ヒカセンの独白は自分がメインクエスト等をやっている時に感じた事をベースに、世界観を語る系の雑談スレの書き込みとかを参考に書きました。
相棒って呼んでくる人はいっぱい居ても、ヒカセンの事を本当に心配してくれる友人はいまだにオルシュファンだけってどういう事なの……?
あれから数時間後、満面の笑みを浮かべたオルシュファンから矢継ぎ早に料理や飲み物を勧められながら美味しい夕食をご馳走になった後で、私は彼の私室の扉の前に立っていた。
夕食の時にオルシュファンが、「今夜は一段と冷えるな……。」と言っていた通りに辺りの空気は冷えきっていて、吐く息も白くなっている。
それでも扉を叩こうとしている手が震えているのは、決して寒さのせいだけではないというのは私自身よく分かっていた。
「……すぅ……はぁー………。よし!こうなったら、腹をくくるしかないよね……。」
私は目を閉じて大きく深呼吸してからそう呟くと、意を決して目の前の扉をノックする。
その数秒後、重そうな木の扉が勢い良く開き、いつものホーバージョンではなく普通の服を着たオルシュファンがイイ笑顔で顔を出した。
「待ちかねたぞ!さあ、早く中へ………!?」
オルシュファンはそう言いながら私を見ると驚きのあまり目を見開き、歓迎の台詞の途中で固まってしまった。
それもそのはず、私はストライプサマーホルターとストライプサマーダンガという、いわゆる耐熱装備(という名の水着)の上下とサンダルのみという格好で彼の前に立っていたのだから。
オルシュファンはしばらくの間口をあんぐりと開けて立ちつくしていたけれど、「………と、とにかく早く部屋の中に入ってくれ。」と、我に帰った彼に促されて、私は彼の私室に足を踏み入れた。
私室の中は部屋の隅に筋肉を鍛える為の道具があるのが目につく以外はあまり飾り気がなく、家具も物入れや寝台等の実用的なものが置いてある程度で、それが根が真面目な彼の人柄を思わせる。
私は恐る恐る部屋の奥に進みながら彼の私室の中を見回していると、部屋の中にある棚の上に、前立てに馬の意匠を施した東方風の兜が飾ってあるのが目に止まった。
(……あれは降神祭の時に被っていた午形兜だ。あの時は、ひんがしの国から来た馬奉行さんとチョコボ運輸の人が揉めている所でいきなりこれを被ったオルシュファン様が来て……その後に何だか物凄い事を言われた様な……。)
その時の事を思い出しながらオルシュファンを見ると、普段私に向けられている温和な表情は鳴りを潜め、いつも私に筋肉を披露して欲しいと言っている彼とは別人の様に出来るだけ私の方を見ない様にしていた。
そして何処かから毛布を持って来るとそれを私の肩にかけ、暖炉の側にある椅子に座らせるとオルシュファンは怒っている様な、いつになく厳しい顔で私を見つめてきた。
「全く……お前は一体何を考えているのだ!………大方、何の見返りもなくお前達を匿っている私に対して恩を返そうとその様な事をしているのだろうが………。」
そう言いかけるとオルシュファンは不意に私から視線を逸らした。……と思った次の瞬間、彼がちらりと私の体を横目で見てゴクリと生唾を飲み込むのが見えた。
彼の顔が瞬く間に赤くなっていくのは、多分暖炉の火のせいだけではないだろう。
(えっ……!?お、オルシュファン様が…筋肉を見ないで、私の……水着姿を………?)
筋肉の事しか眼中に無い普段の彼からは予想が出来なかった反応に、自分にも少しは女性としての魅力があるのかと安心する反面、戦う為に露出の多い装備を身につけるのではなく自分の体を見せつける為に耐熱装備を着ている事が急にとても恥ずかしくなって、私は真っ赤になって俯きながら上目遣いでこっそりとオルシュファンの様子を伺った。
すると再び私の体を盗み見ようとしたオルシュファンと目が合い、お互いが急いで目を逸らすと彼が気まずさをごまかす様に大きく咳払いをする音が聞こえた。
「……と、とにかく私はお前という盟友の為に微力を尽くしたに過ぎないのだし、私がお前に受けた恩に比べれば私がしている事など些細なものだ。だから、その………気にするな。」
「……ええ。分かっていますよ、そんな事。」
赤面して俯きながら黙っていた私が不意にそう呟くと驚いたオルシュファンが私の方に向き直り、下を向いたままの私を見つめてきた。
「分かっているんです。……貴方が私に恩義を感じているだけではなく真の友人として助けてくれた事も、貴方の……趣味に合わせた事をしてその気持ちに報いようとしても、貴方は喜んでくれない事も。」
「………では、何故この様な事をしたのだ?」
私は俯いた顔をゆっくりと上げて困惑した表情のオルシュファンを真っ直ぐ見つめ、自分を抑えつつ心の中で覚悟を決めて小さく深呼吸してから口を開いた。
「オルシュファン様、私はエオルゼアの守護者や光の戦士と呼ばれる冒険者である前に、一人の女なんです。………女性が夜更けに、男の人の部屋へこのような格好で訪れる。この意味が分かりますか?」
ただ言葉を発しているだけなのに足がガクガクしてきて、他に何も聞こえない程心臓の音がうるさく感じる。蛮神やアシエンと戦う時でさえ、こんな風にはならないのに。
涙で目の前が曇ってきたのに気づいて慌てて下を向いた私の肩に、不意に暖かくて大きな手が触れてきた。
「………すまなかった。まさかお前が私の事を、そんな風に思ってくれていたとは………。」
そう呟く声が聞こえたのと同時に前に引き寄せられ、オルシュファンに抱き締められた。彼の匂いと息遣いを感じて、さらに心臓の鼓動が早くなる。
「……だが、それならそうと早く言ってくれたら良かったものを……。私の誘いをことごとく断ってきたお前が、私の事を………その様な対象として見ているなどとは、露ほども思わなかったぞ………。」
「だって初対面からいきなりああいう風に言われたら、それは警戒しますし……。その後も、誘いには乗りづらいですよ。」
「……む、そうか……。だが、お前があまりにも良すぎてな。……私としたことが、自分を抑える事が出来なかったのだ。」
そう言うとオルシュファンは私の目を真っ直ぐに見つめ、紅潮した頬を緩めた。
「……お前は鍛え上げられた強靭な肉体と健全で曇りない心を持ち、何より真摯によく働く。……そしていかなる困難にも臆する事なく立ち向かい、それに打ち勝つ度にお前の肉体と精神は更なる成長を遂げ、眩いばかりに輝いていく………!そんなお前から……愛の告白を受けるなど………ッ!………私にとっては、この上ない僥幸…………!!」
その言葉に私は焦がれていた彼の腕の中に居心地の悪さを感じて、彼の熱く真剣な眼差しに目を伏せた。
「……私は、貴方が思っている程強くはありませんよ。いくら人とは違う力を持ってはいても、私個人が出来る事なんてたかが知れています。ウルダハの祝賀会だって、結局は仲間を護れずに………仲間に庇われて、ただ逃げ延びただけでした。」
「そんな事は………!」
自虐する様に呟く私の言葉を否定しようとしたオルシュファンを制止して、私は力なくかぶりを振った。
「……私達が逃げてきた時に共に暮らそうと言って下さって、すごく嬉しかった。でも、その言葉に甘えてしまうと……弱い私を貴方に見せてしまいそうで、どうしても留まる事が出来なかったんです。貴方には、貴方が気に入ってくれている私だけを見ていて欲しかったから……。」
心の内を話す度に、大粒の涙が零れてきて私室の床を濡らしていく。
「貴方はいつも私の味方で居てくれた。私がどんな厄介事を持ってきても、例え私がお尋ね者になっても私を信じて力を貸してくれた。……それは、私にとって何物にも代えられない程の価値があるんです。」
流れる涙と共に、普段心の奥に押し込めていた気持ちが溢れ出してくるのを止められない。
「いくら英雄だ光の戦士だと持ち上げられていても、私は各国のグランドカンパニーを始めとするエオルゼアの組織にとっては駒でしかないんです。そしてそれは、例え暁の血盟と言えども例外ではありません。……でも貴方はそんな私を、見返りを求めずに助けてくれる。……その事だけで、私は……とても、救われて……いるんです………。」
せめて嗚咽が混じらないようにと言葉を紡ぐけれど、だんだんとそれすらも怪しくなっていく。
「……それに……分かって、いるんです……。私は、ただの…冒険者で、貴方とは……きっと、釣り合わない……。でも……。わ、私は………っ、あ、貴方の事…………っ!」
涙どころか、鼻水まで出ちゃうなぁ。と、頭の隅で他人事の様に思う私が居る。
顔じゅう涙でぐしゃぐしゃで、震えながら真っ赤になって泣いている私。
ああ、多分今の私は、きっと彼が一番見たくない私なんだろうな……。
それでも私を抱き締めた腕の強さが嬉しくて、私の愚痴や弱音を黙って聞いてくれる優しさが暖かくて………。
気がつくと、私は彼の腕の中で小さな子供の様に声をあげて泣きじゃくっていた。
ひとしきり泣いた後に涙を拭いて顔を上げると、優しい表情をしたオルシュファンの顔がすぐ近くにあって少し気恥ずかしくなる。
「ごめんなさい、みっともない所を見せてしまって……。もう、大丈夫ですから。」
「……お前は逞しいのではなく、逞しくならざるを得なかったのだな。……お前が背負っているものを、私が少しでも軽くしてやれるのなら良いのだが………。」
私の頭を優しく撫でながらそう話す彼の落ち着いた優しい声が胸に染みて、思わずまた泣きそうになる。
「もう充分すぎるほど助けてもらっていますよ。ただ……我が儘を言わせてもらうなら……私を、貴方を慕うただの女で居させて下さい。……少なくとも、今だけは。」
その言葉にオルシュファンは少し驚いた後、真剣な顔になって私に問いかけた。
「……本当に、私でイイのか?」
「はい。……貴方がイイんです。」
私達はしばらく真剣に見つめあった後不意にどちらからともなく笑いあい、それから互いに瞳を閉じて、そっと唇を触れ合わせた。