数日後、M市のとあるホテルの一室に、二十代ぐらいの二人の男女が相談をしていた。
「ねえ、ニック!このM市に今到着したけど、例の超能力巨人の気を感じた?」
そう話し掛けた女性は、金髪の髪を腰まで伸ばし、胸は和子や咲苗をも遙かに上回り、今にも服からはみ出そうな巨乳をしていた・・・名前をレイ・ミランダと言う!
「いや、まだ感じない・・・だが、この町には凄い数の超能力者の存在を感じる!我が国のお偉方が、我々を調査によこした事にも納得がいくよ」
そう言って答えたのは金髪で優男風のニック・ボーマン、二人はA国のスパイであり、超能力者であった。二人はA国から命じられ、超能力の巨人についての探索を命じられて日本のM市へとやって来た。ニックは更に言葉を続け、
「超能力の巨人が、このM市に存在しているのは確かなようだ!レイ、早速この町を探索して見よう!」
「分かったわ、ニック!」
「だがその前に・・・レイ、もう少し君の胸が目立たないような格好をしてくれないか?今の君の格好じゃ、この町の男達に刺激が強すぎるよ!」
「まあ・・・フフ、了解!」
二人は笑い合い、レイはシャツの上にゆったりしたジャンバーを着たものの、それでも巨乳だと言う事は丸わかりで、ニックは微妙な表情を浮かべた。こうしてニックとレイは、夜のM市に超能力の巨人を探索に出た・・・
暴力と権力が支配すM市、その実体を目の辺りにし、ニックとレイは、眉根を曇らせながらも、超能力の巨人を捜した。そこでニックは、3人の女の子を侍らせて歩く、不思議な少年を目撃した。
「何だ、あの少年は!?別に超能力者とは思わないが、心の奥底に何か・・・物凄い何かが潜んでいるような?」
レイは、またニックの悪い癖が出たとばかり、両手を広げ溜息を付き、
「ニック、趣味の心理学はそこまでにして!私達には別の任務があるでしょう?」
ニックは苦笑いを浮かべ、再びレイと共に夜の街に消えた・・・
ニックが気に掛けた少年、それ朱紗真悟の事であった。真悟は、最近の真悟に好意を持った3人の1年の女生徒を引き連れ、夜の町を徘徊していた。この日は、取り巻きの一人にクラブに誘われ、真悟は気分転換で一緒に遊びに来ていた。一人は茶髪でセミロングの少女、もう一人は黒髪にショートヘアーの女の子、もう一人は眼鏡を掛けた三つ編みの女の子、三人は、応援団を相手にした真悟の勇姿を目撃してから、すっかり真悟のファンになっていた。
「この間の朱紗君、格好良かったわ!アッ!?あそこのクラブよ!」
茶髪の少女が、お目当てのクラブ見付けて指差し、真悟をクラブに案内する。中に入ると、店内は踊り狂う客で混雑していた。
「朱紗君、踊りましょう!!」
この店に案内してきた少女は、そう言って真悟の右手を掴んで誘うと、真悟も、二人の少女も、踊り狂う輪の中に消えた。
テーブル席で、人相の悪い四人の男達が、酒を食らっていた。その中の二人は、侍らせた女の身体をまさぐりながら酒を飲んでいたが、それは、雪代母娘を輪姦した青沼と特攻服の男だった。踊り狂う人々の中から、獲物を探すように目を光らせる二人組は、青沼のアニキ格で、学ランの串田と2メートルの大男蛭川、二人はヤリマン女には見向きもせず、犯せば怯えるような女を狙い、物色していると、
「おい、あそこに居るの・・・ウチの学校の生徒じゃねえか?」
「本当かよ!?おい、青沼ぁ!あれ、ウチの学校の奴だよなぁ?」
女と酒を飲んでいた青沼は、串田と蛭川に聞かれ、二人が指さす方向に目を向けてみた。三人の女と踊り狂う真悟を見て、目を見開き驚愕する。
(あ、ありゃあ、朱紗じゃねえか!何であの野郎がこんな所に!?拙いぜぇ、あの野郎と関わったら、また瓜生の野郎に・・・)
「青、ヤバイゼ!」
特攻服の男も真悟に気付いたようで、青沼とヒソヒソ話を始めた。蛭川は小首を傾げ、
「どうした、青沼?知り合いなら紹介しろよ!」
青沼は、真悟に関わったら、また瓜生達に酷い目に遭わされるのを恐れ、慌てて手を振り、真悟の事など知らない素振りを見せ、
「し、知りませんよ、あんな奴!」
蛭川と串田は、青沼の妙に煮え切らない態度を不審に思ったが、
「まあいい、串田!学生がこんな所に女連れて来ちゃ行かんって事を、あの坊やに分からせてやろうぜ!!」
蛭川に聞かれた串田は、口元をニヤリとさせ、
「全くだぜ・・・おい青沼、行くぜ!!」
青沼は大慌てで二人を宥めるが、蛭川も串田もそんな言葉に耳を貸さず、真悟達の踊る所に歩いて行った。その為、青沼と特攻服も渋々後に従った。
「おいおい、兄ちゃん!こんな所で子供が遊んでちゃいかんぜ?」
「おじょうちゃん、ママが心配しちゃうよ?」
そう言うと、蛭川と串田は、茶髪の子の手を掴み、自分達の方に連れてくる。それを見た真悟は、口元に笑みを浮かべ、
「なるほど、目的は女か・・・良いぜ、連れて行きな!!」
真悟はそう言うと、恐怖に引き攣る残りの二人を、串田と蛭川に投げ渡した。少女達は信じられないと言った表情を浮かべ、必死に真悟に手を伸ばし、
「い、いやぁ、朱紗君!助けてぇぇ!!」
「お願い、手を放してぇぇ!」
だが、そんな言葉を蛭川も串田も聞く筈も無く、三人の少女は胸を触られながら、強引に出口に向かって無理矢理歩かされる。蛭川は真悟を見てニヤリとし、
「物分りの良い兄ちゃんだな!ありがたく頂戴して行くぜ!!」
青沼は、真悟の行動に驚きを隠せなかった・・・
嘗て、雪代母娘を守る為、身体を張ったあの時の真悟と、今の真悟が同一人物だとは思えない程だった。
(な、何だぁ!?あいつ、どうしちまったんだ?)
呆然としていた青沼だったが、蛭川に行くぞと言われ、特攻服と共にその後を追った。女達の悲鳴が響く中、遠のいて行く串田達を、真悟は突然ダッシュで追いかけ、後ろから不意打ちを仕掛け、蛭川と串田に強烈な蹴りを放ち、女達に逃げろと命じて逃がした。
「バカか!?そう上手くいくか!テメェらの根性・・・叩き直してやる!!」
真悟の不意打ちを食らった串田と蛭川は、逆襲する事無く呆気なく真悟に気絶されられるが、真悟は殴るのを止めなかった。見かねた青沼が、近くに居た女の喉元にナイフを近づけて、
「朱、朱紗ぁ!止めねえと、この女を刺すぞぉ!!」
「アァ!?俺の知らない女だぞ?」
「構うもんか!手前が俺達に、無抵抗のまま殴られるなら、この女を解放してやるよ!じゃなきゃ・・・」
青沼は、女の胸元をナイフで切り裂くと、女の胸が露になる。女は泣き叫び、悲鳴を上げた。その時、真悟の目に人質の女が雪代と重なった・・・
「うぅぅぅ・・・ウゥゥゥオオオオ!!」
涙を流した真悟の叫びと共に、店は停電し、店内は大パニックになった!
「な、何だ!?凄まじい怒りのパワ-だ・・・レイ、君も感じたか?」
「ええ、ニック!これは、噂の超能力の巨人じゃないかしら!?行きましょう!」
ニックとレイの二人は、慌てて元来た道を引き返し、怒りのパワーの出所に向かって駈け出した。一方、入浴していた美剣も、その気配を察知した。慌てて浴槽から上がり、脱衣所で身体を拭いていると、お手伝いが美剣を呼びに来た。
「お嬢様・・・御当主様がお呼びです!」
「分かりました!」
風呂から出たばかりであったが、美剣は冷水で身を清め、白い長襦袢を着て庭の離れにある祖父の部屋へと向かった。その姿は、どこか神秘的でもあった。ドームのような建物の中に美剣が入ると、祭壇には巨大な剣が祭られていた。
「来たか、千草!見よ、神剣美剣を・・・神剣美剣から稲妻が放たれておる!これは、凄ノ王の怒りに、聖剣美剣が呼応しておるのだ!!」
美剣は、祖父の言葉を聞き、ハッとして今一度聖剣美剣から放たれる雷を見た・・・
暗闇の中、青沼の絶叫が店内に木霊していた。従業員が恐る恐る懐中電灯で青沼を照らすと、青沼と特攻服は宙に浮き、特攻服は壁に思いっきり叩き付けられ、血反吐を吐いて失神し、青沼の右腕は自然にへし曲げられる姿が、人々の目に飛び込んでくる。人々は、野獣のような叫び声に恐怖して、我先にと慌てて店から逃げ出し始めた。
救急車が何台も駆けつける中、真悟は更に絶叫をすると、その身体から紅蓮の炎が立ち上り、ビルを炎で覆い尽くし、数分後消防車が何台とやって来て消火活動をするが、火は消える気配を見せなかった・・・
ようやく現場に着いたニックとレイは、炎の形が巨人のシルエットのように燃えている事に驚き、
「み、見ろ、レイ・・・あの炎は、まるで炎の魔神だ!日本の消防設備がどんなに優れていようとも、簡単には消えそうに無いぜ!!」
レイはコクリと頷き同意した。あの超能力の炎が、そう容易く消えるとは思えなかった。
「悲しいわね・・・あの炎は悲しみで一杯だわ・・・きっと、とても悲しい事があったんだわ・・・それがあの超能力の巨人を目覚めさせたんだわ!」
だが、この炎の巨人をこのままにしておく事は出来なかった。ニックは、この魔神は更なる厄を呼び寄せるのではないかと危惧した。ニックは後時をレイに託し、炎の巨人に接触してみようと試みた。
「ダメよ、ニック!危険すぎるわ!!」
「だが、このままにはしておけない・・・」
「だったら・・・私も行くわ!」
「レイ!?・・・・・分かった!俺から離れるなよ?」
頷きあったニックとレイは、消防士達が止めるのも聞かず、炎に覆われたビルへと入っていった。クラブのドアを開けた瞬間、二人の身体は底見えぬ闇の中に落ちていった・・・
暫くすると真悟は、自分の部屋にテレポーテーションして戻って来た。雪代の事を思い出した真悟は、只泣き続けた・・・
ニックとレイは、不可思議な空間の中を漂っていた・・・
レイは不安そうにニックの右手にしがみつき、
「ニック・・・此処は一体!?」
「お、俺にも分からない!だが、この闇の中は・・・悲しみで覆い尽くされている!!此処は一体!?」
困惑する二人の前方に、光が舞い降りてきた。光はやがて人の姿を形成し、長い金髪の少女の姿となった。闇の中に舞い降りた天使の少女、それが雪代小百合だとは、ニックとレイには知る由も無かった。更にその光を追うように、もう一つの光が舞い降り、その姿が雪代咲苗の姿となった。二人はこちらに歩いてくるようで、ニックとレイは、彼女達に話を聞いてみようと思った刹那、今度は彼女達の足下の闇が蠢き、人の形を形勢した。それは青沼グループで、彼らは一斉に雪代母娘に襲い掛かり、彼女達は為す術もなく身に付けていた衣装を剥ぎ取られ、その美しい身体に群がった青沼達は、醜い怪物の姿へと変化していった。
「これは!?」
「彼女達を助けなきゃ!」
ニックは驚愕し、レイが雪代母娘を救おうと思った時、二人の側で巨大な鎖がジャラジャラ動く音が聞こえてきた。レイはニックにしがみつき、ニックは辺りを警戒して探ると、そこには、首と両手、胴体に鎖をグルグル巻にされた巨人が咆哮して居た。暴れる巨人の影響で周囲が揺らぎ、
「ウワァァァァ!」
「キャァァァァ!」
ニックとレイは、再び闇の中へと落下して行った・・・