第38話:獣神討伐隊(その1)
あれから二週間が過ぎた・・・
世界には魔が溢れ、生き延びた人々は、魔に怯えながら暮らしていた・・・
朱紗和子は、娘涼子、妹光子と別れ、関東の魔神と恐れられる魔神凄ノ王の分身、獣神魔王の動向を探っていた。生き延びた人々の話を聞くと、獣神魔王は人間狩りと称し、男は殺し、女は居城に連れ帰り、性奴隷として扱っていると知った。
(思っていたより厄介そうね・・・獣神魔王の居城を攻めるには、私だけでは無理ね)
和子は、どう獣神魔王を倒すか思案していた。獣神魔王が狩りをする時、必ず腹心の二体の魔物を連れていて、その二体の魔物の超能力も凄まじいと知った。
(この街に居ると言う、獣神魔王に立ち向かう集団の力を借りるしかないか・・・)
駄目もとで、和子は獣神討伐隊のリーダーに接近する事にした。
イメージにある街とはかなりかけ離れていて、崩壊した家々に集まってきた人々が、集団で住み着いて居るだけだった・・・だが人々は、そんな状況の中でも生き延びようと必死だった。
和子は、それらの人々を見て確信する・・・
人の心は強いと・・・
その思いを無にさせない為にも、先ずこの関東を蹂躙する、獣神魔王を討たなければならないと思った。
「こちらの街に、獣神討伐隊が居ると聞いたのですが?」
和子の問いかけに、町の人々は慌てまくり、俺は関係ないと逃げ惑う。和子は思わず眉根を顰め、
(どういう事!?獣神討伐隊とは、この人達の味方の筈なのに・・・この脅えようは一体!?)
「アハハ、おばさん、そいつらに聞いても答えるわけ無いよ!内のリーダー過激な奴でさ・・・この間も、魔物事この街の人間を殺しちゃってるしね!おばさん、獣神討伐隊に用があるの?あたしは、獣神討伐隊でサブやってる、錦織・・・錦織(にしきおり)つばさよ!!」
錦織つばさと名乗った少女は、白いヘルメットを取ると、中から茶髪のショートヘアーが現われ、何所から調達したのか、肩にマシンガンをぶら下げているのと反比例し、顔は美少女だった。体格良く、アイドルレスラーのようなその姿に、和子は思わず呆然としていた。
身堂竜馬は、茂坂公司、黒田ミコの二人を連れ、関東の荒野を彷徨っていた・・・
魔神凄ノ王の猛威を、辛くも逃げ延びた三人だったが、行く先々で魔に遭遇し、命からがら逃げ続ける日々が続いた・・・
「み、身堂君・・・そろそろ休まない?」
ミーコは、身堂に休憩しようと訴えると、身堂はやれやれと言った表情で、
「それは構わないが、ここは獣神魔王とか言う化け物の勢力下らしい・・・もたもたしてたら、人間狩りってやつに遭遇しちまうかも知れないわね!?」
ミーコは、この間聞いた話を思い出し、身体が震え出す・・・
とある町に着いた時、そこの住民から、獣神魔王という化け物が現われ、人間の女を捕らえては、その宮殿に連れ帰り、性奴隷にしているという話を・・・
「そうだぜミーコ・・・身堂さんの言う通りだぜ、さっさっと奴らの勢力圏から逃げ出さなきゃ、どんな目に遭うか・・・」
「わ、分かったわよ!あたいだって、化け物に犯されるのは真っ平ゴメン何だから!!」
身堂とモサも、ミーコの反応に思わず笑い出すが、不意に身堂の表情が引き締まる。身堂は険しい表情で周囲を見渡すと、
「二人共、どうやら遅かったようだ!」
「「エッ!?」」
身堂が刀を抜き構えを取ると、草むらより魔物が2体飛び出してくる。身堂は二人に下がっていろと言うと、魔物に切り掛かった。
「バカガ・・・カタナデオレノカラダニ・・・キズガツクカ!!」
鳥と獣を合わせたような魔物は、身堂を嘲笑うように嘲笑するが、身堂の刀の切っ先が光ると真二つになった。
「お生憎様!あたし、仲間の戦い方を見ていて、最近超能力に目覚めたのよね・・・・今のは、念動剣さ!!」
身堂の勇士を見たモサとミーコは歓声を上げ、残った猪に似た魔物は、小賢しいとばかり唸り声を轟かすと、
「調子に乗るな!超能力など、我ら程度でも扱える!!」
そう言うと、魔物は身堂に念動力を叩きつけ、身堂は、吹っ飛ばされた拍子に刀を落としてしまった。
「クッ、しまった!?」
身堂は、眉間に皺を寄せ苦痛の表情になる。勝ち誇った魔物は、身堂を宙に浮かせると、身堂の刀で身堂をバラバラにしようとする。何とか逃れようとするが、身堂は身動きが取れない。魔物が刀を身堂に振り落とした時、ミーコが超能力で刀を奪い取った。
「ナ、ナイスミーコ!!」
モサは思わずミーコを褒めるが、刀を奪われた魔物は、モサとミーコの方に襲い掛かってきた。
「に、逃げろぉぉ!二人共ぉぉ!!」
身堂が絶叫するが、二人は恐怖で固まってしまった・・・
殺されるかも知れないという恐怖が、二人の足を震えさせた・・・
だがそこに、砲撃の雨が魔物に降り注ぐと、魔物は不意の攻撃を喰らってバラバラになり息絶えた。
「よう、竜馬ぁ!しばらく見ねぇ内に、随分甘ちゃんになったな?」
十数人の人影の中に、身堂は懐かしい顔を見出した。身堂はその顔を、額に付いた傷跡を見ると、今まで見せた事も無い笑顔を見せて叫んだ。
「も、門土!早乙女門土(さおとめもんど)か!!」
早乙女門土・・・
彼は中学時代に、身堂と共に暴れまわった仲だった。退屈な事を嫌い、数々の騒動を巻き起こす彼を、学校の者達は、学園退屈男と呼び恐れた。身堂が剣道部の試合のある日、門土はある学校との果し合いで校舎を爆破し、少年院に収監されたのだった。それ以来の再会に、身堂は心底嬉しく思っていた。
門土はニヤリと笑い、身堂の傍に近づいて行った。ミーコは、門土と言う人物に本能的に恐怖を持った。自分でも何故かは分からなかったのだが・・・
「あっ、門土お帰り!ン!?その三人は誰?」
錦織つばさは、門土が連れ帰った三人を訝しげに見た。
「ああ、こいつは昔のダチで身堂竜馬!後はオマケの二人だ!!」
門土にオマケ扱いされたミーコはむくれ、モサは苦笑いを浮かべた。ミーコは頬を膨らませると、
「オマケじゃないよ!あたいは黒田ミコ、ミーコって呼んでくれれば良いよ!こっちはあたいの彼氏で、茂坂公司!モサって呼んでもらえば良いよ!」
門土は、生意気そうなミーコを気に入ったようで、ニヤニヤしながら見ていた。
(あんな、間抜けそうな奴が彼氏じゃ・・・勿体ねえな!)
ミーコは、門土の身体を舐め回す様な視線に気付き、その冷酷な視線に、思わず冷や汗が流れた・・・
「ふ~ん、あたしは錦織つばさ!つばさで良いよ!!獣神討伐隊で、門土のサブやってるんだ・・・三人ともヨロシク!!」
「「こちらこそ!」」
ミーコとモサは、親しげにつばさに答えたが、身堂は心の中で、つばさに敵意を持った。
(あの女は何だ!?門土のサブだと・・・この身堂竜馬が加わったからには・・・何時かお前を叩き出す!!)
そんな身堂の思いを知る由も無く、つばさは門土に報告を始め、
「門土、さっき獣神討伐隊に用があるっておばさんが来てたよ!今留守だって言ったら、また来るって帰って行ったけどね!!」
「フン、こちとらババアに用はねえよ!!」
ソッポを向いた門土を見たつばさは、ニヤニヤしながら、
「でもそのおばさん、女のあたしが言うのも何だけど、中々良いスタイルしてたよ!」
その言葉に、門土は思わずニヤリとして、
「へえ、まあ会ってやるだけなら構わないか・・・」
「門土!」
身堂は、少しムッとしながら門土の名を呼ぶと、門土は冗談だと身堂を諭し、顔合わせは終わった・・・