アナルの入口はじんわりと熱くなり、濃厚なワインの香りが辺りに充満した。
「んぅー!」
「なんだ、お前。ケツ入れてほしいのか?」
村田はふたたびペニスを突き入れ、激しくピストンし始めた。
「んっ!んっ!んっ!んっ!…」
村田の背後から、陸は面白そうに写真を撮り続けた。
「誰にやられても気持ちよくなるんだね、さすがは娼婦だよ。和人兄さんに見せるだけじゃつまんないから、ネットにアップしようかな」
あまりに呼吸が苦しくなり、俺は暴れまわって口に押し込まれたタオルを外した。
「はぁっ……はぁ、お前、やめ、ろ」
揺さぶられながらも、俺は陸を睨み付けた。
「はあ?止めろ?何偉そうな口きいてんだよ」
陸は俺に近づき、爪先で俺の脇腹を軽く蹴った。その表情は嫌悪に歪んでいた。
「和人兄さんはずっと、男娼館なんか馬鹿馬鹿しいって言ってたんだ。兄さんは優秀で優しくてきれいで…男娼館に行くのがステータスだと思ってる下等な親戚連中とはまるで違ったんだ。それなのに、お前が出てきてから兄さんは変わった。週に何回もこんなところに通いつめて、挙げ句の果てには身請けするなんて言い出した。お前がたぶらかして兄さんを下等な人間にしたんだろ?」
「ちが…う、和人さまは…そんな人じゃない」
陸は俺の髪を掴んだ。
「知ってるよ!お前なんかより僕は何倍も和人兄さんと一緒にいたし、僕は和人兄さんを愛してるんだ。兄さんは僕にはすごく優しかったけど、いつも寂しそうで笑わない人だった。それなのに、お前と会うようになってからよく笑うようになった」
嫉妬で歪んだ陸の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「和人兄さんは自分の居場所がないって言ったんだ。だから、僕が兄さんを助けてあげたかったのに…」
陸の子どもっぽい嫉妬に呆れながらも、俺は腹が立った。
「身請けしたいって言ってくれたのは、和人さまからだよ…俺が無理に仕向けたわけじゃない」
「うるさい!お前みたいな他人に何が分かるんだよ!」
「和人さまのことは…これから、よく知りたいんだ」
陸は歯をくいしばって唇を震わせ、怒鳴り散らした。
「村田、もっとこいつを犯せ。こいつがイくとこ撮ってやる」
「じゃあ遠慮なく中出ししてやるよ」
村田は俺の脚を抱え、さっきより激しく体を打ちつけた。
「あっ!あぁっ!あぁんっ!」
「気持ちいいか?ケツマンコぐちゅぐちゅいってんぞ!」
乱暴に犯される俺を見下ろして、陸はニヤリと笑った。
「お前なんかに和人兄さんを盗られてたまるか。この薄汚い娼婦が」
その時、ギィと戸が開く音がし、誰かが入ってきた。
「連太郎くん?…いるのー?」
悟の声だった。俺は口を塞がれる前に慌てて助けを求めた。
「悟さん!ここです!助けて!」
バタバタと足音がし、悟がやってきた。
「!?連太郎くん!…だ、誰だお前ら!」
陸は舌打ちし、村田を引き連れて反対の扉から逃げようとした。
悟は慌てて俺に駆け寄り、ロープを解いてくれた。
「大丈夫!?なかなか帰ってこないから、心配して見に来たんだ」
「ありがとうございます…なんとか大丈夫です…」
解放されてほっとしたが、陸に写真を撮られたことを思い出し、悟に話した。
「それはまずいよ。ネットにあげられたら、連太郎くんも男娼館も笑い者になっちゃうよ!」
俺たちは小屋の外に出て、陸と村田を追いかけた。
「あいつらどこ行ったんだ?」
「あ!あそこにいる」
邸の敷地から一般道に出るギリギリの所で二人が黒塗りの車に乗り込む姿が見えた。
「ヤバい、もう車を出す気だ」
黒塗りの車を追いかけ、俺たちは必死に走った。
「無理だ、追いつかないよ」
半ば諦めはじめた時、一台の車が陸の乗った車の前に現れ、逃げ道をふさいだ。
車の中からは大館が下りてきて、陸の乗った車を開けさせた。
俺たちが車の近くまで駆け寄ると、大館が陸からスマホを取り上げているところだった。
「龍ヶ崎家のご子息ですね。このような行為はあってはなりません。私の手で画像は消去させていただきます」
大館は念入りに陸のスマホを確認し、画像を削除した。
「大館さん!ありがとうございます…」
「いえ。また遅くなってしまい申し訳ありませんでした。ワインセラーの監視カメラに不審な人物が映っていると連絡を受けたので参りました」
陸は俺たちと大館を睨み付け、大館からスマホを引ったくると車に戻ろうとした。
「陸!またお前か!」
背後から和人の声がして、陸は足を止めた。和人はひどく怒ったようすで陸に近づき、平手で殴った。
「連太郎に何をしたんだ。正直に言いなさい」
陸は涙目で震えながら、小声で話し始めた。
「…兄さんがそいつにたぶらかされてるって思って…兄さんの目を覚ましてあげるために…そいつがただの娼婦だって分からせてあげたかったんだ…」
肩を落とし、陸はうつむいてしまった。和人はため息をつき、陸に言い聞かせるように話した。
「連太郎は、お前が思ってるような子じゃないんだ。俺はたぶらかされてないし、単純に連太郎に惹かれてるだけだよ。身請けの話だって、娼婦だからじゃなくて、ただ連太郎と一緒にいたいだけなんだ」
ぽんと陸の頭に手を置き、和人は優しく声をかけた。
「お前が俺を好いてくれてるのは知ってるよ。俺だってお前が大事なんだ。でもそれは弟みたいに思ってるからで、恋人として好きになることはできない。ごめんな。…連太郎が好きでも、お前が大事なことに変わりはないよ。だから、もう連太郎を傷付けるようなことはしないでくれ。約束してほしいんだ」
和人に優しく諭され、陸は小さく頷いた。
運転席にいた村田は大館にきつく尋問され、二度と男娼館に近付かないことや情報を漏らさないという誓約書を書かされていた。
和人は実家から迎えを呼び、陸を家に戻らせた。
「あー、ほんとびっくりしたよ…連太郎くん、ユーミットさんの身請け式出られそう?」
「はい、ぜひ見たいんで…まだ間に合いますかね?」
縛られていたせいか少し体が痛かったが、俺は笑顔で返事をした。和人は俺の体を引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
「和人さま?」
「ごめんな、連太郎…俺が何にも気が付かないせいで、いつもお前を辛い目に遭わせてる」
額にキスをされ、俺の体が一気に熱くなった。
「そ、そんな…気にしないでください。来てくれて嬉しかったです。ほら、和人さまも一緒に戻りましょう」
なんとなく恥ずかしくて、俺は和人の腕からすり抜けると、赤くなった顔をごまかすように邸に向かって走り始めた。
邸に戻り、五階の会場に入るとちょうど誓いの儀式が始まったところだった。
会場は暗くなり、ステージだけが妖艶な灯りに彩られている。ステージの上にはアラビア風の豪奢な装飾が施された大きなベッドが置かれ、その周りには青く薄い布の天蓋が何重にも下ろされていた。そこだけがまるで別世界のように淫靡で、映画のセットを見ているようだった。
ステージに城崎が現れると、観客に向かって一礼し、ベッドの中に入った。城崎は天蓋の影でタキシードを脱ぎ、装飾の施された腰巻きだけになった。
彼に続いてユーミットが現れ、ゆっくりと天蓋の中に入って行った。
ユーミットと城崎はしばらく見つめ合うと、観客の前で熱いキスを交わした。
「えっ、みんなの前でするんですか?」
悟に尋ねると、耳打ちするように教えてくれた。
「うん。‘旦那様’たちの前でセックスして、完全に城崎さまのものになることを宣言するんだ」
城崎はユーミットの首筋にキスをしながら、ゆっくりと衣装を脱がせていった。赤くなった乳首を指先や舌で転がされるたびに、ユーミットの甘い嬌声が会場に響いた。やがて城崎の指はユーミットの臍や脇腹を撫で、すでに勃ちあがって蜜を垂らすペニスを愛撫した。
「あ、…んっ…あぁん…」
くちゅくちゅという濡れた音がし始めると、城崎はユーミットを優しく押し倒し、脚を開かせた。蕾のようなアナルに舌を這わせると、ユーミットの体はびくんと跳ねた。
「はぁ、あぁんっ…!やぁぁ…」
長く伸びたしなやかな脚がわななき、舌の愛撫にユーミットが感じていることを見せつけた。
「ユーミット、入れるよ…」
ゆっくりと城崎は指をアナルに入れ、少しずつ指を増やしながら中を解していった。
「あぁんっ…あんっ…あんっ…」
指の動きが速くなるにつれ、ユーミットの息も荒くなってきた。城崎はゆっくりと指を抜き、ユーミットにキスをした。
濃厚なキスが終わると、ユーミットは自らさらに脚を開き、甘い声で言った。
「……僕は、ユーミットは……城崎さまのものになります。だから、城崎さまを…僕の中に挿れてください」
城崎は腰巻きをほどいて全裸になり、固く勃起したペニスをユーミットの太ももに這わせた。ユーミットは早く挿れてと言わんばかりに、艶かしく腰を揺らし始めた。
「…君の中に挿れるよ。ユーミット、僕のものになってくれるんだね」
こくんと頷くと、城崎のペニスはアナルを押し広げながら奥まで突き刺さった。
「んっ!…あぁぁん…」
城崎はゆるやかに腰を動かし始め、ユーミットはそれに合わせて甘い嬌声を漏らし始めた。
「あんっ…あんっ…あんっ…あぁぁ…」
ペニスでの愛撫に、ユーミットのペニスも赤く勃起して悦ぶように揺れていた。
ピストンはどんどん激しくなり、ぬちゃぬちゃという音が響く。二人が繋がっている部分からは、白く泡立った蜜が溢れていた。
「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!…だめぇ、イっちゃうぅ…」
泣き声の混じった嬌声をあげると、ユーミットの体は震え始めた。
「あぁんっ!あぁあっ!しろさきさまぁ、イく、イく、イく…イっちゃうよぉ…」
「かわいいよ、ユーミット…一緒にイこう」
城崎は奥まで打ち付けるようにピストンし、ラストスパートに入ろうとしていた。
「あぁあっ!あっ!あっ!あっ!…あぁぁん!イくぅぅぅ!」
ペニスから大量の白濁した精子が放たれ、ユーミットの体はびくびくと痙攣した。城崎も同時に射精したのか、ユーミットの中に精子を擦り付けるようにして腰を動かしている。
「はぁっ…はぁ、」
「んっ…あぁんっ…」
ぐったりと快楽の余韻に浸る二人を隠すように、踊り子の少年たちが天蓋の布を全て下ろし、ステージの幕が下ろされた。
会場は明るくなり、‘旦那様’や少年たちの興奮したようなざわめきが広がった。
「ユーミットくん、あんなに乱れて…僕が身請けすればよかったなぁ」
「おい、あの子は理央ちゃんの次に人気ある子だぞ?城崎さんくらいの財力がないと身請けなんてできないよ」
「あそこまで用意するなんて、さすがだな。城崎さんは始めからユーミットくん一筋だったし、俺らには無理な話だよなぁ…」
ほろ酔い気分の‘旦那様’たちは、口々に噂をし合っていた。
「連太郎」
和人に呼ばれ、俺たちは会場を出た。
五階の端には小さなバルコニーがあり、俺と和人は夜風に当たった。
「……気持ちは、まとまったか?」
静かな夜の庭を見つめたまま、和人はさりげなく俺に聞いた。
「…あの、和人さま……さっき陸君に言ってたことって、本音ですか?」
和人は俺の方を向き、まっすぐに目を見つめてきた。どくんと胸が跳ねた。
「俺は、連太郎を遊び相手だなんて思ってないよ。最初はそう思ってたときもあったけど。お前を恋人として、一人の人として愛してるんだ」
あまりに真剣に告白され、俺は気恥ずかしくなってうつむいてしまった。
「お、…俺は、その……」
バクバクとうるさいほどに心臓が鳴り響いていた。
「俺も…和人さまが好きです、でも…身請けされたら俺、どんな立場でいればいいのか分からないです…」
最後の方は消え入りそうな小声になってしまった。
「身請けされたら、連太郎は俺の恋人になるんだ。俺もお前の恋人になる。だから、もう和人さまって呼ぶのも、敬語で喋るのも止めにしないか?」
ふと顔を上げると、和人は優しく甘い表情で俺を見つめていた。
「連太郎、身請けを受けてくれるか?」
「…はい、和人さま」
「和人でいいよ」
「………和人……」
俺がぎこちなく言うと、和人は微笑んで俺の額にキスをした。
(第16話に続く)