龍の洞窟で、自分の部屋に居たジルは、突然感じた気に身体が震え出した。
(この気の方角は、確かハレンチ砦の・・・わ、私はこの気を知っている!?だが、こいつが誰なのか思い出せない・・・ああ、頭がぁ、頭がぁ)
両手で頭を抱え苦しむジルに、配下の女魔の集団が動揺する。
「ジ、ジル様ぁ!如何なされました?ジル様!?」
苦しんでいたジルが苦しみから解放されると、
「皆の者、気が変わった・・・ヘルの言う通りにするのは癪だが、これより我らは、ハレンチ砦を襲撃する!!」
「ハハァ、ジル様!!」
七大将軍の一人ジルも、ハレンチの砦攻略に参戦しようとして居た。
地下に降りたヤマト達三人は、阿鼻叫喚な状況を目撃した。魔物達は女を犯し、奇声を上げる。その中には泣き叫ぶ雪代小百合、柴京子も含まれて居た。小百合と京子の名を呼び魔物に向かっていく青沼と竜一郎、ヤマトはまだ、年端も行かない幼女すら犯す魔の姿に、自分の中で何かが弾けた・・・
「貴様らぁぁ!許さん、絶対許さんぞぉ~!!」
ヤマトの髪がざわめき、凄まじい念動力が地下室を襲う。魔物だけでなく、人々すらも巻き込んでいる事にヤマトは気付かない。
「グゥウオオ!ヤ、ヤマト君・・・正気に、正気に戻ってくれ!!」
竜一郎がヤマトに叫ぶが、ヤマトの耳には届かない。竜一郎は我が子子郎を抱き、飛ばされないようにするのが精一杯だった。
龍の洞窟にいたアイラとヒミカは、凄まじい怒りのエネルギーを感じて居た。
「お、お姉さま・・・この気は!?」
「うむ、怒りに力が暴走しておる・・・何者かは知らぬが、その近くの者は只では済まぬであろうなぁ・・・」
「お姉さま・・・水晶玉にこの力の持ち主を映せますか?」
「それは容易いが・・・アイラ、何か気になるのか?」
「ええ、もしかして・・・ですけど・・・」
ヒミカは、アイラの表情を見て頷き、水晶玉に暴走しているヤマトを映し出した。アイラはその姿を見て驚きの声を上げた。
「ああ、やはり夢で見たヤマト様・・・でも、怒りで我を失って居るわ・・・」
アイラは目を瞑り、精神を集中すると、心の中でヤマトに話し掛けた。
(ヤマト様、正気に戻って!そのままでは、魔だけでは無く、そこに居る人々すら跡形も無くなってしまうわ!勇者よ、目覚めて!!)
暴走していたヤマトは、アイラのテレパシーを受けた。暴走するヤマトの怒りの心を静めるように、アイラの声が響き渡った。
ヤマトはようやく我に返り、
「ハッ!お、俺は・・・こ、これを俺がやったのか!?」
地下室の中は、滅茶苦茶な状態になって居た。数匹の魔も息絶えていたが、此処に居た子供達も怪我をして居た。ヤマトは呆然とし、膝から崩れ落ちた。
(俺は、俺は、何て事を・・・あの声が聞こえなかったら、俺は、俺は・・・)
精液塗れにされて息絶える子供、無惨に引き裂かれ死んでいる子供の姿に、ヤマトは目を背ける。小百合と京子にも魔物の精液が付着し、二人は失神して居た。汚された者達の身体を布で拭いている青沼と竜一郎に、ヤマトは涙を流して謝罪する。
「すいません・・・俺は、俺は、もう少しであなた達さえ巻き込んで、殺してしまう所だった・・・ウッウウ・・・」
「何を言うんだ、ヤマト君!君のその力が現われなければ、我々は魔物の群れに全滅させられて居ただろう・・・」
「そうだよ、ヤマト君!謝る必要は無いよ・・・こうして生き残った人々も居るんだから!!」
青沼と竜一郎がヤマトをフォローする。竜一郎に抱かれている子郎も、そうだと言わんばかりにキャッキャとはしゃぐ、その姿を竜一郎は微笑ましく見て居たが、
(ヤマト君が正気に戻る前、子郎の身体から一瞬光が放たれると、我々には一切の被害も出なかった!あれは一体!?)
竜一郎は、子郎が持って居る不思議な力に唖然とした。