その頃、龍の洞窟で待機していたヘルは、ダイザーの気配が感じられなくなった事に危惧を感じて居た。
(ムゥ!?どういう事だ?わしが作り上げたダイザーが敗れたというのか・・・まさか、兜十蔵の!?計画を急がねばならんか・・・)
「阿修羅よ、ザンガーとジルを呼んで来い!わしが火急の用があると言ってのぉ!!」
「ハハァ!直ぐにお二方をお連れ致します!!」
阿修羅と呼ばれた、女の上半身と男の下半身を併せ持つ魔物が、ヘルの命令を二大将軍に伝えに向かった。
(徒党を組まれれば、虫ケラといえど侮れんからな・・・先ずは、ライガーの攻めあぐねているハレンチ砦を一気に落としてやる)
フードの下に隠された目が妖しく輝いた!
暫くして、阿修羅の報告を受けた、剣豪将軍ザンガーがヘルの下へとやって来た。ザンガーはマントを翻しながら、
「お呼びか、ヘル殿!」
ヘルは、ザンガーの隙が無い構えにニヤリとし、
「ウム、七大将軍が一人、ダイザーが何者かに敗れ去ったようだ・・・」
ヘルが発したその言葉に、ザンガーが初めて動揺した。
「な、何と、あのダイザーが!?朱紗真悟を捕らえた今、まだそのような力を持つものが居るとは・・・では、ダイザーを討った奴を、拙者に討てと?」
ザンガーからの問い掛けに、ヘルは首を振り、
「いや、御主にはライガーが攻めあぐねておる、ハレンチ砦を早急に落として貰いたい!ダイザーを倒した輩と徒党を組まれては・・・ちと厄介なのでなぁ!!」
ザンガーは気が進まぬのか、腕組みをして思案して居たが、
「ザンガー!そう不満そうにするな!ハレンチ砦には、中々の剣の使い手が居るそうではないか?ご自分の目で確かめるのも、一興じゃぞ?」
ヘルの言葉に、ザンガーはニヤリとして頷くと、
「フフフ、拙者の目で直にか・・・面白い!ククククク!!」
ザンガーは、剣を鳴らすと、ヘルの部屋を出て行った。
(フフフ、気難しい奴よ・・・さて、それ以上に厄介な女はまだ来んのか?)
その同じ頃、阿修羅はジルの鞭に脅えながら、ヘルの言葉を伝えて居た。だが、ジルは鞭を鳴らすのみで、阿修羅はジルが何を考えて居るのか分からず恐怖して居た。
「ジ、ジル様・・・ヘル様が早急に来て欲しいとの事ですので、何卒お支度の程を・・・」
阿修羅は、オドオドしながらジルに話し掛けるが、ジルは、相変わらず無言で鞭を鳴らし続けるのみであった。阿修羅が心底困り果てた頃、ようやくジルが言葉を発した。
「フン!ヘルめ、用があるなら自分で来れば良いものを・・・まあ良い、今回はお前の顔を立ててこちらから出向こう!フフフ、そう脅えるな、阿修羅・・・よく見ればお前も可愛いのう!!」
阿修羅の着ている紫のフードを捲くると、阿修羅の色白の肌と共に、白い胸が露になる。阿修羅は思わず頬を朱に染めるが、白い乳房をジルが揉むと、阿修羅はビクリと反応し、
「ジ、ジル様お戯れを・・・あ、阿修羅の顔をお立て下さいまして、ありがとうございます!」
阿修羅は脅えながら、ジルに深く頭を下げた。ジルは鼻でせせら笑い、
「フン、先に行く!阿修羅、お前は後からゆっくり来るが良い!!」
「ハッ!ハハァ!!」
阿修羅を残し、ジルは素早い動きであっという間に部屋から消え失せた。阿修羅はそのままヘナヘナ床に座り込み、
(何時お会いしても、ジル様には肝を冷やすわ・・・しかし、ヘル様が二大将軍をお呼びになられるとは・・・本来ならドラド様のお役目の筈なのに!?)
阿修羅はそう考え、小首を傾げながらジルの部屋を出て行った。阿修羅が部屋を出ると、辺りに女の笑い声が響き渡り、
「オホホホ!二大将軍をお呼びするのに、何時まで掛かっているやら・・・相変わらず鈍いわねぇ?」
阿修羅は、思わず声の方をキッと睨んだ。そこには、紫の髪に紫の胸元の空いた服を着て、肩に乗った黒猫が不気味さを漂わす美女が立って居た。
この者の名はヤヌス!
阿修羅と同じく、ヘルの側近として魔人軍団を指揮する。その性格は残忍で、己の為なら手段を選ばず、阿修羅とは常に対立して居た。
「ヤヌスか!黙れ、今はお前に構っている暇は無い!!」
「オホホホ!怖い、怖い!こんな用件もろくに果たせないなら、あんたはヘル様の役には立たない!さっさと此処から消え失せる事ね!!オホホホ!!」
阿修羅に嘲笑を浴びせ、ヤヌスが姿を消すと、阿修羅は拳を震わせながら、
「エエェイ!何時見ても忌々しい奴!!」
阿修羅はヤヌスの行為に憤慨するも、怒りながらヘルの下に急いだ。
そして、ヘルの部屋に不機嫌そうなジルがようやく現われた。
「ヘル、何用だ?態々阿修羅をよこさんでも、自分で来ればよかろう!!」
ジルは鞭をビシビシ鳴らしながら、不満そうにヘルに不満を言うと、ヘルは手で落ち着くようにジェスチャーし、
「まあ、そう怒るなジルよ!どうだ、少し暴れてみては?ライガーの責めあぐねておるハレンチ砦を落としてみんか?」
ヘルは、薄ら笑いを浮かべらジルに問い掛けると、ジルはつまらんとばかりに、再び鞭を鳴らし、
「フン!用件とはそれか?下らん・・・我が軍団にライガーの尻拭いをせよと言うのか?我らが女だからと舐めて居るのなら・・・ヘル!お前といえど只では済まさん!!」
ジルはそう言い残し、踵を返してヘルの部屋を出て行った。ヘルは軽く舌打ちし、
(やれやれ、困った女子じゃ・・・だが、お前は我が手で踊らされるだけじゃ!フフフ)
ヘルは椅子に腰掛け、これからの戦略を練り始めた!