5.
パタパタ。
パタパタパタパタ。
ピトッ。
パタパタ。
パタパタパタパタ。
ピトッ。
パタパタ…………
何回繰り返したか分からない団扇の扇ぎと、水の入ったグラスをアクアに当てる。
余程ヌルヌルがショックだったのだろう、それはもうとてもとてものぼせていて、もう担ぎ出してから20分も経とうとしているのに全く回復の兆しがない。
当ててるコップの中の水は何故か徐々になくなっていくし、団扇は近づけると発火するしで酒場の人、もといギルドの人に冷却プールにでも入れますか?と言われたが、そんな事したらこいつのせいで蒸発します、と答えておいた。
しかし、酒場の人の計らいによって足元には10Lを超えるであろう大容量の水筒(?)が何本も出置かれている。
…………もうそろそろ、こいつ自身も蒸発するかもな。と思いながらも、空いたコップに水を足すべく足元から水を取り出す。
その時、目の前に蝿が飛んできて驚いた俺は思わず水をアクアへひっくり返し床にこぼれー
なかった。
「⁉︎」
固まる俺を他所にアクアがむくりと起きだす。
まさか、あれは蒸発じゃなくて水を吸収してたのか…?
「ふわあぁぁ………やっと水が戻ってきたわ。ねぇカズマ、一体どきゃあぁぁぁぁー!」
迷わずにアクアに水を被せる。
しかし、水不足のアクアに全て吸収される。ならば。
「ふっふっふ。今の私には多少の水を掛けても全部吸収するわ!
そんなカズマ程度の多少の水くらい…ねぇ待って。ちょっと多くない?カズマさん、そろそろ限界なんだけど!もう吸収できなくなってきたんですけど!やめて!もうやめて!」
アクアの髪がびしょびしょになったところでアクアが反抗してきた。水は残り2本。くそっ、もう少しだったのに!
「よぉアクア。もう大丈夫なのか?」
「あんた私に水を掛けといてそれはないでしょ!」
「うっせぇ!誰がお前をここまで運んで介抱したとおもってるんだ!」
「はぁ⁉︎そんなの知ら…………もしかして、運んでくれたの?」
「ま、まぁな。気を失ってたし、別に運ぶのはそんな大変じゃなかったぞ。」
「あ、そっか………ありがと、カズマ」
「おぅ……」
自分から言っておいてなんだが、気まずすぎる。
お互い、少し照れたまま食事を摂ろうと席について、アクアが止まる。
「ん?どうしたアクア」
「ねぇカズマ。私は気を失ってたのよね?」
「そうだな。おかげで全く抵抗なかったからな」
「変なことしてないわよね⁉︎」
「してねぇよ!」
「だって意識がなければ抵抗できないから好き放題!」
「するか!大体、意識あって抵抗あった方が萌えるだろうが!意識あった方が締めつけてくるしな!」
周りの女性たちの視線が痛い。
しかし、野郎どもは頷き合っていて、俺にサムズアップを送ってくる。
そして、アクアは照れてるのか怒りなのか顔を真っ赤にしている。
「や、やっぱりただの変態よこのクソニート!あんた、少しは自重しなさいよ!」
「それがどうした!大体、お前みたいな駄女神(笑)に発情すると思ってんのか!」
「馬小屋で一緒に寝たときあんた私のお腹に」
「いくぞ駄女神!」
「上等よ『この素晴らしい右手に祝福を!』」
酒場で取っ組み合う俺らを見てその場にいた冒険者たちが歓声をあげる。
アクアの攻撃を捌き、こちらの攻撃を躱される。さすが運と知力以外カンストしてるだけあって強い。
だがこの女神、不意打ちにとても弱い。今まで勝ってこれた理由がそれであるが、そう何度も通じないだろう。
でも、やるしかない!
俺は立て掛けてあった剣を持ち、テーブルの上のグラスをアクアに見えないように手で弾きあげてから襲いかかった!
持った剣を垂直に出し、アクアの顔へ向けて切っ先を向ける。
それをアクアは危なげなく受け止める。
そして、その瞬間俺の勝ちが確定した。
先ほど俺が弾いたコップの水を全て吸収した。見事なまでにドヤ顔のアクア。
まるで悪い弟子を指導するかのように目をつぶりながら指を振る。
心底うざいが、それがこいつの知力の低さを表している。
「ふっふっふ〜、カズマ如きが女神である私を倒せるわけがないわ。大体、女神である私に向かって剣を向けることが間違いなのいったぁぁぁぁぁい!」
大体、動物というのは戦闘中に敵を前にして目を瞑ることはない。
やはりこいつは馬鹿だった。
アクアが鞘ごとつかんでそのままにしてくれたので、俺は手を離し、机の下から2本の水を持ってくる。
そして、鞘に当たらないように静かに抜刀し、柄でアクアの頭部を強打した。
「何すんのよこのぶはあぁぁぁぁーーー!」
アクアが顔を上げた瞬間、足元に持ってきておいた2本の水を思いっきりアクアにかける。
「よっしゃあぁぁぁ!今日も勝ったぜ!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!』
酒場の中で大歓声が巻き起こる。
特にそんなつもりはなかったのだが、酒場での風物詩となり、決闘が始まると冒険者がどちらが勝つかを賭け始まっていた。因みに、賭けられた額は勝った方が全額もらえることになっている。
賭けというか、一種の観戦料と化している。
これで全然全勝!
因みに、この頃から「鬼畜のカズマ」と呼ばれていたと知るのは少し後のことだ。
続く。
次回は3月12日に投稿します!
お楽しみに!