それから二日が過ぎた・・・
ボクシングキャプテン合田も退院し、一週間振りに耳宇高校に登校した合田に、応援団の藤倉が顔を出すと、
「合田、退院したばかりで悪いが、会長が放課後、緊急の幹部会を開くそうだ!」
「会長が!?それは急だな?」
「ああ、お前の耳には入れなかったが、空手部の鬼頭が、部員達に朱紗真悟を襲わせるも失敗し、あの剣道部の佐々木剣道も朱紗真悟との戦いで、超殺人剣が使えない身体になってしまってなぁ・・・」
(俺が入院している間に、そんな事があったのか・・・)
「更に厄介なのは、朱紗の活躍に、1、2年の部員達が、武団連合に反旗を起こそうと企んでいるようだ・・・その中心人物が、剣道部副将身堂竜馬!」
「身堂!?あの身堂までもか?」
「ああ、その事もあって、会長は臨時幹部会を開くのだろう・・・」
合田は、藤倉に分かったと告げたものの、その表情は浮かなかった。九頭木の指示だとしても、空手部は試合の形式を取らない闇討ち同然、佐々木程の男が、怪我が完全に治りきっていないであろう、真悟に対決を挑む事も疑問だった。
(俺が理想と信じた武団連合とは・・・何だったのだろうか?)
合田の心に葛藤が生まれた・・・
合田は、昼休みに真悟を屋上に誘った。涼子の弟という事を差し引いても、合田は真悟の事を気に入っていた。最近は、真悟と話して居る方が、武団連合の面々と居る時よりも、楽しかった。合田は真悟に話し掛け、
「朱紗、俺が入院している間に、空手部や剣道部の佐々木に襲われたそうだな?」
「ああ、ついでに言えば・・・ノスフェラトゥともやり合った!」
「何だと!?ノスフェラトゥとまで?」
「ああ、その翌日だ!佐々木剣道に勝負を挑まれたのは・・・」
「ウゥゥム・・・」
合田は思わず唸った・・・
ノスフェラトゥと真悟がやり合った噂ぐらいは、武団連合の会長である九頭木には届いて居る筈だった。武団連合最大の敵であるノスフェラトゥと戦った真悟を、その翌日に葬ろうと企むやり方に、合田は心の底から武団連合に嫌気が差してきた。
「朱紗・・・今日武団連合は、臨時の幹部会を開く!」
「幹部会!?各部部長達が集まるって言う・・・」
「そうだ!そこで恐らく、お前や武団連合に反旗を翻そうとしている、1、2年の部員達を粛正する事が話し合われると俺は読んだ!!それでは、せっかくお前の活躍で芽生えた、反武団連合の動きが無となってしまう・・・」
「確かにな・・・剣道部副将身堂の腕は、間違いなく凄かった!あいつの腕を借りられるのならば・・・」
「おいおい、俺を忘れてるぜ!」
「エッ!?だって合田さんは・・・」
「俺もたった今から・・・反武団連合に加わる!今の武団連合に、俺が求める理想は無い!!」
「合田さん・・・やりましょう!あなたが力を貸してくれるなら、百人力だ!!」
真悟は合田の手を取り、固い握手を交わした。その様子を、屋上の陰から覗いていた少女に、真悟も合田も気付かなかった・・・
放課後・・・
真悟は、身堂との待ち合わせ場所を、学校の裏山にある林の中と決めた。タバコを吹かしながら歩いてきた真悟が辺りを見回すと、右手を振りながら身堂が現われ、
「ハ~イ、朱紗君こっちよ!皆集まっているわよ!!」
真悟はそうかとばかり皆の傍に行くが、あまりの少なさに思わず驚いた。その数5人、相撲部、空手部、柔道部などに所属していた。身堂と真悟を入れても7人であった。真悟の考えでは、20人前後は反武団連合に組みするだろうと思っていたが、その目論見は外れた。
「こ、これだけかい?」
真悟は思わず声に出して身堂に聞くと、身堂は真悟の心中を察したようで、
「有力な1、2年生よ!朱紗くん、喧嘩は頭数じゃないでしょう?やる気の無い人間が多く居るよりは・・・少数精鋭って奴よ!!」
「成る程・・・そうも捉えられるな!」
「そういう事よ!」
真悟も納得して頷くと、身堂は真悟にウインクし、思わず真悟が苦笑する。直ぐに表情を引き締めた真悟は、
「みんな、早速だが今から・・・部団連合に殴り込みを掛ける!今夜、部団連合の幹部会があるんだが、そこを襲撃して・・・部団連合を一気に叩く!!」
真悟の発言に、流石の身堂も驚きを隠せなかった・・・
「エッ!?たった今から?いくら少数精鋭とは言っても・・・それに、その情報は確かなの?」
「ああ、合田さんが、今日幹部会があるのを教えてくれた!」
「合田!?あのボクシング部の・・・罠って事は?」
合田の名前を聞き、皆が罠じゃないかと語る中、真悟は、合田が部団連合のやり方に疑問を持っている事などを語って聞かせた。疑心暗鬼な一同だったが、ちょうどそこに合田が現われ、
「朱紗、揃ったようだな!行こうぜ!そろそろ敵さんが集まる時間だ!!」
「たまげたわぁ・・・こりゃあ、最高の助っ人だわ!」
「だろう?」
真悟が苦笑気味に一同を促すと、皆も笑いながら合田を信頼した。その時、合田の背後から女の声が聞こえ、
「あたしも行くわよ!!」
「ア、アネキ!?何で此処に?合田さん、これは一体!?」
合田の後ろから顔を出したのは、真悟の姉涼子だった。驚く真悟は、思わず合田を問い詰めると、合田は申し訳無さそうに頭を掻きながら、
「スマンなぁ!どこで聞いたか、待ち伏せしていてな・・・何とか断ろうとしたんだが・・・俺が必ず守るから、今回だけは許してやってくれ!!」
涼子は、真悟を始めとした一同が、自分の事を足手纏いに思っているようで、不満顔を浮かべると、
「何よ!これでも足手纏いって言うの?」
そう言うと、涼子の目が妖しく輝き、真悟に超能力を使った。
「こ、これは!?」
涼子に不意を突かれ、さすがの真悟も忽ち凍り付き、思わず皆は驚きの声を上げた。合田も今初めて知ったようで、口を大きく開いて唖然としていた。涼子はどう!?とばかり得意気にしていると、
(ア、アネキ・・・分かった!分かったからこの氷をどうにかしてくれ!!)
真悟は、姉涼子も超能力に目覚めた事を認め、テレパシーで涼子に話し掛けると、涼子はペロッと舌を出し、
(アハハ・・・実は私、最近超能力に目覚めたばかりで、解除の仕方知らないのよ・・・真悟、悪いけど自分でやってくれる?)
(なんだとぉぉ!?)
数分後・・・
元に戻った真悟が、姉涼子に文句を言い始め、姉弟喧嘩を始める中、思わず笑いながら身堂が突っ込みを入れ、
「アハハ!君達二人のお母さんって・・・よっぽど化け物じみた能力持ってそうよねぇ?」
「何ですってぇぇぇ!?」
涼子は、身堂に和子をバカにされたと受け取り、再び目を怪しく輝かせると、今度は身堂が忽ち氷付けにされた。
「おい、身堂・・・今のはお前が悪いと思うぞ?」
「そうよ!そうよ!」
涼子は我が意を得たりといった表情で、腕組みしながらコクコク何度も頷いた。凍り漬けにされた身堂も、真悟の超能力で元に戻り、一同は表情を険しくすると、
「じゃあ、乗り込もうぜ!武団連合本部によぉぉ!!」
「「「「「「「「オォォォ!!!」」」」」」」」
真悟の合図に、一同が返事を返し、九人の戦士達が、武団連合へと乗り込んで行った・・・