遠亭で一生入院してなさい」

 

 早苗は思わず押し黙って哂っているパンドラを見た。姿形こそはレンである。けれど、それだけだ。無表情も無ければ、ジト目も無い。

 

「紫」

「はいはい。まったく妖怪遣いが荒いことで」

「掃除も洗濯も無茶な注文もしてないでしょう?」

「はいはい」

「ま、待ちなさいよ」

「ソコで呆然としていていいのよ幽香。スグに終わらせるから」

「黙りなさい霊夢。私は勝負に勝ったのよ?! 私の意見も無視して彼を封印?! 堪ったもんじゃないわよ!!」

 

 感情的になっている幽香に対して霊夢は淡々と呆れた様に溜め息を吐き出す。

 

「……紫」

「ホント、妖怪遣いが荒いわぁ」

 

 トンッ、と紫が幽香の顔を蹴った。別に普通に肩を手で押せばいいのに、蹴った。蹴られた幽香はそのまま後ろへと倒れてしまいグパァと擬音が出そうなほど開かれたスキマへと吸い込まれた。

 スキマは閉じられてしまう。そんな一部始終を見ていた早苗は目をパチクリとさせて慌てる。

 

「ちょ、な、何してんですか!」

「別に。妖怪遣いの荒い事をしているだけよ」

「そうよ、落ち着きなさいな風祝さん」

「落ち着いてられませんよ!」

「役割分担は必要な事なのよ……ねぇ、霊夢」

「……知らないわよ」

 

 ふん、と鼻を鳴らした霊夢は溜め息を吐き出してパンドラを見る。パンドラは待っていたかの様に……いいや、実際、準備が整うのを悠々と待っていた。

 

「もう、いいかしらぁ?」

「えぇ、十分よ」

「そう。準備は万端? 絶望する準備は整った? 希望は十分に見たでしょう?」

「十二分に見れた試しはないわよ」

「それは残念。けれど時は満ちたわ!! さぁ、匣を開きましょう!! 飛び出すのは絶望ばかりの素敵な匣を開きましょう!!」

「まったく……月が満ちれば宴会が開くっていうのに」

 

 そんな戦いには似つかわしくない博麗霊夢の言葉により幕を開いた。

 

 

 

 

 

 

~~

 

 

 私はグルリと視界を回した。あるのは瞳と気色悪い色だけ。そんな中、私は浮いていた。

 頭痛のする頭を抱えて、体制を整える。あのスキマ妖怪め……仕返しみたいに顔を足蹴にしやがって……。

 ともかく急いでここから出なくては彼が霊夢達の手によって殺されてしまう。

 

「風見幽香。お前はここから出なくていい」

「……狐如きが私に命令?」

 

 視界の端に捉えた金色が声を出した。彼女の足元には床があるのか、しっかりと立っている。

 私は体をそちらに向けて、優雅に脚を組んでみせる。その様子に狐は目を細めた。

 

「嫌ならば聞かなくていい。彼を助けるおそらく最後の方法だ」

「言いなさい。今すぐ、迅速に、簡潔に、詳しく、明確に、明瞭に、さっさと言いなさい」

「優雅な格好で急かすな。滑稽に見えるぞ」

 

 フッと息をするように笑った狐は憎たらしい程綺麗な顔をしている。

 少しだけ深呼吸をして、意識を落ち着ける。どうせ従うしかないのだ。皮肉だけれど。最悪な気分だけれど。

 

「ふむ……では説明しよう。彼を起こしてこい」

「……何よ、ソレ」

「今の彼は眠っている状態に似ている。勿論、明確には違う。が、その事を説明している暇は無い」

「……」

「私の後ろにあるスキマを通り抜けろ。紫様が彼と繋げた」

「ならさっさと退きなさい」

 

 また狐が溜め息を吐いた。フワリと九本の尻尾が動き後ろのスキマが見えた。

 

「先に言っておく。彼に飲み込まれれば、お前は消えてなくなる」

「……あ、そう」

「それだけか?」

「えぇ、たったそれだけよ」

 

 呆れた様に狐が溜め息を吐いて一歩動いた。私はドコかに足をつけてコツコツを靴を鳴らした。

 スキマに入るのに躊躇は無い。自分が彼に飲み込まれるというのなら、それはソレでいいかもしれない。

 例え彼が私の事を忘れていようが、どうでもいい。今は、本当にどうでもいい。

 忘れるというなら、新しく作ろう。今までの事は私が覚えていればいい。ただ始まりに戻っただけだ。

 そう……始まりに……?

 

「……フフッ、そういうこと」

「どうかしたか?」

「いいえ、思い出し笑いよ。まったく、とんだ茶番ね」

 

 訝しげに見てくる狐を無視して私は笑みを作る。口角を上げて、気がついた事を胸の内にしまってしまう。

 きっとスキマ妖怪も気づいていた筈だ。だからこそ言ってのけた。確かにコレは茶番だ。確かにスキマ妖怪は道化で私も道化だった。滑稽過ぎる。

 ふぅ、と息を吐いてから私はスキマへと手を入れた。そのままゆっくりと足を進める。

 

 そして私はスキマの中へと沈んでいった。




なおパンドラ戦は全て耐久スペルとなっております。
キッチリとパターンを組めない様なランダム弾配置もあるので、ご安心ください。
ランダム弾は苦手です……。

>>贄の力を使える事に関して。
 あんまり深く考えずに贄では無い『義眼』経由で術を行使してると思ってください。知識だけは沢山あるパンドラさんです。



嘘予告。

やめて! パンドラの特殊能力で、レンの精神を焼き払われたら、闇のゲームでレンと繋がってる幽香の精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで幽香! アナタが今ここで倒れたら、紫や霊夢との約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。これを耐えれば、パンドラに勝てるんだから!
次回、「風見幽香死す」。デュエルスタンバイ!

※ネタバレ。風見幽香は死にません
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