海の匂いが好き。潮が香る、あの独特匂いが。
夜の海が良い。真っ黒で空と海の区別が付かない、見ていると沖に誘われているような錯覚を覚える、あの黒い海が好きだった。
引きずり込まれるような、呼ばれているような感覚。首の裏側がぞくぞくして、自分の内面が剥離し、そこへ駆けて行ってしまう感じがしたっけ。後に残った自分の体が、まるで抜け殻のように思えて頼りなかった。
でも今、あたしはそこに居る。疑いようの無い事実として、夜の海に居る。
ここはもう、眺めて呼ばれるだけの場所じゃない。あたしの場所だ。あたしが支配する、あたしだけの王国。
「だから、素敵なパーティーはじめましょ?」
夜半の海を全力で駆け抜ける。増幅された視界には、のたのたとシーレーンを進む補給艦隊へ噛み付こうとする、深海棲艦艦隊の姿があった。
「重巡リ1、軽巡ヘ1、駆逐ハ三……いや、戦艦ルも居るね」
後方から無線で姉妹の声が聞こえてくる。月明かりだけだと艦種は特定できても、機種の特定は私には無理っぽい。だけど、きちんと正確に当てる時雨は凄いと思う。
「デカブツが深夜にご苦労なこった。鴨だぜ。よぉし、食っちまうぞ! 護衛艦隊に仕事させんな!」
少し遅れて単縦陣の後方を走っていた天龍が声を上げる。距離的にもう気付かれてるっぽいから、遠慮無しに元気な声だった。後ろだから見えないけど、もうヤットウを元気にブン回してるんだろうな。
「了解っぽい!!」
叫んで加速、両舷全速。腰部ジョイントに接続された機関が唸りを上げて、今まで以上に速度が増していく。髪は後方に置いて行かれるようにたなびき、目が風で痛いくらいに。
「そろそろ最大速度!」
「了解っぽい! 突っ込むよ!!」
肩口に出て来た妖精さんが、機関が全速に達したことを教えてくれる。もう輸送艦隊に食いつこうとしていた連中は、手に持った砲で狙える位の位置に近づいてきていた。
でもまだ撃たない。この砲じゃ威力不足で、有効射程距離に入ったとしても重巡や戦艦を海底に送り返すのに何十発必要なことやら。
やっぱり夜戦は魚雷が一番。水雷屋の本領ここにありっぽい。
轟音。闇夜の中に光が煌めいて、一瞬だけ夜が破けた。敵艦の発砲っぽい? というか、それ以外無いか。距離的に輸送艦隊は、まだ遠いし。
風を切る音が横を抜けていって、遙か後方で海が弾けた。残念外れ、まだまだ余裕っぽい。
「イモ引くんじゃねぇぞレディズ!!」
無線に乗って飛んでくる、天龍の高いがなり声。もうこれ、旗艦というより小隊軍曹とかの方が、呼び方として様になりそうっぽい。
それに、家の艦隊で今更この程度でびびる奴は居ないし。今のは戦艦の一撃っぽかったけど、夜中の海で戦艦なんて全然怖くない。
続いて幾らか砲弾が飛び込んでくる。小さな小さな、駆逐艦や巡洋艦の主砲クラスの砲撃。でもまだ着弾位置が遠い。全然当たる気がしないっぽい。
全力で前に駆け続ければ、それだけ場所が移動するから、動きそのものが回避行動に変じる。だから攻撃する時に一番いいのは、一直線に突っ込むこと。びびれば死ぬ、止まれば死ぬ。殺すには加速し続けるしかない。
耳元を砲弾が一発掠める。背筋が冷えて、腰元から脳天まで言いしれぬ快感を伴ったしびれが上っていった。今のは近い。
艦娘や深海棲艦は人間サイズの小型だけど、それでいて装備している武装が“20cm砲”だとか“61cm酸素魚雷”だとかの、大仰な名前で呼ばれるのには理由がある。
“威力そのままに”艦娘サイズに縮小されているからっぽい。砲弾があたれば、拳銃弾と見まごう大きさの弾であっても、身に宿した概念通りの威力を発揮する……。
つまりあたし達は、それだけの衝撃に耐えられるように作られてるっぽい。
敵の輪郭がどんどんと闇の中で鮮明になってくる。耳元で砲雷妖精さんが、敵魚雷射程内と叫んでくれるけど……まだっぽい。
まだまだ。まだ遠い。確実にぶち殺すには、もうちょっと近寄らなきゃ。家の旗艦も言ってるっぽい。魚雷は敵の白目が見える距離からって。
次の瞬間、お腹に熱を感じた。ちらと視界の端で見てみれば、下っ腹の辺りで服が破れて血が滲んでいる。
「被弾! 状況報せ!!」
妖精さんが心配して声を上げる。
「ノープロっぽい! 貫通しているし、バイタルポートは無傷っぽい!」
「了解! ダメコン急げ!」
熱が痛みに変じてきて、かなり痛いっぽい。だけど耐えられない痛みじゃないし、貫通してるから大丈夫。実際、小型艦だと大型艦の砲は貫通しすぎてダメージが少なかったりするっぽいし、それと同じっぽい。
多分、この程度のダメージじゃ小破にもならない。流石に装甲が破れて中身が溢れたら問題だけど、そうじゃないから全然平気。まだやれるっぽい。
それに妖精さんが頑張ってくれるから、この程度の傷なら直ぐに塞がって、オイル混じりの血液も止まるはず。
でも、当ててきたってことは結構辛い。敵が諸元を掴んで、当たる狙いを見つけたってことだから、次からどんどん当たり始めるだろうし。
手とかお腹なら良いけど、頭は即死するし胸に当たると貫通しても主機と機関部が駄目になるから、やっぱり死ぬ。戦艦なら装甲で耐えられるけど、私の柔肌じゃちょっと無理っぽい。
となると先に殺すしかないんだけど……。
「よぉし! いいぞ野郎共! 各個に雷撃開始!!」
やっとこ旗艦から雷撃許可が!
「いやったぁぁぁ!!」
「淑女に向かって野郎は無いよね!!」
狙いを付けて魚雷を投下。素敵な素敵なパーティーを始めるためのクラッカー。歓迎するお客様は勿論大物狙いっぽい。
今まで当たらない砲撃を繰り返してきた戦艦が、もたもたと回避機動を取ろうとする。だけど無駄っぽい。図体がでかいから動きが遅くて、時間差を付けた雷撃に対応できていない。
轟音、そして水柱。あたしが放った雷撃が一発……いや、二発当たったっぽい。
水に混じって、深海棲艦の青みがかった体液と青白い肉片が飛び散って、フォーマルな服装に身を包んでいたル級の体が挽肉に作り替えられる。
「よぉし! 撃破確実っぽい!」
大きな影が二つに分かれて、上の方がどっかに飛んでいって小さな水柱を立てた。魚雷が足回りを細切れにして、そのまま上部構造物をねじ切ったみたい。
「同じく撃破1!」
「重巡撃破ぁ!」
同じく魚雷を浴びて沈む影が二つ。時雨が叩いた軽巡と、天龍が叩いた重巡っぽい。これで大型艦は全滅。後は気色悪いフォルムの小型艦が三つだけ。
「いよぉし! “砲打撃戦”よぉい! 腹ぁ括れ!!」
天龍がご自慢のブレードを振りながら、追撃の指示をかける。人型兵器である艦娘だから出来る、超ショートレンジでの“白兵戦”すら考慮した攻撃指示。
あたし達の仲間が、腰に刀をぶら下げていたりするのは飾りじゃないっぽい。実際に叩き切るための得物なのだ。
それに、あたし達に手足があるのは、武器を操作するためだけじゃないのだから。
「砲撃開始っぽい! 魚雷再装填急いで!!」
「諒解!!」
砲雷妖精に命じながら、砲撃準備。両腕に装備した連装砲を的に向け砲撃。至近距離だし、もう指先の延長に近くなるほど使い込んだ砲を外すほど、あたしは間抜けじゃない。
轟音と衝撃が体を貫くと同時に、敵の装甲が弾けて青い体液が飛び散る。流石に駆逐艦が持てる程度の砲じゃ、魚雷と違って一撃必殺は無理っぽい。
だけど先行してガンガン殴ってやると、装備に不調を来して雷撃はできなくなる。そうなったら、駆逐艦なんか貧弱な砲を備えた浮き砲台と変わらないっぽい。
「っ……!?」
「被弾! 第二砲塔損失!! 状況報せ!!」
妖精さんが切羽詰まった声を上げる。
余裕扱いてたら、ちょっとヘマしたっぽい。あたしが簡単に当てられる距離というのなら、敵も同じだというだけの話。
ま、ヘマといっても、弾は当たる時はなにやったって当たるから、仕方ないんだけど。
特に夜戦ともなると、撃たれる瞬間の判別がつかなくて寸前での回避が間に合わない。魚雷も航跡が見えないから避けにくいし、夜が死の時間なのは、誰にとっても分け隔てはないっぽい。
左腕に走る、激痛というよりも熱。みやれば、左腕の二の腕から下が吹き飛んでいた。敵の主砲をまともにくらっちゃったみたい。
「まだ小破! やれるっぽい!」
「ダメコン急げ! 血流封鎖! 鎮痛!!」
妖精さんは、船で言う所の乗組員であり技術屋さん。あたしたち艦娘の運行を補助してくれているんだけど、その仕事には当然ダメージコントロールも含まれる。
被害を受けても沈まず最低限の作戦遂行能力を保持するため、妖精さんは血管を締めて血を止めたり、破れた皮膚を臨時で貼り合わせてくれる。だから私達艦娘は、砲塔を損失するような被害を受けても戦えるのだ。
それでも、実際の船と同じく、足回りが止まったらどうしようもなくなっちゃうんだけど。
「いけるか、ワンコロ!!」
「言うに及ばないっぽい!!」
痛みに意識が高揚し、小破判定が出たところで止まろうという気にはならないし、なれない。むしろ、目の前がぐつぐつ沸騰するような感覚に襲われる。
イケ、噛み付け、深海に叩き返せ! 体に宿る、船の御霊が嗾けてくるのだ。あたしを兵器たらしめる、あたしの魂に結びついた無数の英霊と共に。
「くるるるる」
知らずに喉が鳴っていた。獣のように、怒りに震える犬のように……でも、それが心地良いっぽい?
痛みを堪え、血を傷口から起き去りにするように速度を緩めない。そして、あたしよりもボロボロになった深海棲艦に肉薄し、
「深海に帰れぇぇっ!!」
跳び蹴りをかました。人型の船だからこそできる、究極のラフファイト。船底が傷つくから入渠してる時に妖精さんから叱られるけど、自分から蹴り掛かって壊れるほど柔じゃないから全然平気。
排水量約1700tの概念を持つ鉄の塊が、時速63kmで叩き付けられればどうなるか。それは耳に届く、鋼の断末魔と金属が飛び散る音。そして耳障りな深海棲艦の絶叫が教えてくれる。
蹴りの衝撃を使って、更に跳躍。空中でとんぼを切って身を返し、魚雷を放つ。これもまた、人型だからこそできる荒技。
もし生きていても反撃を貰わないよう、トドメの一撃は執拗な程念入りに。着地にも気を遣って、反抗準備も忘れないようにしておく。
当然、全身で振り返って雷航を辿ったり、戦果確認するような馬鹿もやらない。馴れない艦娘だと、殺したという安堵が欲しくてついつい立ち止まり、その好きに沈められることが結構あるっぽい。
それに、態々振り返って確認する必要は無かったっぽい。魚雷が数本炸裂する小気味良い音と、水柱が上がって雨のように海水が降ってきたから。これだけブチ込めば、泊地級の姫でもお陀仏っぽい。
間合いを開けてから頭だけで振り向けば、気味の悪い生物的なフォルムの巨体が体液を惰性で零しながら沈んでいるところだった。観測機器と思しき部分、目から光が既に失せている……。
「撃破ぁ!!」
確実だから“ぽい”はつけない。あたしは戦績が曖昧だから、全てを断言するのが苦手で、ついつい“ぽい”を付けて半端にしてしまうけど、これだけは確かだ。
仲間と共に駆け抜けて、敵を殺す。この実感だけは、海の向こうに剥がれ落ちてしまった魂とは関係ないあたしだけの現実。
傷みと沈めた敵、これだけは何があっても変わらない。だから止められないのだ、前に出て魚雷を撃つのは。
「こっちも撃破!」
「はいはい、これでラストだよっと」
数度蛇行して減速。巡航速度まで落とすと、妖精さんに腸が溢れかねないから無茶するなって叱られちゃった。でも性分だから仕方ないかな。
振り返って確認すると、時雨は遠距離から二回目の雷撃で、天龍は態々肉薄して眉間――でもあれってホントに目?――にヤットウをぶち込んで駆逐級を屠っていた。
もう夜の海には、あたしたちと遠間に見える艦隊以外に動く物は、何も見えなかった。
これにてお仕事完了っぽい。
「こっちは片付いたぜ。そっちは? オーケー、損傷軽微だ自力で帰れる。航海の無事を祈ってんぜ。祈るのは無料だかんな」
近づくと天龍が無線に話しかけているのが聞こえる。きっとあの、敵襲を受けて救援を打電してきた輸送艦隊とだろう。
何でも、護衛が特型が一隻しか居なかったっぽい。そりゃ矢継ぎ早に救援を求めたくもなるよね。
無事で良かったと遠ざかる艦隊を眺めていると、何かがこっちに投げつけられる。
「わっ」
「ほら、夕立。拾っておいたよ。よかったね、沈んでなくて」
咄嗟に片手で受け止めたのは、あたしの左腕っぽい……いや、あたしの腕。砲身が拗くれた連装砲がくっついているから、間違いない。
「おー、時雨、ありがとうっぽい」
別に腕くらいなら、致命傷を貰わなければ入渠したら時間が掛かっても生えてくるけど、やっぱりくっつけた方が楽。これは結構うれしいっぽい。
「なんでそこでぽいをつけるかな……最短距離でぶっ殺しに行くのはいいけど、フェイントとか回避とか考えなよ。今日は晴天なんだから」
「ごめんごめん、気が逸っちゃって」
どうにも夜戦となると、テンションが抑えきれなくていけない。行けるところまで、止まらず行け、そう心が叫んでしまうから、ついやり過ぎてしまう。
時雨の言うとおり、もう少し慎重にやっていいかな、と思っても……いざ始まるとどうしようもないんだなぁ、これが。
「だけど、大勝利っぽい。提督さん、誉めてくれるかな?」
「さーな。実際にあって確かめな……帰投するぜー、陣形組めー」
「三人で陣形っていってもね……」
夜の海は等しく平等。赤も青も飲み込んで、真っ暗にたゆたってる。沢山飲んだ青い血の濁りも、赤い血の淀みも見えなくて、本当に戦いがあったなんて信じられない位に静かで綺麗。
こんな綺麗な夜なんだから、きっと提督さんも誉めてくれるよね。
「諒解! 夕立、帰投するっぽい!」
これは余談っぽいけど、調子に乗って左腕を帽子代わりに提督さんに振りながら駆け寄ったら「無茶するなバカ者」って思いっ切りぶん殴られちゃった。
ダメージを負ったのは提督さんだったんだけどね…………。
「提督、ご報告に上がりました」
ぼんやりと自室にて煙草を燻らせながら、船体の微妙な傾きから時刻を察していると机上より声をかけられた。
何事かと見やると、2~3頭身ほどの愛嬌ある小人が机の上に居た。
ツナギを着て黄色いヘルメットを被った、女性的な外見の小人。彼女たちは妖精と呼ばれる、陰陽道における式神のような存在であり、人型兵器たる艦娘の管制装置。
艦娘実用段階において突如発生し、船における我々人間の代替要員として働く何かであるのだが、その実態を我々は何一つとして知らぬ。
確かであることは二つ。彼女たちは艦娘の発生に深く関わっていることと、艦娘の運用に欠かせぬ存在であると言うことだ。
ある時は電探の管制を行い、ある時は砲塔にて砲弾の装填を担当。そして、時には航空機に乗り込んで、空を征くパイロットでもある。
妖精と名乗るとおり、文字通りの妖精であるだとか、靖国から引き出された英霊となった船乗り達の断片だとか色々と囁かれているものの……その実態は大本営でも掴んではいない。
それでも妖精は艦娘の運用に不可欠な存在であるので、我々提督は彼女たちを知覚できる者が選抜される。そう、見えない者も居るのだ、彼女たちが。
分からない物をよく分からないまま運用するというのは、実に不安だ。それこそ良い例として、米国が深海棲艦に使った核爆弾が挙げられる。
核兵器の影響は微々たる物だと彼らは考え、投下後に歩兵を運用して制圧するドクトリンすら考案していたそうだが、実際には人体に凄まじい影響がある兵器であった。
その結果が、米国東海岸の汚染と失陥だ。よく知りもしないものを便利だからと使い倒せば、何時かしっぺ返しを喰らう羽目になる。
それに関しては、艦娘も核兵器も大して違いはないと私は考えていた。
「提督?」
「ん……? ああ、すまん、何でもない。報告であったな」
されど、そんなよく分からん物にさえ縋らねば、生存域を確保できない立場だから、あまり文句は言えんのだが。実際私も、彼女たちが報告に来たり、ちょとちょこと泊地を彷徨いている姿に馴染みつつあるのだし。
「夕立は小破。完全復旧までに二日と少し。天龍と時雨は戦闘中に破片で擦過傷と、一部組織の断裂が見られますが、自然治癒で間に合う部類です」
「ご苦労。夕立にのみ入渠手続きを頼む」
「諒解」
設備さえ揃えば艦娘さえ生み出す彼女たちは、艦娘の技師でもある。修復や改良、あるいは改造は全て彼女たちの手による物だ。
勿論、一部人間のエンジニアの手が入る部分もあれど、それは全て内地や大規模泊地だけの話である。極めて専門性が高い分野なので、完成から一五年が経った今でも技師の絶対数が少ないのだ。
故に家みたいな小規模泊地では、彼女たちが全ての仕事を行うこととなる。丁度、報告に来た彼女が、先の輸送艦隊救援作戦にて小破した夕立の修理を行っているように。
「彼奴は大人しくしてるか?」
「暇だ暇と暴れるので、鎮静剤ぶちこんで寝かしておきました。暴れると神経系の癒合に不備が生じかねないので」
しかし、改めて考えると凄い話だ。彼女たちは手足が千切れても繋がるし、素材さえあれば新しく作ることすら適う。
片腕が跳んだ程度では小破判定。作戦遂行に支障が出てくる程の傷でやっと中破判定が出るが、人間に置き換えたら十分致命傷と呼べる傷。作戦遂行不可能と判断される大破判定なんぞ、何故死なぬと問いたくなる有様だ。
いよいよ以て、人と似た姿を取りながら、人ならざる物だと認識させられる。それでいて、彼女たちに人間性を認めてしまう私は……心が弱いのだろうか。
「私の腕も換えが利けば良いのだがな」
「転化検査の申請をしておきましょうか?」
思わず溢れた愚痴混じりの冗談に、妖精は見事な冗談で応えた。いや、まぁこれは艦娘ともお約束のやりとりになっているのだが。
「前線任務が更に勤まるようになれれば、それもアリだと思わんでもないな……面白い冗談の駄賃だ。羊羹を一切れ進呈しよう」
「おおー、恐縮であります提督。して、それは提督の分も切れという命令で?」
そして頭も悪くないときた。やれやれ、本当に毒されてきたな私も。
この、艦娘と妖精とかいう、訳の分からない存在が跋扈する世界に…………。
ちょっとだけ楽しくなってきたのは秘密