城に戻ろうとしていた獣神魔王は、急に歩みを止め、先程人間を皆殺しにした場所に、超能力者の存在を感じて居た・・・
(ほう、こいつは中々の使い手のようだな・・・面白い!!)
獣神魔王は踵を返し、来た道を戻り始めると、青沼とエースは、その行動を不信に思い、思わず青沼が尋ね、
「どうなされました!?獣神魔王様?」
青沼に聞かれた獣神魔王は、含み笑いを浮かべながら二人の顔を交互に見つめながら、
「雑魚に騙され、大物を見逃す所だった!アオ、エース、先程人間共を皆殺しにした場所に戻るぞ!中々の能力者が待ち構えて居る!!」
青沼とエースは、顔を見合わせニヤリとすると、獣神魔王に続いた。
「来る!獣神魔王が此処に!!」
朱紗和子も、獣神魔王が自分の存在に気付いたのを感じた。和子は、先程考えた戦略で戦う事にした。
「後は・・・成り行きに任せる!・・・来た!!」
砂塵を巻き起こし、獣神魔王が和子の前に姿を現した!
背中に靡くマントが、王者の風格を現すし、その少し後に青沼とエースが追いついた。
「ほう、女だったとは・・・これは楽しみだ!女、精々楽しませろよ!!」
獣神魔王は、青沼とエースに手を出すなと言い聞かせ、和子と睨み合った。和子は、1対1なら少しは勝ち目があると、自分に言い聞かせ、先制攻撃を獣神魔王にぶつけた。
「この場所で殺された人々の為にも・・・いくわよ!」
和子は、挨拶代わりの念動力をぶつけると、辺りが砂塵に包まれ視界が悪くなる。和子は砂塵に紛れ、右に左に動きながら念動力を獣神魔王にぶつける。和子は、あえて獣神魔王と青沼、エースの間に立ち、獣神魔王に声を掛けると、
「こっちよ、うすのろ魔王!」
獣神魔王は、視界の利かない苛立ちで、和子の策略に掛かり、声のした方向に凄まじい念動力を叩き込むと、
「ウギャァァ・・・じゅ、獣神魔王様・・・わ、私でございます!」
「何だとぉ!?おのれぇぇ、女ぁぁ!」
獣神魔王の攻撃は、青沼にヒットしたようで、青沼が苦しそうな声を出し、獣神魔王が思わず唸った。
「グゥゥゥ、卑怯だぞぉぉ!グゥゥゥ・・・グゥゥゥゥオオオオ!!」
獣神魔王が物凄い唸り声を上げると、思わず和子の動きが鈍る。その間に砂塵も薄れ、獣神魔王の視界も見えてきた。
「小癪な真似をしおって・・・貴様を犯した後、我が爪の餌食にしてくれるわぁぁ!!」
獣神魔王は、念動力、火炎攻撃、そして、鋭い爪のコンビネーション攻撃を和子に仕掛けてくる。和子は何とかかわし続けるが、その均衡が破れた。
「女、許さん!」
先程ダメージを負った青沼が、憤怒の表情で和子の足を攻撃した。先程と違い、和子の動きが急激に鈍った・・・
「お、お許しください、獣神魔王様!こやつ許せませぬ・・・我にも攻撃の許可を!!」
獣神魔王は、青沼の申し出に戸惑った顔をしたが、直ぐに許可を出した。和子の表情に焦りが浮かんで来る。
(クッ!?2対1になったようね・・・何れはもう一体の魔物も・・・)
和子に焦りの色が現われると、獣神魔王と青沼は左右に分かれ、鋭い爪で和子の衣服を剥いでいく。勝ち誇った獣神魔王は和子を挑発する。
「女、此処までのようだなぁ?手古ずらされたが、変身する程でも無かったな!!」
和子は、今の獣神魔王の言葉に驚愕する。獣神魔王は、和子と戦って居る時点では、まだ実力を隠していた。その言葉に、和子の戦意は喪失した・・・
(そ、そんな!?こいつにはまだ余裕があったの?完敗だわ・・・)
その時だった・・・
獣神魔王と青沼に攻撃を加えたものが居た!
獣神魔王と青沼は、攻撃してきたその者を見て目を見張って驚愕した。何故なら、攻撃を仕掛けてきたのはエースだったのだから・・・
「グゥゥ・・・血迷ったか、エース!?」
和子は、思わず唖然としてエースを見た。エースは、苦しそうにフラフラしながら、和子に何か訴えかけているようだった。エースの姿がある人物とダブった瞬間、和子はエースに触れ、共に何処かに瞬間移動した。獣神魔王は、怒りの唸り声を上げ、青沼に追うぞと告げた。
和子とエースは、獣神討伐隊のあった街に戻って来た。先程まで居た門土と身堂は、すでに居なくなっていた。
(か、和子・・・ああ、和子!やっと、やっと・・・)
エースは、苦しみながらも和子の顔を懐かしそうに触る。和子は涙を流しながらされるままだった。和子は涙を拭いながら、
「まさか、日本に戻っていた何て・・・え、英介さん!!」
和子は、そう言ってエースに縋り付いた。エースは言葉を喋れなかったが、テレパシーで和子に話し掛けてきて、
(お、俺は、妙な胸騒ぎがして、日本に戻った!日本に戻った俺は・・・黒い塊に触れた瞬間、意識が今まで無くなった・・・教えてくれ、和子!俺は、俺は、今まで何を!?)
和子は何と答えれば言いか迷った・・・
魔に憑依され、獣神魔王の側近として、生き残った人々を虐殺していた事など、和子の口から言える筈は無かった・・・
和子が迷って居ると、二人のテレパシーでの会話に、突然加わって来た者が居た。
「教えてやろう!お前は我らと共に、女を犯し、人間を狩り、その肉を喰らい続けた・・・思い出せぇぇ、魔獣エースよ!!」
姿を現わした獣神魔王と青沼を見て、和子の表情が険しさを増した。獣神魔王の強烈なテレパシーを受け、エース・・・いや朱紗英介は、頭を抱え苦しみだすと、和子はそんな英介を労りながら、
「ヤ、ヤメテェェ!ゆ、許さない・・・これ以上英介さんを苦しめるなら・・・」
和子は、獣神魔王と青沼に、憤怒の表情を見せると、獣神魔王は愉快そうに笑い出し、
「クックック!女、お前の後ろに居る奴は、お前が守ろうとしたこの街の人間を、我らと共に殺したのだぞ?我らと共になぁ!それでも守るか、女よ!?」
和子は、言うなとばかり念動力を獣神魔王にぶつけるが、先程の疲れは癒えてはおらず、あまり効き目は無かった。動揺する和子を見た獣神魔王は、
「その程度か・・・ならばエース・・・いや、夫の目の前で、貴様を犯してくれるわ!!」
和子は後退りを始めると、エースが和子の前に立ち、獣神魔王と青沼に突撃する。
(逃げろ!か、和子!!俺は、また意識を乗っ取られそうだ・・・その前に人として、死にたい・・・さようなら、愛する妻・・・そして、子供達・・・よ)
「イヤァァ!英介さぁぁん・・・じゅ、獣神魔王、殺さないで・・・英介さんを殺さないでぇぇ!!」
その言葉空しく、エースの身体は、獣神魔王の強烈な念動力攻撃を受け、跡形もなく消え去った・・・
和子は、一瞬だが英介に戻った姿を見た・・・
和子は、今までの英介との思い出を思い出し、膝から崩れ落ち、その場で号泣した・・・