※この作品はR-18です。

nightmare holiday   作:天木武

2 / 2
シーン2

◇

 

 

「うっ……くうッ……! も、もう……やめっ……! ひっ、ひぃあああああッ!」

 

 互いが恋人同士であると思い込まされていた術を解かれ、だが代わりにその術によって凜子が身体の自由を奪われてから、数時間が経過していた。男は相変わらず凜子の身体を弄び、犯し続けていた。

 

 今、凜子は先ほど羽織ったワイシャツはそのままに、身体を縄で縛り上げられていた。男は術の効果によって自由を奪ったのをいいことに、無抵抗の凜子を緊縛したのだ。

 凜子の身体を戒めている縄は天井の梁を通され、右足こそ床についているものの、上半身にはくびり出されるように胸の上下と谷間に縄が掛けられている。

 しかし見た目を重視するだけの縛り方ではない。凜子に施されているのは、かつては捕縄術(ほじょうじゅつ)として用いられたという説もある、後手高手小手(ごてたかてこて)という縛り方だ。背中側で両手首を縛った後、胸の上下に縄を通して二の腕も縛り上げる緊縛術。上半身にはギチギチと縄が食い込み、凜子の美しさと相俟って、ある種芸術とさえ見間違えるような有様だった。

 しかも丁寧なことに、身体と縄の間にある隙間を埋める、閂(かんぬき)と呼ばれる縄までもきっちり掛けられている。仮に術を自力で解いたとしても、縄抜けすら困難と容易にわかる拘束の前に、まともに身動きは取れそうにない。

 左足は折り曲げられた状態で太股と膝付近の2箇所が縄によって宙に吊るされ、強引に股間を見せるように開脚させられてしまっている。このせいで重心がうまく保てず、前屈のような不自由な姿勢を強いられていた。

 

 完全な宙吊りでこそいないものの、縛り吊るされていることには変わらない半吊りの状態。身動きがまるでとれず、縄の感触が身体に食い込むのをどうすることもできないまま、今も彼女は背後から男の剛直により膣内を抉られ続けていた。

 

「あああんっ! あっ、はああぁっ……! くっ……くそっ……! こんなこと……ああっ……一体いつまで……!」

「無論お前が完全に屈服するまでだ。……凜子、くだらない意地など捨てろ。もう気持ちよくてしょうがないだろう?」

「はぁ……ああッ……! いっ……言っていろ……! この程度……私にとってはなんとも……ひぃいあああああっ!」

 

 懸命に否定しようとしたその時。ペニスの先端が子宮口を小突き、強がろうとしていた声は嬌声へと変わってしまう。

 

「そう言っている割には声が悦んでいるぞ? 身体の方は随分と素直になったというのに、まだ心の方が邪魔をしているのか」

「だっ……! 黙れッ……! あくうぅっ! ひぃううううぅッ! なんで……私……こんな……ああっ!」

 

 どんなに心が嫌悪感を覚えようと、身体は従順に快楽を受け入れてしまう。いや、恋人同士だったと刷り込まれていた記憶も残っているために、心までもが揺れ動いてしまいかねない恐怖感さえ抱かせていた。

 加えて、その催眠状態にあった時に己の本質を曝け出され、彼女自身も認めてしまっている。心の奥底に眠る、否定しがたい被虐願望。それ故、縄が身体を締め上げる感触に、苦しいながらもどこかで快楽を覚えてしまってさえいた。

 

「んああああぁっ! 奥ぅ……そんなに……擦るなぁッ……!」

 

 その上で、敏感すぎるほどに熱を持った膣が責め立てられる。蕩けきった蜜壷は止まることなく悦びの愛液を流し続け、男との結合部からの淫靡な水音を止められない。

 

(なぜ……こんなに私の身体は反応してしまうんだ……! 術で身体の自由を奪われ、さらには縄で縛り上げられた挙句、無理矢理犯されているというのに……! こんな状況でも感じてしまうなんて……やはり私は……変態のマゾなのか……?)

 

「あっ、ああンっ……! 激しっ……! そ、そんなにされたら……! いっ……イクッ……イクううううううッ!」

 

 疑念が生まれ、軋んだ心を崩さんとより一層激しさを増す抽送。その刺激に身体が耐えかね、屈辱の絶頂を極めていた。

 だが腰の動きが緩められる気配は無い。絶頂直後の敏感な膣内を無遠慮に抉り犯され、凜子は悶えて嬌声を振り撒いた。

 

「ひっ、ひあああああああぁっ! まっ、待て! イッてるっ! 今イッて敏感に……ッ! あきゃあああああああああァッ!」

「お前はイッてるだろうが、俺はまだなんでな。それにマゾのお前は、このぐらいの方が嬉しいだろう?」

「嬉しくなどないいいぃっ! やめッ……やめてえええええええぇッ! 壊れる……私壊れちゃううううっ! あっ、ああっ、ああああああァッ!」

 

 視界が明滅し、下腹部から脳へと危険信号が伝えられる。それでも身体の痙攣を促す、男の動きは止まらない。深く挿入されるバックの状態から無遠慮に腰を打ちつけ続け、そしてやがてそれは凜子の最奥を穿ったところで止められた。次に何が来るのかを察した凜子が口を開く。

 

「いっ、嫌あああぁッ! 中は……中はダメええええッ!」

「本当にそうか? こっちは俺のザーメンが欲しいとギュウギュウ締め付けてくるんだがな。……出すぞ! 俺のザーメンの味を子宮でたっぷりと味わえ!」

 

 凜子が続けて拒絶と嫌悪の言葉を紡ぎ出すより早く。胎内に熱い精液が注ぎ込まれた。子宮内に望まぬ射精を受け、だが同時に絶頂し続けていた凜子もまた、一段と大きな激悦の波にさらわれていく。

 

「あッ、ああああああーッ! イッてるのにまたイクうううううぅッ! イクッ、イクッ、イッグううううううううゥッ!」

 

 一層激しく痙攣する凜子の肢体。その度にギシギシと縄が身体に食い込む音が響く。

 縛り上げられた身体を壊れるほどに強張らせ、オーガズムの渦が収まるのをただひたすらに待とうとする。が、あまりにも深いその渦はそうそう収まる様子は無く、断続的な痙攣が止められない。

 

 度重なる悦楽の衝撃によって、汗で前髪が張り付いた顔は蕩けきってしまっていた。縄でワイシャツと一緒にくびり出すように縛られた爆乳の頂点にある乳首は痛々しいほどに勃起し、布地を押し上げて鮮やかなピンク色を透けさせている。肉槍に貫かれた膣の上、クリトリスまでもがその芽を痛々しいほどにはち切れさせようとしていた。

 

「あ……あァ……。ハァ……ハァ……。あ、うぅ……ッ!」

 

 そして男が己のシンボルを引き抜き、開き切った女穴。胎内に収まり切らなかった精液が愛液と交じり合い、凜子の肉感的な右太股を伝って落ちてくる。

 

「折角出してやったというのに、勿体無いことをする」

「ハァ……ハァ……。そう思うなら……この緊縛を解けばいいだろう……」

 

 強制連続絶頂に晒された凜子は息を整えることもできず、それでも懸命に強がってみせた。

 

「まだそんな口が利けるのか。いい加減快楽を認めたらどうだ? さっさと堕ちて楽になれ」

「快楽……? フン、おめでたい奴だ……。私とて対魔忍の端くれ……。この程度……なんということは無い……!」

「よくもまあそんなことが言えたもんだ。……乳首もクリトリスもこんなに勃起させているというのに」

「なッ……!? や、やめっ……! ひぃあああああんッ!」

 

 言うなり、男の両手は凜子の胸と股間の突起を指先で摘むように擦り上げていた。絶頂後の身体に鋭い刺激が駆け抜け、耐えかねて凜子が悲鳴を上げる。

 

「ほら、こうやって指先で弄り続けてやれば……」

「ふゥあああああああぁッ!? ダメッ……それダメえええええッ! 乳首とクリゴシゴシするなああああああぁッ! あッ、ああああーッ!」

 

 プシッと潮が吹き出て床を汚す。自分の意思を無視して起こってしまう身体の反応に、凜子は快楽と屈辱の入り混じった表情を浮かべて堪えることしかできない。

 

「この通りだ。あっさりと潮まで吹く。これでもまだ感じていないと言い張るつもりか?」

「う……うぅ……」

 

 思わず反論に詰まる凜子。だが表情を覗き込もうと、これまで背後に立っていた男が彼女の前へと回り込んだところで、まだ服従する気は無いという意思を込めてキッと睨みつけていた。

 

「ハァ……ハァ……。フン……貴様は……最低のクズだな」

「ん? どうした、いきなり」

「女を催眠状態に陥れて恋人だと錯覚させ、さらには術で自由を奪った挙句、縄で縛り上げて強引に犯す。これをクズと言わずしてなんと言えばいい?」

 

 崩れそうになる心を懸命に立て直そうと、凜子は怒りを剥き出しにしてそう続けた。

 

「ほう……?」

 

 僅かながら、男の声から聞いて取れる動揺の色。内心、凜子はほくそ笑む。

 

(そうだ、挑発に乗れ……。悔しいが……今の私は色責めをされればもはやなす術が無い。しかし……!)

 

 快楽には弱くても、苦痛には耐え切れる。凜子はそう考えていた。ここまでの相手の責めは実に狡猾で、悪辣なものだった。だが、そんな陰湿な手段から、多少でも力任せの方法へとシフトさせれば、相手にも隙が生まれるかもしれない。

 

「ただでさえ術で動けないというのに縛り上げるとはな。そこまでしないと安心して私を犯すこともできないか? 臆病者め」

「言ってくれるじゃないか。だが俺はそんな安っぽい挑発には乗らないんでね。臆病者で結構。そのことは重々自覚しているよ。……なんだ、そうやって少しでも反撃の糸口を見つけようとしているのか? まだまだ堕ちる気は無い、ということか。本当に強情な奴め」

 

 心のうちが読まれている。相手の方が一枚上手だったと言わざるを得ない。

 だが男は特に挑発に対して怒りも何も感じた様子は無く、「それに、だ」と続ける。

 

「確かに縄で縛り上げているのは、万が一術が解けた時の保険でもある。が、それ以上に別の目的の意味合いの方が大きい」

「別……?」

 

 訝しげな表情を浮かべた凜子に小さく、不気味な笑みを返してから、男は再び背後へと回った。視界の外へと消えたことで僅かな不安を凜子が覚えた、その時。

 

「うっ……くううっ……!」

 

 突然、半吊りにされていた身体に上方向への力がかかった。引き上げられたことで縄が身体へと食い込んで締め上げられ、美しい顔が苦痛に歪む。唯一床についている右足も爪先立ちを強いられる姿勢となり、不安定なバランスがより一層悪化したことで、まともに体勢を保つことができない。

 

「お前は真性のマゾだからな。こうして痛くされたり、よし羞恥心を煽られるように縛り上げられたりする方が嬉しいだろう?」

「ふ……ざけるな……っ! こんなの……苦しいだけ……! ううッ……!」

 

 縄にかかっていた男の力が緩んだのだろう。身体に襲い掛かっていた圧迫感と、右足1本の爪先立ちを強いられる姿勢からは解放される。

 しかし、妙な感覚を凜子は覚えざるを得なかった。確かに締め上げられた箇所はジンジンと痛みを覚える。その一方、苦痛と言うだけとは何かが違う、言葉にできない感じが、心に浮かんでいるようにも思えていた。

 

「くっ……ふうっ……」

「締め上げられたところが疼くだろう? 特に……その絞り出された胸の根本とかな」

 

 ギクリと心臓が鳴る。男に言われた「マゾ」という単語が脳裏をよぎる。

 いや、そんなはずはないと、呻くように彼女は声を絞り出した。

 

「勝手に……言っていろ……!」

「お気に召さないか? なら……こういうのはどうかな?」

 

 背後の男が近づく気配。姿が見えないために何をされるかわからず、凜子は身を硬くする。背中の辺りで縄が擦れる音がした、直後。

 

「ひっ……!? な、何を……! あっ、ああああああぁっ!」

 

 背後から身体の下を経て通された縄は、股間の割れ目にピッチリ食い込むように這わされていた。しかも途中に結んで作られたコブが、丁度クリトリスに当たる位置に存在している。男はその縄を引っ張ったり緩めたりして動かし、凜子の股間を擦り始めたのだ。

 

「あくううううぅッ! やめっ……! ひゃううぅっ! ふぅあああああああぁッ!」

「股縄で割れ目を擦られるのは気に入ってくれたようだな。いい声だ」

「ふざけ……! んっ、んくうッ……! いやっ……これ……やめろおォッ……!」

 

 凜子の嫌悪の声を聞き、ますます前後する速度が速められる。いつしか愛液と先ほど出された精液であろうか、糸を引いた体液が溢れ出し、股縄を濡らしていた。

 

(縄で擦られるたびに……頭がぼうっとする……。それに……このコブ……。クリトリスにぶつかって……! あっ、ああっ……!)

 

 コシュッ、コシュッと縄が這わされるたびに凜子の身体が震える。擦りあげられた割れ目と肉芽は充血し、傍から見る限りは苦行にしか見えない。

 

「あっ……あンっ……! い、いやっ……! んっ……んうっ……」

 

 しかし、いつしか嫌悪の声は甘い喘ぎへと変わっていた。縄の結び目が股間の突起に触れ、それを悦ぶかのように身体が跳ねて縄が軋んだ音を立てる。凜子本人も気づかぬうちに、動かされる股縄の動きに合わせるように腰まで動いてしまっていた。

 

「はぁっ……あ、ああっ……んくぅっ、あっ……」

 

 甘い色がより明確になっていく声。股間を擦り上げる縄の動きに自然と視線が動き、そこで自身の身体を彩る縄化粧が目に入ってしまい、凜子は息を呑んだ。

 羽織るように形だけ身につけた状態のワイシャツの上から掛けられた縄は、胸の形がはっきりとわかるほどに締め付けている。くびりだされた胸と、それを薄く透けさせながらも隠しているシャツと、その上から装飾している縄。

 股間への責めと併せて、今自分は縄に支配されているという錯覚が被虐の官能を加速させる。締め上げられている感覚を再度確認するたびに、ゾワゾワッと肌が粟立ってくる。

 

「んっ、ふぅっ……あぁ……」

 

 するとどうしたことか。苦痛でしかないはずの身体への圧迫が、どこか心地よさを秘めているように感じ始めたのだ。縄に体重を預けているはずなのに、その感じがまるで無い。恋人だと思い込まされてキスを交わしたときのような、フワフワと身体が浮かぶような浮遊感さえ覚える。

 

(何……これ……。気持ち……いい……?)

 

 焦点が虚ろになり、短く喘ぐような呼吸が続く。自分の身体が何かおかしいとは気づきつつも、嫌悪感がまるで沸いてこない。

 

「……ほう。『縄酔い』か」

 

 凜子の様子が変わったことに気づいた男が前へと回りこみ、顔を覗き込みつつそう呟く。だが、凜子は何も答えない。いや、男の声が聞こえているかも怪しい様子で、口は力無く開いて涎が垂れてしまっている。

 

「初めて縛られて縄酔いとは、さすがは真性のマゾだな」

 

 縛られた時に、まるで酒に酔ったかのように気分が良くなり、思考が働くなる状態に陥ることがある。その現象が縄酔いだ。被虐心が強いほどなりやすいとか、強く心を許している相手に縛られる時ほどなりやすいなど、様々な説がある。感度の上昇や多幸感の増幅、人によっては獣のように声を上げて絶頂が止められなくなるほどに酔うこともあると言われている。

 だが男が言ったように、初めての緊縛で、というのは珍しい。通常、初めて縛られる場合は緊張や恐怖などが勝ってしまうからだ。

 にも関わらず、凜子は縄酔いの状態に陥っているとわかった。縄で股間を擦っても嫌悪の声は無く、かといって明確な歓喜の声も無い。呻くような喘ぎを上の空でこぼすだけだった。

 

「このまま縄に酔わせておくのも面白いかもしれないが……。俺に縛られて悦ぶ愛奴になりたいなら、順番が逆だな。まずは心の屈服、対魔忍の誇りなどを捨てて俺の元に下ることを明言するのが先だ。……どれ、目を覚まさせてやる!」

 

 そう言うが早いか。男はこれまでで最もきつい角度、最も勢いをつけて縄を一気に引き上げた。

 

「ひッ……! ひぃああああああああぁッ! くっ……クリ……潰れっ……! あっ、あきゃあああああああああァッ!」

 

 右足の爪先が浮くほどに引き上げられた股縄により、酔い状態から強制的に目覚めさせられた凜子が悲鳴を上げる。本来なら苦痛しか感じないはずであろう行為で、しかし凜子の口からこぼれた声には確かに喜悦を含んでいることを、男は聞き逃さなかった。

 

「ちゃんと目が覚めたか? さっきまでは縄酔いでまともに俺の言葉も聞けない様子だったからな」

「ハァ……ハァ……。な、縄酔い……?」

「自覚無しか。縛られたことで気持ちよくなっていたんじゃないのか?」

 

 思わず心臓が大きく鳴った。確かに縄の感覚を改めて感じた辺りから、やけに身体が気持ち良さを覚えたように記憶している。だがその後の記憶を思い出そうとしても曖昧になってしまっていた。

 

「しかしこれでわかっただろう。お前は縄で縛られ、責められ、それでも身体が悦んでしまうような変態だってな」

 

 股縄から手が離され、緊張が解けたように凜子の身体が縄にもたれかかる。縄の軋む音と共に、縄酔いの余韻か、身体が官能的に震えていた。

 

「ふざ……けるな……! この程度……」

「なんともない、か? さっきから何度もイッてるくせによくもまあ言えたものだ。縄で縛り上げられて身体と片足を吊るされて縄酔いし、挙句股縄を這わされてアクメしているというのに」

 

 反論しようと口を開きかけ、凜子はそれをやめた。今の発言を肯定したわけではない。むしろ何かを言えば相手に揚げ足を取られる。それが得意な相手だと判断したからだった。

 

(余計なことを口にすれば、足元をすくわれる……。挑発すら受け流して利用してくるような相手だ。悔しいが……舌戦ではまるで勝ち目はない。口を開けば相手のペースに持ち込まれる。……無視を決め込め。心頭滅却……戯言など、いくらでも言わせておけばいい。……だが)

 

 心を冷たく凍りつかせようとしつつ、しかし凜子は不安を覚えてもいた。

 

(私の身体は……もう淫らに色めき立ってしまっている……。縄酔い、というのはよくわからないが……既に発情してしまっているかもしれないことは、認めざるを得ない。奴は恋人などではない。憎むべき敵。……そうわかっているはずなのに……どうしてこれほどまでに感じてしまうんだ……?)

 

 男に言われた「真性のマゾヒスト」という言葉が脳裏をよぎる。催眠下にあった時は、自ら口にしてしまってもいた。現に先ほど縄酔いしたこともあり、縄に戒められた部分は痛みと共に何とも言い難い感覚を覚えていることは事実である。

 

(私は……虐められて悦ぶような……変態……なのか……? い、いや! 奴の言葉に惑わされたら心まで屈してしまう! 確かに私の口から出た言葉かもしれないが……術の効果で言わされたに違いないはずだ……)

 

 そんな悩める凜子を嘲笑うかの如く。しばらく責めの手を休めていた男の、小さく唸るような笑い声が響き渡る。

 

「どうした、黙り込んで。考え事か?」

 

 やはり凜子は答えない。不安になりそうな心を奮い立たせ、無言を貫くだけ。

 

 と、男はフンと鼻で笑ったようだった。未だに堕ちる様子を見せない凜子への感心か、はたまた苛立ちか。

 ややあって、凜子は男が背後へと回り込んで近づいてくる気配を感じていた。今度は何をされるのかと身構えるより早く。

 

「ひゃあぁっ……! つっ、冷たいっ……!」

 

 ワイシャツ越しにひんやりとした感触の液体が塗りつけられた。液体を纏った手は無遠慮に乳房を捏ねくり回し、布地からそれを染み渡させる。肌に触れたところで、粘度を持ったもの――おそらくローションの類であると凜子は推察した。

 

「こいつは媚薬効果も含んだ、特製のローションだ。こうやってワイシャツごとまとめてお前自慢の爆乳をぬるぬるにしてやれば……さぞかし気持ちいいことだろうな」

「う……くうっ……! はあっ……あんっ……んんっ……」

 

 懸命に声を押し殺そうとするも、ローションを纏った男の愛撫は的確で執拗だった。縄でくびり出されている胸を根本から絞り上げたかと思うと、乳輪をなぞるように指先を這わせ、乳首を摘み上げる。どれもワイシャツ越しに行われているにも関わらず、それぞれの指の動きに対して凜子の身体は敏感に反応してしまう。

 

 いや、直に触られていないからこそ、かもしれない。

 凜子自身に自覚はない。が、迫り来る快楽の連鎖に堕ちつつある身体は求めてしまっている。布越しの刺激と言うじれったさに耐えかね、屈服のとどめへの欲求として表れていた。

 

(ワイシャツ越し……なのに……! 私の胸……粘液まみれにされて……弄り回されて……! あ、ああっ……! このぬるぬるが……だんだん気持ちよくなってきてしまう……!)

 

 しかし愚かにも、凜子はまだ耐えられると固く信じている。心で弱音を吐きそうになっても、言葉には出すまいと懸命に唇を噛み締める。

 そうして声こそどうにか押し殺しているものの、口からは艶かしい吐息をこぼしてしまう緊縛姿の美女。そんな様子に満足したのか、しばらく続けていた胸への愛撫を止め、男が手を離す。

 

「胸をローションだらけにされて揉みしだかれた感想はどうだ? 気持ちいいなら、まだまだ続けてやるぞ」

「……ッ」

 

 言葉で噛み付こうとしたところで、凜子はそれを飲み込んだ。肯定など以(もっ)ての外だが、否定したところで相手のペースに飲み込まれるのは容易に想像がつく。ただ黙ったまま唇を真一文字に結び、胸から広がる快楽に耐えようとする。

 

「なるほど。無視を決め込む作戦か。それとも、下手に口を開けばはしたない喘ぎ声が漏れてしまうから、かな?」

 

 その挑発に対しても無視。言いたいならば勝手に言わせておけ。そう己の心に言い聞かせ、凜子はだんまりを続ける。

 

「まあ無視なら無視でそれでもいい。お前が口を必死に閉ざしている間に……ククク……お前の身体は実に卑猥なアートとなって、俺を楽しませてくれているんだからな。ほら、自分の胸を見てみろ」

 

 どういう意味だろうか。男の言葉を無視しきれずに視線を己の身体に向けたところで、彼女は反射的に息を呑んで呻いていた。

 

「あ、あぁ……!」

 

 縛り上げられたときから、胸がワイシャツに透けてしまっていることには気づいていた。そうやって自分の羞恥心を煽る目的だろう。そうもわかっていた。

 

(だが……これはあまりにも……! ローションでシャツが透けて……私の胸……乳首……こんなにもはっきりと浮き出てしまっているなんて……!)

 

 ローションが染みた薄手のワイシャツは、もはや肌を隠すという機能を完全に失ってしまっていた。ピッタリと凜子の肌に張り付いたそのシャツは、ふくよかなバストの形を隠すことなく露わとし、その中心の乳輪、そして桜色に色づいた乳首までもをはっきりと浮かび上がらせている。

 加えて、その胸を飾っているかのような縄化粧。胸の上下と谷間にかけられた縄が、一層いやらしさを強調していた。

 今、自分はなんと扇情的な姿をしているのだろうか。凜子に耐え難い羞恥心が襲い掛かってくる。

 

「透けたワイシャツから、くっきりと乳首が浮かび上がっているぞ。ククク、なんともエロすぎる格好だな、凜子よ」

「だ、黙れ……! こんな……こんな姿……!」

「嫌か? 口ではいくらそう言っても、身体は違うようだぞ。ほら、お前自身も見えるだろう。そのしこり切った乳首だ。早くもっと弄り回して欲しいと勃起して、悦んでいるようにしか見えないな」

「グッ……! くうっ……」

 

 凜子は言葉を飲み込む。やはり口を開けば相手のペースに飲まれる。先ほどまでと同様、ひたすら口を閉じて耐えるという選択をするべきだと考えたのだが――。

 

「だんまりは面白くない。かわいい声でも聞かせてくれないかな?」

 

 不意に、男に両胸を握り潰されるようにこねられる。そんな暴虐的な愛撫でさえ、今の凜子の身体に駆け巡るのは鋭い悦波。思わず耐えかね、口を開いてしまう。

 

「ひぃああああぁっ!? やっ、やめろおおぉっ! 胸が……潰れて……! ああぁ……あ……っ! 乳首ダメぇッ! 敏感すぎて……ダメッ、ダメェーッ!」

 

 衣服越しとはいえ、媚薬ローションを伴っての愛撫、さらには煽られた羞恥心が背徳のスパイスとなって、凜子は胸だけで軽い絶頂を迎えてしまっていた。

 荒く呼吸を繰り返す緊縛された美女を見て、男は小さく笑いをこぼす。ローションまみれになった両手を責めていた胸から離すと、凜子の耳元で囁いた。

 

「さて……。そろそろお前最大の弱点を責めて、とどめを刺すとしようか」

「ハァ……ハァ……。最大の弱点……だと……?」

 

 未だ整わぬ呼吸のまま、凜子が問い返す。その響きには懐疑的な響きを含みつつも、同時に怖れの色も抱いていた。

 

 膣を抉られ、胸を揉みしだかれ、既に幾度となく無様なアクメを晒してしまっている。縄で縛り上げられたことでさえも恍惚としてしまった。だがそれらと別に、まだ弱点があるという。

 

「ああ。嘘だと思ってるようだから教えてやろう。お前の最大の弱点とは……昨日責められてヒィヒィ言って悦んでいた、ここだ!」

 

 言うなり、男は右手を凜子の下半身へと持っていった。そのまま躊躇うことなく、ローションを纏ったままの人差し指を秘穴へと捻じ込む。

 

「がっ……あああああああぁっ!」

 

 だがそこは性器ではない。先ほど犯された箇所のすぐ後ろ。窄んだ排泄のための穴へと、指が押し込まれていた。

 

「そこ……違うううぅっ……!」

「何が違うんだ? お前にとってはこっちの方がいいだろう? 俺の力によって改ざんされた記憶でも、ここを使ってアナルセックスをしたと刷り込んであるはずだがな」

「あ、ああっ……! う、んんっ……」

 

 無遠慮に、肛門内をほじるように指が動かされる。本来出すための器官に挿入されているという異物感に顔を歪めつつも、凜子は男の言うことは間違い無いと認めていた。

 

 確かについ先ほどまでの作られた記憶では、そこを使っての性交もあり、そっちの方が自分も気持ちよかった、という程度でしかなかった。だがそれは今言われた通り、偽の記憶だ。

 催眠状態を解除されている今ならわかる。凜子の排泄孔は、男の執拗な調教によって急速に開発され、既に淫らに花開いてしまっているということを。

 

(そ、そうだ……。この男は……私のお尻を……!)

 

 呼び起こされる、甘い関係などとは真逆の、偽りではない本来の屈辱の記憶。

 

 まずは腸内を洗浄するためと浣腸液を流し込まれ、我慢することも叶わず、男の目の前で無様に排泄してしまった。それも数度に渡って、である。

 しかも回数を経るごとに凜子のアヌスは熱を帯び始めていたのだった。排泄とは、本来人間の欲のひとつ。現に肛門付近には感覚神経も集中しているために、排泄の際には無意識のうちに快感が伴う。

 こうして、体験したことの無い感覚は、少しずつ彼女の身体へと刻み込まれていった。

 

 その後に、いよいよ本格的な調教が始まった。

 まずは今行われているのと同様の指による愛撫。腸壁を隅々まで指で撫で回し、括約筋を広げて、より太い物を受け入れられるように慣らしていく。

 初めこそ人差し指1本しか受け入れられなかったそこも、時間を追うごとに2本、そして3本と、確実に慣らされていった。

 

 それから待っていたのは器具による責めだった。指によって慣らされたアヌスへ、指よりもはるかに太いディルドーを捻じ込まれた。男性器を模した張り型に腸内が蹂躙され、擬似的な肛門性交を体験させられる。

 さらにはボール状の物体が何個も連なる淫具を、幾度となく押し込まれては引き抜かれた。指とディルドーによってすっかり緩みきった菊座は容易に球体を飲み込み、出し入れで刺激されるたびに認めたくない悦楽が彼女の身体を駆け抜けていた。

 

(あ、ああ……! また……また私のお尻がめちゃめちゃにされてしまう……! 指と器具で散々イかされた後に犯されたみたいに……また……!)

 

 そしてそれらの責めが終わった後に、ついに行われた男とのアナルセックス。今、凜子が怖れているのはそれであった。

 

 最大の弱点。先ほどは本当にそんなものがあるのかと懐疑的であった凜子だが、もはやそんなものは消え去っている。

 凜子は薄々気づいてしまっている。アナルを犯されれば、どれだけ乱れ、喘ぎ、よがり狂うことになるのかを。身体は完全に屈服し、心までも折れかけたあの快楽を再び味わわされれば、今度こそ完全に堕落しかねないことを。

 

「や……やめて……! 頼む……! お尻だけは……ダメなんだ……!」

「ダメ? よく言う。お前のケツマンコはこんなにも悦んでいるというのに。ほら、こうして少し指を動かしてやるだけで……」

 

 肛門内の指が円を描き、一気に引き抜かれた。瞬間、凜子に走る電撃にも似た快楽。

 

「んぎッ……んひいいいいいぃッ!」

 

 臀部から脳髄へと一気に駆け抜けた衝撃に、捕らわれの対魔忍は目を見開いて舌を突き出していた。ガクガクと腰が震え、全身に力が入らない。苦しいはずなのに身体を縄に預けざるを得ず、そこでようやく今のが軽い絶頂だったと気づいていた。

 

「この通り、ちょっとアナルを弄られただけでイクというわけだ。まあここに触れるのは今日は初めてだからな。実質、お預けを食らっていたようなものだ、仕方あるまい」

 

 言いつつも、男は手を緩める気配は無い。いや、むしろ逆。

 

「今度は2本だ」

 

 冷酷な宣言と共に再びアナルから突き抜ける衝撃。指の数が倍になったことで異物感が増され、しかし出すための窄みは確実に指を飲み込んでいく。

 

「あっ、ひいっ……! い、やぁ……! あ、あぁ……」

 

 口をついて出るのは嫌悪の声。だが同時に色のある響きを含んでいることを、男は聞き逃さなかった。

 2本となった肛門への挿入物は、まず括約筋を広げるように蠢き出した。左右に押し広げられたかと思えば、縁に沿って内側をなぞるような軌道を描かれる。

 本来出口であるはずの箇所が入り口へと変えられていく感覚を、凜子は身体を震わせ、甘い声を漏らしながら受け入れていくことしかできない。

 

「入り口はこのぐらいでいいかな。次は奥だ」

 

 既に息も絶え絶えになりつつある凜子の拒絶の言葉より早く、指は腸内へとさらに入り込んでくる。これまで中に入っていた第一関節付近から、一気に第二関節、そして指の根本まで飲み込むほどに。

 直腸へと到達した指は、前後運動を伴いながら腸壁を擦り上げていく。

 臀部を内側からほじくられる感覚。指の根本に肛門の入り口がひっかかる感覚。何より、排泄器官でこれほどまでに感じてしまっているという、嫌悪すべきなのにどこか心地よくさえ感じる背徳の感覚に、凜子の理性が蕩けていく。

 

「んおおおォッ……! お、おぉああぁーッ!」

 

 獣のような悦楽の呻きを上げるたびに跳ねる腰。本来挿入されるべき前の穴からは快楽の証である愛液が溢れ、先ほど中に出された精液と交じり合い、閉じることのできない太股を伝っていた。

 が、凜子本人がそのことに気づく様子はない。迫り来る肛悦の前に拒絶の言葉すら口に出せず、されるがままにその尻を震わせている。

 

「そろそろいいだろう。お待ちかねのチンポをくれてやる」

 

 乱暴に指を引き抜かれる。当然のように、凜子はその瞬間に身体をヒクつかせてしまっていた。

 それから今しがたの言葉は嘘では無いと証明するように、尻たぶが何かでペチペチと軽く叩かれる。手ではない。それよりは小さいものの、太く細長く、そして熱を持ったモノ。

 

「あ、あぁ……!」

 

 確認せずともそれがわかってしまい、期待ともとれる様子の声を漏らしつつ、その顔が背後に向けられる。目に飛び込んでくる、予想を裏付けるような怒張に、思わず喉が鳴らされていた。

 

「随分と物欲しそうじゃないか。そんなにこいつが欲しいか?」

「そんな……こと……」

 

 否定する声が震える。拒まなくてはいけないと思う心と、いいから受け入れてしまえと誘惑してくる心がせめぎ合う。

 答えを急かすように、再度男はペニスで凜子のヒップを擦りつけるように叩いた。決して大きくはない乾いた音と、何よりそれにアナルを犯してもらえるかもしれないという期待感に、出さなくてはいけないはずの拒絶の言葉が出てこない。

 

「ケツマンコにチンポをぶち込んで欲しいなら、そのように言葉にしてねだれ。そうすれば最高の快楽を与えてやる。……対魔忍だからなどというくだらないプライドは捨てろ。全てを捨てて俺の元に下れ。そうすればこれから先、お前が満足するまでそのケツマンコをかわいがってやるぞ」

 

 ゾワゾワッと総毛立つ感覚を、凜子は覚えていた。彼女の隠されたマゾヒズムが、己の破滅という先に待つ快楽に対して期待感を抱いてしまう。

 このまま犯されたい。壊されるほどにお尻を犯されたい。もう対魔忍でもなんでもなく、ただの1人の女、憐れなメスとして犯されたい。

 湧き上がってきてしまう甘美過ぎる被虐の誘惑を、それでも凜子は懸命に断ち切ろうとした。頭を大きく振って少し前まで物欲しそうに眺めてしまった逸物から目を逸らし、搾り出すように答えを口にする。

 

「こと……わる……っ! 敵である貴様に懇願など……してなるものか……!」

「……そうか」

 

 尻の付近で感じられた熱量が遠ざかる。望んだ快楽を得られないという後悔の念を抱きつつも、言うべきことを言ったという己への肯定でそれを打ち消そうとする。

 そうして僅かに気を緩めた、その瞬間を見計らったかのように――。

 

「んぎいぃッ!? あっ、ああああああああぁッ!」

 

 指よりはるかに勝る異物感が、凜子の肛門を襲っていた。

 

「なッ……!? なんで……! 私……ちゃんと言ったのに……!」

「ああ、そうだな。だが俺はお前を犯したいから犯す。理由はただそれだけだ」

「この……外道ォ!」

 

 振り返りつつ必死に叫ぶ凜子。が、男はニヤついた表情から変わらなかった。

 それもそうだろう。どんなに言葉では否定していようとも、振り返ってきた顔からは期待感が見て取れたのだから。

 

 遠慮は無用と判断した男は、半分ほどまで埋没させていたペニスを、あえて一旦引き抜き始めた。

 全てが入れられたわけでなかったことは、振り返ったときに確認していたのだろう。凜子は意外そうに男を仰ぎ見る。

 しかしそれら全てが、この狡猾な男の計算のうち。奥の方はまだ手をつけずに焦らし、かつ浅い部分に引き抜く刺激を与える。

 本来肛門とは排泄のための器官だ。入れられるより、抜かれる時に快感を得るという事例は多い。凜子もまた、抜かれる時の方が感じてしまう口だった。

 

 ゆっくりと、腸壁を擦りながら抜かれていくペニス。だがカリ首の部分が入り口付近に引っかかったところで、男は抜くのをやめた。出っ張ったエラの部分で括約筋を刺激し、浅い部分での快楽を与えていく。

 その度に凜子の口からは短い嬌声がこぼれた。嫌悪と、戸惑いと、明らかな期待を含んだ、男を誘う媚びるような声。

 

 それを確認したところで、男は一気に腰を突き入れた。入り口付近から、腸壁を割って一気に腸奥へと抉りこまれる肉槍。

 さきほどまでの快楽から一転。圧倒的な異物感に、凜子の声色が苦悶――いや、悦楽の色へと変わる。

 

「んおおおおおぉッ!? そ、そんな……いきなりいいいいいぃッ! こっ、これえぇッ……! あ、がああああぁッ……! イクッ……イックううううううゥッ!」

 

 今度こそ凜子のアナルは男のペニスの全てを飲み込んでいた。合わせて迎えてしまうアナルアクメ。感じたはずの苦しさはもはや消え、多幸感が心を満たしていく。

 

「全部入ったぞ。……なんだ、入れられただけでイッたのか? 本当にアナル大好きのスケベな身体だな」

 

 僅かに引き抜いて、再度の前進。それだけでやはり凜子は嬌声を上げて身体を痙攣させる。絶頂の余韻が引かないうちの追撃に、敏感になった身体ではまるで抑え切れない。

 

「あーッ! あ、あああああッ……! あがああああああああぁッ!」

「ハハハ! イキっぱなしだな! さかった獣みたいな声だ。いいぞ、何度もイッてしっかりイキ癖をつけろ。お前が壊れそうになるまで延々と犯してやる。……お前のケツマンコに俺のチンポの形をよく覚えこませてやるよ」

 

 最後の一言を耳元で囁かれた瞬間、怒張を咥え込む秘穴が無意識のうちにキュンと収縮していた。内に秘めた被虐心が揺り動かされたが故の反応。性感帯と化した排泄器官が、男を求めてねだったために起こる現象だった。

 

「ほう。締め付けが一気に強くなった。今のはイッたからというわけではないな? そんなにケツを犯されるのがお望みか」

「違う……! 私は、そんなこと……」

 

 くだらない口先だけの言い訳を鼻で笑い飛ばし、男は一旦腰を引くと、再び奥を抉る。前屈みに吊るされた上半身が跳ね、与えられる刺激の大きさを物語るも、その腰は無骨な手にガッチリとホールドされていた。

 

「ま、待て……! まさか……今……そんな……!」

 

 これから行われることを予測し、凜子が怯えたような声を上げる。対して、それすら愉悦と言わんばかりに笑みをこぼした男は、凜子の腸内をペニスで往復し始めていた。

 

「おっ、んおおおおおおおおおおおおおおッ! ダメ、それダメえええええぇッ! 嫌ああああああああぁッ!」

 

 そして拒絶の声を無視して始まる、無慈悲なアナルレイプ。初めこそゆっくりだったピストンはすぐに速度を増し、凜子を吊るした縄が軋む音と悲鳴のような嬌声、そして互いの肉がぶつかり合う音が辺りへと響き渡る。

 数往復ごとに断続的にアクメの波が身体を駆け巡る。完全にイキ癖のついてしまったアナルは、それでも貪欲にさらなるエクスタシーを求めて、腸壁をペニスへと絡みつかせていた。

 

「あっ、あっ、ああああーッ! やめてやめてやめてええええぇッ! お願い、やめてえええええぇッ!」

 

 気丈なはずの、魔の者たちが怖れる「斬鬼の対魔忍」からは程遠い懇願の声。だがそれは当然のように男には届かない。

 幾多の調教を経た不浄の穴から駆け巡る激悦に、ただただ悶えることしかできない緊縛姿の美女。唇を噛み締めて耐えようにも口はだらしなく開き、涎が口の端を伝って床へと落ちる。

 

「ひゃううぅッ! んっ、んうっ、くぅひいいいいぃッ!」

 

 激しさを増す肛虐に、凜子はひたすらによがり狂った。あれほど太い男の逸物を飲み込んでいるというのに、臀部からは痛みをまるで感じない。いや、感じているのかもしれないが、既に快楽へと昇華されてしまっていた。

 

「揺れてるその胸が寂しそうだな」

 

 腰を抑え続けていた手が離される。そして代わりに手が伸びたのは、少し前にローションまみれにされた巨大な双房であった。

 またしてもワイシャツ越しに、縄でくびり出された根本を力いっぱい絞り上げられ、それから衣服を押し上げている頂を指で扱き上げられる。

 先ほどの胸責めと同じような動きであったにも関わらず、尻穴への挿入を許しているからだろうか、得られる快感はその比ではなかった。

 

「あっ、あああぁっ……! 胸……胸ぇ……! ひっ、ひいいいぃっ! お尻もおおぉっ!」

 

 胸責めの間も当然アナルへの責めは続く。腰から手を離したために抽送の激しさは緩やかになったものの、代わりに腰を密着させ、奥を執拗に小突いていた。荒々しく突かれるのとはまた違う、女芯が揺さぶられるような、どこか浮遊感すら覚えそうな感覚。

 

(何……これぇ……! お尻が犯されてるはずなのに……アソコが……オマンコが熱くなってきて……!)

 

 凜子が感じた感想はあながち間違えてはいない。男は直腸越しに子宮へと刺激を送っている。彼女にとって最大の弱点であるお尻から、少し前に中出しされて男に飢えている子宮を揺さぶられる。激しい抽送でないにも関わらず、腰が動かされるたびに短い喘ぎが止められなく口からこぼれていく。

 いや、むしろ激しくないからこそ効果がある、と言えるかもしれない。さっきまでは断続的に、強制での鋭い絶頂を連続で強いられたわけだが、今度はそれと真逆。イカせない程度に緩やかで、身体を蕩けさせるような刺激が襲ってくる。緩急をつけた、見事な女体への扱い方だ。

 

 同時に行われている胸への愛撫も無視できない。やはり直に触ることはなくワイシャツ越し。それでもローションまみれとなって完全に透けてしまっているシャツの感覚も相俟って、一旦忘れかけていた胸悦の記憶が再び蘇ってきつつあった。

 

「んっ、んっ、あっ、はっ、はあっ……」

 

 拒絶を示していた今しがたまでの声色からは変わっていると、誰が聞いてもわかるほどに艶が乗っている。それは凜子自身も例外ではなく、否が応でも感じてしまっていることを自覚させられた。

 

「やめっ……! 奥……グリグリって……。あっ、ああっ!」

 

 殊に弱点と言われた腸奥への刺激は実に甘美であった。僅かに揺さぶられるだけでも水面が波を生むように全身へと波及し、とりわけ子宮に反射した波は一層強烈なものとなって返って来る。

 肛門内に受け入れた男の微細な動きにも反応して跳ねてしまう身体。指で摘まれる乳首も、触られてすらいないクリトリスも痛々しいほどに勃起し、本気汁と精液の交じり合った淫液が膣から溢れ出る。

 

 もはや身体は完全に屈していた。なのに待ち望む瞬間が、まるで訪れる気配が無い。イキ癖がついてしまい、より深い絶頂を渇望する身体が悲鳴を上げ始める。エクスタシーの階段を昇りながらも焦らされる苦痛に、とうとう心が軋み始めてしまっていた。

 

(あ、あぁ……足りない……。物凄く気持ちよくて……もうイッちゃいそうなのに……これでは足りないぃ……)

 

 心にそんな思いが浮かんだ、その時。不意に男は胸への愛撫も、腰の動きも止めた。両手を再び凜子の腰へと戻し、囁くように呟く。

 

「とどめが欲しいんだろう? くれてやる。しっかりケツマンコアクメで深イキしてみせろ」

「と、とどめなど……いらな……っ! いっ、ぎいいいいいいいいいぃッ!?」

 

 凜子の言葉を無視しての、処刑宣告とも思えるその言葉に後に始まったのは、これまでよりも激しいハードアナルピストン。緊縛され吊るされた凜子に対し、女性器を犯す時と変わらない、いや、それ以上の激しさで腰を打ちつけていく。

 

「あっ、あああああああぁっ! お尻……お尻がぁ……! めくれる……ッ! んおおおおおおぉっ!」

 

 懸命な凜子の叫びも、男には届かない。激しさは一向に納まる気配は無い。いや、その必要は無い、と言うべきであろうか。

 隠れた被虐体質を見抜いている男からすれば、嫌がっているのは上辺の部分だけだとわかっていた。現に目の前の女の身体はこれまでで最も色めき立っている。めくれるほどに抉られても、既に性器と変わらない性感帯へと変貌した腸壁は男を愛おしそうに包み込み、入り口の括約筋は逃すまいとして締め付けてくる。激しくされればされるほど、痛くされればされるほどにその度合いが強まるのだ、それをマゾヒズムと呼ばずしてなんと呼ぼうか。

 

「素直になれ、凜子。イキたいんだろ?」

「嫌……嫌あぁっ……! イキたく……なんてぇ……! あっ、あああああぁっ!」

 

 まったくもって健気な物だと、男は笑いをこぼす。口ではイキたくないなどと言って、懸命に堪えようとしているが、その実はまるで逆。ギリギリまで絶頂を抑え込んでから迎える方が、より深く、甘美なオーガズムへと辿り着くことが出来る。本能でそう理解しているからこその反応に他ならないとわかっているからだった。

 

「ほう、そうか。ならせいぜい耐えてみせろ。だが耐えすぎて壊れるんじゃないぞ。どうせ狂うなら、アクメの波に飲まれてイキ狂え!」

 

 ピストンのギアがさらに上げられた。ワイシャツの張り付いた、縄でくびり出された胸が一層激しく揺れる。イキ癖がついてしまっていつ達してもおかしくない状況で、凜子はただひたすら快楽を押さえ込もうとしていた。

 

「あああーっ! ダメ、ダメえええぇッ! もうダメえええええぇッ!」

「イクか? いいぞ、俺もそろそろ出そうだからな。アナル中出しでイけ!」

 

 アナル中出し、という単語に凜子の顔が青ざめた。肛虐で既に開発され尽くされているのだ。この状態で胎内に精液を浴びてしまっては、後戻りが効かなくなってしまうという恐怖がよぎる。

 が、同時にマゾヒズムを秘めた心はそうなってしまえと囁いてくる。お尻という、本来なら排泄器官であるはずのそこで感じてしまっている惨めな自分に背徳の快感を覚えつつも、かろうじて残る理性が懸命にそれを否定しようとしていた。

 

「んぎいいいいいぃッ! ひぃあああぁッ! あくうぅっ……うぅあああああぁッ!」

 

 それでも身体はまるで言うことを聞いてくれない。迫り来るエクスタシーの波は、とうとう凜子の限界を超え――。

 

「イッ……クうッ……! イクッ、ああああぁっ! イクイクイッちゃううううううゥッ!」

 

 男のペニスが直腸の最奥を抉った瞬間。凜子は壮絶な絶頂を迎えていた。

 

「俺もイクぞ! たっぷり受け取れ!」

 

 同時に、タイミングを見計らったかのように男も凜子の腸内で精液を吐き出す。欲望の白濁が腸壁に染み込む感覚を覚えつつ、イッたままの身体はさらに高みへと登り詰めようとする。

 

「あっ、あああああぁッ!? 熱いのが……お尻の中にぃッ……! ああっ、あっ、あっ、あああああぁーッ!」

 

 悲鳴のような喘ぎ声を上げつつ、射精されるタイミングにあわせるように、吊り上げられた肢体が艶かしく震える。腸内に熱い感覚が迸(ほとばし)るたびに迎えるオーガズム。ただでさえ我慢していたために深イキしているというのに、それが収まることなく断続的に続いてしまっていた。

 

「あ、あぁ……! まだ……イッ……てるぅ……。私……ケツマンコにザーメンたっぷり出されて……あ、あああぁッ!」

 

 身体の痙攣が止まらない。あまりの快感に触れられていないはずの膣からは止め処なく愛液が溢れ、床に水溜りを作ってしまっていた。それでもなお、貪欲な腸壁は男のペニスを逃すまいとうねり、括約筋も締め上げている。

 

 数分にも渡るような激しすぎるアナルアクメを終え、ようやく凜子が脱力したのを確認して、男は未だ固さを保ったままの己のペニスを引き抜いた。腸液と精液が混じった淫液が、ポッカリと開いてしまった排泄孔から糸を引いて太股へと流れ落ちる。

 

「まったく、折角中出ししてやったというのにな。おい凜子、たっぷりくれてやったザーメンがケツマンコ汁と混ざって垂れているぞ。ちゃんとケツを締めろ」

 

 そう言いつつ、男は凜子の纏められた青い髪を掴んで顔を起こし、強引に後ろを向かせる。が、その顔は力無く蕩け切ってしまっていた。

 フン、とひとつ鼻を鳴らした凌辱者は、諦めたように髪を離す。だがこの男がその程度で諦めるはずなどない。代わりに豊満な尻たぶへと、自分の平手を叩きつけていた。

 

「ひッ……!? いぃああああああぁッ!」

 

 乾いた音が響き渡ると同時、凜子の身体がギクギクっと強張る。一瞬遅れて、前後の秘穴から体液が滴っていた。

 

「ケツを叩かれてイッたか。ハハハ! やはりお前はどうしようもないほどのマゾの変態だな!」

 

 再び髪を掴んで顔を引き上げ、今度は前へと回り込みながら罵る。本来なら反論を述べるであろう対魔忍は、だが今は力無く息を整えようとしていることしかできなかった。

 それに満足したか、男は邪悪な笑みを浮かべる。

 

「まだ抗うか? 抵抗しても無駄だと、お前は変態だということがよくわかっただろう。……俺の誘いに、乗る気になったか?」

 

 答えの言葉は無かった。だが、僅かに凜子は首を横に振ったようだった。掴んでいる髪から手へと、弱々しくもはっきりと拒絶の意志が伝わってくる。

 

「……そうか。本当に強情だな。だがそういうお前も嫌いじゃない」

 

 不意に、男は凜子の唇へと自分のを重ねた。脱力しきった口内を舌で堪能し、蹂躙していく。それだけで未だ絶頂の余波の残る凛子の身体は震え、軽く達してしまっていた。

 

「ぷぁっ……。あ、あぁ……」

「堕ちないなら堕ちないでそれでいい。もうしばらく楽しませてもらうだけだ」

「な……にを……」

 

 ようやく僅かながら体力を取り戻した凜子は、男へと質問を投げかける。しかしそれに対する答えは、不気味に輝く瞳であった。

 

「俺の能力は覚えているな? ……もう一度、お前には俺の恋人になってもらおう。そしてしばらくしたら、同じように術を解く。……さて、あと何回、お前のその邪魔な理性は耐え切れるかな?」

 

 悪魔のような宣告に、凜子の目が恐怖の色に染まる。疲労を忘れたように首を振って意思を示そうとするも、髪を掴まれていることでそれは叶わず、身体を動かそうにも術下にあって四肢は動かない。残った身体の部分も、戒める縄が音を立てただけだった。

 

「いや……いやぁっ……! それは……それだけはやめてくれ……!」

「ならば抵抗してみせろ。強い拒絶の心があれば、この術は押さえ込めるんだからな」

 

 もっとも、この状況では到底不可能だとわかっているからこその、男の余裕である。また恋人ごっこを行った上で突き落とすという、残忍で悪辣なゲーム。いざ、再びそれを始めようと、ふうま一族の特徴である邪眼が怪しく輝き始めた。

 

「やめろ……! やめろおおおおおぉッ!」

 

 唯一動かせる口だけで、懸命の抗議の声を上げる凜子。だが、それも全て無駄なこと。必死になって張り上げていた、絶望の悲鳴が止んだところで――。

 

 凜子の身体から完全に力が抜けた。髪を掴まれた男の手と、縛り上げられた縄に全体重を預け、力無く身を任せている。

 

 どこか満足そうに鼻を鳴らして髪を離すと、男は軽く凜子の頬を叩いた。

 

「……おい、凜子。起きろ。俺の声が聞こえるだろう?」

 

 しばらくその問いかけが続いたところで、小さな呻きと共に凜子が意識を取り戻す。気だるそうに顔を上げて男を見つめ――。

 

「……ああ、すまない。もしかして私は……気を失ってしまっていたのか?」

 

 恋人にしか見せないような媚びた笑顔が、そこにあった。

 

「そういうことだ。対魔忍ともあろうお前が、あまりの快感で気絶とはな。……で、どうする? お前のお望み通り縛り上げてのプレイ中だったんだが……。終わりにするか?」

 

 凜子の表情は変わらない。どこか恥ずかしげに、しかし術の成功を裏付けるように、艶のある声で答えていた。

 

「いや……。この縄の感触が……癖になりそうだ。もう少し……このまま私をかわいがってくれ」

 

 男の口の端が上がる。何も知らない憐れな相手に対して歪んだ笑みを浮かべつつ、実に楽しそうに恋(・)人(・)で(・)あ(・)る(・)男は口を開いた。

 

「ああ、わかった。たっぷりかわいがってやるよ。俺達の休日は、まだまだ終わらないものな……」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。