ふたなり和風ファンタジー
【魔矢坂凛豪宗近】
「何をなさっておられる」
まだ声変わりも終わっていないのか、高く、凛として品のある声音が問う。
振り返った男は三人、いずれも無骨無頼であるのは見るからにわかる薄汚い風体と、屈強な五体の持ち主であった。
三人の腰には如何にも実戦的な豪壮の大刀、首領格と思われる一際長身の男は背に長巻までかけていた。
「お前には関係ねえ、すっこんでろ」
割り込んできた見ず知らずの若者、それもやや華奢な、元服しているかもわからぬ武士を前に引く男達ではなかった。
一歩間違えれば袋叩きどころか斬り殺されかねぬ状況で、若者は微塵も表情を変えなかった。
艶やかな黒髪に白蝋の如き繊細な美貌、思わずぞくりとするような少年は、静かにゆるゆると腰のものに手を向けた。
なにゆえに彼はここまで、山道の傍らにいた見ず知らずの男達に対するか。
全ての理由は、男達の持つ手網にあった。
幾重にも魔封の札を貼り付けた網の中には、一人の少女がいた。
人に非ず。
白銀の髪の上に獣の耳があり、服の腰には穴が開き、そこからふわりとした髪と同じ色の尾が溢れている。
年の頃は十にも満たないであろう、小さな少女は、おそらくはこの山野に住まう狼か犬の神の一種か。
いにしえよりこの国の自然の中に生き、人の世の傍で暮らしている諸々。
殺生石に封じられた九尾の狐などの大魔縁もいるが、多くのものはひっそりと山の奥で暮らす。
その神や魔の眷属を捕らえる商いがあるのだ。
霊的なる諸々は、力ある霊媒師、陰陽師や僧の手によれば、万病の薬や強力な武器に鋳じられる。
力の弱い幼少の個体ならば組み伏せるのは容易だ。
子を失った親が人里に如何なる災いをもたらすか知れないが、元よりそんな商いを行う連中は流れの牢人であった。
少年は目を細めた。
切れ長の眼差しに凄絶な鋭さが垣間見えた。
くっ、と濃い口を切り、微かに覗く刃紋が妖しい銀光と鉄の匂いを香らせた。
「その娘をお離しなさい」
決して強い言葉は使わないが、少年より放たれる剣気は容赦なく男達を威圧した。
男達はそれぞれに顔を見合わせた。
首領格の一人が頷く。
それが合図であった。
右に居た男が腰のものをすっぱ抜く、左の男が懐中より取り出した鉄菱を投げつけた。
彼らの視界で少年は動かず立ちすくんでいた。
つまりは、最期の瞬間まで二人の男は、少年が動く瞬間を捉えられなかったのだ。
跳ね上げられた斬光二閃、相手の放った刃と飛び道具を弾き返す。
返す刀でもう二撃の刃が首筋を撫でた。
骨を断つ事も肉を斬り落とす事もない、薄い皮の中に秘められた脳への動脈を撫でるだけで良い。
正しくそれは斬人の利刀、一片の無駄もなく研ぎ澄まされた凄絶の業前であった。
控えていた首領格の男は配下の死に顔色も変えず、静かに長巻を構えた。
間合いも威力もどれを取っても打刀より長巻が勝るのは明らかだ。
ましてや無頼の男は牢人してこそいるが、これでも関ヶ原では石田三成近習の徒として二十人からの敵を穂先にかけた手練である、十二分の勝機を以って踏み込んだ。
その踏み込みが少年の誘いの心気、微かに六感を刺激した気配によって誘われたと誰が知ろう。
上段よりの大斬撃を、少年はまるで最初からその軌跡がそうあるべきと知っていたかのように、吸い寄せるように刃で受け、同時に左斜めへ流した。
両者の距離は肉薄し、より少ない斬撃の回転半径を描いて対手の身を抉ったのは大刀であった。
完全に接近しきった状態からでの攻防においては、小さい得物の方が扱い易いのは当然の理である。
神刀無闘流が一手、誘刃英撃、免許皆伝の業の冴えであった。
「大丈夫かい」
愛刀に付着した微かな血を懐紙で拭い、出来る限り優しげな笑みを浮かべて少年は娘に近付いた。
目の前で起こった殺戮の血闘に、娘は震えていた。
哀惜の念を感じつつ、少年は脇差しを抜いて網を掴む。
娘がぶるりと震えた。
自分を救った者であろうと、白刃を見れば子供は怯えよう。
ふと考え、少年は脇差しを鞘へ納めた。
「安心して、怖くないから」
代わりに指を絡ませた両手で印を結び、桜色の唇が呪文を紡ぐ。
この少年、齢十五にして剣術のみならず、京の術者にも師事し陰陽の業にも長けていた。
何事か深淵なる神々の手になる力が、懐から何枚かの懐紙に宿って躍り出た。
懐紙は梵字の燐光を浮かべた符となりて、娘を捉えていた縄の札に張り付き、閃光を生む。
捕らえる力と放つ力、二つの力は拮抗した後、対消滅。
縄は解かれ、網は形を失い、少女はあっけなく自由になった。
見事な術と、自分が戒めを逃れた事にきょとんとし、銀髪の頭の上の耳をぴょこんとさせ、首を傾げた。
愛らしい姿に目を眇めた少年は、そんな娘の頭を優しく撫でた。
「もう安心だ。家へお帰り」
顔を上げ、若い侍は踵を返す。
手に掛けた無頼の男達三人を埋めるべきか、そしてこの事を近くの役所へ届けるか否かを考えていた。
そんな彼の手を、小さな白い手が掴んだ。
「んッ」
娘がぎゅっと抱きついてきたのだ。
不安そうな目でじっとこちらを見上げてくる。
少年は困り顔で眉尻を下げた。
「いや、一人で帰れるだろう?」
「や!」
娘はふるふる首を振って拒絶した。
ほとほと困り果てた。
頭を掻き、思案して、結局折れた。
「分かった、家まで送ろう」
そう言うと、少年は娘を抱き上げた。
娘が足首を軽く擦りむいているのを見咎めたからだ。
大刀を苦もなく瞬速にて振るう両手からすれば、娘の矮軀はあまりに細く軽かった。
娘は目を細め、心地良さそうに少年に抱きつき、頬ずりしてきた。
すっかり少年に心を許している様子だった。
しかしここまで懐かれると逆に困る。
いや、別段道を急ぐわけでもないのだが。
「道を教えてもらっても良いか。えと……名前は?」
「ゆき」
「ゆきか。可愛い名前だ」
「あなたは?」
「私は魔矢坂凛豪宗近と言う」
「まやさかりんごう……むねちか、ながい」
「幼名は凛助と言う。親しいものは凛と呼ぶ」
「りん、かわいい名前」
少年、凛豪はふっと苦笑した。
そして軽々娘を抱き上げたまま、深い山の中へ歩みだした。
□
凛豪の脚は凄まじかった。
この近辺に住まう者で、山に生きる木こりでさえ生半に踏み入る事のない獣道を実に軽やかに行くのだ。
もし卓越した剣者が見れば、寸毫の揺れもない正中線の軸に若党の剣技のほどを垣間見たであろう。
山の道は進めば進むほど木々と林の生えぶりが激しくなり、さらには招かざる客の足を止める為に用意された結界まで控えていた。
だが凛豪は、これを白狼の子、ゆきが教えるよりも前に察して躱すのだ。
唾液を滴らせ鋭い乱ぐい歯の揃った牙枝の罠を、数尺の跳躍で事前に避ける。
万力の如き締め付けで触れた者を捉える妖し葛を軽くいなして悠然と歩む。
白狼のゆきでさえ見事な体捌きと微かな霊気から罠を見出す姿に舌を巻いた。
何より、夕焼けの光を浴びる白い美貌は、幼心にゾクゾクとした印象を与えた。
薄い胸板の奥に高鳴る鼓動を抱え、ゆきは頬を赤くして、彼の着物をきゅっと掴んだ。
やがて二人はほどなく、山奥にそびえる屋敷に辿り着いた。
道なき道の果てにある屋敷は、とうてい人では、こんな山の中に資材を運び入れる事も適わない。
正に人ならざる者の住まいであった。
凛豪が門前に来れば、周囲でざわめく気配あり。
白い影、都合十数。
ゆきと同じような姿をした、美しい男女が耳と尾とをざわめかせ、鋭い視線を向けてきた。
一族の者であろうか、ゆきを抱えた人の姿に、娘が囚われたと勘違いしているのかもしれない。
「おやめ」
今にも飛びかからんとする彼らを、一声で諌める者がいた。
戸が開き、見事な長身がすらりと歩み出た。
窮屈そうに谷間を見せつける着物、乳から腰、尻へかけての曲線の激しさは凄まじい。
長い白色の髪と耳、そして尾を持つ熟女であった。
「おかあ!」
ゆきがぱっと顔を明るくして笑顔を見せた。
敵対する者、邪悪な者の手の中で、娘がこんな顔をするわけがない。
周囲の緊張が解けるのを感じつつ、凛豪は色香溢れる熟女へ近づき、娘を渡した。
「うちの娘が世話になったみたいだね。話は中でゆっくり聞いても良いかい? 人のお侍」
「ええ。私は魔矢坂凛豪宗近と申します」
「あたしゃこの禅業山の白狼神の長、まふゆだ。凛豪殿か、さあさあ、粗末な家だが、中へお入り。お前達! お客人だ、お出迎えの準備だよ」
気風の良い熟女の声に、周囲に居た者達は皆「わ、分かった母上」「あい」などと応える。
表情にこそ出さなかったが、凛豪はいささか驚いた。
もしかするとここに居る狼神の者達は皆彼女の産んだ子という事だろうか。
□
座敷へ通され、囲炉裏を前に座し、歓待を受けつつ凛豪は事のいきさつを語った。
まふゆは一通り聞き終えると、溜息をこぼす。
「そうかい。そういえば隣山でも猛猪の一族の子が消えたと聞いたが、まさかうちでも起こるとはね。助かったよ、ゆきはうちの末の娘でね、目に入れても痛くないくらい可愛いんだ。この御礼、なんとすれば良いか」
「いえ。お気になさらず」
勧められた酒盃を傾け、料理に僅かに箸をつけつつ、凛豪は告げた。
山神の者に恩を作ればたいていの人間は金銀を求める、山に眠る鉱脈など彼らからすれば幾らでも探し当てられた。
俗悪な欲望を一切見せぬ凛豪の端然とした振る舞いを、まふゆは一層気に入った。
同席させたゆきはすっかり懐いたようで、さっきからしきりに凛豪の膝の上に乗っかり、心地良さそうにくっついている。
「ところで凛豪殿、お前様はどこへ行かれるつもりかね?」
一通り礼を述べ、山の霊気にて拵えた銘酒を注ぎ差し出し、まふゆは問うた。
ゆきが捕らえられたあたりは山越えの道である、ぶらついていたわけではあるまい。
どこか行く宛があって通りかかったというのは簡単に分かった。
凛豪はこの話題になると、途端に表情を曇らせた。
「中近江の街、清堂刀流道場まで」
「ほう。ゆきの話では随分剣が達者というが、その道場のご門人かい?」
「同門ではありますが、正確には違います。これより、その道場の世話になる身です」
「とは?」
「私の師は清堂刀流動場主、横山清観殿の師、梅ヶ崎豪元殿でした。梅ヶ崎先生がお亡くなりになったゆえ、兄弟弟子たる横山殿の元で師範を務めるべく」
と、凛豪は語った。
これにはまふゆも驚いた。
「お前様、あの豪元殿の弟子かい」
山に生きる白狼神のまふゆでさえ知っていた、それほどに梅ヶ崎豪元の名は知れ渡っている。
かの関が原での鬼神の如き槍働き、数十年前よりその剣名は全国津々浦々に轟き、人の兵からおぞましい魔縁まで相対する全てを斬り伏せたいくさ人である。
聞けば、凛豪はその梅ヶ崎豪元の元で物心ついた頃より内弟子として仕え、彼の用いた神刀無闘流をついに免許皆伝したという。
生活はほとんど師一人弟子一人であり、凛豪の名の豪の字も師より賜ったとか。
時の流れは残酷で、稀代の天才剣者と知れた師豪元も、先日病と老いの果て息を引き取ったという。
「左様か。しかしお前様、生家にはお帰りにならんのかい?」
何の気なしに、まふゆは問うた。
姓からしても凛豪は豪元の子ではない、一族の者でもないと見える。
内弟子という言葉からも窺えた。
つまりは修行の為に厄介になっていたのだ、ならば生家の家に帰れば良い。
家督を継がぬ次男三男であったとしても、かの豪元に師事し免許皆伝したとなれば、幾らでも召し抱えてくれる場所があろう。
兄弟子とはいえさほど有名でない、凡庸の剣士と思われる横山某の元での師範とは、人の世の時勢に疎いまふゆでも不可思議に映った。
凛豪はどこか侘びしげな顔をすると、小さくこう告げた。
「一身上の都合により」
「そうかい」
それ以上この場で聞くのは、恩人に無礼だろう、まふゆは小さく頷いて承知した。
ゆきは相変わらず凛豪の腕の中ですりすりと身を寄せて甘えていた。
「なら急ぐ道ではないんだね?」
「ええ」
「ならばしばらくうちにおらんか? 澄んだ山の気に身を浸すのも、武芸の徒ならば心気を磨くに悪く無いと思うが」
剣術と共に武芸の極みに達した者は、往々にして霊気、心気、氣、といった生命の持つ深淵の力を丹田にて練る霊力を磨くものである。
卓越した武芸者はその氣を五体や得物に流し、一刀にて鎧具足を身に付けた武者を両断し得る。
これはそのまま陰陽道の術や僧の法力にも通じ、古来より人の用いる戦手筋として修行に励まれた。
当然、凛豪とてこの道を極めている。
このような深い山では霊脈の活動著しく、ただ静かに呼吸を整え、体内の気脈を意識し仰臥しているだけでも良い修練になった。
ましてやすっかり慣れ懐いたゆきは可愛らしく、酒も食事も美味かった。
相手の謝礼に応じるという意味を含めても、断る理由はなかった。
「分かり申した。では、お言葉に甘えて」
□
凛豪に与えられた部屋は、屋敷そのものの古びた風情を裏切るように、小奇麗で整ったものだった。
室内に塵一つなく、畳も天井もシミ一つない。
若侍は大刀を刀掛台に置くと、障子窓を開けて外を見た。
木々の間から垣間見える月は人里で見る何倍も美しく金色に輝いていた。
静かに呼吸をすると、それだけでも涼やかな空気が、肺腑から体を浄化するのがわかる。
もうずっとこのまま、山の奥でひっそりと生きていたいと、馬鹿げた考えが浮かぶ。
「凛豪殿」
ふすま戸の外からふいに声がした。
凛豪は「はい」と返す。
ふすま戸を開けて、美しい熟女の狼神、まふゆが正座してそこにいた。
「湯の用意ができたので、お呼びに来た。ささ、どうぞ」
「え、ええ、分かりました」
湯と聞いて、どういうわけか凛豪は僅かに動揺を見せた。
ならず者と剣戟を交わした時よりこわばった顔だ。
まふゆの切れ長の目が一瞬細められたが、熟女は敢えて何も言わず促した。
屋敷の奥に風呂場はあった。
岩造りの、如何にも天然の温泉を改造したものだ。
濛々と立ち込める白煙の中、強い霊気の流れを感じる。
脱衣部屋から湯船を眺め、凛豪はなるべく平静を装って告げた。
「かたじけない。では、私は着替えますゆえ」
「あいよ」
気軽にそう応えまふゆは消えた。
一息、落ち着いて、凛豪は周囲を窺う。
気配はない。
鋭い氣を巡らせた六感にて探って誰も居ないのをしっかりと確かめてから、ようやく少年は服を脱いだ。
するすると剥がれていく和装の下、生白い肌のきめ細かさ。
くびれた腰と、豊かな尻の曲線が薄明かりの中で露わになった。
果たして、その胸元を締め上げるさらしのきつさはどうか。
刻まれた術の紋様は。
全てが豊かな起伏を隠すべきものだった。
特殊な呪符にて圧縮されていたものが、さらしを解き露出した。
張りのある大きな乳房であった。
男が見れば誰もが涎を垂らし吸い付きたくなる、形の良い胸だ。
少年侍と見えた凛豪の真の姿であった。
凛豪は一糸纏わぬ裸身のまま、おそるおそる脱衣部屋を出て、岩造りの湯船へ身を沈める。
「ふぅ」
決して人の目に触れさせられない裸身をゆったりを熱い湯に沈めると、少女は心地良さそうに吐息を零した。
長い黒髪と相まって、白く豊かな体といい、眩いばかりの美貌といい、正に天上の麗人であった。
体の汚れを落としながら凝った筋肉をほぐす凛豪は、決して油断しきっていたわけではないが、それでもやはり、僅かに緩んでいたのだろう。
「おやおや、これがお前様の隠していたものかい? 可愛いねえ」
「ひゃ!」
突然頭上より浴びせられた声に、少女は驚いて湯船から跳ね上がった。
そこにはあの熟女が居た。
立ち込める湯煙の中、なお白い肉体。
凛豪も大きいが、まふゆの乳房はさらに大きかった、爆発的な巨大さ、はち切れそうな柔らかいふんわりとした肉が重力に従って実っている。
やや大き目の乳輪が、酷く猥褻で人の性欲をくすぐる。
腰にも少しだけ肉が余り、尻は乳に輪をかけて大きい、かぶりつきたくなるような淫らさだった。
白とも銀とも取れる色の輝く髪は腰まで及び、耳と尾が揺れる。
凛豪はそのあまりの美しさと色香に思わず生唾を飲んだ。
「な、なぜここへ!? お願いです、出て行ってください」
もう見られた以上隠しても意味はないのだが、それでも手で胸を覆い、凛豪は言った。
しかし狼神の夫人は引かない、むしろうっとりとした風情で、余裕と色気を滲ませた微笑を浮かべる。
「なぜって、娘の恩人様だ、お礼をしなけりゃ山の主の名が泣くよ」
「ちょ、やめ、や、わ!」
やや乱暴に、まふゆは凛豪の手を掴むを引っ張りあげた。
そして檜の風呂椅子に座らせると、後ろから抱きついた。
背中に押し当てられる爆乳の大きさ、柔らかさ、そして香る甘い匂い。
如何なる原料で作られているのか、山の花と木の油で拵えた石鹸が白い肌を泡立てる。
にゅるにゅると触れる二つの巨大な肉の山。
擦れる乳首の感触が、ゾクゾクと肌を撫でていく。
「あの……や、やめ」
「おかしいと思ってたんだ」
たじろぐ凛豪の言葉を聞かず、甘い声音で耳元を嬲るまふゆ。
「お前様。たしかに男の匂いもする、けれど女の匂いもする。そういう人間はまれに居るんだ、あたしも見るのは久しぶりだよ」
言いながら、まふゆの白くなめらかな指が凛豪の下腹を這った。
やがて、恥毛の茂る深みに至った指先は、くちゅりと音を立てた。
「ひゃう!」
ぞわりと広がる寒気と、甘い痺れ。
茂みの中、秘裂の中にある桃色の宝珠を摘まれる。
皮を剥かれた時、まふゆの手が後ろから大きな凛豪の乳房を揉んだ。
乳首を摘まれた時、とうとう凛豪は耐え切れず、自分の真の正体を晒してしまった。
「だめ、ああ……出て、しま……ぅああ!」
ぶるんッ、と、大きな肉が鎌首をもたげた。
赤黒く、白い彼女の肌と地続きの肉と思えぬほど醜悪で、立派だ。
隆々とそびえるそれは、一目で明らかな、男根だった。
女の体に男の性器も併せ持つ、両性具有、ふたなりの娘だった。
神代の昔より、強すぎる霊気を身に宿し産まれた子にはこのような者がいる。
体内に巡る氣の力が、男女の垣根さえ超えた、超常の身を作るのだ。
「ほうら、やっぱり、これも付いてた。しかも……なんだいこりゃあ、凄いよ、こんな立派なの見たことないね」
「や……ああ……み、見ないで」
ほとんど涙まじりになり、凛豪は身をよじる。
真っ赤に顔を染めて恥じらうその美貌にゾクゾクしながら、まふゆはぐっちょりと股の間が湿るのを感じた。
子宮が、疼く。
吐息は自然に熱くなった。
「男であり女である、だからお前様は武士の格好をしてるのかい?」
「それは……」
「ああ、すまない、恩人にぶしつけだったね」
果たして、凛豪はなにゆえに男として振る舞い、女の身で武士として生きるのか、今日会ったばかりで深く追求するのは無礼に過ぎた。
彼女にわかるのは、匂いより察せられる、凛豪の欲求不満ぶりだ。
狼神ともなれば一呼吸相手の匂いを嗅げば体調はおおよそ分かった。
「ねえ凛豪殿。お前様、あまり抜いてないね」
「抜く、って」
「ます掻きさ。手淫だよ」
「な、なッ」
「いや、そもそも、女も知らないね? 童貞だろう」
「~~ッ」
何もかも見ぬかれている心地に、凛豪は耳まで赤くなる。
その赤い耳をちろりと舐め、まふゆはもう尻まで愛液を垂らしていた。
「ねえ、ならあたしが、慰めてあげるよ。娘のお礼だ、神とまぐわってたんまり氣を磨けば良いよ」
「え、ええ!? いえ、その、そんな、いえ」
首を振って狼狽する凛豪。
改めてまふゆの、凄まじい豊かな、はち切れそうな爛熟の女体を上から舌まで見て、ぞくりとする。
陽根を持つ身として、確かに今まで同姓への性的昂揚を覚えた事は、多々在る。
しかし自身の性別を隠す凛豪は着やすく女を抱く事もできず、ひっそりと自慰を行うしかなかった。
それさえも隠れて行う以上、あまり回数もできない。
その凛豪からして、むっちりと熟成されたまふゆの体は、あまりに毒だった。
たしかに神とまぐわえば体内の氣は驚くほど高められ研ぎ澄まされるだろう……が、相手は人妻ではないのか。
「ですが、まふゆ殿は……ご亭主がおられるのでは」
「旦那は死んじまったんだ、ゆきを身ごもってすぐだったよ」
「あ、えっと」
「だから……あたしも随分ご無沙汰でね……こんな凄いの見せられたら、我慢できないんだ」
蕩けた甘い声で囁きながら、まふゆは凛豪の前に来た。
だぷん、と揺れる谷間が、そそり立つ凛豪のものに近付いた。
みじろぎする凛豪は逃れようとするが、できなかった。
ふんわりとした、しっとりとした、白い肉の洪水が彼女を飲み込んだ。
泡立てられた山神の石鹸がぬめりを帯び、きめ細かい肌と共に硬い肉棒を包み込む。
「ひゃぁあッ!!」
声が出た、今までどんな修行でも出したことのない声。
ぎゅう、と胸の中で剛直を抱き締めながら、まふゆは小刻みに身を揺すりだした。
「娘の礼だ、たっぷり天国を味わわせてあげるよ、凛豪殿……凛殿と呼んだ方が良いかい?」
「や、やめ、まふゆ殿……このような、事……ふぁあッ♡ むね、こすれ……んぅうッ♡」
「おやおやまあ、そんな愛らしい声を上げて、説得力がないよ? あッ♡ かたぁい……それに、良い匂いだ……死んだ亭主より大きいよ」
白い爆乳を波打たせ、狼の熟女はどんどん動きを激しくしていった。
これはもう、生来の淫乱と見える。
恩人への礼どころではなく、谷間から亀頭を覗かせ、鼻先をくすぐる淫臭に熟女は完全に火が点いていた。
やがて乳房から、さらに白くとろりとしたものが溢れた。
ぷっくり膨らんだ大き目の乳輪と乳首から滴る、粘度の高い母乳。
乳汁を交えた乳擦りはより激しく濃厚になった。
にちゃにちゃと乳と肉棒の擦れる水音。
時折勃起した乳首がカリ首をかすめると、そのあまりの快感に凛は目を剥いた。
「あ、あああッ♡ や、それ……乳首、あ……あぁ♡」
「ふぅ、はぁ……あたしも、気持ち良いよ……なんて硬さだい、まるで焼けた鉄みたいだ」
狼の熟女は髪を振り乱し、美貌を蕩かせ、亀頭をチロチロと舐めた。
特に舌先を尖らせて裏筋をこそげる時など、凛は身をのけぞらせて喘いだものだ。
とうとう、爆発の瞬間が来た。
童貞にしては良く保ったほうだ。
熟練の愛撫を誇る白狼神の未亡人の業が、凄まじい絶頂を与えた。
弾ける白濁、いや、黄濁するほどの濃さの、子種。
「~~ッ!!」
声にならない声を上げて戦慄く凛。
乳首を擦られ濃く美味な精を浴びせられたまふゆも、ぶるりと身震いする、これだけで彼女も軽くイッたのだ。
「あぁ、おいしぃ……あたしの乳と混ざった、子種……ん、ちゅ……口から孕まされちまいそうだよ」
苦く甘く鼻を突く、凄まじい味と匂いだ。
ふたなりの体液は、元来凄まじい媚薬である。
そもそも体内の霊気が強すぎて性別を超えてしまった存在なので、当たり前だ。
他人の氣を強く激しく高め、乱すのだ。
ましてやまふゆは何年も契りを欠いた、男日照りだった。
もう股間は洪水みたいにぐっしょりと濡れそぼり、子宮は疼いて、このまま生殺しになったら死にそうだった。
まふゆはその場で身を起こすと、寝そべった。
床板の上に寝そべる熟女の女体。
たぷんと揺れる張りと柔らかさを両立させる爆乳、汗に濡れ、母乳に濡れ、精液にも愛液にも濡れた裸身。
「あ……あぁ」
童貞の凛には、あまりに強烈過ぎる姿だった。
輝く白銀の髪、そして蕩けた美貌。
気づけばふらふらと足を動かし、彼女の足の間で膝立ちになる。
「さあ、凛殿……どうぞ……あたしを好きなだけ、めちゃくちゃにおし」
誘うのか、それとも懇願か、声の響きは甘く、凛の欲望をそそらせる。
凛は彼女の膝を掴むと、硬く張り詰めた己の先端を入り口に押し当てた。
ぐちゅり、と音がする。
触れただけで互いの身が震えた。
一瞬の後には、凛は欲望に任せて腰を沈めた。
「「ああああああぁッ!!!」」
響き渡る美少女と、熟女の嬌声。
硬くエラの張った剛直が、男日照りの膣壁をめちゃくちゃにひっかき、最奥を叩く。
子宮口に当たる体重を乗せた突きに、まふゆは声を裏返した。
熟女にももう余裕はなかった。
「あッ♡ あ゛ぁ♡ お゛♡ おぉぉ♡ すご、しゅご、はひぃ♡ いいよ♡ ひさしぶりのちんぽ♡ ちんぽぉ♡ やだ……ほ、ほんとに、死んだあのひとよりおっきいよぉッ♡」
尾を振り、耳を揺らし、長い銀髪を振り乱し、喘ぎ狂う。
よがり鳴きながら、身を震わせれば爆乳が波打った。
凛は目の前の熟女にすっかり溺れ、めちゃくちゃに腰を振った、振りたくった。
まるで発情した獣だ。
形の良く大きな尻を振り、自分よりさらに豊かな女を貫き、抉る。
黒髪と銀髪、白い肌。
それらが乱れ狂いまぐわう様は、正に人外の美であった。
気づけば二人は互いの手と手をがっしりと掴み、握り、支え合う。
むっちりとした熟女の両脚は逃すまいとするように凛の腰を絡めた。
逃れる筈などなかろうに。
汗と母乳、精液の混ざったぬめりが、両者の乳の間で泡を立てた。
凛の張りのある巨乳が、それよりやや柔らかく、しっとりとした爆乳に押し付けられる。
ぬめりで滑り、乳首が硬く擦れ、快感に華を添えた。
「ああぁああ! ち、乳首、良いよ♡ もっと、して♡ 凛殿、りんどのの雌ちんぽ、おぉぉ♡ しゅご……子宮、はいる、はいっちゃううッ♡」
ごつ、ごつ、と凛の突きが子宮口を叩き、やがてぱっくり口を開けた場所に、侵入した。
狭い肉口が亀頭を飲み込み、両者は互いに摩擦し合う。
カリ首が擦れ、引っかかる時など、眼の奥で閃光が散るほどの快感を生んだ。
「まふゆ殿、まふゆ殿ぉお♡ あ、あああッ♡ やだ、もう……で、ます……でちゃいます!」
「いいよ! だして……濃い汁だして!」
「で、でも……」
「良いから! 孕んでもいいからぁ!」
「んぅう!」
叫び、抱きつき、まふゆが舌を絡めて接吻する。
二人はぴちゃぴちゃと唾液を啜りながら脳持つな口付けと腰使いで互いを貪る。
終局は唐突に、そして呆気無く訪れた。
白熱忘我の時であった。
溶けた餅のような汁が、子宮へ注がれた。
「~~~ッッ♡」
声にならない叫びを上げ、何度もびくびくと痙攣するまふゆ。
よほど気持ち良かったのか、母乳まで弧を描いて吹き出ていた。
凛も凛で、ぱくぱくと口を開けて酸素を貪りながら、熟女の子宮にたっぷり子種を出した。
いくらなんでも人と神でそう簡単に孕むと思えないが、それでも……絶対にないとは言い切れまい。
こんな軽はずみに契ってしまった自分を恥じつつ、だが……まだものは硬いままだ。
「はぁ……ほんと、凄いよ、お前様……ふはぁ……こんな気持良いの、初めてだ」
「す、すいません……まふゆ殿」
「良いさ、気になさんな。お前様も、気持ち良かったろ? これはお礼なんだから」
「……はい」
素直に頷く少女の美貌に、妖艶なる熟女は、ちろりと赤い唇を舐めた。
「なら……もっと、味わってみるかい?」
誘いながら、相手の欲望を無限大に受け入れるように、両手を広げる。
腰へ絡めた脚も、ぎゅっと力を込めて抱き寄せた。
まだ硬いままの剛直が、奥をつついた。
凛はごくりと生唾を飲み、未亡人の色香に、溺れた。
「……」
言葉もなく、小さく頷いて、少女は初めて味わう女体を噛み締めた。
□
「では私がこれで」
「ああ、お達者で」
「おたっしゃでー!」
屋敷の前で、頭を下げて別れの挨拶をする凛。
若侍を見送るのは、麗しき熟女と、助けられた少女であった。
凛はやや恥ずかしそうに、そんな彼……いや、彼女を見るまふゆは、妖艶に余裕をもって微笑する。
「またあたしに会いたくなったらいつでもおいでなさいな、幾らでも【歓迎】してあげるさね」
「あ、いえ……その」
凛は真っ赤になった。
なにせ、二日二晩この家で寝泊まりし、二度の夜をどちらも激しく濃く、そして甘く……果てしなく甘く、初めて知る女の人肌と共に過ごしてしまったのだ。
礼を受け取ったといえば聞こえは良いが、武人としてはいささか恥じ入る部分もある。
当のまふゆといえば、久方ぶりの交合に肌はつやつやと張りを帯び、白い美貌は一層と妖しさを増していた。
単なるからかいでなく、もし凛が求めれば、本当に幾らでも抱かせてくれるのではあるまいか。
一瞬想像してしまった淫ら極まる妄想に、凛は慌ててかぶりを振り、踵を返して山道を進んで立ち去った。
「では失礼つかまつる」
去っていく背中に、まふゆとゆきの白狼母娘は手を振った。
その背中も、やがてほどなく木々の間に消えていった。
「ねえおかあ」
ふと、ゆきが母を見上げた。
「なんだい」
母は小首を傾げた。
娘は問う。
「おかあとりんは、何してたの?」
「何、って?」
「お風呂とお部屋で、はだかでだきあってた」
「おや」
まふゆは少し頬を染めた。
まさか見られているとは、この娘は存外に気配を断つのが上手いのは知っていたが、自分が読みそこねるとは思わなかった。
凛の逞しさと絶倫ぶりにいささか溺れ過ぎたのだろう。
まだ男と女のそれも知らない少女である、女同士のそれなど気付くまい。
「まあ、あれはだね、あんたも大人になれば分かるっていうか。夫婦の契りみたいなもんさ」
「ちぎり? おかあとりんはめおとになるの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。お礼みたいなもんかね」
情欲に身を任せ、女同士で淫らを極める交合に溺れたとは娘に言いづらい。
だが母の本意を知らぬ娘は、にっこり笑った。
「よかったぁ。りんとおかあはめおとにならないんだ」
「良かったって?」
「だって、わたしがりんとめおとになりたいんだもん」
「あら」
ゆきの言葉に、まふゆは意外そうな顔をした。
「覗いてたんならあの人が女だって知ってるんだろう。それでも良いのかい?」
「ううん、最初からりんは女の子ってしってたよ」
「へえ」
自分ほど経験と知識のある者ならまだしも、幼いゆきの鼻は初見で凛の性別を嗅ぎ当てていた。
やはりこの末の娘は将来有望である。
しかしまあ、女同士で結婚したいとは、他の兄妹にはない個性である。
だが別に咎める事などない、山に生きる霊物に、人の世の常識などないのだ。
「そうかい、叶うといいねえ」
「うん!」
初恋の淡い思いは果たして如何なる道を歩むのか。
それはこれより十年後、ゆきと凛の再開の時に再び歯車を巡らせる事となる。
当然、まだ乙女達は知る由もない。
続く