その日の昼・・・
真悟は、合田が武団連合の会長九頭木に掛け合い、試合を1週間引き伸ばしてくれた事を知り、その礼も兼ねて屋上で会話していた。合田なら、ノスフェラトゥに付いて、もっと詳しい事を知っているのではないかと真悟が思ったからだった。合田は、屋上から校庭を見下ろしながら、
「安村達は自殺だったらしいな?遺書がポケットから発見されたってよ・・・ま、7人一緒に首つり何ざ、信じる方がどうかしてるけどな!お前のその顔を見れば・・・明らかに違うのは明白だしな!!」
真悟は、合田の言葉に冴えない表情で頷くと、ゆっくり語り出し、
「昨日俺達は、ノスフェラトゥのアジトと言われる、旧体育館に行ったんだ・・・だが中では、ノスフェラトゥと思われるような奴は一人も居らず、半裸や全裸の女達が、乱痴気パーティーをしているだけだった。女の唇に塗られた怪しげな薬に、俺は次第に意識が遠のき、朝になって目が覚めたら、旧体育館の裏口に、安村達の首吊り死体があった・・・」
合田はコクリと頷き、ノスフェラトゥのやりそうな事だと真悟の話に同意する。真悟は頭を抱えると、
「俺は、俺は逃げ出しちまった・・・警察に行って、ちゃんと事情を説明すべきなのに・・・」
「そう落ち込むな!警察に知らせた所で、ノスフェラトゥは証拠を残すようなヘマはせん・・・女達も、どこか他所からかき集めたんだろうよ・・・それに、この町じゃ殺人事件など日常茶飯事で、警察だって本音は余計な事件を増やしたく無いだろうぜ!!警察は、7人を首つり自殺だと、早々に断定しているのを見ても明らかだぜ!!」
真悟は溜息を付いた・・・
雪代母娘達を輪姦した許せない奴らだが、いざ不本意な死に方をした連中の事を思うと、許せない奴らながら、少しは哀れみの気持ちも湧いてくる。
「これじゃ、殺された安村達も浮かばれないだろうぜ・・」
「朱紗、そう自分を責めるな!どうせ、生き残っていたって、奴らは悪事を働くだけだ・・・奴らに泣かされた女は大勢居る!!身から出た錆って奴さ!気にする事は無い!!それより、俺には解せぬ事が二つある!一つは、お前達が何故旧体育館に行く事を知っていたかだ。仮に内の部にスパイが居ても、そんなに直ぐに準備は出来ん・・・もう一つ解せんのは、奴らが何故お前を生かしておいたのか・・・雪代事件も含めて、謎が多すぎるぜぇ・・・朱紗、何か他の理由があるのかも知れん!!」
合田の言葉に、真悟は益々憂いを帯びた表情になった。そこへ真悟の姉、涼子が現われた。昨夜帰って来なかった真悟に、小言の一言でも言ってやろうと思っていたものの、
「真悟ぉぉ!!・・・あれ!?合田君も一緒なの?」
合田は手を挙げて挨拶するが、真悟はうるせぇとばかり無視した。涼子は一瞬ムッとするも、視線を合田に向けて話し掛け、
「合田君も一緒なら丁度良いわ・・・ねえ、真悟・・・合田君とボクシングの試合するって本当なの!?」
涼子は心配そうに声を掛けると、真悟はコクリと頷き、
「ああ、本来は今日だったが、合田さんの好意で、一週間後にしてくれた・・・それがどうした?」
真悟のぶっきらぼうな発言に、涼子は昨夜の件も思い出して再びムッとしながら、
「何よ!それが可愛い弟を心配してあげてる、可憐な姉に言うセリフ!?可愛くないなぁ!!・・・合田君、試合を中止させる事は出来ないの?」
合田は額に汗をかきながら、おねだり目の涼子を見ると頬を染め、
(やっ、やっぱ、涼子は可愛いなぁ・・・)
思わず涼子に見取れた合田だったが、ハッと我に返り、咳払いすると、
「ゴホッ!い、いや、お前の頼みだし、俺もお前の弟と戦うのは気が引けるのだが・・・こればかりは無理だ!!すまん!!!」
合田は、少し照れながらも、試合を止める訳には行かない事を涼子に深々と頭を下げて詫びた。涼子は面食らうと慌てて手を振り、
「い、いいのよ!大体合田君が悪い訳じゃないんだし・・・元々は、どっかの馬鹿が応援団に殴りこんだのが原因何だしね」
涼子は、真悟にアカンベエをすると、真悟は目で涼子を威嚇し、姉弟喧嘩を始めそうになり、合田は慌てて二人を宥める。真悟はまだ腹の虫が治まらないのか、
「テメェ、覚えてろ!今度バスタオル姿で家の中歩いてたら、写真に撮って学校で売り捌いてやるからなぁ!!」
「な、何ですってぇぇ!?このエロ真悟!そんな事して見なさいよ?あんたが私やママのお風呂覗こうとしてたの、学校中に言いふらしてやるからねぇぇ!!ベェェェだ!!!」
涼子は真悟に再びアカンベエをすると、合田にじゃあと声を掛け、涼子は真悟を無視するように、怒りながら去って行った。真悟は機嫌悪そうに、
「ケッ、あのヒス女!」
朱紗姉弟の喧嘩を初めて見た合田は、苦笑して聞いていたが、ポツリと気になった事を真悟に聞き、
「なあ、涼子って・・・バスタオル姿で家の中歩いているのか?」
真悟は、合田が何でそんな事聞くのかと言った表情で、首を傾げるも正直に答え、
「ああ、風呂上り何て、自分の部屋までバスタオル姿で歩いて行くぜ・・・それがどうかしたか?」
真悟が事実だと認めた事で、合田は思わず虚空を見つめながら、涼子のバスタオル姿を妄想し、
「朱、朱紗・・・今度お前の家・・・遊びに行ってもいいか?」
「ゴホゴホ!?ハァ?べ、別に構わねぇが・・・」
真悟は、吸っていたたばこが器官に入り、思わず咳き込み、何とか落ち着いてからも小首を傾げた。
レイとニックは、まだ巨人が縛られている謎の空間の中に居た・・・
巨人の繋がれている鎖を上手く利用し、何とか闇の底から這い上がった2人は、先程見た二人の少女に、醜い8体の怪物達が群がり、巨人が悲しげな声を上げながら咆哮している場面に遭遇していた。
「此処は、もしかしたら!?」
「ニック、此処がどこだか分かるの?」
「ああ、あくまで推測にしか過ぎんが・・・俺達は、あの巨人が作り上げたイメージの世界の中に、謝って入り込んでしまったんじゃないかと思う!そう考えれば、納得行く事がある!!」
「どういう事!?」
「あの巨人は・・・我々を見ても敵意を向けてこないのが一つ、巨人が向けている敵意は、あの母娘を襲っている怪物達にのみ向けられている!」
ニックの推測を聞き、レイは巨人と母娘に群がる魔物を見ると、確かにニックの言っている通りな気がしてきた。レイはコクリと頷き、ニックは話を続け、
「巨人は、鎖に繋がれ、あの母娘を助けたくても、助けられないんだ!見ろ、レイ!!あの母娘が、どんどん巨人から離れて行っている!!」
「だとしたら・・・私達が巨人の代わりに、あの母娘を魔物達から救ったらどうなるのかしら!?」
「成る程・・・レイ、ナイスアイデアだ!」
頷き合ったニックとレイは直ぐさま行動に移り、先ずニックが念動力で魔物達を母娘から引き剥がした。魔物達は邪魔をするなとばかり、ニックとレイに襲い掛かるも、レイはサイコバリアーを張って魔物の群れを近寄らせない。その隙に力を最大まで高めたニックが、魔物の群れに念動力をぶつけると、まるで徐々に塵になっていくかのように、怪物達は消滅した。
「フゥ、何とか上手く行ったようだ!」
「見て、ニック!あの母娘の身体が光輝いて行くわ!!」
雪代母娘の身体は一つに合わさり光のトンネルと化した。顔を見合わせたニックとレイが頷き合うと、光のトンネルの中へと飛び込んだ・・・
休み時間、窓の外を見て居た真悟は、急に心が軽くなった気がして、思わずハッとした。妙に晴れやかな表情をしている真悟を見て、モサが近付いて来ると、
「アニイ、どうかしたんですか?」
「今急に、心の中のモヤモヤが、一つ無くなったような気がしてさ!」
「そう言えばアニイの顔、急に明るくなってやすぜ!さっきまで、話し掛けたら殺すぞみたいな殺気漂わせてましたけど・・・」
「エェェ!?俺そんなに怖い顔してた?」
「まあ、アニイは気分屋だし・・・」
「アハハ、コイツ!」
真悟とモサは思わず互いの顔を見て笑い合った・・・
ニックとレイは、飛び込んだ先の景色に見覚えがあった。
「此処は、私達が止まって居るホテル!?」
「ハハハ!レイ、成功だ!!俺達は元の世界に帰って来れたんだ!!」
思わずニックとレイは、互いの手を取り喜びを分かち合った。だが、新たなる謎がニックに浮かび、
「レイ、俺はあの巨人の夢に出てきた母娘こそ、あの巨人の手掛かりになると思うんだが・・・」
「なら、少女に注目すべきよ!おそらく、超能力の巨人は、あの少女の恋人・・・少女を見付ける事が出来れば、必然と超能力の巨人の正体も判明する筈よ!!」
「となれば・・・俺達が接近しても怪しまれない方法を取らねば・・・」
「それなら、良いアイデアがあるわ!」
レイはニックに耳打ちし、ニックは頷いてレイの案に同意すると、本国に了解を取り付けた・・・
再び町に探索に出掛けたニックとレイは、思いの外早く青沼達に関する話を聞く事が出来た。
「例の事件の被害者、耳宇高校の生徒ですって・・・怪我する前に争っていたのも、耳宇高校の生徒らしいわ・・・あの高校を調べれば、何か分かるかも知れないわね?」
レイの言葉にニックも頷き、
「ああ、外国語教師として潜入してみるか・・・幸いあの高校は、臨時教師の募集をしているらしい・・・さっそく応募してみよう!」
数日後・・・
レイとニックは直ぐに採用になり、耳宇高校の教師になる事に成功した。初出勤日、ニックとレイは、耳宇高校の門を潜ると、そこでニックは大木に背を付けてモサと楽しげに会話している真悟を見つけた。
「見ろよ、レイ!彼もこの高校の生徒だったんだ・・・」
ニックは、自分の興味をかき立てる真悟との再会に喜んだ。レイは呆れて、
「ニック、あなたは心理学では無くて、英語の教師でこの高校に赴任した事をお忘れなく・・・ウフフ」
レイに注意され、ニックは頭を掻き、二人は笑い合いながら校舎の中に消えた・・・
体育館に全生徒が集められ、新任教師であるレイとニックの着任挨拶が体育館で始まった。レイとニックは、無事着任挨拶を終えると、ニックは生徒達の心の中を探って行くと、大抵はレイの抜群のプロポーションを、羨ましがったりする女生徒や、レイの巨乳を揉みまくり、淫らな行為をする事を期待する男子生徒ばかりだった。ニックは呆れ返りながら探索を続けると、その中に多数の超能力を持った生徒が居るのにニックは驚いた。更に、瓜生麗と美剣千草の超能力が、自分よりも上だと認識し、レイに忠告を与えた。
「この学校には、やはり何かあるようだが、迂闊な行動は出来ない!レイ、君も十分気を付けてくれ!!最も、君の場合は別の意味で危険だがね?」
「まぁ、どうして?」
「この学校は・・・不良が多いようで、みんな君の胸に見取れていた!隙あらば、君を犯す事を、多くの男子生徒が考えて居る・・・」
「まぁ!?気を付けるわ!ウフフフ」
レイは戯けながらも、用心するとニックに告げた・・・