女ジャックは、何度も何度も、未練がましそうに真悟達が居る場所を振り返り続けた。ジャックは、そんな女ジャックを気に止め、
「どうした!?そんなに朱紗真悟が気になるか?良いだろう、お前には別行動を許そう!だが、朱紗真悟に会うことは許さん!!お前は、この世界に湧き出る亡者共を送り返せ!!」
ジャックは、女ジャックにそう言い残すと、少年ジャックと共に早乙女門土を倒しに向かった。
(フン!ジャックのケチ・・・でも、良いわ!少し遠回りしてから、この世と黄泉の境目に向かうから・・・)
女ジャックは、ジャックの後ろ姿に舌を出し、鳥となって闇に包まれた空に舞い上がった。
小百合と青沼は、突然目の前に和子と咲苗が現れた事に驚き、喜び、涙を流して抱き合った。
「あの男が和子の・・・和子の奴!!」
「む、あれは小百合!?フン、わしにくだらん三文芝居を見せ付けおって・・・」
その姿を、上空の二体のオーブは忌々しそうに眺めて居た。
和子は、先に青沼達をテレポートさせると、後を追う様に咲苗と共にこの場所にテレポーテーションして来た。青沼は、涙を流しながら和子に話し掛け、
「か、和子さん、いきなり黙って消えちゃうなんて・・・でも、無事で良かった!朱紗君は無事だったんですか?」
「ゴメンなさい・・・ハレンチ砦なら、あなた達を安心して任せられると思ったの!お陰様で真悟は無事よ!!でも・・・」
和子は、そこで言葉を切った・・・
和子が愁いを帯びた表情になった事で、青沼は怪訝な表情を浮かべた。和子は息を吸い込むと、言葉を続け、
「でも、邪神ヤマタノオロチが、ついに地球に舞い戻ったの!その影響で、この世界と死者の世界黄泉と繋がったわ・・・空が闇に覆われたのもその為よ!!」
「エッ!?黄泉?そうか!それで安が・・・」
和子の言葉を聞き、青沼は何故や安村達の亡霊が現われたのか理解した。邪神ヤマタノオロチという言葉に、小百合は脅え、母咲苗にしがみ付き震えて居た。咲苗は、そんな小百合を愛しそうに抱きしめ、
「小百合、大丈夫よ!ゴメンね・・・辛い目に遭っている時に側に居てあげられなくて・・・」
「お、お母さ~~ん!!」
小百合は、母の胸の中で号泣し続けた。娘の頭を、咲苗は愛しそうに撫でて居た。和子は、小百合の心が再び癒された事を感じて微笑んだ。だが、4人の周りを七つのオーブが取り囲み、再び安村達7人の亡者が姿を現した。咲苗は、嘗て自分と娘小百合を犯した男達の、不気味な腐敗した姿を目にして思わず悲鳴を上げて脅えた。だが、側に居る小百合だけは守ろうと、7人の亡者を睨み付け、
「あ、あなた達は・・・む、娘には、指一本触れさせないわ!!」
7人の亡者は、そんな雪代母娘を見て、下衆な笑い声を上げると、
「ヒヒヒヒ!これは儲けた・・・あの時の雪代の母親も一緒かよ!おまけに、そっちの女も良い身体して居るじゃねぇか!!」
咲苗と和子の身体を視姦して、七本のペニスが反り返る。和子は汚らわしいとばかり、超能力で攻撃しようとしたのだが、力が使えず焦り始める。
(な、何で、超能力が!?このままじゃ・・・)
「お前、超能力者か?成る程な、だからさっき青沼達が消えた訳か・・・だが、ここは黄泉の世界!生あるお前の力は封じられる!!この世界に入る前は力を使えたとしても・・・」
「そうさ!この世界に入った時点で、お前は只の女・・・態々俺達に犯されに来るとはご苦労なこったな!」
安村とアフロの男がニヤリとすると、7人の亡者達は、和子達四人を取り囲むように包囲して行く。青沼は、三人の女性を守るように、必死に庇った。そんな青沼の姿に、英介は自分の醜さを思い知らされた気がした。
(俺は、今の俺は、この醜い奴らと一緒ではないか?欲望に執着する醜いこいつらと・・・)
英介は自分の醜さを痛感し、険しい表情を浮かべた・・・
「こんにゃろ~!お前ら、和子さんから、雪代さん母娘から、薄汚い手を離せぇぇ!!」
青沼は我武者羅に暴れ、何とか和子達を助けようとするが、亡者達の手は、三人の女性の身体を、不気味な手で触り続ける。和子が、咲苗が、小百合が、その薄気味悪さに悲鳴を上げる。英介のオーブが下降すると、7人の亡者を弾き飛ばし立ち塞がった。
「これ以上・・・俺の愛する者を辱めさせない!!」
「え、英介さん!?ありがとう、ありがとう!!」
和子は、そんな勇ましい英介の後ろ姿に、何度も礼を言った。一方の剛三にも変化があった。犯されそうに成りながらも、必死に娘小百合を守る咲苗、逆に咲苗に縋る亡者の手を懸命に払う小百合を見て、剛三は昔の事を思い出す・・・
小百合が誕生した時、小躍りをして喜び、はしゃぎ過ぎて妻咲苗に窘められた事、字が書ける様になった小百合が、自分の名前を平仮名で書けるようになったと大喜びで剛三に見せに来た事、瓜生に会社を乗っ取られた時、咲苗と小百合はどんな貧乏生活にも耐えるから、三人でやり直しましょうと告げた事などを・・・
「咲苗の言う通りなのかも知れん・・・わしは、金に執着するあまり、大事な物を失って居たんだな・・・」
剛三のオーブも下降すると、尚も小百合と咲苗の身体を弄ろうとする手を払いのけ、
「この馬鹿者どもがぁぁ!わしの妻と娘に、これ以上手出しはさせんぞ!!咲苗、小百合、今まで惨い目に合わせたな・・・この愚か者共を見て気付かされたわい!生きている内に気付ければな・・・咲苗、小百合、愚かなわしを許しておくれ!!!」
剛三の出現に驚いた咲苗と小百合は、剛三の言葉を聞き三人で抱き合い泣いた。
「あ、あなた~・・・」
「お、お父さ~~ん」
剛三は、二人の頭を撫でながら、何度も詫び続けた。英介と剛三に邪魔をされた7人の亡者達は、烈火の如く怒り、
「手前ら、良い所を邪魔しやがって・・・覚悟しろ!!」
尚も、和子達の身体を求めて群がる安村達7人の亡者に、英介が、剛三が、必死で守り通した。
「和子、よく聞け・・・お前達の後には、黄泉比良坂(よもつひらさか)がある!そこに落ちれば、生者のお前達でも死に亡者となる!俺達がこいつ等を抑えている間に、この道を真っ直ぐ突き進め!決して後を振り返るなよ!!君、和子を頼んだぞ・・・和子は繊細だ、支えに成ってやってくれ!!俺の変わりに・・・」
英介の叫びに、和子が号泣しながら夫英介の名を呼び続ける。青沼は、夫婦の絆を改めて見せ付けられた気がしたが、英介の言葉に頷いた。
「咲苗、今のわしに出来るのはこの程度だ・・・小百合の事を頼んだぞ!小百合、父さんのような男には惚れるなよ!!フハハハ、行けぇ!!!」
戸惑う三人の女性に、青沼は背中に小百合を背負い、右手で和子を、左手で咲苗を抱えながら指示された方に突き進んだ。
「それで良い、和子を頼んだぞ~~!!」
「咲苗~!小百合~!幸せに、必ず幸せになるんだぞ~~!!」
4人は黄泉を脱出する為、後を振り向かず突き進んで行った・・・