瓜生麗は、街に近づく不穏な気配を感じた。それは、かつての凄ノ王程ではないが、人間にとっては十分脅威であった。
(これが、霞竜子の言っていた鳥神魔王とやらか・・・幸い小百合も回復したし、ここは俺が囮になるか)
「三人共、聞いてくれ!今この街に強大な邪気が近づいて居る!恐らく、昨日君達に聞いた鳥神魔王と言う魔神だろう・・・ガイデル、竜子、君達は街の皆に急いでここから避難するように伝えてくれ!支度が出来次第、皆と共に避難してくれ!小百合・・・お前も二人と共に避難するんだ!魔王軍は・・・俺が足止めする!!」
瓜生の表情を見て、竜子とガイデルは、一刻を争うと分かり外に飛び出した。小百合は不安そうに瓜生を見ると、
「大丈夫だ、無茶はしないよ!敵を足止めしたら、直ぐに君達の後を追う!小百合も急いで支度するんだ!!」
瓜生の言葉に少し安堵して、小百合は身支度をし始めた・・・
(さて、どれほど足止めできるか・・・)
瓜生の表情は強張り、敵の気配を読んだ・・・
(かなりの数だな・・・空と、陸からの部隊か・・・まずは奇襲で地上部隊の出鼻を挫くか・・・)
瓜生はテレポーテーションで、鳥神魔王軍の地上部隊の背後に回り、攻撃を仕掛けた。瓜生の超能力は流石の威力で、魔王軍にダメージを与えていく。
鳥神魔王は空の部隊を率いていた!
エイのような魔物の群れや、鳥系の魔物の群れ、グロテスクな昆虫のような魔物である。地上部隊の後方の騒ぎに気付き、配下の鳥系の魔物に偵察に向かわせた。
(グウウ、この大事な時に争いなどしおって・・・馬鹿者どもがぁぁ!!)
だが、強力な超能力の使用者の気配を感じ、鳥神魔王の表情が引き締まる。
「貴様らは先に街を空から襲え!どうやら、こっちの動きを感づかれたようだ・・・いいか、俺が戻るまで足止めしろよ!逃がしたら、貴様ら八つ裂きにしてくれるわ!!」
鳥神魔王の脅しに、魔物の群れは奇声を上げながら急ぎ街に向かう。
(何者かは知らぬが、我に逆らう愚かさ・・・思い知らせてくれる!!)
空の魔神、鳥神魔王が瓜生麗に迫る!!
ガイデルを先頭に、街の住民が避難を開始した。小百合の側には、霞竜子が小百合の身を案じながら歩いて居た。
「大丈夫、雪代さん?どうやら、瓜生麗が鳥神魔王の部隊を足止めしてくれているようね・・・今の内に、奴らから出来る限り離れましょう!」
小百合はコクリと頷くが、病み上がりには応えるようで、辛そうなのが竜子にも分かった。
(ガイデル、雪代さんは皆のペースに付いて行くのは無理みたい・・・最悪、私達は隠れながらあなた達の後を追うかも知れないわ!その時は、街の皆をお願いね!!)
竜子のテレパシーにガイデルは驚いたが、直ぐに表情を険しくすると、
(竜子、どうやら遅かったようだ!既に俺達は・・・敵に包囲されているようだ!!)
(エッ!?)
竜子は、敵に気付かなかった迂闊さに歯軋りし、辺りの気配を探る。
(あの男、本当に鳥神魔王に忠誠を誓っている何て・・・それでも同じ人間なの!?)
竜子達、街の者を包囲しているリーダーが、住民に降伏勧告をしてくる。
「お前達に逃げ場は無い!大人しく降伏するならば、私が鳥神魔王様に掛け合い、命だけは助けて貰えるように取り成してやるぞ!断れば、女以外皆殺しに遭うかも知れん・・・さあ、降伏しろ!!」
男の側には、バイクの二人組み、早乙女門土と身堂竜馬も居た。門土は、街の住民を凝視し、その中に女を見つけては、怪しい光を瞳に浮かべる。その瞳の先には、雪代小百合と霞竜子も含まれて居た。
(クックック・・・まだ股間が疼くぜ!お前らにも俺の物をご馳走してやる!!)
門土は舌なめずりし、身堂は、門土がますます凶暴さを増す事に脅威する。
門土の邪念は、竜子にも感じ取れた。
(あの男を利用すれば、街の人々を救えるかも・・・ガイデル、私に考えがあるの!私があのバイクの二人組みを利用して、この陣形を崩すから、あなたはその隙に街の人を連れて逃げて!)
竜子のテレパシーを受け、ガイデルは不安そうに竜子を諭し、
(しかし竜子、いくら何でも無茶すぎる!確かに魔王軍が集結すれば、万事休すだが・・・)
(無茶はしないわ・・・じゃあ、仕掛けてみるわ)
竜子は剣を抜き、行動を開始した!
竜子の剣捌きは流石に見事で、徐々に隊列を乱していくと、門土は竜子の想像通り、敵味方関係なく攻撃し始め、竜子を追い回して来た。身堂も、竜子の剣捌きを見ると、剣士の血が騒ぎ、竜子と立ち合って見たくなっていた。
「門土!あの女との勝負は、あたしに任せて頂戴!!その後は、あの女をどうしようが門土の好きにして良いからさ」
「別に構わねぇが、竜馬、勝てるんだろうな!?」
門土の挑発に、身堂はニヤリと笑い、もちろんと答えた。
門土達の勝手な行動で、部隊は混乱し、リーダーの男は憤慨して居た。
「お、おのれぇぇ、馬鹿どもが・・・皆の者落ち着けぇ!もうすぐ鳥神魔王様も来られる!騒げば敵の思う壺だぞ!!」
だが、ガイデルの雷攻撃も加わり、部隊は益々混乱し、ガイデルは街の人々を敵の包囲から抜け出させた。
(竜子、上手く行ったぞ!君も無理はするな・・・後で落ち合おう!!)
ガイデルは、ミスを犯していた事に気付かなかった!
小百合をその場に残してしまった事に・・・
小百合は、皆と逸れ不安に思っていた。瓜生は鳥神魔王の部隊の足止めに、霞竜子は、街の住民を逃がす為に囮になり、小百合から離れて居たからだ。
(竜子さん・・・何処に居るの?ガイデルさん・・・)
小百合の不安がピークに達しそうな時、側で男の独り言が聞こえて来た。
「ほう、竜馬と良い勝負するとは・・・あの女、中々やるじゃねぇか!ン!?」
門土は、足元で自分から遠ざかろうとする人影を見た。
(あれは・・・フフフ、どうやらあの女、仲間に置いてかれたようだな!あの女を利用して、あいつも頂くか!竜馬は怒るだろうがなぁ・・・)
門土の目が妖しく光、小百合の目の前に立ち塞がると、
「お嬢ちゃん!仲間と逸れたかい!?俺が会わせてやるよ・・・来い!!」
門土が荒々しく小百合の手を取り、無理やりバイクに乗せて廃墟に向かって走り出す。
「イヤァァ!た、助けてぇぇ!!竜子さぁぁん、ガイデルさぁぁん!!」
その声に、刃を交えていた身堂と竜子の動きが思わず止まり、
「し、しまった!?雪代さんを・・・しょ、勝負は預けるわ!」
竜子は、身堂との勝負を中断し、逃げ去った門土のバイクの後を追った。
「あっ、お、お待ち・・・今あの女、雪代って言ってたわよねぇ?まさか、朱紗君の!?」
身堂は苦悶の表情を浮かべると、門土と竜子の後を追った。