朱紗真悟を始めとする戦士達は、邪神の前に為すべき手段が無かった。真悟は結界を張り、邪神ヤマタノオロチの影響を弱めるだけで精一杯だったし、兜甲児はヘルに憑依した魔神との戦いに敗れ、海の藻屑に消えた。
「くそう、邪神やあの魔物が相手では、俺でも歯がたたん!」
瓜生麗は、悔しそうに言葉を吐き出した。そんな中、戦士たちの下に無数のオーブが集まって来る。
「ジ、ジルお姉さま・・・これはもしかすると?」
「ああ、黄泉の国から舞い戻って来た亡者達かも知れん・・・ムゥ!?ハニー、皆に憑いて行くぞ!おそらく、ここに居る者たちの関係者だろうが・・・」
「ジルお姉さま・・・最早この世界を救うには、お二方の力を借りる以外無いかも知れませんね・・・」
ハニーとジルは天を仰いだ!!
一方、朱紗和子達にも悪夢はジワリジワリと忍び寄って居た・・・
朱紗和子は、亡き夫英介の霊と再会したのだが・・・
「和子~・・・お前は、お前は、俺が死んだのを良い事に、若い男を・・・お前は俺が死ぬのを望んで居たんだな?」
寂しげな英介の視線が和子に突き刺さる。
「え、英介さん!?弁解はしないわ・・・でも、でも、あなたの死を望んで居た何て・・・そんな、そんな言い方酷いわ!!」
和子は顔を覆って泣き出すが、英介は冷ややかな目で和子を見つめるのみであった。
(酷いわ、あんまりよ!私が英介さんの死を望んで居た何て・・・)
「和子・・・お前は今でも俺の事が好きだと言うのなら・・・和子、お前も死ね!!」
英介が和子の首を絞め始める。和子は激しく抵抗するが、英介の手はビクともしなかった。
(え、英介・・・さん・・・)
和子は、苦しさのあまり失神した・・・
瓜生麗とガイデル、そしてミーコは、樫村達と不死団のメンバー達の亡者に苦しめられて居た。
「お、お前達は!?」
恨めしげに樫村達が、不死団のメンバーが、瓜生を取り囲んで行く。
「瓜生さん!ガイデル!俺達は瓜生さんの考えに同調し仲間になった!あなたやガイデルだけが生き残り、何故俺達だけが死なねば成らんのだ?」
「ミーコ、お前もだぜ!俺はお前の事が気に入って居たのに・・・ミーコ、寒い!俺を暖めてくれ~~!!」
「か、樫ちゃん・・・ゴメン、ゴメンよ~!勘弁して~~!お願い・・・」
亡者達は呻きながら、瓜生やガイデル、そしてミーコにしがみ付いて来る。まるで生者を羨ましがるように・・・さしもの瓜生もゾッとし、悲鳴を上げた。
錦織つばさは、獣神討伐隊のメンバーに囲まれて居た。
「つばさ~!お前は俺達を何故見捨てた?お前があの時、もっと早く獣神魔王の生贄になっていれば、俺達は助かったんだ!!」
「そ、そんな・・・皆が死んだのは、あたしの所為だって言うの?あ、あれは門土の奴が皆を見捨てて・・・」
「フフフ、門土は良いのさ!死んで分かった・・・あいつはあれで良いのさ!!だが、お前は違う!お前も俺達と共に来い!!」
亡者の手がつばさの身体を弄って行く。つばさは必死に逃れようとするが・・・
「皆、許して~~!助けてよ~~!!」
つばさは、仲間達に只泣いて詫びを入れ続けて居た。
身堂竜馬は、見殺しにした街の住人達に囲まれて居た。
「あ、あんた達は・・・クッ、あたしに何の用よ?恨み言なら遠慮しとくわ!」
強がって居ても、身堂は亡者たちに脅えて居た。亡者達は、恨めしげな視線で身堂を見ると、呻きながら身堂に縋って来る。
「止めろ~~!ゆ、許してくれ~~!!」
身堂は、寄りすがる亡者たちに詫び続けた。
合田源児は、ボクシングの試合中に殺してしまった相手に苦しまされて居た。
「お、お前は・・・俺は一体?」
「合田、俺は、まだ負けちゃいねぇ~!俺は不死身になったんだ!!やっと、お前に俺と同じ苦しみを・・・勝負だ!!」
頭が潰れたその男は、ニタリと笑いながら合田に何度も何度も向かって行った。合田は恐怖を感じ、後退りするのであった。
アイラとムラジの前には、アマソ、イキマ、ミマシが現れた。アマソは全身黒焦げで、ミマシは今にも身体が半分に千切れそうな姿で、イキマは胸元を真っ赤に染め、不気味な出で立ちであった。
「アイラ様、何故貴女だけが・・我が主、ヒミカ様は亡くなられたと言うのに・・・ムラジ、貴公もだ!我らと同じくドラドの術中に掛かったと言うのに・・・我らだけこのような醜い姿で~!!」
「そうだ!貴様だけがドラドより逃げ、我らだけ殺された!」
「アイラ様、ヒミカ様に申し訳ないとは思わないのですか?」
アマソ、イキマ、ミマシに罵られるアイラとムラジ、ムラジは震えながら、
「ま、待て!わしへの暴言は許そう・・・御主らの言う通りだからな!だが、我が主、アイラ様への暴言は許さんぞ!!」
ムラジは、主君であるアイラを庇うように、三人の前に立ち塞がるが、
「退け!臆病者の貴公によもや用は無い!!」
三人の邪念にムラジが脆くも崩れ去る。アイラは悲鳴を上げ、
「キャァァ!ムラジィィ・・・三人とも止めて!!何故ムーの民同士で争わなければならないの?わ、私だって本当はヒミカお姉さまと・・・」
アイラはヒミカを思い出し泣き崩れると、アイラの周りを三人が取り囲む。
「アイラ様、ヒミカ様は、ドラドに操られた我ら三人に犯された・・・ムラジ一人に犯された貴女様とでは不公平ですなぁ?」
アマソの口元がニヤリと笑うと、アイラにも三人の考えが伝わり、アイラは恐怖に駆られた。
雪代咲苗は、夫剛三に罵られて居た。
「咲苗、貴様に似て小百合は売女のような生き方をしておった。貴様ら母娘は、同じ男を取り合う醜い女だ!何故わしだけが地獄の苦しみを・・・貴様らにも味合わせてやる!!」
咲苗は蔑みの目で剛三を睨むと、
「私はいい、あなたに罵られようとも・・・私は、既にあなたを軽蔑しているから何を言われたって・・・でも、小百合はあなたの娘よ!」
「黙れ、それだってわしの娘かどうか怪しいものだ?」
「な、何を!?」
咲苗は悔し涙を流して剛三に抗議し、
「酷いわ!私だって、あなたの妻になろうと努力して来たわ!でも、あなたはお金にしか興味を持てなかった・・・私と小百合が、どれだけ辛い目に遭ってきたか・・・少しは考えた事があるの?」
咲苗は、小百合の為にもこの剛三の発言を許せなかった。だが剛三は、そんな咲苗を一喝し、
「黙れ!売女がわしに説教とは・・・」
剛三の手が咲苗の首を絞めて行った。
皆それぞれ、黄泉の国から来た亡者に苦しめられて居た・・・
只一人、山岸八十八だけは、彷徨出てきた両親を返り討ちにして居たのだが・・・
「み、皆はどうしてしまったの?」
ハニーは、突如苦しみ出した人々に驚愕する。どうやら亡者が見えるのは、その亡者と関係がある者だけらしかった。
「ハニー、皆は亡者に苦しめられて居るようだ・・・見ろ!皆の恐怖が、邪神を始めとする魔に吸い取られて行く・・・このままでは・・・」
ジルは、皆の身体から発せられる恐怖心が、邪神達の糧に成って行く事に焦りを覚えた。
「亡者を祓うなら・・・お姉さま、私に任せて!ハニーフラ~ッシュ!!」
ハニーの言葉と共に、ハニーの衣服が弾け、一瞬ハニーが一糸纏わぬ姿になるが、直ぐにハニーの身体を、シスターの衣装が身に纏っていく。真悟は、横目でちゃっかりハニーの裸身を見逃さなかったが、直ぐに邪神に向き直って居た。
「亡者よ、良くお聞き!如月ハニー転じてシスターハニーが、黄泉に舞い戻してあげるわ!!」
ジルは思わずハニーの美しさに見惚れるが、我に返ると、
「ハ、ハニー・・・巫女の私達がシスターは拙いんじゃないかしら?」
「そうかしら?ゴメンあそばせ!オホホホ!!ゴホン、神の名において汝らを祓わん・・・アーメン・・・邪気退散!!!」
ハニーの和洋融合したお払いが、唖然とするジルを尻目に炸裂した。