ふたなり和風ファンタジー
【剣之城龍姫】(前編)
鬼の子、鬼っ子、そのような呼び名で呼ばれる者がある。
それは単純に、神代の時代より大和や東方大陸の国に住まう鬼族の子という意味ではない。
異常なる産まれ、強力な力や数奇な因果の元に産まれた者への呼称だ。
古くは酒呑童子、義経に仕えし弁慶などで知られる、彼らの特徴は常よりも長く母胎の中で過ごし、産まれた時から異様の力を誇った。
剣之城家の三人目の子もまた、そのように産まれた。
剣之城、この名を聞けば無頼の牢人さえ震え上がる。
まるで研ぎ上げたように鋭い牙裂峰に連なる山々に跨る牙裂の地一体を、古くから支配する武家であった。
家祖は南北朝時代に武名を馳せし剣之城鳳頑、その力凄まじく、一斬にて戦船を断ち割り、剛力にて射る矢は城の外壁ごと内部の武者を貫き、法力は鬼神さえ調伏したと言われる。
鳳頑愛用の鎧と、無双を誇った魔槍と魔弓は今も御家安康の印として、屋敷の主の部屋に飾られており、その見事な美しい霊装甲鉄に青々とした艶光を湛えていた。
鎧の前に、男は座っていた。
剣之城轟獣郎、当代剣之城家当主、白髪交じりの険しい顔、着物の下には凄まじい肉厚の筋肉を持つ肉体が起伏を作っていた。
「斬るか」
轟獣郎は静かに、顔と同じく岩のような声で告げた。
彼の前に平服していた女は、弾かれるように顔を上げた。
凄まじい、正しく濃艶と呼ぶべき女だった。
きめ細かい真っ白な肌は目に焼き付くようであり、黒髪の艶やかさ、服を押し上げる女体の肉付きといい、天女でさえ嫉妬を覚えるほどの美しさと気品を持っていた。
名を龍姫と言う。
旧姓清光院龍姫、代々が鋼龍の祀った神道の家柄であり、龍の氣を宿した法力や術に卓越した術者の家系の子孫であり。
剣之城家に嫁いだ二人目の妻であった。
龍姫の豊かな胸には、三十ヶ月にも渡る妊娠期間を経て産んだ愛しい子が抱かれていた。
まだ名も付けられていない、産まれたばかりの子であるが、既に髪もふわりと生えており、人語もある程度理解できるほど知性がある。
くりくりと無垢な瞳で両親のやりとりを見つめる少女、剣之城家に産まれた初めての娘は、しかし、鬼っ子だった。
見よ、薄紅色に染まる体を仄かに包む、薄い燐光を。
産まれながらに娘の肉体には凄まじい霊気が流れ脈打ち、制御できぬ力が肌から漏れているのだ。
母の胎内に長く居続けた影響であろうか。
あるいは龍姫の血筋によるものかもしれなかった。
代々を鋼龍の加護に術を用いた巫女の家系である、龍姫も素晴らしい術者であった。
彼女の血と剣之城家の血を混ぜた子である上、轟獣郎は優れた子を作る為、房中に臨む際は強力な妖魔の血肉を喰らい、数日の瞑想と練気を行い、霊気を高めて契った。
行為は一晩どころか三日三晩にも及ぶ事があり、龍姫はその間休む事も許されず、延々と犯され喘ぎ、失神しては犯されて目を覚まし、また犯され気を失うという日々を送ったものだ。
その末に産ませた子を斬ると、夫は言う。
龍姫は愛しい子を離すまいと抱き締めながら、嫁いでから一度も反抗した事のない夫へ訴えた。
「お、お待ちください、轟獣郎様! それだけは……それだけは、どうか……伏してお頼み申し上げまする」
轟獣郎は子を抱きながら長い黒髪と美貌を垂れ、必死に懇願する妻をつまらなそうに見下ろした。
「お前も既に見たであろう、それは尋常の子ではない。強くはあるだろうが、あまりに奇異に過ぎる。作る際もう少し加減しておれば良かったわ。男に産まれておれば良いものを」
溜息混じりに轟獣郎は呟いた。
娘は、ただの少女ではなかったのだ。
彼は世継ぎを欲していた、家督を継げる男をだ。
ただ女というだけでさえ疎ましかったというのに、娘の体は両性具有だったのだ。
一見すると素晴らしく可愛らしい容姿と、溢れる霊気以外はただの少女だが、仔細に検分すると、女性器の他に外性器として、陰核が男根の機能を持つことが分かった。
男女の性別を超越、あるいは、逸脱しているのだ。
男として家督を継がせる事もできないし女として育てて他家に嫁に出す事さえ憚られる。
はっきりに言って邪魔者でしかなかった、生かしておくだけ無駄なのだ。
あまりに冷淡、あまりに非道であった、それが轟獣郎という武者なのだ。
「どうしてもその娘を助けたいか」
目を細め、その奥に嗜虐因業の光を浮かべ、轟獣郎が問うた。
獲物を嬲る人喰い虎の笑みであった。
顔を上げた龍姫は美しく、そして毅然と答えた、即答である。
「はい」
「そうか」
顎鬚を指で撫でながら、轟獣郎は呵呵と笑った。
「では良かろう、その子を生かしておいてやろう。ただし、表向きは男とする。名は、そうだな……凛助とする。その上で事情を決して他言せぬと信じられる、わしの旧知の者へ養子に出す。良いな」
「はい」
二年以上もの間身籠り、腹を痛め、苦しみながら産んだ、初めての子だ。
もしこの子が生きていてくれるなら、龍姫はどんな事でもした。
養子に出せば会う機会も減るだろうが、構わない、死ぬよりはずっとましだった。
「で、おたつよ」
おたつ、龍姫への親しい者からの呼び名で、轟獣郎が呼んだ。
「なんでしょう」
もう自分の娘が助かると分かっていたので、龍姫はすっかり緩んだ顔で夫を見上げた。
瞬間、ぞくりと背筋が凍った。
嫁いだ頃より冷たい目をする男であったが、この時ほど凍てついた視線を浴びるのは、初めてであった。
「わしはどうしても男子が欲しい、刃助と峰親では話にならぬ」
刃助・峰親とは、剣之城家の長男と次男であった。
どちらも文武両道のなかなかの武人であるが、轟獣郎からすれば到底剣之城家の家督を継ぐには足りなかった。
轟獣郎が手間暇をかけて、素晴らしい血筋の龍姫を犯し種付けを行うのもその為だ。
家を継がせる為に彼は子を欲している、ただ優れているだけではない、最良最高の、強靭を極める子を。
先妻はそんな彼の行為の凄まじさにとうとう体がついていかず、亡くなった。
龍姫は代々の強い霊気と退魔の巫女として鍛えた業と体もあり、なんとか息災に生きていた。
「これよりお前には、今まで以上の時間と術を用いた房中を行う。はっきり申すが今までのものなど比べものにならぬぞ」
「……」
龍姫は、身震いして唾を飲んだ。
しかし視線はどこまでも凛然としており、いずれ手放す我が子をひしと抱きしめる。
「側室の女共には耐え切れず自害した者もおった。だが、お前は決してそうはすまいな? そうすれば、わしはその子を今度こそ殺す。我が子が大事なら」
「構いませぬ」
夫の声を半ばで斬りつけた声音は、どこまでも美しく、そして誇り高かった。
きっと睨めつける切れ長の瞳、龍の加護を代々受けてきた瞳は、氷霜の如く青い。
その青は今、夫である轟獣郎に臆さず、燃えていた。
「ふん、抜かすではないか。せいぜいその意気を失わぬ事だな」
□
「く! あ、ああああ! あぁ……おぉ……お゛お゛ぉぉぉおッ♡」
何度目だろうか、凄まじい濃度の子種を子宮にぶち撒けられ、熟女が身震いして果てる。
突き上げられる度に揺れる、熟れきった果実の如き爆乳からは甘い乳汁が溢れ。
むっちりとした果てしない淫らさを秘めた女体を、白濁と共に白く染めていた。
普段から日に当たらぬ為、肌そのものも抜けるように生白い。
室内は凄まじい臭気に包まれていた。
なにせ一週間も交合は続いていたのだ。
寝ては犯され、起きては犯され、最低限の生命維持活動以外の全てを生殖で埋め尽くす日々だった。
石牢の中は既に、精液と汗、そして母乳と愛液とが噎せ返り、一呼吸で人を狂わせそうな淫臭の媚香と成り果てていた。
豊満を極める熟女を貪り尽くすのは、人ではなかった。
ぶるる、と野太いいななきを漏らす、鬼。
牛鬼であった。
鬼族の中でも膂力強く高位の部類に入る。
赤黒い肌を持ち、牛のような頭部、筋肉の塊のような体は八尺にも及ぶ。
肉棒など、子供の腕ほどあろうかという巨大さだ。
それを子宮までねじ込み、牛鬼は熟女を犯すのだ。
人間どころか鬼さえ虜にし、忘我させる女の体。
それは美しさを極めるものであり、とうてい今年で四十一になるとは思えないものだった。
名家清光院の巫女の血を引く女であるがゆえか、みなぎる霊力の為市井の女などより老いを感じさせない。
「はぁ……はぁ……も、もう……やすませ、て」
並の人間なら気が狂うばかりの快楽に蕩けながら、龍姫は乞うた。
牛鬼がそんな言葉を聞くわけがない。
異形の妖魔に犯され続ける恥辱に、龍姫はただただ耐え、受け入れるしかないのだ。
だが予想しなかった救いの手が、彼女に向けられる。
輝線が走った。
銀の剣光が瞬時に駆け抜けたかと思えば、牛鬼の首を刎ねたのだ。
崩れ落ちる巨躯と、それを飲み込む赤い飛沫。
粘体のような波が牛鬼の躯を沈ませ、にちゃにちゃと、ぐちゃぐちゃと、聞くに耐えない不気味な音を立てて貪る。
「おたつ、息災であったか」
「……轟獣郎、さま」
現れたのは、嫁いでより二十八年、変わらず冷淡で外道な夫であった。
傍に一人の妖しい女を侍らせた轟獣郎は、一週間にも渡り異形の妖物に犯され続け、白濁まみれとなった妻を心底面白そうに見下ろした。
「何度か見に参ったが、気付いておらなんだか。まあしょうがあるまいな、なにせお前ときたら、狂ったように牛鬼の上で腰を振ってよがっておったからのう」
「……ッ」
自分の痴態、牛鬼の強力な妖気に当てられ、媚薬を飲まされ、乱れ狂う様を見られていた事実に、龍姫は唇を噛み、顔を真赤に染めた。
二十年以上の陵辱の日々の果てにもまだ気品と羞恥心を忘れぬ妻の姿に、轟獣郎は淫虐の笑みを深めた。
「さあ、忘れてはならんぞ。散々まぐわった化物の血肉を喰らえ」
顎をしゃくって促す、轟獣郎の傍に居た女が動いた。
赤い着物に赤い髪をした、妖艶な女だった。
邪悪とも形容できる。
赤髪の女は白い手を伸ばした。
すると、先ほど牛鬼を飲み込んだ赤い波が、床の上でずるずると波打ち、その手に這い始めた。
それは蛭であった。
一匹一匹は指ほどの大きさの蛭が、何万匹と集まって波のように見えるのだ。
牛鬼の血肉も魂も全てを喰らった蛭は、凝縮されたそれらを小さな塊に変えた。
輝く珠である。
ころりと落ちたその珠を、龍姫は嫌悪の顔で飲み込んだ。
たちまち体内で昂ぶり脈打つ氣の激しさに、苦悶とも悦楽とも取れる表情を浮かべる。
「く、ぅあ……ああ!」
下腹を押さえ、美しい裸身がくねった。
全身の経絡を満たし、心肺と丹田、そして子宮へと巡る強い霊気。
これらは全て、轟獣郎の悲願の為の術であった。
龍姫は毎日毎晩、休む事無く様々は妖魔神仏の諸々とまぐわいを強制され、その相手の血肉と氣に体を慣らす。
頃合いを見計らい、殺したその相手の血も魂も固めて食わせ、より強く、より激しく、力を蓄えさせるのだ。
決して妊娠せぬように排卵まで操作しているので、構わず精はあらゆる場所にぶち撒けられた。
「じき頃合いかのう」
龍姫の身魂を染める氣を見透かし、轟獣郎は満悦の相であった。
この房中邪法術の末、龍姫は血流も氣脈も何もかも彼の思うままになっていた。
いつ排卵するかも、その上で身籠る子の性別も、全てが。
「今度こそ凛のような間違いは起こらぬ。とびきり強い男子を産んでもらうぞおたつ」
「……」
妻を世継ぎを産む為の道具としか思っていない夫の視線。
龍姫は白濁にまみれながら、そんな夫を見上げた。
今でも彼女の瞳は毅然としており、決して誇りを失わない。
それが面白くもあり、同時に激しく疎ましくもある。
自害されては困るが、いい加減精神を破壊され廃人のように化け物のイチモツに狂ってしまわないのでは、いまいち面白みに欠けた。
轟獣郎は真性の嗜虐癖であった。
「ふんッ。まあ良いわ。おい紅殻」
「はぁい、おおせのままに、主様♡」
傍に侍らせていた赤い女へ告げると、紅殻と呼ばれた女は果てしない妖艶さを湛えた笑みを浮かべた。
轟獣郎の顔にも淫虐の相が浮かぶ。
龍姫は青ざめ、身をよじって布団の上を這った。
汁まみれの布団をべちゃべちゃと湿った音立てながら、逃げようとする龍姫。
しかし牛鬼の陵辱の末に腰はとっくに抜けており、まともに動けない。
もちろん、彼女はたとえ五体満足といえど、逃げる事叶わないが。
「い、いや……やだ、せめて……席を外して、轟獣郎様……」
「構わん構わん、わしの前で乱れてみせよ。お前は犯されておるのが本当に似合うゆえな」
「あら、おたつ様。わたくしとするのがそんなに嫌なのでございますか? 悲しい事を、いつもあんなに愛らしく鳴いてくださるのに」
「あぁ……いや、ああッ♡」
赤い女は着物の裾を開きながら、ゆるりと身を寄せてくる。
嫌悪と、そして抗いようのない甘い陶酔の声が出た。
龍姫の肌を赤いものが這った。
牛鬼を飲み込んだ蛭であった。
蛭は何匹もが繋がっており、元をたどれば紅殻の指にくっついている。
肌が粘膜と融け合っていた。
蛭は口を開け、繊毛のような器官を伸ばし、龍姫の玉の肌を舐め回す。
精液も愛液も母乳も汗も、彼女を濡らすあらゆるものを啜り、同時に媚薬の粘液をまぶしていく。
そして、繊毛の口がびちゃりと吸い付いた。
血が、少しずつ吸われる。
こうして龍姫の氣は調整され、支配され、轟獣郎の意のままになるのだ。
紅殻もまた人ならざる異形の魔物であった。
轟獣郎の法術によって作られ産まれた蛭女である。
「嗚呼♡ いつ味わっても、おたつ様の血の、なんと甘美な事か……そこいらの百姓女など比べ物になりませぬ」
「いや、あ……ひゃうう♡ いやぁッ♡」
だぷん、とはち切れそうな母乳まみれの巨大な胸を持ち上げ、紅殻は意地悪く、開発され切った性感帯の乳首に吸い付く。
舌は蛭のように長く、繊毛の器官も備えていた。
それが幾重にも乳首へ巻きつき、むず痒い刺激を伴いながら血と母乳を啜るのだ。
媚薬を刷り込まれ血を吸われ、母乳まで飲まれる。
布団を引き毟るように手を泳がせ、龍姫は悶える。
轟獣郎の視線が、乱れる自分を見ているのを考えると、恥辱がさらに募った。
異形とまぐわった後の仕上げとして、紅殻の愛撫はねっとりと熟女の肢体を貪る。
全身を無数の蛭と舌で舐め回した後、遂に愛撫は秘所にまで到達する。
じゅるじゅると愛液と精液が飲まれた。
「い゛い゛ぃいいいッ!」
声が裏返った。
長い舌はぬるぬると蜜壺の中まで入り込み、子宮まで至る。
子を作る器官を舌で侵略される不快感と、体が反応してしまう、想像を絶する快感。
何もかもを自分の唾液と粘膜で染め、やがて龍姫は全身を清められた――いや、新たに穢されたと言うべきか。
紅殻はゆるりと身を起こしす。
和服の着崩れると、龍姫ほどではないが豊かで形の良い乳がぷるんと弾んだ。
服の裾の間から、秘所まで見せると、なんとそこへ蛭がびちゃりと吸い付いた。
「ん、あッ♡」
甘い声を零しながら、紅殻は蛭達とまた合一する。
びちびちと跳ねる軟体の群は、うねり、くねり、やがて硬く反り返った。
男のものに良く似たイボだらけの異形の剛直である。
媚薬の粘液にまみれ、妖魔の精で犯された龍姫の子宮を、もう一度掻き回し、彼女の氣を調整する為に。
だがそんな義務とは切り離された部分で、紅殻は龍姫を犯す事を心底楽しんでいた。
主人である轟獣郎に抱かれる事もある紅殻だが、龍姫の人外の域にまで達している美貌を犯し穢すのは、堪らなくゾクゾクと背筋を喜悦で震わすのだ。
「さあ、おたつ様。今日もわたくしといっぱい愛し合いましょうね。今夜は寝かせませんわ♡」
「あ……あ、あぁ……あ゛ぁぁッ♡」
膝を掴まれ、左右に割られ、ぴたりと宛てがわれた肉棒がみちみちと入っていく。
ただの硬い剛直と違い、イボは一つ一つが蛭であり、繊毛で膣壁をしゃぶり、吸い付く。
それが最奥まで来るのだ。
子宮口へこつんと挨拶した、すると、そこを舌が抉る。
ちゅるん、と舌が入った。
「ひぃいいいいいい!」
甲高い嬌声を上げ、龍姫は果てた。
牛鬼に犯されていた時よりも甘美な恍惚、あまりに激しい快楽に、折れそうなほど腰と背が仰け反る。
蛭なだけあって紅殻の腰使いはねっとりといやらしかった。
腰が左右に斜めにくねり、何年も抱き続け隅々まで知り尽くした龍姫の性感帯を、意地悪く擦り、あるいは突く。
「ん、はあ♡ どう、です? あんッ♡ ほら、ここ♡ ここを擦られるの、お好きでしょう♡ ほら、ほらぁ♡」
「あ゛ぁッ♡ や、だめ……らめぇ……それ、だめ、またイク……イッちゃうから、あああ♡ お゛ー♡」
「良いですわ、好きなだけ果ててくださいまし♡ さあ、轟獣郎様の前で、さあッ!」
「いや、みないで……いや、あ♡ いやぁああ♡」
赤い着物を乱し、くねる腰使いで突き上げる紅殻。
双方共、長い髪を揺らし、豊かな白い女体をぶつけ合い、乱れに乱れた。
こみあげる射精欲求に崩れる紅殻の妖艶な美貌、龍姫の麗しい天上の美貌もすっかり溶け切っていた。
「さあ、出しますわよ♡ ん、くう! 受け取って♡ わたくしの子種、受け取ってぇ♡」
「あああああああッ♡」
どくんと溢れる、粘った白濁の波濤。
牛鬼のものよりさらに濃く多い。
子宮口をこじ開け、直接神聖な子を産む器官を征服していく、陵辱と快楽。
もし術で体を操作していなければ本当に孕むかもしれない量だ。
紅殻はぶるぶると何度も体を震わせ、龍姫の中に己の穢れをぶち撒けた。
「あ、あぁ♡ ほんとうに……ほんとうに良いですわ……おたつ様の、体♡ 種付けできないのが、残念です♡」
「はぁ……はぁッ」
「轟獣郎様、もうしばらくおたつ様を犯してもよろしいでしょうか?」
「ふん、好きものめ。まあ良いわ」
「はい♡ ありがとうございまする♡」
「や、ああ……待って、いや……嗚呼!」
再び始まる女同士の痴態を見飽きたのか、轟獣郎は言い捨てて牢を出た。
後には二人の美女のよがり鳴く嬌声だけが木霊する。
ただ一言、轟獣郎は呟いた。
「そろそろ頃合いかのう」
と。
そんな声など既に届かぬ狂乱の快楽の中、とろんと潤んだ瞳で龍姫は四つん這いになり、後ろからはち切れそうな巨大な尻を突き上げられていた。
終わりのない陵辱の中、彼女は想う。
(凛……)
愛しい我が子の名を。
こうして恥辱に耐える日々の全ては、あの子を助ける為であった。
今も龍姫は娘を愛し、守る為に戦っている。
今頃、あの子はどんな風に成長しているだろうか。
ぼんやりと思いながら、熟母はまた絶頂の荒波に飲み込まれ、意識を失った。
□
濛々と立ち込める湯気、檜造りの風呂は虜囚の如き生活を送る龍姫にとって、数少ない安らげる時間だった。
一匹の怪物とまぐわい抜き、紅殻の辱めが終わると、一晩か二晩は落ち着いて過ごす時間が許された。
彼女に宛てがわれる次のものを用意する期間でもあった。
「ふう……はぁ」
綺麗に清めた肉体を、熱い湯の中でもみほぐす。
熟しに熟した四十女の乳房と尻は凄まじい量感であるが、腰のくびれ、肌の白さと潤いは十代に匹敵する。
龍姫はまだ甘く痺れる下腹の疼きを、息を整えて消そうと集中する。
が、あまり効果はなかった。
体内の気脈の流れは、もはや自分の意思を遥かに離れ、轟獣郎の支配下にあった。
最近では寝ている時でさえ頭の中が淫らな想像と欲求に満ち、いっそ気が狂えた方が幸福なのではと思えるほど、快楽に身魂を蝕まれている。
氣の満ち方も激しかった。
一歩誤ると五体が爆散しかねない高ぶりを覚える事もある。
夫の言葉からも、そろそろ新しい世継ぎを作る頃合いであるのが分かった。
今度こそ男子を産ませる為、その為の二十数年であった。
「……」
震える我が身を掻き抱き、龍姫は唇を噛んだ。
今日まで受け続けた苦難の日々、夜毎刻まれる発狂するかと思えるほどの快楽に次ぐ快楽。
調教し尽くされた体は脳裏をよぎった記憶だけで疼き、息が乱れそうになる。
「おたつ様」
そんな彼女を醒ます声、天井裏より響く低くしわがれた声に、龍姫は安堵の顔を見せた。
「蝦蟇兵衛か」
「は」
ねちゃりと床面に着地する影、手足の先は水かきと吸盤があり、肌は粘膜で覆われている。
見れば顔も人ならざりしものであった。
名をひきはだの蝦蟇兵衛、見ての通り妖魔忍であるが、剣之城家にではなく龍姫が嫁ぐ時に清光院よりその御側役として傍らに仕える男であった。
蝦蟇兵衛は律儀にも背を向けて龍姫の肌を視界に収めない、主への礼儀もあるが、何より幼い時分より知る龍姫の現状へのやるせなさも強かった。
「何用ですか」
龍姫は毅然と問うた、たとえ虜囚の如き日々を送ろうと、従僕の前で惨めに振る舞う事はない。
蝦蟇兵衛はしばし黙した後、静かに告げた。
「おたつ様。今宵限りに、剣之城の家を逃げましょう。この不肖蝦蟇兵衛、一命を賭してお連れしまする」
何度言おうと思った言葉だろうか。
清光院より剣之城の家に嫁いでより二十数年、夫轟獣郎の鬼畜の所業に守護すべき主君を犯されるのを指を加えて見る日々。
轟獣郎を暗殺しようと思った事もある、だができなかった、それは決して主君の伴侶への義理などではなく、単なる力量差がゆえに。
伊賀筋の忍としては破格の力量を誇る蝦蟇兵衛でさえ必勝を絶望するほどに轟獣郎の武威は凄絶であった。
殺したいほど憎い相手に表面上仕え、影働きをする日々は終わりない怒りと苦しみの連続だった。
今宵とうとう、蝦蟇兵衛はそんな日々に終止符を打たんとしたのである。
「馬鹿な事を申すでない」
龍姫は悲しげで重い鉛のような諦観に染まった声を告げる。
この忠臣が今の自分の境遇を憂えるのは分かる、だがもう龍姫は己の運命を受け入れていた。
無論、できる事ならば逃げ出してしまいたいとも思う。
しかしそうすれば、彼女の愛する子はきっと轟獣郎の手に掛かるだろう。
あの男に人並の情などない。
ひとえにこの夫人が酷烈な責め苦を受け入れるのは、全て愛する娘である凛の為であった。
「私が逃げれば凛は」
「大丈夫でござる」
返事は即答であった。
外に漏れてはいけない会話であったが、蝦蟇兵衛は主へ想いを伝えるべく強い語調で言い切る。
「おたつ様。凛様は今や中近江一の剣士として名を馳せしお方。安々とあの外道の手にかかるような事はありませぬ」
「……逃げて、どこへ行けと言うのです」
「京へ、あそこまで逃れれば轟獣郎も手は出せますまい。身共の兄もおりまする」
「ですが」
「おたつ様、死ねばもう凛様にも会えぬのでござるぞ」
「……」
龍姫は豊かな胸の前で強く手を握り締めた。
次に身籠る時、轟獣郎は懇親の術を仕込むであろう、この身がその出産に耐えられるかどうか。
もし死んだとしてもそれと引き換えに子が産まれれば、轟獣郎は気にも止めまい。
麗しき夫人はこみ上げる寂寥に唇を噛んだ。
目を瞑り、黙念と考え抜いた末、彼女は決断を下す。
「良いでしょう。蝦蟇兵衛、貴方に委細任せます」
主君の言葉に、粘液に濡れた男の顔に一筋雫が流れた。
妖魔の忍は万感の想いを込めて頷いた。
「御意にござる」
□
「ふぅん、それで凛はお父さんと苗字が違うんだ」
中近江より牙裂峰の地まで道中は丸三日の旅路であった。
急ぐ旅ではなかった、飛脚も馬もなしでのんびりと歩いて行く。
その中で、凛はゆきへ自分の生い立ちを語った。
今までなんとなく語る機会のなかった事だが、ゆきにはいつか話さねばと思っていたのだ。
「ああ。魔矢坂は実父の家臣でね、といっても、実際私を育ててくれたのは師匠だったな」
「淋しくなかったの?」
「淋しくなかったといえば、嘘になるな。だけど実は、こっそり母とは文を交わしていたんだ」
「ほんと?」
「ああ」
そう言いながら、凛は袖から懐紙を取り出すと、指で小さな印を描いて術を成す。
懐紙は手からひらりと舞えば、自ら折れて折り鶴と化した。
紙の鶴は自在に宙を飛び、二人の周りを回って手に戻ると、またただの懐紙となって懐へ入る。
「まだほんの幼い頃母から教えてもらった術だ、これに文を書いてね」
「まだ文はやりとりしてるの?」
「いや……養父母に見つかってしまってね、元服前に止められた。どうも、母と私がやりとりするのは本家の都合に障るらしい」
凛には想像もつかぬ事であろう。
いわば人質であった凛が、龍姫との間でやり取りを交わせば、龍姫は奪われた実子への思慕から轟獣郎に反抗する可能性があったのだ。
そうでなくとも、捨てた子の勝手な振る舞いを気に障った轟獣郎は魔矢坂の家を断絶する事さえ危惧された。
ゆえに魔矢坂の養父母はきつくこれを禁じたのである。
「へえ、凛のお母さんってどんな人?」
「物心ついた頃以来会っていないが、優しい綺麗な人だったのは覚えている」
「私も会ってみたいな、凛のお母さん」
言わずとも、二人はこれからその実父と実母の元へ向かうのだ、凛は微笑した。
ただ、その笑みは硬く、複雑な色を帯びている。
二十年以上会っていない、自分を捨てた父にどんな顔をすれば良いのか。
母にはどんな顔をすれば良いのか。
少なくとも母龍姫は、文の様子から察するに自分を養子に出した事を悔いているような印象を覚えている。
「それにしても、一体なんで急に呼びつけたんだろうね」
「……」
何気なく呟くゆきの言葉に、凛は答える弁を持たない。
実父剣之城轟獣郎よりの文には、ただ、火急の用向きにつき馳せ参じるべし、という旨のみが綴られていた。
ほとんど忘れていたと言って良い実家からの呼びつけに、当然ながら凛は当惑した。
考えつつ歩を進めていくうち、二人は幽玄の霞漂う道へ踏み込んだ。
肌に感じる妖気が冷ややかに冬のような鋭さを帯びる。
薄く白く煙る先に、巨大な門扉がそびえていた。
剣之城の字を刻まれたその門の前に、一人の女が立っていた。
長い赤い髪、赤い着物、妖しい美貌。
一目見て凛は人ならざる者であると見抜いた。
「よくおいでくださいました。凛豪宗近様。わたくしは豪獣郎様の側女、紅殻と申しまする」
「魔矢坂凛豪宗近、父の命にて馳せ参じました」
紅殻と名乗った女の視線が自分の傍らのゆきに注がれるのを感じ、凛は言い添える。
見れば明らかな人外の、耳と尾を持つゆきを侍らせていれば当然だろう。
「こちらは、その、私の伴の者でして。ゆきと言います」
「まあ、そうでございますか。どうぞごゆるりと」
「うん、よろしく」
格式張った言い回しをする紅殻相手でもまるきり普段と変わらぬ様子だ。
果たしてこんな風に父に会わせればどうなるか気が気でない。
冷たい美貌の紅殻も僅かばかり眉を潜めている。
が、客人を無下にはできず、踵を返して案内を始めた。
門を潜れば中には久方ぶりの帰宅を果たした凛の前に、家中の者が控えて出迎えた。
人の武士も居れば人外の武人、奉公人も見受けられる。
彼らの視線を背に受けながら凛とゆきは屋敷の奥へと進んだ。
ひしひしと肌に感じられる威圧的な気配、冷たい刃の如き霊気が渦巻く。
それが父のものだと凛には分かった。
「ゆき様はこちらでお待ち願えますか」
座敷のふすまの前で、紅殻が告げる。
さすがに己の主轟獣郎の前に、礼儀を知っているかどうかも怪しい娘を出すわけにいかなかった。
無礼を働いた場合自分がどんな罰を受けるか知れたものではなかった。
ゆきはあからさまに不機嫌な顔をし、眉根を歪める。
手は凛の指に絡めてきつく離さない。
咎めようと凛が口を開きかけた時、低くしわがれた、地の底より響くような声が届いた。
「構わぬ、通せ」
ふすまの向こうから、何もかもを見通し知り尽くしているかのような男の声。
その一声で紅殻は膝を突きこうべを垂れ、恐れと服従の声音で答えた。
「どうぞ、お通りくださいまし」
自然とふすまが開いた、誰も手で触れてはいない、この家の中の全ては主の思うままなのだろうか。
中へと足を踏み入れる。
部屋の奥には家祖として名高い剣之城鳳頑の愛用の鎧具足が艷やかな霊装甲鉄の鍛えぬかれた輝きを孕み、魔槍と魔弓もまた凄絶な妖気をくゆらせている。
その一式の武具の前に、男は座していた。
白い髪と髭、シワを微かに刻んだ顔だけは六十を超す年齢通りだが、着物の下の見事な筋肉に隆起する肉体は到底老人と思えぬ。
瞳は果てしなく冷たく厳しい、人が人を見るものでなかった。
実の父、轟獣郎の前に、凛は二十年ぶりに立った。
「お久しぶりでございます。父上」
「うむ、壮健そうでなによりだ。座れ」
「は」
言われるままに膝を突く。
ゆきも倣って凛のすぐ後ろで正座した。
轟獣郎は久方ぶりに見る娘を、そしてその傍にいる少女をじろりと観察した。
断じてそれは実の子を見る目ではない、冷淡で酷薄な視線であった。
「そちらは」
「私の連れにございます」
紹介しようと口を開きかけたが、その二の句をゆきが継いだ。
「禅業山が主、白狼神族当主まふゆが十二子、ゆきと言います」
先ほどまでのいつものどこか幼く無垢な様子が嘘のような口調であった。
凛はあまりの事に目を丸くした。
次の言葉はもっと驚いた。
「凛豪宗近様とは将来夫婦となる誓いを立てております。どうか、よろしくお願いいたします」
「ほう」
深々とこうべを垂れるゆきの姿に、白い髭を撫でながら豪獣郎は目を細めた。
「男でも女でもないお前は、女を好むか。面白いのう」
「……」
あからさまな侮蔑の言葉に、凛は顔を伏せた。
捨てられた子だ、愛してもらえるなど思ってはいない、だが実父よりの心ない言葉に何も感じないほど愚鈍ではなかった。
傍らのゆきはその一言で豪獣郎が如何なる人間かを理解したのか、いつものふんわりとした顔に、氷のような冷たい表情を浮かべていた。
「父上、この度は如何なる仕儀にて、私をお呼びになったのですか」
凛は即座に用件を切り出した。
父とて凛と昔語りをする為に呼んだのではあるまい。
「うむ、そうであったな。実はな、お前にある罪人を追い、斬って欲しいのだ」
「わざわざ、私にですか」
名門剣之城家には優秀な家臣が幾人もいる。
凛を呼ぶほどの事があろうか。
「当家の者を何人か追っ手に出したが、尽く返り討ちに会ってな」
「それは誠ですか」
「うむ」
驚くべき話であった、戦国の世から様々な合戦で鳴らした剣之城家に仕える家中の者を斬って捨てるほどの者があろうとは。
たしかにそれならば、中近江一の剣客として知られる凛豪宗近を呼ぶに足る。
「実を言うとその者も当家に仕えておった者でな。おいそれと他藩や他家に知られるわけにはいかぬ事情がある。ゆえにお前を呼んだのだ、お主中近江街道では随分と名を上げておるそうではないか」
「して、その相手とは」
美髯を撫でつつ、一拍の間を以って豪獣郎は言った。
「我が妻、龍姫の近習が一人、ひきはだの蝦蟇兵衛。あの蛙めが、龍姫を連れて逐電しおった」
「……ッ」
凛は絶句した。
蝦蟇兵衛の名を知らぬわけがない、幼い頃に、まだ魔矢坂の家に預けられる前の僅かな間、母の傍にいた侍従の一人であった。
次なる言葉はさらに凛を凍てつかせた。
「龍姫は連れ去られたかも知れぬが、己で当家を逃げ出したかもしれぬ。場合によってはあれを斬っても構わぬ」
「……なッ」
内儀へ向けて、娘に向けて、そうと思えぬほど、豪獣郎の言葉は平素と変わらぬものであった。
続く