「そうか、そうだったのか!雪代小百合は、櫛名田比売(くしなだひめ)の生まれ変わりだったのか・・・」
梵天翁は、思わずハッとして声を出して叫んだ。瓜生も千草も、そして咲苗も驚き、スサノオウが手にする、光の神剣、草薙神剣を見つめた。
スサノオウが手にした草薙神剣を見て、邪神は恐怖した・・・
神話の時代の記憶が邪神に甦って来る・・・
嘗て、自分を闇の彼方に封印した、忌まわしき剣を構えるスサノオウの姿が・・・
(オノレ!オノレ・・・オマエモワレノショウメツヲノゾムノカ!?クシナダヨ!!)
邪神ヤマタノオロチのテレパシーが、小百合の脳に伝わった時、小百合は、前世である櫛名田比売の記憶が蘇った。
「私は、前世の記憶を今思い出しました!そして私は、ヤマタノオロチに償いをしなければならない事も・・・お願いです!私をこの神剣と共に、ヤマタノオロチの前に!!」
「姫よ・・・何度生まれ変わっても、オロチの呪いによって辛い目に遭ったそなたは、まだオロチに負い目を感じて居るのか?」
小百合がコクリと頷くと、スサノオウはゆっくり目を瞑り頷くと、神剣草薙神剣を前に出し、印を唱え始めた。邪神は、草薙神剣と一体化した雪代小百合の本心をテレパシーで受け取った。
(私があなたに犯した罪を・・・今償います!!)
邪神は嬉しそうに、八つの頭を分離させ、順番に光に包まれた草薙神剣の中に突入する。光に包まれた小百合に近付いた邪神は、小百合の膣から、順番に八つの頭が出入りする度に、小百合は苦痛に顔を歪ませ喘いだ。
雪代小百合が、前世の櫛名田比売(くしなだひめ)の時に邪神にした罪とは・・・
神話の時代、櫛名田比売(くしなだひめ)の住む国を、八俣大蛇が襲撃した。人々の恐怖に酔い痴れ、暴れ回る八俣大蛇に、民は生贄を捧げた。その名を櫛名田比売・・・
生贄を捧げる代わりに、国をお助けくださいと言う民の願いを聞きいれ、八俣大蛇はこの国の繁栄にも力を貸した。国は潤い、人々は八岐大蛇を神の化身と呼び称えた。だが、娘を不憫に思った国の長夫婦は、国を追われ流浪の旅を続けて居た須佐之男に出会った。夫婦は八俣大蛇を裏切り、八俣大蛇の悪行のみを訴え、退治してくれれば娘を差し出しますと須佐之男に告げた。須佐之男は条件を飲み、八俣大蛇を退治しようとするのだが、八俣大蛇も死力を尽くして須佐之男に挑んだ。
死闘を繰り返す須佐之男と八俣大蛇の均衡を破る者が居た・・・
それは、櫛名田比売であった!
彼女は恐怖から解放される事を優先し、八俣大蛇との約束を破って、須佐之男に共に戦いたいと告げた。八俣大蛇が怒り、暴れ狂うのを見て、須佐之男は頷き、櫛名田比売を十拳剣(とつかのつるぎ)と同化させ、八俣大蛇に攻撃を加えた。その力の前に追い詰められた八俣大蛇は、その者達が自分との約束を破った事を非難した。
大蛇の必死の訴えにも一理ある為、須佐之男は、遥かなる星の彼方に封印を施した。大蛇が改心する事を信じて・・・
だが、裏切られた大蛇は、櫛名田比売に呪いを掛けた。未来永劫、汝の身体に欲望の種を撒き散らし、幸を与えぬと・・・
須佐之男は櫛名田比売を哀れみ、自らの妻とし幸を与えた。だが、須佐之男の力が届かなくなる転生を繰り返す度に、櫛名田比売の生まれ変わりは、陵辱の苦しみを繰り返させられ、幸せにはなれなかった。
須佐之男に封印されながらも、魔の力を取り込み続けたヤマタノオロチは、邪神ヤマタノオロチとなった後も、その恨みを忘れず櫛名田比売を呪い続けた。
だが、今正に小百合と交わって行く内に、邪神は小百合の気持ちを察し、徐々に憎しみの心を洗い流されて行った。一匹、また一匹と、小百合の体内から出てきた八つの醜い蛇は、美しい白蛇となって、愛しそうに草薙神剣の周りを飛び回り続けた。
「み、見て!邪神が・・・あの禍々しいオーラが消え去り、まるで神の化身のように・・・」
千草の驚きに、皆も次々に同意すると、梵天翁は唸りだし、
「ウゥゥム・・・邪神をも癒すとは・・・あの娘には頭が下がるわい!!」
梵天翁は、尊敬の念を持って草薙神剣を見続けた。
スサノオウが草薙神剣を再び手にすると、愛しそうにその柄を撫でた。八匹の白蛇が、スサノオウに、小百合に礼を述べ、
「我ら、そなたの償いを受け取ったり!これより我らは、スサノオウの臣下となり、この世界を見守らん!!」
スサノオウはコクリと頷くも、直ぐに表情を険しくし、
「オロチよ、我が臣下となると言うのなら・・・力を貸して欲しい!」
「我ら喜んで力を貸すもの也!」
オロチが協力を承諾し、スサノオウはコクリと頷くや、ハニーとジルを見つめ、テレパシーを送った。
(巫女達よ、そなたらが持つ、八咫の鏡(やたのかがみ)、並びに八尺瓊の勾玉(やさかにのまがたま)を我に貸すが良い!この世に広がる闇を払おう!!)
ハニーとジルは頷き合い、スサノオウの手に草薙神剣が、ハニーの手には八咫の鏡が、そして、ジルの手には八尺瓊の勾玉が掲げられる。時を越え、三種の神器が勢ぞろいした。
「オロチよ!この剣に宿り、姫と共に、この世界に禍をもたらそうとする悪しき者を滅さん!!」
オロチは頷き、神剣美剣に吸収されて行くと、神剣美剣はより一層巨大化した。
「ヌゥゥゥオォォォォォォォ!!」
スサノオウが雄叫び上げ、草薙神剣を上空高く掲げると、草薙神剣から一条の光りが天を昇り続けた。闇が切り開かれていくと、ジルが八尺瓊の勾玉で闇を吸収して行く。そこにハニーが、八咫の鏡で光を照らし、世界を神々しい光が照らし出した。
木星・・・
この地に、新たなる邪神が現われようとして居た・・・
その名を女過!!
頭部に巨大な女の顔が付いた蛇のような邪神・・・
だが・・・
一条の光が、木星付近に現われた空間の歪みを包み込んだ。今正にこの世界に現われようとして居た、邪神ヤマタノオロチさへ凌ぐ巨大なる女過を包み込んだ。
「ギャァァァァァァ!お、おのれぇぇ!!もう少しで、もう少しで、この世界を我ら神々がぁぁぁぁ!!!」
女過はそう言い残し、空間の歪みと共に消え去った・・・
女過を追い返した事を悟ったスサノオウは、草薙神剣を撫でると、再び八匹の白蛇が姿を現わし飛び回った。
「オロチ、大義であった!」
「我らはスサノオウの臣下となった身、この程度造作も無き、そして、姫よ・・・汝と子孫達を、我らこの命に代えて守り続けよう!!!」
八つの白蛇はそう言い残し、天空に昇って消え去った!!