ふたなり和風ファンタジー
【剣之城凛】(前編)
果たして彼が如何なる地より流れて来た者か、如何なる修行を経たか、その記録はない。
剣之城鳳頑、その武勇のほどは南北朝において神話の如く語られている。
霊気強く身体頑健、槍剣を振るう技量の冴えは凄絶にして、合戦にて猛り狂える有様は鬼神の如し。
数多の霊物を従え調伏し、鬼も龍も使役してのけたと人は言う。
しかしてそのような英雄豪傑とて人であった。
老いは力を奪い、やがて肉の身は死に至る。
過去様々な法術の徒、神魔に仕えし諸々の千古の秘術をもってしても完璧な不老不死は実現していなかった。
老境にさしかかり、鳳頑は一つの考えに至った。
己の子のうち才能ある長男が、ちょうど己の若い頃と瓜二つであり、生命力に満ちている様を見て思いついた、正しく鬼の思考である。
彼は考えたその日のうちに実行に移した。
いずれ滅び行く肉体との決別を、永劫の栄華を求めての求道を。
□
容体を診ていた龍姫とゆきが快復していくのを悟り、二晩傍にいた蝦蟇兵衛はようやく腰を上げた。
さしもの蝦蟇兵衛もこの三日間の集中と不休には力を使ったか、足取りもおぼつかない。
体表の粘膜もいつものぬめりを失い、カラカラだった。
表へ出ると、時刻は夜であった。
井戸へと近づき、すぐさま釣瓶を引き上げて水をいっぱいに浴びる。
心地よい冷たさに溜息が漏れた。
その刹那である、彼ははっと気付いて振り向いた。
そこには人影が一つ、ぽつねんと立っていた。
馬尾のように後ろで結った髪はぬばたまの黒色であり、月下に肌は内から輝くように白く、美貌は麗しきの一語に尽きる。
その上、気品と気高さを感じる凛々しい佇まいは、男装姿が映えていた。
凛豪宗近、身魂を捧げ仕える龍姫の一人娘であった。
「これは凛様、どうかなされましたか」
母と恋人の元へ見舞いに来るかと思っていた凛であるが、果たして今の今までどこへ行っていたのか、問う蝦蟇兵衛ではなかった。
むしろ身を案ずればこそ不用意に顔を出して看護の邪魔をせぬようにしたのであろうし、まして家長の轟獣郎を斬ってしまった事への対処もあろう。
その辺りの今後のやりようは実を言えば蝦蟇兵衛にも思案が成っていなかった。
このまま他藩へ逐電してしまうか、それとも藩庁には隠し通して何食わぬ顔をするか。
蝦蟇兵衛は膝を突いて平伏しながら、その旨を告げようと顔を上げた。
目が合った時、ようやく凛の平素と違う異様な雰囲気を悟った。
気付いた時には遅かった。
一閃、上から下へ走り抜けた斬線が老妖魔忍を真っ二つに両断した。
彼は最期の瞬間まで真実を知るはおろか苦痛さえなく絶命したのである、それはある意味で、とても優しい死に方であったかもしれない。
□
「ん……」
龍姫は、自然と目を覚ました。
屋外から不可思議な気配、第六感のざわめきと言っても良い、どこか体の奥から湧き上がる不安感によるものだろうか。
長い黒髪がやや汗にべたついて肩から流れ落ち、豊かな胸の起伏に引っかかった。
掛け布団を半分ずらすと、熟しきった経産婦の肢体は、仄かに甘酸っぱい薄紅色の襦袢で女の膨らみを強調する。
すると彼女の横から、朗らかな声が呼んだ。
「起きました?」
「ああ……ゆきさん。ええ、今起きたところよ」
視線を向ければ、彼女のすぐ隣の布団に少女が横になっていた。
頭の上にぴょこんと生えている耳は、髪と同色の白、あるいは銀にも映る淡い色彩。
布団を押し上げている胸の膨らみは、四十を過ぎた龍姫ほどの熟れぶりはないものの、十分過ぎるほど大きく瑞々しい。
掛け布団の合間から伸びる白い尾がふわふわとした毛を波打たせ揺れていた。
ゆき、白狼神の子であり、娘である凜の……恋人だという。
その事を考えると、一瞬龍姫は頬が赤くなった。
女同士で、恋人とは……つまり、彼女はしているのだろうか、凛と……夜の契り、など。
(何を考えているのかしら、もう……私ってば)
凛に抱かれた一夜の、これまで経験したあらゆる快楽を超越した凄まじい絶頂の荒波を思い出す。
娘の恋人の、それも女性の前で、自分もまた娘に抱かれ、おまけに龍姫は身籠ってしまっていた。
こうして改まって顔を合わせてみれば、どんな表情をすれば良いか分からない。
羞恥のあまり頬に赤みが増し、熟女はふっと顔を逸らした。
「?」
「ごめんなさい、私……貴女にどんな顔をすれば良いか」
「なんでです?」
「だ、だって……私、凛と……その、してしまったし、それに……子供まで」
そっと自分の腹を触り、娘に種付けされてしまったという事実に悶える熟母。
しかしゆきはぱちくりと目を開き、きょとんと首を傾げた。
「それが、何か?」
「な、何かって、だって、それは」
「別に気にしませんよ。私より先に孕んじゃったのはちょっぴり悔しいけど。凛とお義母さんが仲良くて私嬉しいです♪」
あまりに予想を超えた反応に龍姫は絶句した。
そうか、自分が愚かにも人の思考を基準にしていた事を悟る。
古来より、大和を始めこの世界の様々な場所に住まう神々にとって、近親相姦も重婚もさしたる問題ではなかった。
兄妹で契り親子で契り、古き神の諸々は繁栄してきたのだ。
ゆきの価値観もまた同じく、むしろ龍姫と凛が久方ぶりの再会で仲睦まじく契り子を作る事を喜んでさえいた。
「私も早く凛の赤ちゃん産みたいなあ。あ、でもその前に祝言させてくださいね? 良いですよね? 凛の事、私のお嫁さんにしても」
「え、ええ……まあ(というより貴女が凛を娶るつもりなのね」
近親相姦してしまい、娘の恋人から娘を不貞で寝取ってしまったような罪悪感が、驚きと唖然ですっかり掻き消えていた。
奔放で自由なゆきの気風に、龍姫は知らずのうちに苦笑してしまう。
「あ、そうだ」
ゆきはふと何かを思い出したかのように、身を起こす。
そして龍姫と同じく薄い襦袢姿の豊満な身を、ゆっくりと未来の義母へと近づけた。
龍姫が何事かと思って顔を上げると、いきなり少女の顔が近づく。
愛らしく、美しい白狼神の子の顔が、麗しい人妻の顔に寄せられた。
「ん!?」
驚きに目を剥く龍姫。
唇がくっつき、舌先がぬるりと入り込む。
慌てて身を離そうとする龍姫だが、万力のような腕の拘束で捕らえられた。
ぴちゃぴちゃ音を立てて舐められる口の中。
舌を舌が絡め、唾液を飲む。
「ん、ふう、んんッ♡」
目尻に涙が浮かび、押し付けあう豊かな乳房の先で乳首が擦れ、ピリピリと頭の芯に甘い痺れが走った。
口を離すと、二人の唇の間には淫らな唾液の橋が銀色に輝いていた。
「何を、いきなり……」
「えへへ、挨拶代わりですよ♡ この間は私がお義母さんにされたから、お返しです」
「あ、あれは仕方なく!」
かっと赤くなる龍姫。
ゆきを救う為に行った淫らな行為を思い出したのだ。
しかしゆきはくったくなく、そして妖しく淫靡に笑った。
「機会があれば、みんなでしましょ? 凛と一緒にいっぱい犯してあげますね」
「……ッ」
一瞬、想像してしまい、龍姫は果てしなく子宮が疼き、全身が火照った。
乳の先からは薄く乳汁まで滴っている。
娘とその恋人二人がかりで犯されるという想像が、淫らな熟母を燃え上がらせる。
その羞恥心を振り切るように、人妻……いや、今は未亡人が、立ち上がった。
「ともかく、まず身を整えますよ。何かおかしな気配がします」
「そうでしたね」
ゆきもその事はとっくに悟っているのか、すっくと立ち上がってすぐさま用意をした。
先ほどまで傍に侍っていた蝦蟇兵衛の姿がなく、屋敷全体が妖幻なる気配に満ちている。
「血の匂いがします」
ゆきはすんすんと鼻を鳴らし、目を細める。
白狼神の五感にかかれば、この程度の距離ならばどこでどれだけの血が流れたかもすぐわかろう。
少女の顔は既に先ほどのふざけていた風情は微塵も残っていなかった。
数呼吸、吸い込んだ臭気を吟味すると、新しく着替えた着物の襟元を正しながら、戦意が総身に流れた。
「あの蛭の人、それに……蝦蟇兵衛さんの血です。これは、危ない」
「蝦蟇兵衛が!?」
忠臣の危機を知り、龍姫は慌てた。
ともかく今は凛を探さねばならない。
もしかしたら轟獣郎の手下が夜襲を掛けたのかもしれない。
二人は揃ってふすまを開け、凛のいるであろう部屋を目指した。
その道中で、早くも件の美剣士の姿を目にした。
星月の美しき夜の庭先に、その夜空よりもなお美しい者が佇んでいたのだ。
くるりと振り返る、凛。
手には血刀、足元には崩折れた無残な屍が一つ、いや、二つ。
正中線から二つに絶ち斬られた蝦蟇兵衛の姿。
「蝦蟇兵衛!」
口に手を当て、驚きと悲しみに膝をつく龍姫。
状況から鑑みて、誰がどう見ても凛が斬ったのは明白である。
「なぜです、なぜ蝦蟇兵衛を……」
嘆く母を前に、凛は不敵な笑みを浮かべ、刀の血を無造作に懐紙で拭った。
「これは母上。どうも申し訳ない。この蛙、無礼を働いたゆえに手討ちにいたしました」
「そんな、蝦蟇が……一体どのような無礼をしたと」
問いただす母に、凛は肩をすくめる、まるで答える必要などないとでも言うようだった。
ゆきは先程から凛の様子を見て、眉根を歪めるほど表情に険を浮かべていた。
「どうしたゆき、私の顔に何かついているか」
「……あなた、誰」
果たして白狼神の子は、一目で見破った。
山神の第六感も凄まじいが、何より片思いを十年募らせた子である、愛しい相手の変化には敏感だった。
美しき剣士の姿をした魔物は、くつくつと笑った。
「くははッ。凄いな、わしの術を見破った者はそうおらんぞ。褒めてくれよう」
もはや隠す事もない邪悪な顔が、美貌を彩る。
声音こそ涼やかなものであるが、物言いは古武士の如きものと変わっていた。
それはそうだ、その身に潜む魂は、幾星霜の年月を経て血と命を飽食してきた霊魂なのである。
「剣之城鳳頑。この家を築いた家祖である。控えろ犬畜生めが、己が不躾な言葉をきいて良い相手ではないぞ?」
「鳳頑……う、嘘でしょう!? そんな、まさか」
龍姫が戦慄きながら叫んだ。
ありえぬ、遥か昔死んだ者が今も明瞭なる意識を持ち、この世にあるなど。
たしかに妖魔や神仏の如く、死した者の霊魂がこの世に留まる事はままあった。
だがそれは時を経る毎に怨念や情念で変質し、やがては妖怪へと化けるか、あるいは知性なき魑魅魍魎へと堕ちる。
大抵の場合は自然的に成仏するものだ。
凛、今や鳳頑の新たな肉体となった者は、鼻で笑った。
「田舎巫女の身であったおぬしには理解も及ばぬであろうが、わしは霊魂を完璧に保ったまま肉体を渡る術を編み出した。代々の剣之城の家の当主は当主と定まった時よりわしの器に過ぎぬ」
「まさか、それでは……」
「ああ、そうとも、轟獣郎もまた同じ。十四の頃よりやつの意識も自我もない。つまり、わしはお前の夫であるぞ? 図が高いぞ、跪かんか、この駄妻めが」
わなわなと、熟女の手が震える。
既に嘆きや悲しみの限度を超えていた、愛おしい我が子、今は……その情は母娘のそれを超えつつある娘を奪われ、母の目は冷たく見据える。
声音は怒りに燃えていた。
「返しなさい……私の、娘を!」
「ふんッ、本当に愚かな女だ」
凛の身を得た鳳頑は見事な抜刀で素早く剣を抜くと、相対する女二人を見据えた。
「剣之城の血筋の者は、皆等しく我が玩具。欲しければ奪うが良い」
言うや否や、ゆきがまず駆けた。
体内の霊気を燃やし全身を包み、手の先から伸びた爪が鋭く弧を描く。
その後ろで龍姫も術を振るった。
既に巫女を退き長い上、轟獣郎として生きていた鳳頑の術により氣も自在に錬れぬ身ではあったが、多少の術は使えた。
懐紙が折り鶴となり、鶴は鋭いくちばしを前に突っ込んでくる。
小さくとも矢の如き威力を秘めた飛び道具であった。
だが、それらが何の意味を持とうか。
迫り来る爪と折り鶴の攻撃を、鳳頑が軽やかなほどの足取りで躱した。
南北朝の昔より戦場を駆けた霊魂、そして神刀無闘流免許皆伝の凛の肉体が加わっている。
不意打ちとはいえ蝦蟇兵衛を一刀で斬殺してのけるほどの業前であった。
銀弧が奔る。
無数に繰り出された攻撃のうち危ういものだけを弾き返し、ゆきの爪が脆くも断ち切られた。
折り鶴もゴミのように片付ける。
片手で剣を振るいながら、もう一方の手は懐から呪符を投げつけた。
莫大な霊気を込められた呪符より産まれいでたのは、赤と青の巨大な輪郭。
鬼であった。
地獄の獄卒、妖魔の中でも強大なる魔物が、従順なる下僕として金棒を振るう。
ゆきはとっさに跳躍してこれを躱した。
旋風だけで卒倒しそうな重さと速さ。
さらに後方へと退き続ける。
彼女が注意を払うべきは、前方の鬼ではなかった。
背後でざわめく気配あり。
振り向いた時には既に遅い。
一体いつ召喚したのか、さらなる妖魔が……いや、神仏が在る。
錫杖と剣をそれぞれの手に持つ阿修羅が銅色の身を輝かせて立ち、錫杖の一撃を大地に叩きつける。
その衝撃は周囲の山野まで轟いた。
ゆきと龍姫の身はもはや自分を守るので手一杯だった。
捕縛の呪符が全身を覆うのは、ほんの数瞬後の事だった。
それでも全力には程遠い戯れの、戦いとも呼べぬ戯れ合い。
鳳頑が悠々剣を納めながら、朗らかに凛の声音で告げた。
「なかなか良い肉体だ、今まで得たどの体より合うわ。男でなければ馴染まんのが常であるが、こやつは半陰陽であったからな」
そして、さて、と繋ぎ、捕らえられた二つの女体を見下ろす。
「では、当主に逆らう愚か者共には、灸をすえてやらねばな」
□
薄暗い室内。
石壁に四方を囲まれた牢の中である。
その境遇はかつてとさして変わらないかもしれない、だが、今の絶望感はかつてのそれを超えていた。
龍姫は、与えられる恥辱と快楽に身をよじり、必死に鳴き叫ぶ。
「いや! やだ……いやぁ! やめ、て……やめてください! あ……ああぁぁぁッ♡ お゛ぉぉお♡」
本当に、嫌なのだ、それでも語尾は野太く裏返り、はしたない雌の響きを上げた。
突き上げられる度にはち切れそうな大きさの爆乳が波打つ。
白い肌へ覆いかぶさる身もまた、白く豊か。
互いに長い黒髪を乱し、母娘の身は激しく絡みあう。
馬尾のように結った髪の娘、その娘に犯される母。
しかし娘は真の意味での娘ではない、内包する魂は邪悪な老人であった。
「何を嫌がる。ほうれ、これが、良いのだろう!」
「おーッ♡ お、おぉお♡ だめ、らめぇえ……そこ、そんな、奥……ああああ!」
がっしりと腰を掴まれ、凄まじい力で最奥を抉られた。
新しい命を守る子宮の口を強引に押し込んでくる。
まるでその子を流そうとでもするようだ。
せっかく身籠った凛との子、愛しい孫を、二人の娘を、陵辱で落とそうとするような責めに嘆く龍姫だが、顔は与えられる快楽にくしゃくしゃに歪んでしまう。
徹底して開発調教された身は、浅ましく快楽に反応してしまう。
「お前の体は二十年わしの玩具であった、何から何までお見通しじゃわ。くく、相変わらず、良い具合だ。乳から淫液まで滴らせおって、本当に犯し甲斐のある汁袋だなおぬしは」
「いや、ぁああッ♡ あ゛ッ♡ お乳、やめて……そんな、凛……凛! やめてぇえ! ああああぁ♡」
いやらしい腰使いで奥のあたりを捏ねくり回し、さらに手が伸びて乳を搾る。
たわわな果肉に指を埋めて乱暴に揉んだかと思えば、つまんだ乳首をこれでもかと上下に扱くのだ。
その扱いは的確を極め、開発されきった熟女の肢体をめちゃくちゃによがらせた。
外見が娘であるのもさらに快楽を深める。
内臓まで届くような肉棒の衝撃に、龍姫は一突きごとに達していた。
愛液も汗も母乳も交じり合った熟女の媚香が、地下牢に満ち満ちて、嗅いでいるだけで頭がおかしくなりそうだ。
汗にぬめる白い肌、その肌に重なる娘の体。
双方共に豊かである分、猥褻さは果てしない。
やがて鳳頑が、凛の腰で素早くより規則的に突き上げる。
その瞬間が近かった。
「さあ、腹の子にまた子種を恵んでやるぞ、受け取れ!」
「ああ……あ♡ ああああ♡ いやぁぁああ、ああ♡ あ……」
どくどくと流れこむ白濁の勢いと熱に、龍姫は凄まじい快楽に飲まれ、絶頂の大波に流される。
犯され続け、とうとう意識を失ってぐったりと倒れこんだ。
そんな母、いや、妻であろうか、の様子に鼻を鳴らした鳳頑は腰を上げる。
すると、今度は傍らにいた娘に近付いた。
「やめて……」
顔をそむけ、今できるせめてもの抵抗で身をよじる、ゆき。
両手を腰の後ろで縛られ、少女は冷たい床の上で横たわっていた。
当然ながら、そんな懇願を意に介す鳳頑ではない。
「何を嫌がる? お前の愛する女の体であろう。気にするでない」
「やだ……いや! 私は、凛が好きなの……お前なんて」
「生意気な口をききおって、畜生めが」
ばたばたと暴れる凛の前に、鳳頑が膝を突く。
真っ白な肌を晒す裸身、汗に濡れ光る完璧な肉体美であった。
乳房は豊かで、尻たぶも凄まじい量感を秘めている。
鍛えられた瑞々しい女の身、そこにある硬く大きな肉棒という異形ぶりが、余計に淫靡さを引き立てていた。
「いや……いや」
首を左右に振り、涙目で呟く少女。
その姿は豊かな肉体美とあいまって、素晴らしく男の劣情を刺激した。
鳳頑はにやりと笑いながら、わざとらしいほどゆっくりした手つきでゆきの着物を剥ぎとっていく。
脱がすなどという生易しいものではない。
軽く力を込めるだけでその繊手は着衣を引き裂いた。
張りの在る巨大な乳房が、ぶるん、と揺れた。
肉付きの良い太腿、その間で湿る秘所。
嫌悪感の是非はともかくとして、妖艶な龍姫が犯される姿、漂う噎せ返るような淫臭に、ゆきの体は意思と関係なく発情してしまっていた。
愛液をじっとりと湿らせたそこは、甘酸っぱい天然の雌の媚香を香らせ、鳳頑を愉しませた。
「もう濡れておるな、畜生の神も立派に発情するか。どうれ、わしがたっぷり情けをくれてやるわ」
「いや……あ、いや……いやぁああ!」
絹を裂くような少女の悲鳴。
だが、悲鳴が悲鳴のままであったのは最初の瞬間のみである。
既に幾度も肌を重ねた相手の、相性の良い最高の剛直が、ゆきに奥を抉り抜く。
子宮口をこじ開けんばかりの勢いで叩きつけられた肉の打撃が、あっという間に意識を白熱甘美の波でこそげていった。
「ん、くう♡ ああ♡ く、ああッ♡ やだ……いや、なのに……こんな、ふああ♡」
白い髪を振り乱し、破られた着物から零れた乳房を波打たせ、少女は身をよじる。
凄まじい腰使い、突きの乱舞がゆきを襲った。
恐ろしいほどの快感だった。
愛情ではない、ただただ浅ましく暴力的な性欲によって燃え滾る行為。
鳳頑はゆきを抱き上げる。
腰から尻を掴み、体を寄せて。
ゆきは自然と、あぐらをかいた鳳頑――凛の腰の上に座る格好となった。
体面座位。
二人の肌は密着し、豊かな胸と胸が正面からぶつかって淫らにひしゃげた。
かつてなら自分から進んで体を寄せ合ったゆきだが、今は悲痛そうに顔をそらす。
その顔を、鳳頑が掴んで唇を寄せた。
「んっ!」
ぬるりと滑りこむ舌。
その舌使いの愛撫に、身の毛もよだつ思いだった。
凛の唇が、凛の舌が、凛でない誰かの動きで自分を辱めるのだ。
「ん、んぅう……ふう……やめて、やだ……」
ねっとりと唾液の糸を引かせ、離れる唇。
涙目になって哀願するゆきだが、むしろ鳳頑は一層燃え滾る。
「くく、なかなか良い顔をするなあ。可愛いやつよ。そう嫌がるでない、お前もすぐにこの体で孕ませてくれる。むろん、産んだ子はいずれわしの新しい玩具となろうがな」
「やだ……やだぁ……凛! お願い、目を……覚まして! 凛!」
「無駄じゃ無駄じゃ、今までわしの支配の術を破ったものなどおらぬわ」
邪悪にせせら笑う鳳頑、その美貌は凛のまま、表情はまるきり別人である。
石牢の中で響く声は、どこまでも冷たかった。
□
もはや人の家臣のいない剣之城の家に、幾つかの屍がある。
庭に打ち捨てられたままの蝦蟇兵衛、そして頭を両断されたまま倒れ伏せている轟獣郎。
そしてもう一つ、赤い髪と赤い着物の姿あった。
血を啜る魔性として、その機能の多くを司る肝臓を貫かれた、蛭女紅殻。
だが彼女は果たして本当に死んでいたか。
ぴくりとも動かなかった美しく妖しい屍の回りで、ぴくぴくと蠢くものがある。
赤い小さな蟲であった。
蛭だ。
蛭は何匹もが蠢く、血と粘液の跡を床に残して歩きまわる。
一匹一匹は肥えたように膨れていた。
屋敷の中で流された血を、必死になって吸い集めていたのだ。
彼らはやがて主の元へ集まり、傷に滑り込んでいった。
生命の源を、その身に注いで。
そしてどれだけの時が過ぎたろうか。
それまで冷たい死相を浮かべていた顔に血の気が戻り、かっとまぶたが開いた。
「最悪の寝覚めですわね……」
ゆるりと身を起こし、長い赤い髪を手でくしけずる妖女。
まだ体中が痛み、霊気も万全ではない。
だが屋敷中に這わせていた蛭の知覚が、彼女に事態のおおまかな概要を伝えていた。
「鳳頑、あの腐れ爺めが」
毒づく。
かつて己を屈服させ使役した、忌まわしい相手への憎悪を。
利口に考えれば、このまま屋敷を逃げるのが最善だろう。
一度死に瀕した事で、紅殻を完全に支配していた鳳頑の術も弱まっている。
今なら彼の手を脱し、自由の身になれるだろうか。
しかしそうするのは癪であった。
「目にもの見せてくれるわ」
積年の恨みに身魂を燃やし、妖しき女は立ち上がった。
続く