※この作品はR-18です。

真説・凄ノ王   作:鳳凰009

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第17話:真悟VS合田(その2)

 先に仕掛けたのは真悟の方だった・・・

 

 真悟は、合田に習った成果を披露するかのように、挨拶代わりに左右のジャブからの連打を狙うが、合田は余裕で回避する。合田は、真悟のジャブの鋭さに笑みを浮かべると、

 

(全く、お前は凄い奴だよ、朱紗!俺が教えた基本のジャブを此処まで磨き上げるとはな)

 

 真悟は、合田の口元に笑みが浮かんだ事で焦り、左ジャブから間髪入れず右フックを狙うも、大振りになった真悟に、合田の目が鋭く光り、挨拶代わりの左ストレートが、反射的に躱したつもりだった真悟の右頬に炸裂し、真悟は堪らずダウンする・・・

 

「ウワァァァァァァァ!!」

 

 真悟がダウンした事で、観客席が興奮し、大歓声が沸き起った。レフリーがカウントを取る中、真悟は頭を振りながら片膝付き、

 

(クッ・・・焦るな真悟、奴は、安村とは違うんだ!大振り何かしたら、格好の的じゃないか!!)

 

 真悟は、カウント5で立ち上がり、ファイティングポーズを取った。真悟は、今一度ジャブで合田の動きを封じようとするが、合田は、真悟の潜在能力を引き出そうとしているかのように、

 

「フフフ、朱紗、お前のジャブとはそんなものか?本当のジャブを見せてやる!」

 

 逆に合田の目が妖しく輝き、左右のジャブで真悟の動きを牽制していく、まるで鞭のように、しなやかに叩き込まれて来る合田のジャブを、真悟は防ぐのに精一杯で、たちまちロープ際に追い込まれる。

 

(な、何てジャブだ!?こんなのまともに喰らったら・・・)

 

 合田は、そんな真悟の一瞬の隙を付き、左のボディブローで真悟を苦悶の表情にさせ、ガードが甘くなった所に、ここぞとばかりに右ストレートを繰り出した。真悟は咄嗟にガードしても防ぎきれず、真悟はコーナーポストに激しく叩き付けられ、そのまま尻から崩れ落ち、二度目のダウンを奪われた。再び沸き返る大観衆、真悟のグローブは、合田のパンチの凄まじさを現わすかのように、裂けていた。

 

(な、何てパンチだ!?ガードしてなきゃお陀仏だぜ・・・)

 

「アニイ、もう立つなぁぁ!今度喰らったら殺されちまう!!」

 

 セコンドのモサが絶叫するが、真悟は立ち上がる。ミーコは見てられないとばかり顔を覆った。観戦していた美剣も、思わず拳を握りしめながら、

 

(朱紗くん、出して!あなたの超能力を出して!!このままじゃ・・・)

 

(雪代が、雪代が来てるんだ!雪代に見せるんだ、彼女を守れる男に成った事を!!)

 

 合田は、ニュートラルコーナーを背にしながら、真悟の根性に改めて敬意を表する。

 

(流石に俺が見込んだだけの男だ・・・だが)

 

 合田の目付きが変わった瞬間、第1ラウンド終了のゴングが鳴った・・・

 

 

 真悟は、ヨロヨロと自分のコーナーに戻ろうとした時、真悟の脳裏に次のラウンドでの合田の動きが見えてきた。真悟は、ブツブツと合田の動きを頭に入れる。

 

 瓜生と美剣はそれに気付き、瓜生は口元をニヤリとさせ、美剣はホッとして笑みが浮かべ、

 

(朱紗くん、見えているのね!?2ラウンド目の合田の動きが・・・)

 

 そして、2ラウンド目のゴングが鳴った!!

 

 

 瓜生に取り巻きの一人樫村が声を掛ける。

 

「瓜生さん、このラウンドで朱紗も終わりのようですね!」

 

「いや、そうは成るまい・・・それより、このラウンドで面白い事が見れそうだぞ」

 

「エッ!?」

 

 驚く樫村だったが、瓜生の言葉通りの展開となった。会場に居るほとんどが、このラウンドで真悟がKOされると思っていたのだが、このラウンドに入ってから、合田のパンチが真悟に全く当たらなくなった。会場がざわめき始める中、合田にも焦りが生まれる。真悟は、合田のパンチを当たるギリギリの所で躱しているのだから、

 

(何故だ!?何故こうも完璧に俺のパンチが避けられるんだ?)

 

 それをジィと見て居た、部団連合の佐々木剣道が思わず立ち上がり、

 

「あれは、剣道で言う見切りだ!朱紗は、合田のパンチが届く距離を正確に読み、ギリギリでかわしている・・・何て奴だ!?」

 

 焦った合田の右ストレートが空を切った時、真悟の右ストレートが、カウンター的に合田の顔面を捉える。合田は吹っ飛び、初めてダウンを喰らった。

 

「ウワァァァァァ!!」

 

 合田がダウンした事で、会場が意外な展開に盛り上がる中、真悟は浮かぬ顔をしていた。

 

(お、俺が予知出来たのは此処までだ・・・頼む、そのまま寝ててくれ・・)

 

 だが真悟の願い届かず、合田はムクリと起き上がった。ダウンを喰らった事で、合田は何時もの冷静さを取り戻した。逆に真悟に再び焦りが生じる。

 

(これから先を、俺は予知出来なかった・・・だが、合田のパンチを俺は躱してきたんだ!俺は戦える筈だ!!)

 

 真悟は、自ら前に出て左右のジャブを繰り出すが、合田は的確に躱し、逆にジャブで真悟をコーナーポストに追い詰めると、合田の右ストレートが真悟の顔面に炸裂した・・・筈だった!

 

 誰もが真悟にヒットしたと思った刹那、真悟は合田の後ろに回っていた。合田も、観客達も、誰もが突然真悟が一瞬消えて背後に現われたような感覚に驚き、シーンと静まりかえった。真悟が逆に、合田をコーナーポストに追い詰めた所で、2ラウンド目が終わった。

 

 美剣は少し涙ぐみながら、

 

(瞬間移動だわ!朱紗くんは、無意識の内に予知能力と瞬間移動を繰り出したんだわ!!)

 

 美剣は、真悟が自らの力で、超能力に目覚め始めて居る事を嬉しく思っていた。自分のコーナーで腰掛けていた真悟は、ミーコに話し掛け、

 

「ミーコ、雪代は見つかったかい?」

 

 ミーコは首を振り、手を広げながら、

 

「ゴメンネ!まだ涼子から何の連絡も・・・でも、本当に居たの?」

 

「ああ、間違いない!必ず見つけてくれよ?彼女に答える為にも、俺はこの試合、持てる全てを出して勝ってみせる!!」

 

 真悟の晴れ晴れした表情を見たミーコは頷き、自分も捜してくると笑みを浮かべて駈け出した。

 

 

 そして、3ラウンド目のゴングが鳴った!

 

 真悟は、合田の目が今までと違う事に気がついた。だが、雪代の為にも負けられない真悟は、再びジャブで攻め込む。しかし、合田の動きは今まで以上にシャープだった。軽いフットワークで真悟のパンチを躱しながら、まるで自らリズムに乗るように、真悟との距離を縮めて行った。

 

(こ、これは、ノスフェラトゥを倒した時の・・・)

 

 真悟が一瞬油断したその瞬間、合田の殺人パンチ、右フックが真悟に炸裂した!

 

 真悟の身体が半回転して、リングに叩きつけられ跳ね上がった!

 

 その凄まじい威力に、会場は言葉を失った・・・

 

「クックック、決まったな!合田の殺人パンチが!!」

 

 応援団長藤倉は、勝利を確信していたが、隣に居る九頭木は腕組みしたまま何の反応も見せる事は無かった。

 

  小百合を捜し回って居た涼子も、静まりかえる観客達に思わずリングを見ると、大の字に倒れ込む真悟を見て真っ青になり、

 

「し、真悟・・・真悟ぉぉぉ!!」

 

 思わず絶叫し、駆け寄ろうとした涼子の耳に、声が聞こえてきた。

 

「朱紗くん!朱紗くん!朱紗くん!!」

 

 ハッとした涼子が声の方を向いた時、そこには、以前写真で見た事がある雪代小百合が、両手を口の周りで合わせ、必死に真悟に声援を送っている姿を見付けた。小百合の声は、頭の中がクラクラする真悟にも届いていた。真悟は、目まぐるしく回る景色の中で、確かに小百合の叫び声を聞いた気がした。真悟の心に、再び闘志が燃え上がってくる。

 

(負けられない!俺は、負けられないんだぁぁ!!)

 

 真悟は、ヨロヨロとカウント8で立ち上がり、ファイティングポーズを取った!

 

「ば、馬鹿か!?根性だけは買うが・・・あのまま寝ていれば良いものを、本当に死ぬぞ!?」

 

「ウゥム・・・確かに何故、あそこまで必死に合田と戦うのか解せぬ?」

 

 真悟を敵視している藤倉も佐々木も、真悟が何故此処まで試合に拘ろうとするのか理解出来なかった。それは、合田も同じであった。真悟の気迫に、徐々に合田は押され始めた。

 

(朱紗よ・・・何故お前がそこまで必死になるのか俺には分からん・・・分からんが、お前のその闘志に応え、俺も全力を持ってお前を葬ろう・・・行くぞ!!)

 

 合田は意を決し、真悟に対して怒濤のラッシュを掛けると、パンパンパンと小気味良い音が確実に聞こえてくる。だが、真悟に当たっている筈なのに、真悟にダメージを与えていない事に、合田は動揺を隠しきれなかった。試合を観ていた樫村の顔から汗が滴り落ち、

 

「あの野郎、俺の得意のサイコバリヤーを使ってやがる・・・」

 

「いや、あの合田のパンチを防いでいるのを見ても、お前のよりも数段上だ・・・どうやら、朱紗は自分の力だけで、超能力に目覚めたようだ!!」

 

 瓜生麗は冷静に分析し、改めて真悟の秘められた能力を目の当たりにして驚く、動揺した合田だったが、再び殺人パンチである右フックを真悟に炸裂させようとしたその時、真悟、は右手に凄まじい力が宿った気がした。無我夢中で右ストレートを繰り出すと、合田はまるで爆風を浴びたかのように吹っ飛び、リング下に落下した・・・

 

 パンチを放った真悟自身驚く中、レフリーが10カウントを数え終え、真悟の勝利が確定した!!

 

 会場中が大歓声で沸く中、部団連合会長、九頭木が吼える!!

 

「キサマハ、恥じの上塗りを見せる為に、この試合を組んだのか?」

 

 恐れ慄く藤倉に変わり、佐々木剣道(ささきけんどう)が吼える!!

 

「何の、この佐々木剣道が居るわ!俺が朱紗真悟の頭を叩き割る!!」

 

「いや、この俺がやる!この空手部主将、大東寺鉄斎(だいとうじてっさい)がな!!」

 

「いんやぁ!この相撲部主将、権田原脂肪(ごんだわらしぼう)が、張り手一発で朱紗のドタマをかち割ってやるわい!!」

 

 ボサボサの長髪をした空手着姿の大東寺と、醜い脂肪の塊を学ランで包んだ権田原も自ら真悟を葬るとアピールする。部団連合第二、第三の刺客が、確実に真悟に牙を向こうとしていた・・・

 

 

 試合を見終わった小百合が、一人体育館から出てくるのを、表で涼子が待っていた。涼子は小百合に軽くお辞儀すると、小百合もハッとして慌てて頭を下げた。

 

「雪代さんね?私、真悟の姉涼子って言うの!姉として礼を言うわ、この試合で勝てたのはあなたのお陰だと思う・・・真悟には会わないで行くの?」

 

 小百合の身に起こった出来事は、涼子もミーコに聞いて知っていた。それがもし自分と母和子に起こった身だったらと想像するだけで、涼子は気が変になりそうなくらいだった。その辛い出来事を乗り越え、小百合は真悟の応援に来てくれた。涼子は、そんな小百合の事が愛おしく思えていた。涼子は、小百合の心を傷つけまいと、慎重に言葉を選んで優しく話し掛けた。小百合は小さくコクリと頷き、

 

「はい・・・それに、今日の勝利は、朱紗くん自身の力で、私は・・・それより、朱紗くんに伝えて下さい!勝利おめでとう・・・もう、自分を許してあげてと・・・」

 

 雪代は、少し寂しげな微笑を浮かべた、その時、ミーコが涼子の名前を呼びながら駆け寄って来たので、涼子はミーコに目を奪われた。

 

「涼子、雪代さん見つかった?」

 

「エッ!?見つかったって、今私の目の前に・・・・・アレェ!?」

 

 振り返った涼子は、思わず目を点にして驚いた。何故なら、今さっきまで自分の目の前に居た小百合の姿が、忽然と消えていたのだから・・・

 

 一方、真悟の控え室では、クラスメイト達が駆け付け、真悟の胴上げが始まっていた。遠くからそれを見つめていた美剣は、

 

(朱紗くん、あなたは念動力も手に入れた・・・自分に負けないでね!)

 

 そう心の中で真悟に声を掛け、美剣は体育館を出ようとして、その脇を涼子とミーコが通り過ぎて行った。控え室に入った涼子は、真悟の耳を引っ張ると、

 

「コラ!真悟!!全く、あんたが浮かれている間に、雪代さん行っちゃったよ!」

 

 涼子から、やはり小百合が来ていたと知らされた真悟は、思わず姉に縋り付き、

 

「ア、アネキ・・・雪代に会ったのか!?ハハハ、やっぱり見に来てくれてたんだ!!」

 

 真悟は、心の底から嬉しがった。涼子は、そんな真悟の顔を久しぶりに見た気がして、自分も自然に笑顔になっていた。

 

「真悟、雪代さんからの伝言よ!勝利おめでとう・・・もう、自分を許してあげて・・・だってさ」

 

 真悟は嬉しさの余り、涼子を抱きしめ、アネキ大好きと顔中にキスをしまくり、涼子は見る見る真っ赤になり、

 

「コラ!エロ真悟!!恥ずかしいから・・・止めて!!」

 

「「アハハハハ」」

 

 それを見ていたモサとミーコも、思わず指を指して笑った。こうして、合田とのボクシング対決は、朱紗真悟が見事に勝利を収めた!! 

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