翌日、真悟は暗い表情で学校に向かった・・・
何時もなら、和子や涼子と会話をしながら朝食を取るのだが、真悟が降りてくると、涼子は逃げるように学校に行ってしまった。更に、通学途中で美剣の姿を見掛けるも、真悟を目にした途端、美剣はまるで逃げるかのように駈け出し、真悟は、美剣に謝罪する機会をも失っていた。
(ハァァ・・・姉ちゃんにも、美剣部長にも嫌われたなぁ・・・最も、あんな真似すれば嫌われて当然だよなぁ・・・)
トボトボ俯きながら歩く真悟の背後から、知った声が声を掛けてきた。
「おはよう!朱紗君!!」
「エッ!?ゆ、雪代さん、おはよう!」
「どうしたの!?何か元気無いようだけど?」
隣に来た小百合は、真悟に元気が無い事に気付き、心配そうに声を掛けたが、真悟は何でも無いと空元気を見せた。そんな真悟を、小百合は励ますかのように、
「ねぇ、朱紗君・・・今日一緒に帰らない?超能力クラブも休みだし・・・」
「エッ!?う、うん、別に俺は構わないけど・・・」
「本当!?私、日直だから、用を済ませてからだけど・・・良い?」
「も、もちろん、俺に断る理由なんて・・・無いよ!」
「嬉しい・・・じゃあ、校門で待ち合わせしましょう!」
小百合は、元気の無い真悟を気に掛けてか、帰りに一緒に帰ろうと誘ってくれた。真悟の心を覆っていた闇に、一筋の光が差したかのように真悟には感じられた・・・
だが・・・
私立耳宇高等学校の屋上で、二年生の青沼と言う体格の良いモヒカンの男と、安村と言う優男が会話をしていた。青沼と安村は、この学校にある数多くの不良グループの中の一人で、青沼達は、屋上を主に溜まり場にしていた。
「なあ、安・・・串田のアニキが、女連れて来いって五月蝿いんだが・・・良い女居ねぇか?」
串田とは青沼達の兄貴分で、涼子や美剣、ミーコや瓜生達と同じ三年だが、停学沙汰を何度も起こす不良生徒で留年していたが、串田は暴力団とも関係を持って居るようで、学校側は報復を恐れ、串田を退学には出来ない腰抜け振りだった。そんな串田の威光で、青沼グループは我が物顔で学園内を闊歩していた。ただ、そんな串田達も、青沼グループも、恐れる派閥がこの学園に二つあり、一つは応援団や運動部系を中心とした組織、武団連合会、もう一つは、旧校舎を根城にしていると言われる謎のグループ、不死団(ノスフェラトゥ)、この二つの組織には、学校の不良グループも恐れ手を出さなかった。だが日常で、武断連合会も、不死団も、不良グループに手を出す事は無く、不良達は一般生徒や教師達を相手に粋がり、青沼達も好き勝手に過ごしていた・・・
この日も兄貴格の串田から、女を連れて来いと命じられた青沼は困惑し、優男である安村に話を持ちかけた。安村は、やれやれといった表情で、
「またですかぁ!?串田のアニキは、好みが五月蠅すぎて・・・おとなしいタイプで清純派、胸は大きすぎず、小さすぎず、処女じゃないと駄目だ何て・・・そうそう居ませんよ!この前もクラスの女一人欺して、串田のアニキに差し出したんですぜ!まあ、これだけ大きな学校だから、捜せば居るんでしょうけど、女にお前処女?何て聞ける訳無いでしょう?」
思わず安村が串田の好みの五月蠅さを愚痴ると、青沼もウンウン頷き、
「そうだよなぁ・・・全く、串田のアニキにも困ったもんだぜ!」
「もう俺のクラスにも知り合いにも・・・・」
そう思った安村だったが、見知った不良仲間から聞いた情報の事を思いだし、
「ン!?待てよ?そう言えば、今年の1年に雪代とかって居るそうですが、まるで、フランス人形のように可愛って評判ですぜ!お嬢様っぽいらしいし、処女の可能性大かも知れませんねぇ?」
安村の話を聞いた青沼は、頭の中で小百合のイメージを膨らませると、大乗り気で安村に話し掛け、
「1年でフランス人形のよう・・・良いジャン!早速仲間集めて、今日の帰りにでもその女攫っちまおうぜ?」
「へへ、そうですね!」
そのような企みがある事を、真悟も小百合も知る由が無かった・・・
放課後、小百合との約束の時間にはまだ間があるので、真悟はモサの付き添いで、クラブ見学に出かけた。途中、テニス部の前で美剣の練習風景に出くわした。超能力クラブは週2回の為、美剣は普段はテニス部に所属していた。
思わず昨日の事と今朝の事を思い出した真悟は、此処に居て大丈夫だろうかと思案していると、真悟は不意に、モサが昨日瓜生に貰ったペンダントの事を思い出した。思わず目付きを鋭くした真悟は、
「おい、モサ!ペンダントを持って来てないだろうな?」
モサは、真悟の問いに一瞬ドキリとしたが、
「も、勿論持って来てねぇよ!」
モサは即座に否定し、真悟は昨夜モサを脅しすぎた事を反省していたので、それ以上の追求はせず、モサを信用して二人で美剣の練習を見ていた。モサは、真悟が美剣を見て惚けている事に気付くや、真悟に気づかれないように、木の影に移動すると、テニス部を見学している振りをして、靴底から昨日瓜生から貰ったペンダントを取り出し、美剣を透視しようとした。
(ケケケケ!これで美剣のヌードを、バッチリ拝ませて貰うぜ!!)
モサの心が邪念を発した刹那、美剣は邪念を察知し、周囲を見渡すと、真悟を見て一瞬ドキリとした表情を見せるも、邪念の出所がモサだと知ると、少しホッとしながら、超能力を使い、モサの身からペンダントは宙を浮遊し、何処かに姿を消した。思わずモサは涙ぐみ、
(ち、畜生!美剣めぇぇ・・・瓜生さん、俺にもう一個くれるかなぁ?)
真悟は、涙ぐんでいるモサに気付き、不思議そうに小首を傾げた。
場所を移動した二人は、体育館に移動すると、中では体操部が練習をしていた。元気の無いモサだったが、体操部に居るミーコを見つけると、嬉しそうに手を振り、ミーコもモサと真悟に気付くと、親しげに手を振ってくれて、真悟も思わず手を振り替えした。モサは嬉しそうな表情を浮かべると、
「ひょっとして、ミーコ姉さん俺に気があるんじゃ!?決めた!俺は体操部に入部する!!ミーコさぁぁぁん!!!」
「ハァ!?おい、モサ?行っちまった・・・」
モサは即座に体操部に入部を決め、嬉しそうな表情でミーコと語っていた。真悟は呆れたものの、ミーコのレオタード姿を見ていると、また真悟は心の奥底から、どす黒い欲望が沸いてくるのを察知し、真悟は慌てて体育館から出た。
(俺は、俺は、本当にどうしちゃったんだ?)
真悟は愁いを帯びた表情になるも、時計を見るとそろそろ雪代との待ち合わせの時間になり、真悟は慌てて、待ち合わせ場所の校門目掛けて走り出した。校門には既に小百合が待っていて、真悟は小百合に右手を振りながら、
「雪代さぁぁん!ゴメン、遅れたかな?」
「ウウン、私も今来た所よ!」
真悟は小百合と合流し、二人は親しげに校門から出て行った・・・
その二人の姿を、草むらから覗いていた男達に気付かずに・・・
「おい、あの女か安?ヘヘヘ、良い女じゃねぇか!胸はそこそこだが、尻も中々・・・けどよ、男と一緒じゃねぇか?まあ俺は、処女だろうが、非処女だろうが構わねぇが、串田のアニキが・・・」
青沼は、小百合の後ろ姿を見て欲情し、舌舐めずりをしながらも、不安そうに安村に言った。安村はニヤニヤしながら、
「だったら青沼さん・・・たまには俺達で頂いても、罰は当たらないんじゃないですか?あんな上玉・・・そうそうお目に掛かれませんぜ?ここは一つ・・・ヘヘヘ」
安村は、揉み手をしながら青沼を篭絡すると、青沼も満更でも無さそうに、頭の中で小百合を犯す場面を想像する。嫌がる小百合を刃物で脅したり、着ている制服をナイフで切り刻み、怯える小百合に、自分の物をしゃぶらせる姿を・・・
「そ、そうだな!串田のアニキに非処女を与えたらヤベェし・・・だが、一番は俺だぞ?よし、後を追けるぜ!!」
青沼の激に、総勢8人の男達がゲスな笑い声を上げた。一行は、一番下っ端の背が低い、おにぎり頭をしたカマチに真悟達を追跡させ、皆大乗り気でゆっくり真悟と雪代の後を追った・・・
楽しげに会話していた真悟と小百合だったが、辺りに人影が無いと分かると、突然小百合が立ち止まり、
「ねぇ朱紗君・・・美剣部長の事・・・好きなの?」
突然の小百合の言葉に、真悟はギョッとして動揺すると、見る見る小百合の表情が曇り始め、
「やっぱりそうなのね・・・」
真悟は困惑した・・・
小百合が言うように、美剣に密かに好意を持っている事は、真悟も承知していた。真悟は小百合が好きだが、日に日に美剣の存在も大きくなっていて、真悟に取っては小百合同様、美剣の事も大切に思っている事は確かだった。破壊王、瓜生麗の誘いを断ったのも、思えば美剣の事が好きだったからでもあった。だが、目の前で小百合に聞かれれば、真悟も高校生、目の前の異性に良く思われようとするのは、当然かも知れなかった。
「ち、違うよ!好きって言うか・・・部長の事を尊敬はしているよ!!」
真悟は焦りながらも、そう小百合に答えた。美剣の事を、尊敬している事も事実だから、嘘は言ってないよな?と、心の中で思いながらも、そう話した。それを聞いた小百合は、嬉しそうに表情を輝かせ、
「本当!?私ね、耳宇高校選んだのは・・・朱紗君が行くからなの!」
「エッ!?」
「私・・・此処じゃ言えない!朱紗君、何処かこの辺で、誰も来ない様な場所知らない?」
小百合の問いかけに、真悟はモサと覗きに行った学校の裏山の公園、そこから更に上の神社なら、滅多に人が来ないのを知っていたので、そこへ小百合を案内しようと決めた。
その後を追う男達が居る事に気づかず・・・
真悟と小百合が、裏山の上の神社を目指していたその道中、真悟は意外な人と遭遇した。突然背後から声を掛けられ、
「小百合、今帰りなの?」
「あっ、お母さん!!」
振り返った小百合は、笑みを浮かべながら、目の前の女性の事を母と言った。真悟は慌てて小百合の母に挨拶し、良くその顔を見て見れば、雪代小百合に似て美人であった。小百合より髪は短く茶髪のセミロング、薄いブルーのシャツからは、娘小百合を遥かに上回る巨乳が丸分かりだった。
(家の母さんとどっちが大きいのかな?)
真悟は思わず、母和子と小百合の母の胸を思い描き、スケベ顔になると、膨れっ面した小百合から、肘鉄を食らい思わず咽(むせ)た。小百合の母は、そんな真悟を見てクスクス笑うも、小百合の膨れっ面は治まらず、
「もう、朱紗君ったら・・・何お母さん見てイヤラシイ顔してるのよ!!」
小百合の突っ込みに、真悟は髪をポリポリ掻きながら苦笑を浮かべ、
「い、いやぁ、娘さん同様美人ですねぇ!!」
「まあ、お若いのにお世辞が上手い事、ウフフ」
「朱紗君・・・私へのフォローになってないけど?」
真悟と母の会話を聞いていた小百合は、尚も膨れっ面しながら見つめた。
小百合の母親の名前は、咲苗と言う・・・
若い頃にはモデルの仕事もしていた事があり、その美貌にも納得がいった。咲苗は、小百合に話し掛け、
「小百合、これから何処かに行くの?」
「うん・・・朱紗君に話がちょっとあって・・・」
「そう・・・じゃあもう遅いし、お母さんも一緒に行ってあげるわ!」
「うん!ありがとう、お母さん!!」
咲苗は、暗くなって来たからと、付き添いで真悟達と一緒に神社に向かって歩き出した。両手に花の真悟だったが、この後に起こる凄惨な出来事を知る由も無かった・・・