※この作品はR-18です。

好感度MAXから始まる黒ウィズ   作:ココナポッカ

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黒猫の魔法使いと星霜の詠人【アリス・スチュアート】

 エターナル・クロノス。そこは全ての異界の時間を管理して、正しき時間と空間の流れを守るため存在する、時を司る時計塔。

 そんな場所にどうやら僕はまた迷い込んでしまったようだ。

 

 迷い込んだ先が顔見知りの人達だったのは不幸中の幸いだった。エターナルクロノスには、神やら人間やら喋る人形やら魔族のメイドやら色々な人達がいるが、今までの事件や事故を協力したため仲は良好だ。

 

「魔法使いさん、いつの間にここに来てたんですか? あ、もし良かったらこれからティータイムにするんですけど、一緒にどうですか?」

 

 そこで再会したアリスが開口一番に言ったのがそれだった。行く宛も無いためティータイムに参加して、みんなに事情を説明したら準備さえ出来れば過去と現在と未来を管理する力を持つ時間の神様により元の異界に帰れるとのこと。焦っても仕方ないのでしばらくの間はここには住んではどうかという意見で、僕は短い間だがお世話になることになった。

 

■

 

 シックを基調にした長い廊下を女の子をモチーフにした人形と、それを追いかける奇妙の機械仕掛けをした小さな馬が飛び回っている。それは一方通行の道を全力で駆け抜けて、正面から僕に近づいてくる。

 

「魔法使い、いまです!」

 

 エリカはさらに加速して君の横を通り過ぎる。僕の目の前に迫ってくるのはバグの群れ。時間の淀みの原因ともなるそれらを僕は魔法で一掃した。

 ここにやって来て何日か。衣食住まで用意してもらってばかりでは悪いので、僕はできる範囲で仕事を手伝っていた。

 エターナルクロノスは全ての時を司る時計塔。そこの住人達は時計塔が正しい時流を生み出すように調整する整備士、時流の均衡を見定める時詠み師などなど、日々多忙に追われている。

 仕事を手伝うと言っても、時計塔の仕事内容は色々と複雑で難しい。専門知識が必要だったり一朝一夕で身につくものではない技術を必要とされたので、最も単純な仕事であるバグ退治を選んだのだ。正常な時間の流れを刻むのを邪魔してくるバグを叩くだけ、これなら普段の魔物退治と変わらない。

 

 ……バグはもういないかな、ふう。

 

 それにしても今日はバグの量が多かった。普段のバグが出現する量は一定ではないが、時よりこうやってバグが大量発生することもあるらしい。君の周りのバグは全滅したが今もどこかでバグと戦闘している音が聞こえる。

 

 後ろからぱちぱちと拍手の音真似をした声が聞こえる。

 

「だいぶバグとの戦いが上手くなりましたね魔法使い。これもエリカが戦術の知恵をおかげでしょう」

「何を言ってるにゃ。このこに魔法を教えたのは私にゃ、人の功績を横取りしないでほしいにゃ」

 

 戦術の知恵なんて教えもらった覚えがないし、ウィズも出会ってすぐに猫になってしまったため功績を讃えるほど魔法を教えてくれたとは思えない(ちょっとしたコツは教えてもらったけど)。そんなことを言うと二人とも反論してきて面倒なので決して口にはしないけど。

 

「じゃあエリカはこのこにどんな魔法を教えたっていうにゃ? このこがここまで強くなれたのは、私のスパルタ教育と徹底された魔法学と師匠として溢れんばかりの愛情の心血注いで育てたおかげにゃ」

「魔法は教えてはいません。ですが、エリカが教えた悪知恵と完璧で狡猾な戦術があってこそ魔法使いはここまで強くなれたのです。つい最近は、私の教えた不意打ち戦法によりバグを一掃退治しました、とエリカは誇らしげに言います」

「君、いつの間にエリカにそんなこと教えもらってたにゃ!? せっかく私が君を育て上げたというのに、師匠を鞍替え────」

「あーーー!!」

 

 何やら口を挟まない事をいいことにある事無い事誇張されてる気がする。これ以上調子に乗らせたら後々面倒なことになる。そろそろ諌めようとすると、廊下の置くからアリスの声が響き渡った。声の主はエリカに視線を固定すると近づいてきて、腕の中に捉えた。

 

「エリカこんなところにいた。あんまり魔法使いさんに迷惑かけちゃダメだよ。バグ退治は危ないんだから、もし邪魔して魔法使いさんが怪我でもしたら責任とれないでしょ」

「違います。エリカは魔法使いがバグ退治に苦戦してたので手を貸してやったのです。最近のアリスは怒りっぽいです、そのままだとどこぞの銃使いの女みたいにすぐ老けて──」

 

 アリスはエリカの小言を無視して軽く頭を拳骨して、

 

「そうじゃないでしょう。あなたこの前から魔法使いさんにひっつき回ってるんですって、たまにこの人の部屋で寝てるということも知ってるのよ」

「……なるほど、アリス。あなたの言いたいことが分かりました」

「そう。それならティータイムが来るまで私のところで大人しく」

「アリス。確かに私は生物学的には不明とはいえ、どちらかといえば女ですし人間の姿になれば人間の男など一人や二人……いえ十人や二十人魅了する自信はありますが、魔法使いを手篭めにする気など毛頭ありませんよ。むしろこうやってアリスを焚き付けているのですよ。その意味ではアリスの今の反応は大成功とは言えますね。……ふふ、ここまで完璧に裏方役をこなせるのはエリカしかいないでしょうね」

 

 また意味不明な事を言ってる的なため息をしたアリスのスキをついて、エリカは彼女の腕から逃げ出す。そして、空中のベッドに身を預けるような姿勢になると、突然いつかの人間の女の子の見た目に変身した。……寸前、エリカのスカートの奥からあまり見てはいけないものが見えたので僕は視線をそらした。あぶないあぶない。元は人形なのにどうしてスカートの中まであんなに細かく再現できるんだろうちょっと気になるとか思ってない。

 

「アリスは奥手ですからね。魔法使いがあなたの本心を察してもらうか、こうでもしないとアリスは一行に動かないでしょうから、ね」

「変な事言ってないで……────?」

 

 エリカの意味深な言葉にアリスは一瞬困惑するが、すぐにエリカにも大人しくするように促す。エリカが変な事やひねくれ事を言うのはいつもの事だからと気にしなかったのだろう。

 エリカはアリスの心の奥底から掘り出した本人も気付かないような悪感情を塊にしたようなものだ。もちろんエリカ自身の感情や思考を持ち合わせているが、大抵はひねくれたことを言ったり素直じゃないことが多い。裏でこそこそ何かをやっていたりもする。

 だから僕もこの場合、いつもの事だから仕方ないな。周りに迷惑かけるような事があってもアリスが説教するから大丈夫、と済ましているのだ。いつもならそれで良かった。

 

 エリカが僕の後ろに回っていきなり背中から抱きついてくるまでは。

 

「……え?」

「……にゃあ?」

 

 現状が全く理解できなかった。いや、エリカが可愛らしい人間の女の子の状態で僕の背中から手を回して抱きついてきた事実は理解できるが、その突拍子もない行動に思わず二人と一匹の時が止まったようだった。この時計塔でその表現は洒落にならないが的確な表現だと思う。

 抱きつかれたことは理解出来てもそれに体が追いついていない。ついでに言えば、隙間もないくらいに肌と肌が密着している。背中からは女の子らしい膨らみが押し付けられてやがて理解が困惑へと変わっていく。

 長いように感じた短い時間をかけてようやく動き始めたウィズとアリスは、もちろん目の前の出来事を黙視できるはずが無かった。

 

「にゃーーー!? 君ってそういう趣味だったのかにゃ」

「え、えええ!? エエエっ、エエエエリカ!? 何をしてるの魔法使いさん困ってるでしょう!? 早く離れて!!」

 

 このままではまずいと思い、エリカの巻きついた腕から離れようとするがこれがどうしてか引きはがすことが出来ない。不意を突かれたせいで腕が体にがっちりと固定されており、力技で脱出しようとしても女の子特有の甘い匂いと心地の良い体の感触に気が緩んでしまい抜け出せない。

 魔法でエリカの体を軽く痺れさせようともしたが、詠唱すると同時に耳元に息を吹きかけて集中できやしない。普段の悪戯で洗練された

上手い立ち回りに翻弄されていた。

 

 ていうかこれはまじで不味い! エリカ自身ただの悪戯のつもりなのかもしれないが、このままでは尊厳の危機だ。仮に完全にこの場で骨抜きになりされるがままになったら、目の前にいるアリスとウィズは僕を軽蔑するだろう。……いや軽蔑こそしないだろうが、自分の方から合わせる顔がなくなってしまう。それにエリカにこれ以上に男としての弱点を知られても困る。もう遅いかもしれないがそれでも精一杯の抵抗をしてみせる。

 

「いいではないですか、これもスキンシップのうちの一つ。それにこれもエリカがアリスを思っての行動ですよ。……そうだ、どうせならアリスも魔法使いに抱きついてみればいいです。魔法使いもそれなら大喜びでしょう」

「そそ、そんなことするはずないでしょう!」

 

 いや困る。エターナル困る。エターナル嬉しいけどエターナル困ってしまう。自分でも何言ってるか分からないこれ。

 

 ぶんぶんと今度は自身の体を捻るようにエリカごと振り回すがそれでも彼女は離れない。何度高くジャンプしても取れないし、エリカが抱きついている体の方を壁に体当たりして見れば彼女は素早くがら空きの体の方に回り込んだりと、抵抗すればするほど疲れてしまい、ぜえぜえと呼吸を整える。

 

「やれやれ、これだからアリスは苦いコーヒーも飲めないお子様なのですよ。ここまでして行動の一つもしないとはこの先思いやられます。……魔法使い、ちょっと」

 

 そう言ってエリカは僕の耳元に口を寄せてくる。もはや呼吸を整えることに忙しい僕は抵抗する気も起きず、その流れでエリカの小さな声が勝手に耳に入ってくる。

 

「……エリカはアリスの心の一部でもあるのです。ですからアリスの気持ちは言葉で伝えずとも分かりますし、エリカはアリスの気持ちの代弁もできるわけです。エリカが何故このようなことをしたのか、魔法使いがその意味をよく考え、アリスの気持ちを理解してくれると助かります───」

「エリカ! いい加減にしないとティータイムのお菓子抜きにするよ!」

 

 何やら普段と違って真剣な声音になるエリカのひそひそ話を聞いていると、ついにアリスの怒鳴り声が割って入ってくる。エリカは舌打ちしながら僕から離れた。

 

「な! お菓子を生贄にするとは卑怯な! ……なんてもうお話は終わりましたので、エリカは颯爽とこの場を退出します」

 

 そしてわざとびびったような演技を見せつけると彼女は廊下の奥へと消えていった。エリカは何やら重要そうな事を伝えていたつもりだろうが、肝心の内容を聞き流していたので覚えていない。

 

「ごめんなさい魔法使いさん。エリカがまた迷惑かけちゃって……」

 

 気にしないでと言ったが、アリスは焦りと申し訳なさからか顔を真っ赤にしていた。かく言う僕もエリカに抱きしめられた実感が残っており顔に未だに熱を持っているのが分かる。

 加えて男女二人が顔真っ赤にして居合わせているというのもあってなんだか気まずい。

 

「ふう……ど今日のバグは数多くて大変だったな、汗かいちゃった。あれ、二人ともどうしたの? 顔真っ赤だよ?」

 

 どうしたものか……と悩んだところで明るい声が聞こえてくる。ユッカだった。

 

「な、なんでもないよ気にしないで。それよりユッカちゃん、こんなところでどうしたの? ユッカちゃんのバグ退治の担当場所はここじゃないよね」

「そうそう、緊急連絡でみんなに話して起きたいことがあってね。なんと、女神様達の計らいにより日頃から仕事に追われている私達のために海へ外出する許可を出してくれました!」

「え……? それほんとユッカちゃん!」

「うん! でも時計塔のみんなで外出する訳にはいかないからグループ事に分けて外出するんだって! しかも今から! 海だよー海ー、バカンスだよバカンス! 楽しみだなあ」

 

 ……海。そう言えば、以前に時計塔の仲間達ととある目的で水の都を訪れたが、その時に現在のユッカはいなかった。まるで子供のようにはしゃぐユッカだが、仕事ばかりのこの時計塔で日常を送ってきたのだから無理もないだろう。そしてそれはアリスも同じで、例え一度水の都を訪れた彼女も無邪気な子供のように目を輝かせていた。

 あの時ユッカの原点とも言えるサマーはいたが、アリス本人がよく知っているユッカはいなかった。今度はユッカと一緒に海に行ける事がアリスは何より嬉しいのだろう。

 

「今からならすぐに準備しないとね。エリカも呼んで水着の準備してくる」

「はいはーい! 焦って忘れ物しちゃだめだよー」

 

 さっきの真っ赤にした表情はどこへやら。アリスは嬉しそうにしながら走り去っていく。

 ……にしても海か。スケジュールが厳密に調整されている時計塔ではあまりにも唐突じゃないだろうか。まあ別に自分が時計塔の管理をしているわけじゃないし、気にすることじゃないだろう。

 それに、師匠も喜んでるみたいだし。

 

「君、海にゃ! 私達も日頃から頑張っている御褒美として夏の海を満喫しに行くにゃ! 魚、太陽、海水浴にゃ!」

 

 分かった分かったとりあえず落ち着いて。と、子供みたいに喜ぶこの猫を捕まえて肩に乗せる。さっきは師匠であることに誇りを持ってるみたいな発言をしてたのに今はその欠片さえ見当たらない。ていうか猫が海に行くことを喜んでどうするんだ、水は苦手じゃないだろうか。あ、そう言えばウィズは元は人間だった。

 

「魔法使いさん」

 

 そんな風に心中で自問自答していると、ユッカに声をかけられた。

 

「アリスちゃんに何かしたんですか? さっき顔真っ赤なってましたけど変なことはしてないですよね」

 

 訝しげな様子で訪ねてくるユッカ。

 してないしてない。あれはエリカのいたずらが原因でああなってしまっただけだ。

 

「それならいいんですけど。……あとできれば時計塔にいるうちはアリスちゃんとなるべく仲良くしてもらってもいいですか」

 

 仲良く……? 何方かと言えば自分とアリスは仲良いはずだ。彼女に嫌われるようなことはしていない……たぶん。

 

「そうじゃなくて、この間までアリスちゃん時詠みの仕事がすごく忙しくてぐったりしてましたから。なのに魔法使いさんが時計塔に来てから元気になったんですよ。ですから魔法使いさん、アリスちゃんの側にもう少しいて下さい。そうすればアリスちゃんも気分的にも楽になると思いますから」

 

 そう言ってから持ち場に戻るユッカ。

 ユッカとアリスは大の友達だ。アリスが時計塔の住人に馴染めない頃、一番最初にできた友達がユッカなのだと言う。だとしたらユッカがアリスを気遣うのも当然。

 だけど何故だろうか。普段から呑気なユッカにあのような言い方をされると、他に意図があるのではないかと勘ぐってしまう。

 

 気にしても仕方ない。海には行くのは今からだと言っていた。自分も借りた部屋に戻って準備をするとしよう。

 

 

■

 

 透き通るような地平線まで続く青い海。眩しいくらいに照りつける太陽が砂浜に反射して、海に来ているという実感を湧かせてくれる。

 時計塔の住人ほど忙しくはないが、日頃からバロンに押し付けられた仕事をこなしていた僕は久しぶりのバカンスに心躍っていた。

 

 アリスも同様で瞳を輝かせていたが、すぐ少しだけ不安そうになりイレーナに尋ねた。

 

「それにしても本当に良かったんですか? 時計塔のこと放って遊んだりして……」

「特別に今日だけ大丈夫ですよ。それに時計塔の皆が出払った理由ではありませんからね。明日からの仕事に支障が無い程度にはしゃげば何の問題も無いでしょう。それにこの間の件で学びました。仕事を真面目にするのも大事ですが、こうやって時計塔のみんなと楽しい時間を過ごすのも大切なことではないかと」

「……この間の件? イレーナ様、何の話してるんですか?」

 

 ユッカが会話に入ると、イレーナの代わりに砂浜にパラソルを突き刺した日陰に寝転んだヴァイオレッタが答える。

 

「あんたが聞いても分からないことよ。別に知らなくてもいいから。それより海行けば? 今は難しいことを考える時間じゃないでしょ」

「んー……気になるけど怪しいけどまあいいか。言ってることも本当だしね。じゃあ整備主任ユッカ! 行ってまいります!」

 

 そう言ってから、ユッカは我先にとばかりに海へと向かっていく。仕事ばかりの日々からの解放感と滅多にできない体験にユッカは嬉しそうに足元を海に沈ませてバチャバチャと音を鳴らしながら駆け回る。

 

「わー冷たくてしょっぱくて涼しいー! 本当に海に来てるみたい!」

 

 ……当たり前のことを言って喜ぶ辺りがユッカらしいなと思うが口には出さないでおく。

 イレーナが先に準備運動をするように注意するが、海を堪能しているユッカの耳には届いていないようだった。

 師匠はと言うと、ぎりぎり波に飲まれない付近の砂浜で楽しそうに駆け回っていた。さて……準備運動しようかなとした所で僕はあることに気づく。

 水の都でも彼女達の水着を一度は見ているが、その時の状況はユッカを助けるために必死だったこともありあまり気にしてはいなかった。

 だけど今回は違う。今回海に来た理由は時計塔の仕事でも仲間を助けるための使命という目的で訪れたわけでもなく、純粋に日頃の疲れを癒すためと遊ぶために海に来ている。

 ……男ならばどうしても女性陣の華やかな水着姿に目移りしてしまう。水の都の時と違って遊びという目的で海に来ているのだからどうしても気が緩んでしまい、一度それを意識してしまった以上見過ごすことも出来ない。決して声には出さないが、男にとって海に行く目的は遊びの他にも女性の水着を見て目の保養にすることでもあるのだ。

 

 ……不審がられないように周りの女性陣の水着をチラ見する。あの時から思っていたがやはり時計塔の女性達はレベルが高い。女神三人はやはり女神と呼ばれるだけあり、美しさだけでなく包容力も兼ね備えているようなその水着姿には男心を燻るものがある。さっきからそこで寝転んでいるヴァイオレッタも年上ではあるが周りの男達からしたら決して見過ごしたりはしないであろう上玉だ。海ではしゃいで回っているユッカは、普段の言動こそ子供ぽかったり女神のような包容感はないものの発育は良く、文句無しの美少女だし女性達でも羨ましがるようなプロポーションをしている。

 アリスは……。あれ? アリスはどこだろう。彼女が見当たらない。

 

「……魔法使いさん。さっきからやらしい目でみんなを見ているのバレバレですよ」

 

 後ろから声がして振り向くとそこには冷たい目で僕を見ているアリスがいた。

 バレないように装っているつもりではあったが背後にいたアリスにはバレバレだったらしい。エリカに抱きつかれてデレデレしていたあの後のこの状況はちょっとやばい。加えて、背後にいた彼女にびっくりした拍子に「げっ、アリス!」と口に出してしまう。

 

「げっ……てどういう意味ですか。私が魔法使いさんの近くにいると何か問題でもあるんですか」

 

 そ、そんなことは無いよ。アリスこそ、ちょっと機嫌悪いけど何かあったの? ……思わずそんな返答をしてしまう。すぐに地雷踏んでしまったと気づいた。

 

「怒ってませんよ。別に魔法使いさんも男性ですし女の子達の水着姿に見蕩れるのも仕方ないですけど、せっかく海に来たんだから遊んだ方がいいよって言おうとしただけです」

 

 そう言い残したアリスは、海ではしゃいでいるユッカの呼び声に気づいて彼女の元へと向かう。ちょっとだけむくれていたアリスの表情はあっという間に笑顔に変わり、ユッカと海を堪能している。

 

「ふふ、微笑ましいですね」

 

 ユッカにそのつもりは無いだろうが助け舟を出されたようでほっとしていると、イレーナは楽しそうにしている二人を見てそう言う。二人を見つめる優しそうな表情は、まるで子を見守る母親の雰囲気を醸し出しておりやっぱり女神なんだなと感じる。

 ……確かに楽しそうに弾けている二人の姿は綺麗で広大な海をバックにとても良い絵になっていた。水の都の時のアリスはユッカを助けるために険しい表情をしていたが、もうそんな様子は一片足りとも見えない。あんなに楽しそうな二人を見ていると、あの時に僕も助力出来たことが誇りに感じた。

 

「そうではありませんよ。確かに今のユッカとアリスも微笑ましいですが、私が言っているのはあなたとアリスの事です」

 

 僕とアリスが微笑ましい? さっきアリスが僕に怒ってたように見えたのにどうしてそう思うのだろうか。

 

「アリスはあなたが来て以来すごく楽しそうにしているんですよ。普段から明るい子ですが、それとは別の方向で楽しそうにしているんです。魔法使いさんが近くにいると嬉しくなってもっと元気になるんだとか」

 

 それは光栄だが、そのような言われ方をするとちょっと気恥しい。気にしすぎて顔を真っ赤にしないように、なるべく軽い気持ちでイレーナの話を聞く。

 

「そう言えば……魔法使いさんはエリカに抱きつかれたようですね。嫌がっているように見えて実は喜んでるようにも見えた、とか。アリスったらちょっと機嫌悪そうにそう言ってましたよ」

 

 無理だった。その話を聞いてしまっただけで次第に頬の熱が上昇していくのが分かる。エリカに抱きしめられ事を思い出したからではない。いや、それもあるけど理由はもっと別にある。

 アリスは僕と一緒になると嬉しくて元気になる。そしてエリカに抱きつかれてデレデレした僕を見てアリスは不機嫌になった。そこまで聞くと、どうしても都合の良いような妄想をしてしまう。

 それではまるで、アリスは僕のことを。……いやいやいやいや、その線は本当にありえるのか?

 住んでいる世界が違う以上、僕は時計塔のみんなにいつでも会えるわけじゃない。もちろんアリスともいつでも会える訳じゃない。そうなると必然的に僕とアリスが共に過ごした時間は短くなる。短くなくとも決して長いとも言えない。それこそアリスと一番仲良しのユッカが過ごした時間と比べてみると、僕とアリスが過ごした時間はほんの僅かにしか過ぎない。……そんな短い時間の中でアリスが僕にそのような感情を抱くなんてことあるのだろうか。

 それを考えると、やはり僕が都合の良いように妄想しているとしか。

 

「鈍い……という訳では無さそうですね。恐らく今、アリスの気持ちを察することができたのでしょう」

 

 ナンデワカッタノカナ。これも女神様の力というやつだろうか。包容感的なものに僕は知らないうちに包まれていて、イレーナからすれば僕の思考とかあっさり分かっちゃったりしてるのか……。

 

「私の女神としての力は過去を見ることくらいですよ。それに心の内を読まなくとも、そんなふうに顔を真っ赤にすれば何を考えているのかお見通しです」

 

 ……まじか。いや、顔を真っ赤にしただけでそこまでわかるのは女神の実力な気もするが。

 イレーナは一泊置くと、改めて話し始める。

 

「共にティータイムをして過ごし、時計塔の危機を救い、大事な友達を助けてもらい、自分自身の命まで救ってもらった。……色々なことを積み重ねていくうちにアリスにとってあなたはユッカとは違う意味でとても大切な存在なのだと思います。それにアリスは時計塔の住人です。知らない異界から来た新しい人ととの出会いは刺激的だったのでしょう。

 だから、決して彼女の気持ちに答えてくれだなんて言いません。せめてアリスにとってあなたと過ごす時間はとても大事なことを知っていて欲しいのです」

 

 そう言ってイレーナはおっとりとした足取りで砂浜を歩き始めて行く。

 ぽつんと一人になった僕は、楽しそうにしているアリスとユッカに視線を向ける。アリスを見ただけで僕はまた顔が真っ赤になりそうになり、慌てて視線をそらした。

 ……暑い。この暑さは夏のせいだ。冷たいジュースでも買って一旦体を涼しくしよう。そんな誤魔化しきれてない言い訳をしながら僕は海の家へと向かった。

 

 

■

 

 僅かな雲が日差しを絶った浜辺で僕は物思いに耽っていた。言うまでもなくその考え事とはイレーナに言われたアリスとの関係について、だった。

 正直イレーナが言っている事を全て本当の事だとは思えない。嘘をついている……とは思わないものの、どこか信じられないでいる。アリス本人に気持ちを直接聞いたわけでもないのだから僕やイレーナが勘違いしてるだけなんて話もあり得る。そしてそう考えることで僕はアリスの気持ちに答えることから逃げていることも自覚している。だって彼女と僕は毎日会えるような関係ではないのだ。会える回数を増やすことは出来るだろうが、それでも僕がアリスとそういう関係になるにはあまりにも無責任じゃないか……。

 

「……さん」

 

 ……あー、どうしよう。考えれば考えるほどアリスのことが頭でいっぱいになる。アリスとそういう関係になるには今の僕には相応しくないと考えると同時に、もしアリスとそういう関係になれたら嬉しいとおもう僕がいる。現金な話になるがアリスは美少女だ。そんな女の子に好かれて悪い気はしないし、短い間でも過ごした時間で彼女の良いところを知ることが出来た。

 そんな想いが板挟みして、自分でも情けないと思ったり。はっきり言って男として情けないと思う。

 

「魔法使いさん!」

 

 わっ! ゆ、……ユッカ?

 

 深く考え事をしているうちに背後にユッカにいた事に気づかなかった。僕は慌てて平然を装いどうしたのか尋ねる。

 

「魔法使いさん、いつまでここでぼーとしているつもりですか。せっかくの海ですよ。アリスちゃんの所に行ってあげなくていいんですか」

 

 ……あー、イレーナの言っていた件に関してはユッカも知っていたのか。というか、時計塔のみんなが知っているのかもしれない。それなら、さっきの時計塔でのエリカの僕にしていた異様な行動=アリスを焚き付けていた、と納得できるし、エリカの言っていた意味も理解できる。

 とりあえずこの場を誤魔化さないと────

 

「とう!」

 

 ────しようとした瞬間、ユッカが勢いよくハンマーを叩きつけた。振動の伝導率が悪いはずの砂浜に豪快な地響きと音が鳴り、海が小さな波を立てた。力任せな仕事が得意とは聞いていたが、流石にこれにはビビってしまった。というか、なんでバカンス目的に来た海にまで巨大なハンマーを持ってきている!

 

 ユッカは砂浜にめり込んだハンマーから手を離すと、逃げようとした僕を目線で強く捉える。ここから逃がさないという思いが目力で伝わってくる。

 

「魔法使いさん! イレーナ様から話は全部聞いたんですよね! 今だから言いますけど、実はみんなで海に来たのはアリスちゃんと魔法使いさんに楽しい思い出を作ってもらうためなんですよ」

 

 え……、そうだったのか? どうりでスケジュール管理が整っているはずの時計塔で、いきなりみんなで海に行くなんて話おかしいと思ったのだ。まさかこれもみんなからの配慮だったとは。配慮というには強引な気がするけど。

 

「アリスちゃんも普段は忙しいですからこれ以上ないチャンスなんですよ。ここでうじうじしてていいんですか? いい加減しないと流石に魔法使いさんでも怒りますよ! さあ、これ以上私のハンマーが出る前にアリスちゃんのところに行ってあげてください」

 

 いやハンマーもう出たんだけどね。いきなり殴られるくらいびっくりするよあれ。てか、やっぱり配慮というよりは強引だ。何が彼女達をここまでアリスの気持ちを確信づけたかのように本気にさせるのだろう。

 

「魔法使いさん、聞いてるの?」

 

 何も動かない言えない僕にぐいっと差し迫ってくるユッカ。自覚がないのかもしれないが今の彼女は水着だ。しかもユッカはスタイルもいい。そんな女の子に差し迫られたら別の意味で緊張してしまう。怒られる時に不謹慎かもしれないが……。

 

 ……て、ユッカ、足元!

 

「そんな風に騙して逃げようだなんて手には乗りませんよ。……て、うわっ、とあっ!?」

 

 僕の注意を無視して迫ってくるユッカ。案の定、ユッカは自身の置いたハンマーの柄に気づかずに足を躓かせる。僕と距離の詰まったユッカは僕ごと押し倒して目の前に転倒してしまった。

 いてて……。て、やばい。僕の胸にむにゅっとしたあれが当たってる。しかもお互いに水着なものだから感触が強い。

 

 は、早くどいてユッカ!

「ご、ごごごめんなさい魔法使いさん。今すぐに────」

 

 さっきの真剣な雰囲気と打って変わって取り乱すユッカ。すぐさまユッカを上半身を起こして僕も立ち上がろうとしたところで、ユッカの後ろ側から一番合ってはならなかった展開を目の当たりにした。

 

「魔法使いさん?」

 

 ユッカの後ろ側を見てしまった僕は思わず身を固めてしまう。焦りと動揺が膨れ上がり喉が詰まり息が苦しくなる。後ろの少女に気づいていないユッカは僕の様子を不自然に見ているだけ。

 ばちゃり、と水が地面に叩きつけられるような音がなった。波の音ではない。けど間近で聞こえたそれに気づき、僕の視線を頼りにユッカは後ろを振り返る。

 二つの紙コップに入ったジュースを落としたアリス。

 最悪のタイミングで一番見られたくない少女に見られてしまった。しかもアリスから見れば僕とユッカは事に及ぼうと勘違いされてもおかしくない体勢になっている。普通なら外野の人間がこんな光景を目の当たりにしたら顔を真っ赤にしてこの場を離れるだろう。しかしアリスは真っ青になっていつもは爽やかで綺麗だった瞳からは色が抜け落ちている。彼女の表情を例えるとしたら絶望。それ以外何も無い。僕とユッカもとんでもない事態を招いたことに気づき、冷や汗を垂らす。

 落としたジュースは気を利かせて持ってきてくれたのだろう。ぶちまけられた色の濃い液体はすぐに砂浜に染み付き、空になったコップが波風に飛ばされる。

 

 この事態にどう対処すべきか必死に考える。だが、気が動転しているアリスはそんな暇も与えてくれなかった。

 

「そっか、ユッカちゃんも魔法使いさんのこと……。そうだよね、凄く素敵な人だもん。二人とも似合ってるよ」

 

 そうこうしている間にアリスは空虚な言葉を残してその場を走って去ってしまう。

 戸惑って何も出来なかった二人だけが残される。ざぱぁーんと鳴り響く波の音が無常に感じた。

 

「え、えええ!? ち、違うのアリスちゃん。お願い待って! 魔法使いさん、追いかけないと!」

 

 ……う、うん!

 

 急いで起きてアリスを追いかけようとしたが今度は僕がユッカの放置したハンマーに足を引っ掛けてしまい、また同じ事をするハメになった。こういう時に限ってどうして僕はヘマするのだろうか。

 

 結局アリスはみつからないままバカンスの時間が終わった。終わると同時に流石にアリスは顔を出してきたが、僕らと距離を置き話しかけてくることもなかった。気まずい状況とアリスの真っ赤に染まった目尻を見て僕達も安易に言葉をかけることすらも躊躇ってしまい、このままエターナルクロノスに戻ることになった。

 

 

■

 

「アリスちゃんの誤解を解かないと! 魔法使いさん、アリスちゃんの部屋に案内するから着いてきて」

 

 エターナルクロノスに帰ると、すぐに僕とユッカはアリスの部屋へ行くことを決めた。そもそもが誤解だし、僕もアリスとぎくしゃくした関係のままは嫌だった。僕は時計塔にいつまでも居ることができる訳では無いため、早いうちに解決しようと覚悟を決める。

 女の子の部屋に入るなんて緊張するなあ……なんて悠長な事考えてる場合ではない。彼女の部屋の前までやって来て、ノックしてみるが反応が無い。声をかけて見るが応答無し。アリスは時計塔に帰ってすぐに自室に戻ったと聞いた。なら彼女はここにいるのは間違いない。

 深呼吸して鍵のかかってないドアを開けて足を踏み入れる。

 

「アリスちゃん、さっきの事で話があるんだけど……」

 

 部屋に入ると、アリスはベッドの端に憂鬱な顔をして座っていた。心ここにあらずと言った感じで、大胆に部屋に入っているというのに気づいてくれない。まるで目の前にいるのに意識がどこか遠くに行ったように見えるアリスに声をかけると、ようやくこちらの存在に気づいてくれた。

 

「あれ、魔法使いさん? それにユッカちゃんも……」

 

 だが、アリスはすぐに視線を僕達がいない壁に向けて、

 

「ごめん、ちょっと一人にして」

 

 ……これは思った以上に重症だ。僕がヘタレなばかりにこのような事態を招いてしまった。だけど今更逃げるわけにはいかない。僕は説得を試みようとすると、それより先に早くユッカが一歩進み口を開いた。

 

「あ、アリスちゃん! あの時の事誤解なの! あれは事故でアリスちゃんの誤解なんだよ!」

 

 その言葉を聞いて、ゆっくりと視線を向けるアリス。目をぱちくりとさせ呆然とこちらを見ていた。

 

「…………え?」

 

 

■

 

 その後、アリスはなんとか僕達の言い分に納得してくれた。最初は「私に気を使う為の嘘」と言い返されたりもしたが、そもそも僕とユッカを恋仲だと判断する材料が少ないのと、僕とユッカが恋仲だとアリスが判断した唯一の材料であるあの状況も偶然の事故だとこと細かく説明すると、アリスはようやく自分の勘違いだと理解した。何より大親友のユッカが言っているからこそアリスはその話を信じてくれた。

 ……ほんと、誤解って恐ろしい。とりあえずアリスの勘違いを解けて僕達はほっと息をついた。まあアリスは、落ち着くどころか自分の壮大な勘違いに羞恥心が破裂寸前のようだが……。

 

 

「恥ずかしい……全部勘違いだったんだ。てっきり私は二人が恋人同士でエッチなことしてるのかと」

「しないよ! 例え恋仲だとしてもあんな場所でそんな事しないよ」

 

 アリスは膝と腰を床に着かせて、「見ないでくれ」と言わんばかりに両手で隠しきれてない真っ赤な表情を塞ぐ。ユッカは突然僕の背後に回ると、背中を押してきてアリスの目の前にまで押しやってきた。

 

「さあ後は魔法使いさんが頑張ってください。私が協力できるのはここまでです」

 

 協力も何もあそこでユッカが転ばなければこんなことには……。

 

「と、とにかくせっかくここまで来たんですから頑張ってください。逃げて帰ってきたら許しませんよ。そんなことしたら二人を部屋に入れてドアを大きな釘で塞ぎますからね」

「ゆ、ユッカちゃん待って。私からもお願いだからもうしばらく一緒にいて、今二人にされたら」

「ごめんねアリスちゃん。本当は私ももう少しアリスちゃんの力になりたいけど、ここから私はもう何も出来ないしここにいる訳にもいかないの。だから後は頑張って! それじゃ!」

 

 そう言って、ユッカはドアの前でビシッと手を頭に寄せて軍人のような敬礼をすると素早く部屋から消えていった。

 二人きりにされるのはまさかの想定外だ。あっさりとユッカの思い通りになってしまった。虎ではないが前門のアリスを放っておくなんて真似出来ないし、後門のユッカは逃げようものなら餌にされる前にぺたんこにしてくる。今の僕は目の前のアリスと向き合うしか道はなかった。

 

 とりあえず僕は深呼吸すると、今までの成り行きを察してアリスの本心を思い切って聞いてみた。心臓がもうバクバクしてるけど、これ以外にどうすればいいか分からなかったし、いつまでも彼女の気持ちを無視するわけにはいかない。僕がこの場所にいる時間だって限られている。

 

「……え、え? どうしてそんな事聞くんですか。も、もしかして私ってそんなに分かりやすいですか? その私が魔法使いさんのこと……す、好きってこと!!」

 

 もう隠し通すことは難しいと思ったのか、アリスは声を振り絞って気持ちを告げてきた。

 分かりやすいと言うかエリカやユッカ、イレーナの助言からアリスの気持ちを察することが出来た。そして先程までのアリスの誤解が決定的だった。後はちゃんと間違いないか彼女に確認したかったのだが……うん、直接本心を聞いてしかもそれが嬉しい返答だと余計に恥ずかしくなる。それはアリスも同じようでベッド下の隙間に視線を向けていた。綺麗な金髪に隠れて表情は見えないが、ちらっと見える頬が紅く染まっている。

 

「そ、それって周りにはもうバレてるってことですよね。ああもう恥ずかしい!? しかもエリカにまでバレてるなら絶対後で弄られるし!? みんなに顔合わせたくないけど、ティータイムには出ないといけないし……ああもうどうしよう」

 

 しかしこれでやっとアリスの気持ちを確認することが出来たわけだ。もしかしたらそれこそ全て僕の勘違いで、そのせいでアリスに思春期男子にしても限度があるだろ気持ち悪いなどと思われそうで不安だったけど、そうならなくて良かった。ドン引きされたら二度と時計塔に来れないくらい傷ついたかもしれない。もちろんアリスのような美少女から告白されるのは嬉しいけども。

 

 アリスは未だに羞恥心に悶え苦しんでベッドに顔を埋めていた。これはこれで面白いと思うと同時に、なんだかその姿が可愛らしく見えてきた。

 住んでる異界が違う上にいつでも会える事ができない以上、アリスの気持ちを汲み取ろうとする事すらも無責任だと思っていたが、僕はそのようなカッコつけたような姿勢は貫き通さないらしい。アリスの気持ちを本人の口から聞いて、ようやくそれを自覚した。

 

「……それで魔法使いさんはどうなんですか。私のこと、どう思ってるんですか?」

 

 ベッドに顔を沈めたまま、背中を向けたままそう問われる。できればこちらを向いてほしいが恥ずかしさのあまりそれは無理のようだ。僕は一呼吸置いて、ちゃんと自分の想いを伝える。すると、アリスは肩を大きくビクリとしながら顔を上げてベッドに腰をかける。頬を真っ赤にしたまま嬉しそうに口元が微笑ませる。

 

「う、嬉しい。……あれ、けどそれならどうしてもっと早く言ってくれなかったんですか? 魔法使いさんは私の想いに気づいてたんですよね」

 

 が、すぐに僕に若干訝しげな視線を向けてきた。思わず「げっ……」と無意識に出た口を手で押さえる。

 

「げ? 今の反応なんですか、海でも全く同じ反応してましたよね。もしかして私を傷つけないために嘘を……」

 

 いや待ってほしい。さっきの反応は決して嘘がバレたからとかじゃないし嘘も言ってない。アリスに伝えた言葉は本心だ。だけどアリスの疑問も分かるし、さらに誤魔化しきれない反応をしてしまったせいで余計に怪しく見えてしまった。

 だからと言ってまた誤解なんてされたくない。僕は頭の中を整理してしっかりと言葉で伝える。

 

 アリスの疑問に関しては、アリスの気持ちに気づいたのが今日だということ。それに僕が女の子の想いに真正面から答える度胸のないヘタレだということ。まあこの点については納得してくれた

 変な反応をしてしまったことに関しては、僕のような異界を超える根無し草が女の子の気持ちに答えるなどという無責任な事をしていいのかという悩みがアリスにバレてしまうかも……と思ったことだ。案の定、この事も話したらアリスは訝しげな表情を呆れ気味な表情へと変えていた。さぞかし面倒な人だと思われたことだろう。僕も今思い返せば随分面倒な悩みを自分から抱え込んだなと思っている。

 というか、アリスの冷たげな視線が未だに変わらないんだが。両思いと知ったならここはもっと温もりのある微笑みを見せてきたりして、ほら……良い展開に進むところではないだろうか。

 

「魔法使いさんって案外ヘタレなんですね。いつも魔法使いさんに助けられてばかりだからちょっと意外でした」

 

 かと思えば、可愛らしげな笑みを見せるアリス。この行動は卑怯だと思う。ちょっと色々と我慢できなくなる。それにヘタレと言われてしまったのなら、見返すためにも少し度胸を見せるべきだろう。……よし。

 ゆっくりと僕はアリスに顔を近づいていく。艶のある金髪から甘い匂いが漂ってきて意識がクラっとするがそれに構わず距離を詰める。

 

「……あれ? ……ま、魔法使いさん。い、一体何をするんですか……ほ、本当に顔、近いですよ…………っん」

 

 動揺しているアリスに構わずそのまま唇を重ねる。強引というにはゆっくりとした唇の奪い方だが、緊張で強ばったアリスにとって不意打ちと言ってもいいくらいの突然のキス。

 ちょっと唇を重ねただけなのに、柔らかい感触と甘い味が伝わってきて思わず背筋に弱い痺れが走る。これは……癖になりそうでやばい。

 ちらっと目を開けると、アリスは慣れないキスと恥ずかしさに耐えるように目元を固く閉じながらも抵抗せずにいる。そんな初々しい姿に欲望が刺激されて、僕は申し訳ないと思いながらも唇を強く押し付けてみる。すると、張りのあるふわふわとした唇がしっかりと気持ちの良い感触を返してくれた。このまま続けていると、キスの快楽に脳を溶かされそうだ。

 

「まっ、まほう使いさん、そんな、いきな、んんっ…………!」

 

 震える肩に手を添える。小刻みに震える唇の隙間から暖かい息が漏れてきて口内に伝わってくる。息切れという訳では無いが緊張のあまりうまく呼吸できてないようだ。

 唇を離すと、ベッドの腰をかけたアリスが前かがみに倒れてきてそれを支える。ちょっと荒くなった彼女の温かい息が耳元に触れて、また背筋がビクリと反応して僕もすごく恥ずかしい事をしていると自覚する。

 

「はぁ、ふう…………びっくりした! もう、キスするの初めてなのにいきなり乱暴にされたら息ができないじゃないですか」

 ご、ごめん。ヘタレて言われたから男気見せないとって思って。

「ま、まあそれなら仕方ないですね。魔法使いさんには今までたくさん助けてもらった恩がありますし特別に許してあげます。……で、ですから今度は優しくキスしてください。私、初キスはもっとロマンチックなものと思ってたんですから」

 

 どうやら僕は彼女のロマンチックなキスという夢を壊してしまったようだ。その代価を求めるようにアリスは、今度は自ら僕の前に顔を持ってきて目を瞑る。

 紅潮していても分かる瑞々しく健康的な肌と美少女と言っても過言ではない可愛らしい顔立ち。潤った唇に艶の帯びたサラサラとした金髪。こちらの様子が気になったのかアリスは目を開けると、透き通るようなエメラルドグリーンの瞳が見えた。……改めて見ると、その唇にキスすることすら罪なんじゃないかと思えてくる。

 そんなことをしていると、頬からではなく彼女の瞳からも強い羞恥心が伝わってきた。

 

「魔法使いさん、まだですか? この状態、結構恥ずかしいんだけど…………早くキス、欲しい」

 

 アリスは促すようにそう言ってもう一度目を閉じると、僕は今度は軽く乗せるように唇を重ねる。互いの温もりを確かめ合うような優しいキス。すぐに唇は離れたが、アリスの柔らかい唇の触感もしっかりと感じることが出来た。

 

「えへへ、これで恋人どうしですね私達」

 今更聞くのもあれだけど、本当に自分で良かったの?

「もうキスしたんですからそう言うこと言ったり考えたりするのはダメですよ。それに会いたくなったら女神様にお願いしてズルすればいいんです」

 なるほど。そう言われると、僕の悩み事がアホらしく思えてきた。

「あ、でも私が近くにいないからって浮気とかしたらダメですよ。もししたら……」

 

 したら……どうなるのだろう。彼女はしばらく逡巡してから笑顔で言った。

 

「私とあなたの時間、二人だけの時間に閉じ込めちゃいます。そうすれば、明日も明後日もその次の日もずっと一緒ですね」

 

 ひっ……それはすごく幸せなことなんだろうけど、笑顔でそれを平気で言ってるアリスが怖い。言われずともしたりしないが、僕は浮気は絶対しないと誓った。

 

「男はしっかりと離さないようにしないと、近くに別の女の子がいるだけで気持ちが変わったりするって言ってましたからね」

 ……それはヴァイオレッタの言葉?

「はい。まさかヴァイオレッタさんの言葉がこんな形で役に立つとは思いませんでしたけど。えーと、だから……面倒な女の子に好かれたと思って諦めてください」

 

 ……恐らくその言葉もヴァイオレッタから教えてもらったのだろう。ヴァイオレッタに一言言っとかないと、彼女から色々学んだアリスがそれを僕に実行してきて面倒な事になりそうだ。男の胃袋を掴むための料理教室や、男がドキッとする女の子の仕草レッスン……みたいなものだったら良いが、あのヴァイオレッタの事だから男の躾方とか女の子が優位に立つ方法とか教えてしまいそうだ。

 

「あの……その魔法使いさん?」

 ん、なに?

「えと……ちょっとだけ激しいキスもしませんか。普通のキスも気持ち良かったけど、これだけだと我慢出来なくなって」

 

 彼女の口から出た意外な積極的な言葉に僕はちょっと戸惑ってしまう。……いや、嬉しいんだけど。

 

「魔法使いさん、あと何日かしたら時計塔を出ていくんですよね? またしばらく会えないなら、その分までもっとキスしたりしたいなって……今のうちに恋人らしいことたくさんしたいです」

 

 だから、とアリスの言葉が途切れると、互いの視線が自然と重なり合う。

 やがて唇もどちらからともなく近づけて重ね合う。しかしこれでは終わらず、ちょっとの間アリスの唇の触感を楽しんでから、そのまま今度は舌を彼女の口内へと侵入させた。アリスの歯並びをなぞって、その先へと進み、自然と舌を絡ませる。アリスも舌が絡むと同時にびくりと肩が跳ねるが、僕に舌を任されているうちに自ら絡めてくる。混じりあった唾液がびちゃびちゃと口内で響き渡り、痺れるような快楽の虜になる。舌の動きを追っているうちに、脳が蕩けて何が何だか分からなくなってくる。ただ気持ち良いという感覚だけが残った。

 

「ふぁっ、はふっ……ま、魔法使いさ、んんっ! れろっ……れるるっ、ちゅぷ、ちゅるっ……」

 

 ちょっとだけ激しいキスのはずだったのに僕もアリスも抑えが効かなくなってしまった。甘美な快楽を与えてくる唇と舌の触感と、髪から漂う嗅ぐだけで気分が良くなる香りに男の欲望を強く刺激されてキスは収まるどころか激しくなる。アリスの舌を乱暴に舐めまわし、彼女も負けじと抵抗してくる。口元から涎が飛び散るがこの快楽を前にして気にしていられない。互いを食べ合うような濃厚な口付けに没頭する。

 体と意識がクラっとして勢いのまま、ベットにアリスを押し倒してしまう。その事に驚く様子を見せる暇もなく、アリスは荒くなった息を整えながら熱と羞恥が混じった表情で、とろんとした目でこちらを見ていた。

 

「は、激しすぎだよ! 魔法使いさん、獣みたいに私にキスしてましたよ」

 

 自覚はしていた。だけど、あの快楽を覚えてしまったらいつの間にか理性が効かなくなってしまった。嘘はついていない。

 

「……だけどキス気持ちよかったです。気持ちよすぎて、私もついちょっと激しくなっちゃいました。魔法使いさんはもう満足しましたか?」

 

 それは……。そう言われると僕は悩んでしまう。確かに満たされるくらい気持ち良かった。だけどそれを言ってしまったらここで終わるのかと思った。あの快楽を思い出すだけでも熱が上がってまた求めたくなってしまう。目の前のベッドに押し倒してしまった少女を見つめているだけでも意識が欲望に塗りつぶされそうになる。

 本来はここでやめておくべきかもしれないが、まだ終われそうにもない。どう言えばいいのか悩んでいると、僕は無意識のうちにアリスの頬を撫でていた。柔らかくて滑らかないつまでも撫でていたくなる触感だが、撫でているだけでは僕の欲望は鎮まりそうにない。

 

「……い、いいですよ。魔法使いさんが続きがしたいなら、このまましても」

 え。だけど……。

「わたし、魔法使いさんのす……全てが欲しいんです。キスだけじゃ我慢できない。嫌らしい女の子かと思うかもだけど、次いつこんな事できるのか考えたら耐えらないし、それに魔法使いさんの気持ちにもっと答えてあげたい」

 

 そこまで言われて僕は生唾を飲み込む。きっとこれ以上すれば止まれなくなる。それでもいいのか問うと、アリスは逡巡せずに頭を振って肯定した。

 

「あ。だけど、今はまだみんなが起きている時間でしたね。熱中しすぎてすっかり忘れてました。みんなにバレたら恥ずかしいからまたあとから……」

 

 それなら問題ない。僕はそう言って、魔法を念じたカードをドアの方にかざした。音と気配を辺りから断ち切る魔法で、さらにドアに魔力を固定させたことで擬似的に強固な鍵をした。まさかこの魔法をこんな形で使うことになるとは思わなかったけど、これで周りを気にせずとも続きができる。……これで僕もアリスの言う『続き』をすることを肯定したことになる。

 

「それなら大丈夫ですね。それじゃあ続きを……つ、次ってどうすればいいかな? ご、ごめんなさい。私から誘ったのにどうしたらいいか分からなくて」

 

 そんなことは気にしなくても大丈夫だ。それに僕は男である、慣れてなんていないがここはこちらがリードするべきだろう。

 僕は未だにベッドに押し倒したままのアリスを見つめる。肩を優しく抑えて、アリスは僕を上目遣いで見つめている。なんというか……男の嗜虐心をくすぐる光景だな、これは。

 それに見れば見るほど綺麗な肌をしている。触れても手触りの良い触感がするが、どうせならこの柔らかくてつやめいた肌をもっと堪能したい。そう思い、ふと頬に軽く口付けする。

 

「魔法使いさん、くすぐったいですよ。キスしたいなら言ってくれれば……て、待ってどこにキスして、ふあ……っ」

 

 アリスの驚く反応を無視して、次から次へとあちこちにキスをする。唇に額に頬に首に耳に、矢継ぎ早にキスの雨を降らせる。その度にアリスは「きゃっ」と小さな悲鳴をあげたり、擽ったそうに身をひねたりと、可愛らしい反応を示す。アリスは上目遣いで潤った瞳でこれ以上やめて欲しいと訴えかけてくるが、むしろそれは逆効果だった。嗜虐心が高ぶった僕は勢いのまま首筋に舌を這わせうと……したところで、アリスは僕の額に手を当てて抑えた。

 

「ま、魔法使いさん〜! さっきから私の反応見て楽しんでますよね!」

 

 羞恥心の限界だったのか、アリスは僕を強く睨む。僕はやりすぎたかなあと反省して、押し返された頭を後ろにゆっくりと戻す。普段は温厚だったアリスの額に典型的な怒りマークが付いちゃってる。

 

 あ、アリス。これはつまり僕がリードしようと……。

「リードじゃなくてただ私の反応見てからかっただけですよね。さっきの魔法使いさん、嬉しそうというより面白がってキスしてたもん」

 ははは……ごめんなさい。

「今はこういう事する場面じゃありません。……それにリードっていうのは、ふ……服を脱がせたり、もっと気持ちよくさせたりするものじゃないですか。

 魔法使いさん、ちゃんと続き……してください」

 

 その言葉を聞いた途端、僕の何かに火をつけられたような気がした。僕はその通りに応じようと、アリスを抱き抱えるとしっかりとベッドに寝かせる。すると彼女はちょっとだけ不安そうな表情を浮かべた。これ以上の続きをするということは、つまりはそういうこと。その先の事を考えてしまって、嬉しいと思ったと同時に怯えてしまったのだろう。僕は落ち着きようのない欲望をどうにかこうにか抑えて平然を装いながら、彼女の頭を優しく撫でる。少しだけでも不安を和らげられるならいいが……。

 

「えへへ……こういう時はやっぱり優しいですね。私のことは気にしないで、いつでもきてください」

 うん。……じゃあ、脱がすよ。

「は、はい。それじゃあ…………お召し上がりください?」

 

 なんかちょっと違うと思う。いや、ある意味間違いではないけど多分間違ってる。なんてことは気にしていられない。

 僕はアリスの唇に軽くキスしてから服の裾に指を触れる。

 

「あっ……」

 

 緊張しているせいか思わず声が漏れるアリス。僕はなるべく優しく服を脱がしていき最終的には下着一枚のアリスがそこにいた。洗い立てのように清潔の素肌は軽く触れても分かるくらいにスベスベして心地よく、大きくもなくかといって小さくもないちょうど手のひらで覆えそうな乳房、全体的に細くもその体は美しい曲線美を保っている。じっと見ているだけでも男としての本能が熱を持って込み上げてきそうだった。

 

「あんまり見ないでください……恥ずかしい」

 

 そうやって顔を赤らめて胸を両手で隠されると、余計に見たくなってしまうんだが……。

 僕は少々強引にアリスの両腕を退かして、ベッドに押さえ付けるような体勢になる。露になった胸に片手で触れる。その際に手で抑えていたアリスの片腕が自由になるが抵抗はせず、代わりに何かに耐えるようにして僕の背中へと回してきた。

 

「あっ、やああ、ま、魔法使いさん……っ」

 

 手のひらで形の良い乳房を揉むと、フワフワとしていてしっかりとした心地よい感触が返ってくる。僕はまたたく間にアリスの胸の感触に意識を吸い込まれるように、彼女の胸の弾力を楽しむ。

 

「んっ、はぁっ、やあぁっ、んんっ、あんっ」

 

 アリスの切ない喘ぎ声が熱い息がときおり僕に振りかかる。先ほどの緊張も快楽に溶かされたようにアリスはベッドに完全に体を預けて沈ませてしまっている。両腕も力が抜けて、胸への刺激に酔いしれていた。

 それならば期待に応えようと、僕は両腕で貪りつくように乳房を揉んでいく。時には激しく、時には手のひらで優しく捏ねるように、緩急をつけてアリスの反応を楽しむ。押せば指が沈み込む程の柔らかく、張りと弾力性にも富んだちょうど良い大きさの乳房の感触を手だけでなく口でも味わう。口内に乳首を含んで舌で転がしたり、胸の表面ごと吸い付いたりしていく。

 

「ひぃ……ま、魔法使いさんが私のおっぱい舐めてる。ビリビリって変な感じがして、んんっ……おっぱい舐められるだけで気持ち良くなっちゃう、わ、私、こんなえっちだったんだ……っ」

 

 手で揉まれるだけでは感じなかった快感に、アリスはぴくぴくと背筋を震わせる。

 ……本当ならまだアリスの胸を堪能したいが、まだこの時間は普通にみんなが起きている時間だ。魔法でこの部屋に誰も入れない、音も聞こえないとしてもやはりその事実が僕を急かしてくる。アリスにももう少しこの時間を満喫して欲しいけど、僕は次の行動へと移ることを決める。

 

「んっ、あ、そこは……っ」

 

 唯一アリスが来ていた下着の中へと指を入れると、ねっとりとした感覚が返ってくる。どうやら胸を愛撫している間にちょっとだけ下の部分も感じていたようだ。そろそろ頃合だと判断してアリスの最後の下着も脱がして、ついに彼女を一糸まとわぬ姿にする。

 僕はアリスの隣に寝転ぶように移動して彼女の背中に腕を回して抱き寄せる。その腕を胸元へ移動して、残りの手で秘部へと伸ばす。抱き寄せたことによりアリスの顔が僕の胸元に収まるようにそこにあった。だからなのか……すぐにキスできる距離にあるアリスは、僕を求めるように目を瞑って唇を突き出してくる。もちろんそれに応えて、唇を重ねて互いの粘膜を刺激し合う。

 

「んれろっ、魔法使いさん、好きっ……ちゅっ」

 

 僕の腕と胸の中でアリスがキス混じりに愛おしげに呟いてくる。唇を離すと、アリスは僕に身を任せるようにしてさらにぎゅっとくっついてくる。そんな彼女の一挙一動がとても可愛らしい。

 僕はアリスを抱き寄せた方の手で胸を揉みしだきながら、露になった秘部に指を押し付けて小刻みに揺らし始める。少しずつ愛液が漏れてきて僕の指を濡らしていく。秘部から伝わる快楽にアリスは僕の胸の中で身を震わせながら艶めかしい吐息を零す。

 

「はぁっ、やあぁ……魔法使いさん、そこっ、そんなに強くされたら、あ……んんっ」

 アリスが可愛いのが悪いんだよ。

「そんなこと、言われても……んんっ、あっ、やぁっ、あんっ! ……ま、魔法使いさんっ! こんなされたらっ、わたし、わたしっ!」

 

 じゅくっ、ぬちゅっ、にちゅっ、じゅぷっ

 

 次第に指のスピードを速めると次第に愛液が溢れ出して淫靡な水音が大きくなる。アリスは快楽に悶えるように僕の胸に顔を埋めて、手でこちらの服を必死に掴んできた。

 僕はアリスの頭を撫でて髪をすくい上げ鼻腔を蕩かすような良い香りを堪能しつつ、指を秘部へと挿入してねとねとした膣の中を掻き乱していく。

 

「これぇ、これだめぇっ! んっああっ……!」

 

 アリスの漏らす吐息が僕の胸元にかかる。服越しだと言うのにも関わらず、その吐息はしっかりと強い熱を帯びているのが分かる。それだけアリスが興奮し絶頂が近いという意味でもあった。

 膣壁を摩擦を起こすかのように激しく指をスライドしていると、やがて愛液が大量に溢れ出して僕の指全体を濡らし、アリスは全身ををビクビクと大きく仰け反らせた。どうやらイッたようだ。

 

「ふぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 絶頂の反動でアリスは脱力して、荒くなった呼吸をゆっくりと整える。

 もはや僕の愚息は硬くなってしまっており、正直に言うとこの暴れそうな性欲をアリスにぶちまけたい気持ちでいっぱいだった。だけど、今の力尽きているアリスを見て本当にこのまま続けていいのか悩んでしまう。そんな僕の不安が表情に出てたのか、アリスは指で僕をつついてきた。

 

「……魔法使いさん、不安そうな顔してますよ。そんなに心配しなくても私は大丈夫ですよ」

 うん、だけどさ……。

「心配してくれるのは嬉しいけど本当に大丈夫ですから。

 ……実はと言うと私もちょっとだけ不安なんです、でもそれ以上に幸せになれそうな気がしますから。だから、続けてください。魔法使いさんが欲しいです」

 

 そう言われると流石に耐えれなかった。言葉だけであっさりと崩れてしまう自身の理性の弱さを呪いたくなる。だけどアリスが僕を求めてくれて、僕自身の欲望がアリスを求めている今、そんなことしている場合じゃない。

 僕もアリスと同様に服を脱いで生まれたままの姿になる。既に愚息ははち切れんばかりに膨れており、それを見たアリスは驚きの声を上げていた。一応、魔法の効力が途切れてないかドアの方を確かめるが……うん、問題ない。

 僕はベッドに寝転ぶアリスの正面に移動すると、彼女の太ももを掴み股を開いて秘所を露わにして、反りだった肉棒を秘部と軽くキスする辺りまで接近させる。

 

 ……それじゃあ、いれるよ。

「はい、きて…………んっ」

 

 僕は少しずつ腰を前に押し進め、アリスの秘部の裂け目へと侵入していく。それを拒むように膣壁が肉棒を圧迫して押し返そうとしてくるが、溢れ出していた愛液の滑りが肉棒にまとわりついて挿入を助けてくれる。途中で薄い膜のようなものが立ちふさがるがこの先を越えないと、完全に挿入できたとはいえない。そこから少々強引に膜を破る感覚を感じながら、膣奥まで肉棒を挿入させた。

 

「あっ、痛っ……っ!」

 

 当然その結果、アリスは小さな悲鳴を上げながら痛みに表情を歪ませて、それに耐えるようにベッドのシーツを掴んでいた。膣からは純潔の証であった血が肉棒にまで伝って流れてくる。

 僕は大丈夫か、と声をかけるが、こうなることを知ってて最後まで挿入したのだからアリスに申し訳なくなってくる。

 

「ちょっと痛い、だけど大したことは無いです、魔法使いさんは気にせず動いてっ……!」

 

 本人はそう言うが見てて安心できない。確かに少し時間が経てば痛みは引くが、気にしないでと言われてもそうはできなかった。

 この場で彼女のために唯一出来ることといえば痛みを紛らわせることくらい。僕は痛みに耐えているアリスの唇を塞いで舌をねじ込ませて濃厚な口付けを交わす。じゅるる、と彼女の唾液を吸い取る勢いで舌を愛撫しているとアリスの方も痛みから逃げるように積極的に舌絡め合ってくる。

 

 じゅぷっ、れる、れるる、ちゅぴっ、ちゅぷぷっ

 

 互いに体が繋がったまま、舌が快楽で痺れるまで口付けをしていくうちに、膣内が熱さを増して肉棒を分泌された愛液で濡れていることに気づく。口付けをやめると、アリスもなんとか痛みが引いてきたのか先ほどの苦痛の表情から、代わりに熱っぽい瞳で僕を見ていた。

 

「……魔法使いさん、本当にもう大丈夫です。逆に今はなんだか体が熱くなってムズムズしてるんです……試しに動いて、ああっ、んあっ」

 

 アリスの言う通り試しに動いてみると彼女は艶っぽい喘ぎを上げると同時に、僕の方も膣内から強く締め付けられた肉棒に熱くて蕩けそうなくらいの快感が返ってきた。ゾクゾクとした快楽が体全体に伝わってきて僕は本能的にそれを欲して腰を動かしていく。肉棒でアリスの膣内を突けば突くほど意識が塗りつぶされそうなくらいの濃い快楽が僕の体に駆け巡ってくる。既に消えかけている理性のなか、肉棒と秘肉が激しく擦れて与えてくる快楽を貪っていく。

 

 「あっ、やぁっ、すごっ、凄いよっ、お腹の奥、熱いのっ、何度も擦られてっ、ふあぁっ! こんな気持ちいいっ……何もっ、考えられないっ、やああぁっ……!」

 

 僕が肉棒を前後するのに合わせて、膣奥を突かれたアリスが嬌声を上げる。アリスは何度も背中をビクビクと震わせ、その度に形の良い胸がぷるんぷるんと揺れる。

 

「んんっ、あんっ、あんっ、ふあぁっ」

 

 まだ時計塔のみんなは起きている時間にも関わらず、アリスは艶めいた声を盛大に部屋に響かせるが、魔法でこの部屋の音は外に漏れないから問題ないだろう。それよりもアリスのその喜悦の声と膣肉の心地良さに僕は完全に酔いしれて遠慮というものが無くなり、突くのが激しく、前後するのが速くなっていく。腰と腰がぶつかる度にぱぁんパァンと派手な音が鳴り響く。アリスは表情を蕩けさせて快感に骨抜きにされていた。今まで見たことのないアリスの淫らな姿もまた男の官能を強く刺激してくる。

 ぎゅうぎゅうと締め付けてくる膣壁に耐えていた肉棒から熱が込み上げてきて限界がすぐそこまで差し迫ってくるのが分かる。僕は頭が真っ白に染まっていくのが分かりながらも、そろそろ肉棒を抜くことをアリスに伝える。

 

「ううん、このままだしてっ! んんっ、私の中、最後まで突いて!」

 え、だけど中は!?

「いいよ、魔法使いさんのっ、中にだしてっ、赤ちゃんできてもいいから、最後まで一緒にっ、いやああっ、ひゃぁっ、んああっ……!」

 

 くっ……そこまで言われたら男の欲望としても、アリスのためとしても引けるはずがない。僕は込み上げてくる熱に体を任せて、性欲と肉棒を容赦なくアリスの膣奥に激しく叩きつける。それに応じてベッドが小刻みに揺れて、アリスの喘ぎ声も甲高くなっていく。

 僕とアリスはどちらからともなく両手の指を絡めて離れないように握って、ラストスパートをかけるように腰と腰を激しくぶつけ合う。アリスも限界が近いようで膣壁の収縮が強まり肉棒に激しい刺激を与えてくる。痺れるような快感に僕も限界が来てしまい、奥底から欲望が駆け上がって来る感覚に襲われる。

 

 びゅるびゅる、びゅくっ、どぷどぷっ、どくっ、びゅくっ、びゅくるるっ

 

「あああっ、熱いっ、んっ、やぁっ、魔法使いさんのが、膣内にっ、たくさんでてるっ、あっ、あっ、ふはぁっ……」

 

 僕はアリスの膣奥深くに肉棒を突き立てた状態で、大量の精液をどくどくと膣内へ流し込んでいく。ビクビクと肉棒を震えながら熱を吐き出して、アリスも体を大きく震わせながら絶頂していた。体全体を支配しているような快楽が抜けていく余韻に浸っていると、アリスは上半身を起こして僕の唇を軽く啄むような口付けをしてくる。それが終わるとアリスは凄く幸せそうな笑みをして思わずドキリとするが、流石に押し倒して第二回戦をする気力はなかった。なんというか……全ての力を一度に出し切った感がした。

 その証拠と言うべきか、肉棒を引き抜くと膣からたくさんの精液が溢れ出して綺麗なアリスの肌を汚していった。

 

 

■

 

 

 行為を終えたあと、すぐさま僕達は着替え直した。部屋にかけた魔法の効力は若干残っていたが、まだみんなが起きている時間ということもあってその事実が恥ずかしくなったのだ。行為の後もなるべく残らないように魔法でベッドや服のシーツのシワを除去、火照って赤くなった肌やベッドなどに染み付いた液体も魔法で取り除いた。そして清めの魔法で体全体を水を使うことなく洗い流し、証拠は綺麗さっぱり無くなった……はずだ。とりあえずさっきの魔法は旅の最中でも不快な気分にならないように少しでも綺麗になるための魔法でしかないので、念のためベッドシーツも服も体もちゃんと洗っていた方がいい。と言っても、今シャワーを浴びたりしたらそれこそ部屋の中で二人で何をしていたのか怪しまれるので、僕とアリスはベッドの端に座ってのんびりとしていた。

 派手にやった後だと言うのにアリスはまだ物足りないのか、僕の肩に頭を乗せて甘えてくる。ちょっと前までは誤解して僕から距離を取っていたとは思えない。

 ……嬉しいんだけど、流石にこの体勢は恥ずかしくなってきた。

 

「えー、いいじゃないですか。さっきまであんなことしてたのに……」

 

 その前の行為に関しては色々と盛ってしまって恥ずかしいとかどうでもよくなったのでそれはノーカン。部屋にかけた魔法はそろそろ消えてしまうだろうし、そろそろ誰かが面白がって様子を見に来てもおかしくない。それを説明すれば離れるかと思いきや、アリスは口元をにやにやとさせて距離をさらに詰めて耳元で囁いてきた。

 

「ふふ、魔法使いさん、好き。大好き。あなたに会えてよかった」

 

 耳元に甘い言葉、鼻腔に甘い髪の匂いが漂ってくる。さらにキスまでせがまれて引く気も無さそうなので、軽い口付けを返す。

 

「ちゅるっ、んっ……んん」

 

 アリスの唇は何度キスしても柔らかく心地が良い……思わずいつまでもこの甘くて気持ち良い感覚に浸っていたくなる。

 それが裏に出てしまった。僕は部屋の魔法が切れたことに気づかず、部屋に侵入者を許してしまった。

 

「2人ともー、もういいかな。て……おー」

 

 僕とアリスの様子を見て、感嘆の声を上げるユッカ。当然僕達は闖入者に見られたくないところを見られてしまい固まってしまう。

 

「あ、どうぞどうぞー私には気にせず続けていいよ。あー、紅茶じゃなくて今日はブラックコーヒーにしようかな、ビターチョコ系のお菓子ってあったかな」

 

 いや、そこで考え込むなよ。

 

「んー……よし、苦いお菓子をエイミーに頼もうっと。なんだか分からないけど今はそういう気分だ」

 

 そう言ってユッカは何事も無かったように立ち去る。ようやくアリスも動き出して、羞恥心に悶えるあまり床をごろごろと転げ回り始める。……なんというか、僕は羞恥心とかそういうの以前に先に疲れが出てきた。いずれ先のことになるだろう、僕とアリスの関係をいじってくるみんなの事を想像したら苦笑いしか出てこなかった。

 

「あああああ恥ずかしい!! キスしてたの見られた!? 例えユッカちゃんでも絶対後で色々聞かれる…………はっ、というか絶対にみんなに言ってるよね!? みんなに顔合わせたくないけど、ティータイムには出ないといけないし……ああもうどうしよう」

 

 あれ。この光景さっきも見たような?

 

 なおこの後のティータイムでは、アリスがお茶とお菓子を一瞬で平らげてすぐに立ち去ったそうな。

 

 ちなみにアリスの気持ちを確信づいたようなみんなのあの行動。あれはステイシーが何となく未来のことを覗いていたら、その時既に僕とアリスの良好な関係を視てしまったらしい。なるほど、それがみんなに知れ渡ればあのような行動に出れるわけだ。

 

 うん、とりあえずステイシーにはこれ以上僕達の未来を視ないように、釘(魔法)を刺しておいた。




今更になりますがエタクロ水着ガチャは25連で4体引けました(ここの所引きがやばい)
もちろん水着アリスも持ってますぜぐへへ……

地の分に関するアンケートです。どちらかと言うと、結果に準ずるわけではなく私が皆さんのご意見を伺うためのアンケートですので、それでもよろしければお答えください。

  • 一人称視点(魔法使い視点)
  • 二人称視点(黒猫のウィズ特有の君視点)
  • 作者に任せる
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