邪推→他意
違うかった→違った
報告感謝
ご迷惑をおかけします
「似合ってますよ!!」
東風谷早苗はそういって、鼻息荒く拳を握って興奮している。
いつもの格好となってしまった白い着流しではなくて、何故か腋の部分が開いた巫女服を着せられた僕は手に箒を持っていた。
居るなら何か手伝えることはないのか聞いた所、巫女服を着ることを勧められた。
『いいですか、レンさん。ここは境内なのです。つまり、掃除や様々な神事をするに辺りそれなりに神聖な格好をしなくてはいけないのです!!つまり!巫女服は作業服と一緒なのです!決して巫女服を着せたい訳ではありません!!巫女服を着た
と長々と目の前で興奮している東風谷早苗に言われたのだ。ハァハァ言いながら、着替えを手伝おう等と言っていたけれど、気持ちだけ受け取っておいた。
「似合うと思いましたけど、似合いすぎです!!可愛いです!!」
「ホント、あとは笑顔があれば完璧だね」
八坂神奈子の言葉に少しだけ溜め息を吐いて、笑顔を貼り付ける。
貼り付けたならば、東風谷早苗が両腕を突然上に突き上げた。
「最ッ高です!!これ程神様に感謝したことは今までありません!!妹が欲しかったんですよ!!」
「男」
「えッ」
「え?」
「……あぁ、男の娘ですよね」
「……もういい」
「では了解も得たので抱きつかせてもらいますね」
抱きつきながら言う言葉ではない。あと、キャーキャーと耳元で言われると、五月蝿い。笑顔を貼り付けていた顔は早々にいつも通りに戻って次はわかるように溜め息を吐き捨てた。これから境内を掃くというのに。
抱きついているコレをどうにかしたい気持ちを全面に押し出しながら、近くにいる二柱に視線を向ければ、両方共ニコニコと笑っている。
「……」
「似合ってるよー」
「可愛いわね」
ダメだ、この神様達。慈悲も何もない。元々信仰していないのが原因なのだろうか。
まぁどちらでもいい。ともかく、抱きついてくるコレをどうにかして欲しい。
「神社ごとコッチに?」
「えぇ、そうですよ」
掃除をしながら世間話……と、言っても僕に出来る話は無いに等しいので、彼女からの会話を聞く形になっている。
左足の捻挫は気がつかれていたらしく、ゆっくりとした掃除を二人でやることになっている。
「霊夢さんに異変だァ!って言われてヤられちゃいましたけど」
「れいむ……博麗霊夢?」
「はい。守銭奴です」
素晴らしい笑顔でそう言い切った東風谷早苗。文に聞いていた博麗霊夢の事と今の話は合っている部分が多いので、東風谷早苗の感情を抜いても守銭奴という評価は正しいのだろう。
異変、通常では起こらない事件を解決している守銭奴巫女、博麗霊夢。随分と酷い印象だ。
「レンさんは、アッチで何をしてたんですか?」
「ナニ?」
「ほら、普通の生活していても学校とか」
「……」
ガッコウ、には行っていない。生かしてもらうのに必死だった。知識は本だけでどうにかなるし、会話はニンゲンの言葉を聞いていればわかる。
アッチで何をしていたか、という質問に対して僕は応えることが出来ない。何もしていないからだ。僕自身は、何もしていない。
「お父さんとか、お母さんとかは…?」
「五歳の時に亡くなった。そこからは叔父に拾われて、」
「拾われてって、」
「犯されてた」
「…………ちょっと、待ってくださいね」
額に手を置いて数秒、少しだけ青くなった東風谷早苗が口を開く。
「犯されてた、っていうのは、えっと、あー」
「性的な意味」
「…………本当に、」
「嘘を言う意味がない」
ジッと東風谷早苗を見れば、目を斜め下に逸らされた。至って異常な反応だと思った。僕を見るニンゲンはもう少し不快そうな顔をしているか、歪んだ嗤いを浮かべていた。他にも色々と表情はあったけれど、東風谷早苗の様に悲しみや悔しさで、そうした感情で顔を歪めるヒトは居なかった。
「どうしてそんな顔をするの?」
「どうしてって……」
だから、分からないのだ。どうして東風谷早苗がそういう顔をするのか。
「だって、おかしいじゃないですか」
「普通の事」
「普通じゃないですッ!!レンさんみたいな子供を犯すだなんて」
「僕にとって、普通」
「ッ……」
早苗は歯を噛み締めて、大きく息を吐きだした。彼女にとっての普通は僕にとって異常で、僕にとっての普通が彼女には異常だった。それだけの話なのだ。
前に居た場所に、あの村に彼女のような人が居れば、少しは変わったのだろうか。
そう考えて、思考を棄てた。既にソレも、アレも、過去の事で変えることの出来ない事実なのだ。今にしても、僕はこの体質に満足はしている。持て余しもしているけれど。
「同情は、イラナイ」
早苗に聞こえないように呟く。散々とアチラで罵られ、同情する、と言われながら犯し続けられたのだ。そんな気持ち、いらない。
◆◆
普通、と言われたその事実は、私の知っている普通とは微塵も違った。
それこそ、彼の容姿を含めて、どこの“薄い本”だ、と言ってしまいそうな程、普通とはかけ離れた過去。
嘘、かどうかは分からないし、どちらかと言えば、嘘である事を私は願っている。
躊躇も無く、スラスラと、昨日の事の様に語った彼は、今は最初見た時の様に無表情で地面を掃いている。
『同情なんていらない』
彼の小さな言葉が私の耳に到着した時には既に掃除を再開していた。
この気持ちは同情から来るモノなのだろうか。どうにかしたい、という気持ちは、偽善と銘打ってしまえるモノなのだろうか。
助けたい、助けれなかった。
可愛い、という感情以外も、何処か惹かれる部分のある彼。恐らく、恋とか一目惚れとか、そういうものでは無い。
庇護欲、と言うのだろうか。小動物を愛でる気持ちと似ている……と思う。
見た目も立ち振る舞いも、一見すれば完璧な彼。話してみてわかることだけれど、欠落した部分……彼の“普通”にとって必要の無い部分が最初から無かったように、完璧すぎる彼。尤も、私の知る普通にとって必要な部分が無いのだけれど。
少なからず同情をしている私は彼を欠けさせてしまった人を許す事は出来ないだろう。
また、同情と言われそうだけれど。
まぁ、ソレを気にしすぎると何もできなくなってしまうので、無視することにしよう。
現実に囚われないからこその、幻想郷なのだ。
次は説明回とエロ回。
早苗さんは多少の“そういった知識”を持っていても大丈夫だと思うのです。