数十分後、甲児は脇にZを抱え、阿修羅を伴い、さやか達の居る場所に戻って来た。阿修羅は、甲児と結ばれた後、もう一度人として生きる事を決意して居た。
「皆、待たせたな!今戻ったぜ!!」
甲児は、背中を向けている仲間達に声を掛けるが、仲間達から返事は無かった。
「何だよ、勝手に行ったの怒ってるのか?悪かったよ!さやかさん、ボス、ミーコ、モサ、つばさ、レイさん、咲苗さん、もりもり博士・・・皆どうしたんだよ?」
阿修羅は、さっきから嫌な感じがして居た。
(この不快な感覚は・・・ヤヌス!?)
「甲児、気をつけろ!私の天敵、ヤヌスの気配を感じる!!」
「ヤヌス!?そいつは一体?」
阿修羅の忠告に驚き、聞き返す甲児に、突然さやか達が襲い掛かった。
「死ねぇ、兜甲児!!」
攻撃を避ける甲児に皆が次々に襲い掛かり、次々と甲児を殺そうとする。その目は、まるで何かに憑かれたように常軌を逸して居た。
(このままじゃ・・・一度分離したから大丈夫だよな!?)
「マジ~ンゴー!パイルダーオ~ン!!」
小脇に抱えていたZを空に投げ、素早く装着する甲児を、森の中の無気味な目が見つめる。
(あれが、Zか!それにしても、何故阿修羅が奴と一緒に?捕らわれたのか!?まあいい、役立たずには、兜甲児と共に消えてもらいましょう!!)
ヤヌスが口笛を吹くと、配下の猫に似た魔物が現われる。魔物は、さやか達と共に甲児を攻撃し続ける。甲児は、仲間達に手を出す事が出来ず防戦一方だった・
「ホホホ、仲間の手に掛かって死ぬが良い!兜甲児!!」
甲児を嘲笑するヤヌスだったが、ヤヌスの居場所に気付いた阿修羅が、ヤヌスを攻撃し始める。
「キャアア!ち、血迷ったか阿修羅!?」
阿修羅は、そんなヤヌスを鼻で笑い首を振ると、
「血迷ってなど居ないさ!兜甲児を・・・殺させたりしない!!ヤヌス、今こそ貴様と決着をつけてやる!!」
阿修羅が身軽に木々を飛び回り、ヤヌスを攻撃するが、ヤヌスも木々を飛び回り攻撃を避ける。
「おのれ、裏切り者がぁ・・・こちらとて、目障りな貴様を葬るチャンス・・・死ね、阿修羅!」
二人の妖艶な美女が、互いを憎み戦い始める。
甲児は、さやか達の攻撃を避けながら、何とか猫に似た魔物を倒して行く。そんな中、甲児に異変が生じる。
(クッ、な、何だ!?身体が・・・身体が・・・い、一度Zを外したのに・・・な、何故?)
甲児は過呼吸になり、地面に崩れ落ちると、
「アァハハハ!Zのタイムリミットが近づいたようね!仲間の手に掛かり、死ぬが良いわ!!」
ヤヌスは甲児を嘲笑い、さやか達に、甲児に止めを刺す様に命令を下した。阿修羅の顔色が途端に変わり、
(クッ、魔女奴・・・このまま甲児を死なせるものか!)
阿修羅は、ヤヌスが杖を振り下ろす度に、さやか達が動く事に気付くと、
(そうか、あの杖さえ何とかすれば・・・)
阿修羅はヤヌスの隙を付き、レーザーをヤヌスの杖に当て破壊する事に成功した。ヤヌスは表情を険しくしながら、
「し、しまった!お、おのれぇ~阿修羅ぁ~!!」
ヤヌスが憤怒の表情を浮かべると、ヤヌスの美貌が崩れていき、醜い鬼女のような表情になり、弱る甲児に攻撃を仕掛けるが、阿修羅はそうはさせないとばかり、ヤヌスの前に立ち塞がった。
我に返ったさやか達は、手に持っているナイフで甲児を殺そうとしている事に気付き、慌ててナイフを投げ捨てた。
「わ、私一体!?甲児くん、甲児くん、しっかりして、甲児くん!!」
涙を流し、必死で甲児を呼ぶさやかだったが、甲児は地面にうずくまり苦しみ続ける。我に返ったもりもりは、甲児の状態を見て叫ぶ、
「い、いかん!こ、甲児君、Zの限界時間が近づいて居る!早く、早く、Zを外すんじゃ!!」
「か、兜ぉ、しっかりしろ!兜ぉぉ!!」
普段憎まれ口を叩いて居ても、ボスは甲児を心配して居た。無論、ミーコ達も必死に甲児を励まして居た。
「パ・・・パイ・・・ルダー・・・オ・・フ」
甲児は何とか言葉を発し、Zを解除するも、甲児は気を失った。Zが元の形に戻り、さやかが膝枕で甲児を愛しそうに見つめると、甲児の顔を胸に埋めた。
「甲児くん、ゴメンね・・・ゴメンね!!」
何度も、何度も甲児に詫びるさやかだったが、
「へぇ、さやかさんって、意外と胸あるんだな?」
何時意識を取り戻したのか、さやかの胸をモミモミする甲児に、さやかが小刻みに震えると、
「こ、甲児くんのバカァ~!!」
さやかは、慌てて膝枕の甲児を突き放す。
「か、兜ぉ~!俺だってした事無いのに・・・」
ボスが悔し涙を流すと、ボスの顔面にさやかの鋭い爪が炸裂した。
「ギャァァ!な、何で俺が・・・」
哀れボスの顔に、さやかの鋭い爪痕が浮かんだ。
(チッ、阿修羅の邪魔が無ければ・・・)
鬼女の表情のヤヌスは、肩の黒猫に話し掛けると、
「お前は、この事をヘル様にお知らせしろ!私は、裏切り者を始末してから戻る!!」
黒猫は「ミャ~」と返事をすると、森の中を素早く走り去って行った。ヤヌスがヘルの下に使者を出した事を知った阿修羅は動揺した。今このタイミングで増援が来れば、Zを纏えない甲児達では為す術が無かったのだから・・・
「し、しまった!?おのれ、ヤヌス・・・」
再び阿修羅とヤヌスの対決が始まった。さやか達は、何故阿修羅がヤヌスと争うのか理解出来なかったが、甲児は、阿修羅の背中を頼もしそうに見つめて居た。だが次の瞬間、甲児の表情が青ざめて行った・・・
互いに決着を焦った阿修羅とヤヌスは、互いの攻撃を身体に受けて居た。ヤヌスの身体には、阿修羅の杖が突き刺さり、阿修羅には、ヤヌスの投げた短刀が突き刺さった。
「お、おのれ~・・・だが、や、奴らはもう終わりだ!さ、先に地獄で待って居るぞ~!!アァハハハハ!!」
ヤヌスは、阿修羅に嘲笑を浮かべながら消滅して行った。それを見た阿修羅は、膝から崩れ落ちるも、
「これしきで・・・し、死んで・・・たまるかぁ」
阿修羅は何とか踏み止まるも、甲児に微笑むとその場に崩れ落ちた。
「阿修羅~!しっかりしてくれ~・・・死ぬんじゃない、死ぬんじゃないぞ~!!」
甲児は懸命に這いながら阿修羅に近づき、阿修羅の頭を膝に乗せ介抱する。その様子を、さやかはムッとしながら見て居たが、その場の空気を読み堪えた。阿修羅は目が見えなくなってきているのか、虚空に懸命に右手を伸ばし、
「こ、甲児・・・何処?」
甲児は慌てて阿修羅の右手を握りしめると、
「目の前に居るよ!阿修羅・・・しっかりしろ!!」
甲児は目に涙を浮かべながら、必死に阿修羅を励ますも、阿修羅は甲児に握られた右手を微かに握り、
「ああ、甲児・・・あなたと出会えて・・・良かった!!」
阿修羅は涙を流しながら、甲児の顔を触って居たが、阿修羅はそう言い残し息絶えた。甲児は阿修羅を抱きしめながら、
「あ、阿修羅・・・バッキャロー!折角、折角人として生きる事を決めたのに・・・阿修羅~・・・お、俺の為に・・・ウワァァ!!」
甲児は号泣しながら、阿修羅を抱きしめ泣き続けた・・・
その様子を、さやかは複雑な表情で、ボス達は沈痛な表情で見つめて居た・・・
暫くして、甲児は阿修羅の遺体を荼毘にした。残された阿修羅の遺骨を、大事そうにケースにしまう甲児に、さやか達は掛ける言葉も無かった。
(阿修羅、こんな所じゃ寂しいだろうから、このまま俺達と行こう!光子力研究所に戻ったら、俺の目の届く場所に埋葬するから・・・勘弁してくれよな!!)
甲児はそう阿修羅の遺骨に心の中で話し掛け、そんな甲児の様子を心配する面免に気付いた甲児は、
「行こうぜ、みんな!阿修羅のような悲劇を起こさせない為にも、龍神魔王とヘルの野郎を・・・ぶっ倒す!!」
悲しみを乗り越え、一回り成長した兜甲児が、再び仲間と共に旅立った!
一方、龍の洞窟のヘルは、黒猫に託したヤヌスの伝言を聞くと心底驚き、
「ウゥゥム、あの阿修羅がわしを裏切るとは・・・ヤヌスの気配を感じぬ所を見ると・・・兜甲児!許さん、絶対に許さん!!」
阿修羅を奪われたヘルは、甲児に凄まじい憎しみが湧いて居た。Zの弱点を知ったヘルが、兜甲児抹殺計画を練り始めた。
しばらくして、ヘルの背後から不気味な声が掛かった。
「お呼びですか、ヘル殿?」
「来たか、ブロッケン!実は、貴公に頼みたい事があってのう!!」
軍服のような服を着て、顔には片側に丸い眼鏡をしているブロッケンが、ヘルに近づくと、ヘルはブロッケンに甲児の事を話した。ブロッケンは何度もコクリと頷き、
「なるほど、我輩に兜甲児とやらを・・・」
「そうだ、地獄の苦しみを与えてやれ!方法は貴公に任せる・・・Zの活動時間は33分33秒じゃ、それをくれぐれも忘れるなよ!!」
「ハハァ!このブロッケンにお任せを!!」
ブロッケンは、靴を鳴らしヘルに敬礼して、兜甲児の下へと向かった!