DARKNESS FUR MOFUMOFU !!!! 〜僕はただモフモフしたいだけ〜 作:アンダーグラウンド
手加減してるつもりでも、体育ではどうしても目立ってしまう。猫宇宙人の渾名と黄色い声のギャップが、いよいよ激しくなる。
「ぜってー抜け駆けさせねー」
「猫宇宙人のくせに生意気だぞ」
「するつもりもないってば」
出っ歯の輝羅とぽっちゃりの吉見、良くありがちな凸凹コンビ。そこに180cm超の、ガタイのいい帝が並ぶ。
「それからお前もだ、帝」
吉見は帝に、脂ぎった太ましい指を指す。
「しょーだぜ、中学から一緒なのに、お前だけバレンタインのチョコ貰うんだもん」
輝羅は細い指で、眼鏡をクイっと上げる。
「「あ・り・え・ねー」」
中々息の合ったコンビだ。思わず拍手したくなる。
4人で立ち上げた部活はゲーム部。正直、面白味も高尚さもない。過去という世界に、隔絶されたようなセンスだ。
三人でゲームをプレイして、僕がそれを見て活動報告を書く。長々と文章を書くのは日常の一部だったので、そこに面白味を感じたのだ。つまらなくても、最悪、眠りながらでも書ける。
凸凹コンビは仲良く、先生の元へと鍵を取りに行く。後には帝と僕だけが残った。
「そういえば帝は、どうしてあいつらと一緒に居るんだ?」
「背伸びしないから」
「なるほど」
いそいそと凸凹コンビが帰って来て、バーチャルの鍵を開ける。
中はがらんどうで、何も無し。つい先日、物置だったのを、僕らのために引っ張り出したのだ。
「さてと、テーブルと椅子を運んで来よう」
そう言って、帝は先に立って歩く。
誰も居ない体育館は不気味なほど静かだった。
「電子世界でも、音も空気も、しっかりあるんだよな」
「今更、何言ってるんだ?」
電子世界に生まれるデータは、現実世界をコピーしたものだった。多少電子世界が壊れたり、異物が入っても、時間が立てば元に戻る。
アンテナを持つ僕と星宮さん、どんな世界にもアクセス出来るアルは、例外中の例外だった。
「いや、何でもない」
アルはバスケボールを転がしては追いかけていた。もうそのまんま、大きなネコだ。
一年間の孤独は、早々に吹っ切れそうにない。アルと離れることは、また別に、心臓が潰れるほど苦しい。
僕は剣の切っ先を、トーントーンと軽く、床に打ち付ける。それなりの重みがあって、まだまだ剣に振り回されている。中学では、闇のパートナーを背負っていたので、友達は付き合い程度だった。卒業後は疎遠になり、病室の窓から吹く風が冷たかった。凸凹コンビが楽しそうに、お互いをど突き合ってるのが、羨ましかった。帝の背伸びしない生き方が羨ましかった。星宮さんの強さが羨ましかった。目に付く色んな人が羨ましかった。そしてその親切を離すことが出来ず、僕はいつも振り回されている。本当の自分は手首からゴッソリ抜け落ちて、存在していないんじゃないだろうか。
アルが心配そうにこちらを見て来る。アルは繋ぐ手がなくても、一緒に居てくれる。そうだ、僕の世界は、アルを中心に回り始めたんだ。
「アル、来て」
アルは何も言わず、ネコ特有の優雅な足取りで、こちらに向かって来る。
アルの大きな首に手をやり、無言でキスをする。アルは僕の舌を受け入れて、互いの唾液が混ざり合う。
この世界に、水音だけが響き渡る。