ボクは生まれた時から一人だった。正確には周りに人は居たんだ。
だけど、産みの親に捨てられて孤児院で育ったボクには本当の家族と呼べる人は居なかった。だけど、親に捨てられたと気付いた時には寂しいという感情は湧き上がってこなかった。最初は戸惑ったものの人間、三日も経てばそれが日常となるらしい。気にしなくなった。
孤児院で関わった人物といえば孤児院のマルクス・キース院長ぐらい
少年時代にボクを支えてくれた人だ。最低限の語学や勉学などは彼に教えてもらったものだ。学校とは違い、決められた時間に決められたものをするのではなく、自分の人生という無限にもあるかの様に錯覚を起こしてしまいがちな時間。自由な時間が与えられた。
ボクは孤児院の中にある膨大な資料や書物などを読み漁った。
マルクスは人のプライベートに干渉する様なことはしないタイプの人間だった。だから、ボクが夜中にランプを点けて本を読んでいたとしても文句は言ってこなかった。そして次の日、ボクが書庫で本を読もうと手を伸ばしたら予期せぬ物が転がり込んできた。
それは黒魔術や白魔術、呪術、陰陽術などなど数え切れない程の物。
何故こんな物が、と頭の中で疑問が湧いてきた。可能性としては
書庫にあるものはマルクスの物、だとすれば彼の趣味か、はたまた彼の仕事、仕事だとすれば妖怪や幽霊、魔物退治かもしれないと妄想を膨らませていた。幽霊など存在しないらしいがいる証明もいないという証明も出来てはいない。妄想のひとときを愉しんだ後、そっと空いてる戸棚に置いておいた。欲しいのはこの本ではなかったから。
そして、あの時から二年が経ち、十三歳になった時の頃
マルクスが話があると院長室にボクを呼び出した。
内容は以下の通り
・マルクスは法王庁に務めていた
・そこでは【人外】いわゆる妖怪や魔族などと言った人間ではない生物を退治をしている仕事に就いていた。
・マルクスがそこを離れたとのはかつての仕事で癒えない傷を負い、自分の後釜、後継者を選ぶ為に孤児院を始めた。
・後継者としてボクになれと言ってきた。
そしてボクは引き受けた。断る理由は無かったし単純に興味があったから。どれも似たり寄ったりの色違い人間よりは姿形それぞれ違う人外に興味を惹かれるなという方が無理がある。そしてボクは
バチカン異端審問機関に配属された。この時2013年、十三歳である
あれから三年後、化け物狩りをする為に訓練を積んだ。同期に
アルテミスという日本人?正式な名前は知らないが、まぁ、アジア系の女性が居た。彼女はいつも一番だった。俺は彼女のひとつ後ろに居るという形だ。不運だったのは彼女と一緒にバチカン異端審問機関に配属された事だ。なんらかの形で裏切り者と認定されたら衝突するかもしれない、と いつも妄想していた。
いやはや、今まで歩んできた人生を復習し終わってから現実へと向き直る。
俺は仕事を終え、帰路に就いたはずだ。なのに目の前には暖かいココアが入ったマグカップなどではなく、十代後半であろう可愛らしい女の子。その女の子の近くにいるスタイル抜群な美人なメイドさんが視界に入る。本来、此処は何処なのかを訊くべきだろうが、もう少し楽しみたいので無視する。
メイドということは女の子は貴族か何か、当主か そのお嬢様か
上を見れば豪華なシャンデリアに趣味の良い内装、窓は一つもない所見ると地下か、はたまた屋敷の中央部に位置する部屋か、単に後ろ側に窓があるのか。
自分の身体は首以外動かせず拘束されているらしい。長方形の箱?か何かに押し込まれているらしい。
しかも、お気に入りの服までご丁寧に脱がされている。つまり、全裸だ。
このままでは、どうしようもないので声を掛けることにした。
「...ところで、貴女方は?」
「あら、意外ですわね。中々楽しめそうな獲物を見付けてきましたね、エミリア」
「ありがたきお言葉、感謝します。」
面白い物を見るかのよう視線をこちらに向けながら少女は言った。少女の言葉に【獲物】と【見付けてきた】という言葉から察するに一人の人間として扱うつもりはない、つまり玩具や実験体として此処にいる。そして恐らくそこのメイドに俺は連れ去られたということ。
(.....だとしたら、少々面倒だ。いくら仕事帰りで疲れていたとしても俺に気づかれずに連れ去ることが出来るとはそこのメイドは随分な手練れだということが窺える。一人ならまだしも問題はこの屋敷に何人、敵が居るのか、だ。これ以上は気が滅入るから考えるのは止めておこう。)
「....紹介が遅れたようですね。私は誇り高きノイエンドルフ家の当主、マルガレーテ。
貴方の運命を手折る者よ。」
「私はマルガレーテ様に仕える使用人、エミリアと申します。以後お見知りおきを」
(なんてこった、運命を手折るとか、どこのおぜリア様だよ。それにしても、ノイエンドルフ家か、聞いたことないな。)
「マルガレーテにエミリアか。良い名前ですね。それに誇り高きノイエンドルフ家と言いましたが、失礼ながら俺はそんな家名聞いたことがないのでね。