やはり俺の英語教師がめぐり先輩というのは間違っている 作:町歩き
そんな声に耳を塞いで八幡とめぐりんのいちゃこら話を書きたいとおもいます。
夏休みに入り十日も過ぎた頃。俺は一人、自分の部屋で英語の勉強をしていた。
まあ大体殆どいつも一人なのでわざわざ一人と明言せずとも良いのだが
あえてそういうには訳がある。
両親はこのくそ暑い中相変わらず仕事で忙しく、小町は小町で高校入学後
親しくなった女の子と一緒に朝からプールへ出掛けている。
なので正真正銘今この家にいるのは俺ただ一人。
夜には三人とも帰ってくるのでそれまでの間だが、ここは今、まさに俺の王国状態。
ただ残念ながら王国の経済状況は芳しくないうえ国民が一人もいないので
何をするにも王様自ら動かねばならない。
時刻はお昼少し前、11時の半も過ぎた頃。王様である俺は空腹を覚え台所へと向かう。
王国食料庫である冷蔵庫を開けると王国の食料事情もあまり芳しくない様子。
膝を抱えその事を嘆いていると、リビングに置きっ放しだった携帯が鳴る。
てってこ走って携帯を手に取り画面を見ると、めぐり先輩から電話のようだ。
なに用かしら? と思いつつ電話にでる。
『こんにちは。八幡くん!』
『こんにちはです。めぐり先輩』
『……先輩?』
『あ、えーっと、こんにちはです。めぐりさん』
『よろしい』
王様とはいえ別に偉いわけではないのだ。
『えっと、その、今日は何用でしょう?』
『なーに、用がないと掛けちゃダメなの?』
『い、いえ。そういう訳じゃ……』
『あのね、八幡くんはさ、今何してたの?』
『英語の勉強をしてましたよ』
『ほー、英語の』
『はい。受験科目の中で一番苦手な教科なんで、ちょっとやっとこうかなって。
今日は勉強会もないですし』
『そっかー、えらいね!』
『い、いえ、そんな、自分のことですし』
『うんうん。そうだ! そういえばね、わたしすごく英語が得意なんだよ』
『そうなんですか?』
『うん! どんくらい得意かっていうとね、人に教えられるくらい得意なの』
『おー、凄いじゃないですか。
そういやめぐりさんって大学も推薦で入れるくらい優秀でしたもんね』
『そうだよ~。だからね、そんな私に英語を教わったら
あっという間に英語が得意になるかもしれないよ!』
『そ、そうなんですか』
『うん!』
『………』
『………』
沈黙。多分ぼっちがぼっちの所以は会話が途切れた時に次の会話を見つけることが
不得手なところなのだろう。そしてプロぼっちな俺はもちろんその例に漏れない。
どうしよう……と困っていると、そんな俺の気持ちを察してくれたのか
先輩の方から話題を振ってくれた。
『でね、八幡くん。私、英語がすごく得意なんだ。
どんくらい得意かっていうとね、人に教えられるくらい得意なの!』
会話がループしとる。なにこれ
「僕だけがいない街」だとバットイベントを回避する能力だが
「俺だけしかいない家」だとどんな能力なんだろう……
まあ多分、こういうことなのかな? と思い口にしてみる。
『えっと、めぐりさん。その、良かったらなんですけど、俺に英語を教えてくれませんか?』
遠慮がちに言うと、先輩は食い気味に乗ってきた。
『なになに、八幡くん、もしかして私に英語を教わりたいの?』
ふむ、材木座レベルのわざとらしさだな。
ちょっとイラっとしたので意地悪することにした。
『あっ、いえ。めぐりさん忙しいでしょうし、一人でもできますから大丈夫です』
『えっ! やっ、忙しいといえば忙しいけど、どちらかというと暇だから……』
『それ、どっちですか……』
慌てるめぐりんかわええ……と思いつつも、呆れた声が出てしまう。
『ま、まあ、ほらあれだよ!
八幡くんがどうしてもというなら、ここは頼れる年上のお姉さんとして
一肌脱いでもいいかなっと思うわけで!』
『あんま頼りがいがないんですけど……』
おっといかん。ついうっかり本音が漏れてしまった。
めぐりん怒ったかな? と思い息を呑んでドキドキしていると
先輩がちゃんときちんと怒ったようだ。
むっとしたような声を受話器越しに投げてくる。
『頼りがいがないとは失礼だなー、いいよ、わかったよ。わかりましたよ。
じゃあ今から八幡くんにスパルタで英語を教えて泣かせてあげるんだから!』
『あの、なんか目的が変わってるんですけど……』
『ふふふん。まあ泣かすっていうのは冗談だけどさ~
私も、その、八幡くんと勉強とかしたいな。一色さんばっかりずるいよ……』
『やっ、その、俺も先輩と勉強とかしたいですし、それは構わないんですけど』
『ほんと? なら一緒に勉強しよー!
場所は、じゃあどうしよう。今うちね誰もいないけど、その……うちくる?』
『そうなんですか。うちも今、誰もいなくって俺ひとりなんですよ』
『そうなんだ! じゃあさ、八幡くんの家にいきたい!』
『えっと、はい、わかりました。
なら迎えにいきますけど、めぐりさんの家までいきましょうか?』
『ううん、平気だよ~。あ、でも、駅まで迎えにきて欲しいかも』
『ちょうど真ん中くらいですしね、駅。わかりました、今から向かいますね』
『うん! じゃあ駅で待ってるね』
『はい。大体ですけど、三十分後くらいに待ち合わせでいいですか?』
『はーい、改札で待ってるね~』
『了解です』
言って電話を切る。部屋へ戻り着替えると玄関で靴を履き外に出る。
夏の太陽は空高く、その日差しで俺をじりじりと照らしだす。
それでは次回で