※この作品はR-18です。

真説・凄ノ王   作:鳳凰009

10 / 147
第10話:超能力の巨人

 翌日、真悟は雪代母娘の容態を早く知りたくて、怪我を押して学校に行こうとしたものの、姉涼子がそんな真悟を宥め、真悟はこの日学校を休んだ。昨夜は眠りに付いても昨夜の悪夢が頭を過ぎり、真悟は何度も魘されながら目が覚め寝不足だった。

 

(雪代さんとお母さん、どうしているだろう?)

 

 真悟は二人の身を案じ、目からは涙が零れた・・・

 

 その日のお昼休み、涼子のクラスに珍しくミーコがやって来た。ミーコは涼子を呼ぶと、

 

「ミーコ、あんたが私に会いに来る何て珍しいわねぇ?どうしたの!?」

 

 1年の時ならいざ知らず、最近は交流が無いミーコが態々訪ねて来た事で、涼子は小首を傾げた。

 

「うん、ちょっとね・・・涼子、場所を変えない?」

 

「別に良いけど・・・何?」

 

 ミーコは涼子を屋上へと連れ出すと、

 

「ねぇ、涼子・・・真悟ちゃんの様子どう!?」

 

「エッ!?何でミーコが真悟の事を?まさか!」

 

 涼子の表情が険しくなり、ミーコの両肩を掴むと、

 

「昨夜真悟が大怪我して帰って来たけど・・・ミーコ、あんた何か知ってるの?」

 

「うん・・・涼子、誰にも話さないって約束してくれる?」

 

 ミーコに念を押された涼子は、コクリと頷いた。真悟がどうしてあんな大怪我をして帰って来たのか、姉として知っておきたかった。ミーコは辺りを見回すと、涼子に耳打ちし、昨夜の真悟と雪代母娘の出来事を語った。涼子は同じ女性として、雪代母娘が青沼達にされたであろう、酷い仕打ちの数々を聞き、表情を強張らせた。

 

「そんな事が!?それで真悟は、雪代さん達を庇って・・・」

 

「うん・・・家には送ったんだけど、二人共かなりショックを受けてて・・・真悟ちゃんの事も心配してたから、こうしてあたいが代わって様子を聞きに来たんだぁ!」

 

「そうだったんだ・・・ねぇミーコ、今日部活サボれる!?私も雪代さんの所に、お見舞いも兼ねて一緒に行きたいんだけど・・・」

 

「構わないけど、家に居るかどうか分からないよ?」

 

 その日の放課後、涼子はミーコと共にお見舞いも兼ねて小百合の家に赴いたものの、雪代家の中は静まりかえり、人の気配は無かった。二人はお見舞いの品を玄関に置くと、諦めて帰って行った。

 

 家に帰った涼子は、真悟の部屋を訪ねると、ミーコから聞いた事を正直に話し、小百合の家に行ったが、留守のようで会えなかった事を伝えた。真悟は悲しそうな表情をしていたが、小声ではあったが、自分の代わりに小百合母娘の事を気に掛けてくれた涼子に感謝し、

 

「姉ちゃん・・・ありがとう!」

 

「真悟・・・」

 

 涼子は思わず真悟を抱きしめた・・・

 

 幼い時から喧嘩など大嫌いで、泣き虫だったが、やる時はやる子供だった事は、姉の涼子には分かって居た。喧嘩などしない真悟が、雪代母娘を守る為、必死になって青沼達に戦ったのかと思うと、涼子は真悟を愛おしく思えた。

 

「真悟、雪代さんに一人で会いづらかったら、あたしが一緒に行って上げるから、何かあったら、何時でもあたしを頼って!」

 

「うん!」

 

 部屋の前で聞いていた和子は、ここは涼子に任せようと考え、その場を後にした・・・

 

 

 雪代事件から一週間が経った・・・

 

 真悟は三日目から登校したものの、小百合はあの日から登校する事は無かった。姉と共に何度か連絡を試みようと真悟はしたのだが、小百合の家は何時行っても静まり返ったままだった。その頃には、小百合の身に何があったかは、学校の一部でも広まっていたが、被害者の小百合は学校に来ず、加害者の青沼グループは早々に学校に平然と来ていた。ただ、変わった事と言えば、青沼グループは真悟を見ると、一目散に逃げ出す事だったが、それは、真悟の後ろに居るであろう、瓜生達を恐れての事なのは真悟にも分かっていた。

 

 美剣千草は、自己嫌悪に陥っていた・・・

 

 真悟に犯されそうになり、真悟を恐れた美剣は、少しの間真悟と距離を置こうと決めた矢先、今回のような大事件が起こってしまった。更に被害者は、超能力クラブの部員で有る真悟と小百合なのだから・・・

 

(私があの時、朱紗君から距離を置かなければ、二人にこんな苦しみを与えずに済んだのに・・・)

 

 美剣は、自分が真悟の事を警戒していれば、青沼グループ程度なら、自分の超能力で追っ払う事が出来たのにと悔やんでいた。美剣は、真悟をどう励ませば良いのか、言葉も見つからなかった・・・

 

 

 翌日のホームルーム、真悟に取って耳を疑うような話を、担任の老教師が生徒達に語った。小百合が、父親の都合で転校した事を真悟は知った・・・

 

 真悟は放課後、急ぎ小百合の家に向かった。まだ間に合ってくれと心の中で叫びながら走った。だが既に、小百合一家は引っ越した後で、真悟がその場にへたり込むと、玄関に真悟宛の手紙が張られていた。真悟は慌てて封を切り中の手紙を見た。

 

 ・・・朱紗君、私の事は忘れて・・・さよなら!・・・

 

 ただそれだけ書かれた手紙だったが、真悟の心は悲しみに覆われた。その悲しみがやがて怒りに変わり、怒りが心の奥底で湧き上がると、真悟の理性は吹き飛んだ!

 

 真悟は、まるで野獣のように吼えると、真悟の身体に異変が生じた。

 

「俺は、俺は、許さない・・・許さないぞぉぉ!!この町の悪を、君達を傷つけたこの町の悪を・・・絶対にぃぃぃ!!絶対にだぁぁぁぁ!!!」

 

 真悟の髪は、強風に吹かれているかのように激しく靡き、背中の筋肉は急激に盛り上がると、制服がビリビリ破れていった・・・

 

 真悟達が住むM市は、治安の悪化が著しかった。この町は、まるで悪を呼び込むように暴力と不正が蔓延り、取り締まる筈の警察ですら、暴力団と密な関係を気付き、黙認されていた。その夜、この町の暴力団外道会の事務所に、不思議な力を使う巨人が現れた。巨人は凄まじい力で悪を排除していった。

 

「て、てめえ・・・どこの組の回し者だ?」

 

 組員達は、巨人に恐れながらも、拳銃を一斉に構えて威嚇したものの、巨人は超能力を使い、簡単に拳銃をへし曲げ、部屋中がまるで嵐の中にいる様な状況を作った。まるで悪魔のようなチかアヲ使う巨人に、組員達は恐怖していた・・・

 

「俺は・・・許さないぃぃ!!この町の悪を・・・絶対にぃぃぃ!!!」

 

 巨人の叫びと共に、外道会のあるビルは跡形もなく壊滅した!

 

「何ぃ、外道会のビルが壊滅したぁ!?フンフン、それで・・・良し、分かった!直ぐに取材に行かせます!!情報ありがとうございます!!」

 

 とある新聞社、市民から、外道会のビルが壊滅したという情報が寄せられ、編集長から部下に指示が飛んだ。

 

「おい、良くは分からないが、外道会が壊滅したそうだ!こりゃあ、大ニュ-スだぞ!!早速取材に行ってくれ!!」

 

 慌てて、取材に出発する記者達だったが、編集長は地団駄を踏んだ。何故ならこんな大事件が起こるとは思わず、社内一の敏腕記者を、海外取材に行かせてしまったのだから・・・

 

(こんな事なら、朱紗君を海外取材に行かせるんじゃなかったなぁ?)

 

 編集長は、心の中で後悔したが後の祭りだった。彼が心の中で言った朱紗とは、真悟、涼子の父である朱紗英介の事であった。英介は優秀な記者で、今年になって海外特派員として、現地に送ってしまった事を後悔していた。

 

 この巨人の力に、美剣と瓜生は即座に気付き、様子を窺いに町へと出向いた。

 

 超能力の巨人は、外道会の敵対組織、閻魔組にも現れた。こちらの組も外道会同様、巨人の悪魔のような力の前に、成す術も無く壊滅させられた。

 

「チッ、外道会と閻魔組に睨み合いさせておけば、こっちも検挙率上げられるのによぉ・・・」

 

 まるでヤクザのような刑事は、吸っていたタバコを投げ捨てると、閻魔組の中から巨人が飛び出し、

 

「この野郎か!?よし、銃を構えろ!おい、貴様、おとなしくしな!じゃねぇと、抵抗した事にして射殺するぞ?」

 

 現場を指揮していた刑事が、巨人におとなしくしろと命令するも、巨人は我関せずそのまま歩み続ける。

 

「構わねぇ!撃てぇぇぇぇ!!」

 

 刑事の合図と共に、巨人目掛け拳銃が発射された筈だった。だが、巨人は超能力でピストルを捻じ曲げ、パトカーを宙に浮かべて衝突させ、呆然とする警官隊を余所に、威風堂々と姿を消した。

 

 M市はその夜パニックとなった!!

 

 瓜生麗は、その様子を向かいのビルより監視していたが、巨人の圧倒的超能力を目の前にし、驚愕しながら考えていた。

 

「あの巨人・・・何者だ!?恐るべき念動力だったが・・・あいつは歩き兵器だ!世界がこの事件を注目するぞ!!この町はますます混乱していくだろう・・・クックック見物だぜ・・・アハハハ」

 

 一方、美剣千草も巨人の姿に恐怖していた。チラリとみた美剣は、咄嗟に巨人の心の中を読んだとき、思わずハッとした。

 

(あの男の心は、意識は、朱紗君だった!でもあの姿は、朱紗君とは別人のよう・・・私は・・・私達は、考え違いしていたのかも知れない!?瓜生麗では無く、朱紗真悟こそ・・・伝説の凄ノ王!?)

 

 巨人となった真悟は、テレポーテーションを使い、家の前に現われると、よろけながら家の前まで帰って来た。家の中では、母和子と姉涼子が、真悟の帰りを待っていた。

 

「もう、真悟ったら0時になるって言うのに・・・ママァ、警察に届けようよ!?」

 

 涼子は真悟を心配し、警察の電話しようと相談を持ちかけるも、本を読んでいる和子は、呆れたように、

 

「大げさねぇ・・・そこまでしなくても大丈夫よ!真悟は男の子何だしね!!」

 

「ママァ、何言ってるのよ!真悟はこの間も大怪我して帰って来たじゃない!!またあんな状況になっているかと思うと、あたし、あたし心配で・・・」

 

「男はそれくらいが丁度良いのよ!喧嘩して強くなるものよ」

 

「もう、ママったら薄情なんだからぁ、華奢な真悟じゃ、殴られた弾みにコロッと死んじゃうかも知れないわよ!!」

 

 涼子は真悟の身を心配し、外に捜しに行こうとした時、ちょうど、玄関のドアが開いた。涼子はほっとしながら玄関に出迎えに行くが、入ってきた人物を見て思わず悲鳴を上げた。それもその筈で、家に入ってきたのは、筋骨隆々とした巨人だったのだから、涼子は慌てて和子を呼び、

 

「マ、ママァ、来てぇ!あっ、勝手に入らないでよ!!」

 

 涼子は驚きながら抗議するが、巨人はそんな涼子の言葉が聞こえ無いかのように、そのまま家の中に入ってくる。和子は、涼子の騒ぐ声に玄関まで来ると、巨人の姿を見てハッと何かに気付いた・・・

 

 和子が呆然としている中、巨人は無言のまま二階に上がって行き、涼子がすかさず後を追い和子に報告する。

 

「ママ、あの人真悟の部屋に入っていったわよ!早く、早く警察に電話しようよ!!」

 

 和子は無言で首を振ると、涼子は首を傾げ、疑惑の視線を和子に向けると、

 

「ママ・・・怪しいわねぇ!?パパに言いつけようかしら?」

 

 涼子は、父栄介が留守なのを良い事に、浮気相手でも家に連れ込んだのではと疑惑を浮かべたが、和子はそんな涼子の心を読んだかのように、フッと笑みを見せた。だが直ぐに真顔になると、

 

「涼子・・・あれは真悟よ!」

 

「エッ!?嘘?どう見たって・・・」

 

 突然の和子の言葉に涼子は驚き、再び二階を見上げる中、和子が言葉を続け、

 

「涼子、大切な話があります!こっちにいらっしゃい!!」

 

「う、うん!」

 

 涼子は驚きながらも、和子の後を追った・・・

 

 嘗て祖父の部屋だったが、今は物置として使っている和室に入ると、和子は涼子を座らせ、押入れの中から涼子の曾祖父さんから預かった物を見せた。

 

「これから、私達朱紗一族について聞かせます・・・涼子、心して聞いて!!」

 

「は、はい!」

 

 話の内容はこうだった・・・

 

 朱紗一族は、英雄神スサノオウノミコトの子孫である事、朱紗一族には同時代にたった一人しか男は存在出来ないと言う事、その男の体内には、英雄神スサノオウノミコトの魂が代々宿っている事、一族本家の血を引く女は、地上に邪神からの危機が迫った時、再び英雄神を目覚めさせる為、朱紗家の男の血となり肉となる宿命なのだと・・・

 

「真悟が・・・スサノオウノミコト!?」

 

 驚愕する涼子に、和子はコクリと頷き、更に使命を語って聞かせた・・・

 

 スサノオウノミコトの強大な力を分散させる為、一族本家の血を引く女性には、それぞれ強大な超能力を持っている事などを語り、涼子の前で和子が念動力を披露した。周囲に物体が宙に浮いて揺らめき、

 

「ママ・・・凄い!」

 

「涼子、あなたの中にも、超能力は眠って居るのよ?」

 

「私の中にも!?」

 

 驚く涼子に和子は頷き、

 

「涼子にも、必ず超能力が必要になる!真悟の力が目覚め始めた今、私達母娘、それに私の妹、光子母娘の力が必要になるかも知れない!!」

 

 更に和子は沈痛な表情を浮かべると、

 

「朱紗の男が、その力を憎しみの為に解放した時、その身体を媒体として、魔界に潜む魔を吸収し始め、魔神凄ノ王として目覚めるの!」

 

「魔神・・・凄ノ王!?」

 

「ええ、その時には真悟を・・・凄ノ王を、私達の手で倒さなければならない・・・それが、私達朱紗一族の宿命なの!!」

 

 半信半疑で聞いていた涼子だったが、思い当たる節があるのか、和子の目を熱心に見つめて何時しか聞き入って居た・・・

 

 そんな会話を、母と姉がしているとは知らず、ベッドで眠る巨人は、徐々に真悟の身体へと変化を始めた。

 

 朱紗真悟が、英雄神となるのか、魔神となるのか、まだこの時には誰にも分からなかった!

 

 そう、真悟本人でさえも・・・

 

           第一章:目覚め・超能力の巨人編

                  完

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。