DARKNESS FUR MOFUMOFU !!!! 〜僕はただモフモフしたいだけ〜 作:アンダーグラウンド
星宮さ──。
神織銀嶺は、敵の触手に貫かれる。そのまま受け身を取れずに、地面に投げ出される。
「神織くん!!」
うまく現実の人間をコピーしきれていないそれは、火傷したように全身ドロドロだった。
銀嶺はスニーカーを滑らせながら立ち上がる。すでに大量の血が流れ、剣先が定まらない。
「イイ加減、諦メルデシ」
ここまで僅か1分足らずの出来事だった。
翼を生やした黒い獅子、アルカディルが敵に飛び掛る。その歯牙を避けて、敵はアルの脇腹を貫く。
『コード09──シューティング・ファイヤー』
手に持ったステッキに、星宮ヒカリが音声入力する。
星宮の眼前に、ポップなキャラクターが飛び出し、敵に突っ込んで行く。
「コレ、ダケデシ、カ」
敵の片腕を吹っ飛ばすものの、その片腕は直ぐに復活する。
敵は瞬間的に移動し、星宮の首を掴む。星宮は声を上げることも出来ず、ひたすら足を動かす。だんだんと星宮の尾が下がり、足に液体が伝う。
銀嶺とアルが同時に飛び出し、敵の胸に剣を突き刺す。アルは敵の手に噛み付き、星宮を解放する。
「でも……攻撃……力が、足りない……」
星宮は自身の喉に手をやり、咳をする。
敵は再び立ち上がり、回復しながら、星宮の元へと歩く。
すると遠くの方で遠吠えがし、二つの陰が敵に襲い掛かる。
敵の両腕が宙を舞い、残った身体が頭上から叩き潰される。
「待たせたな」
幾つもの刃が飛び出す大剣を担ぎ、五十嵐帝が姿を現す。
その側に碧と金の大狼が二匹、周囲の匂いを嗅いでいる。
天を貫く程の、巨大なバグが大移動しているらしい。交渉は決裂し、あと一ヶ月後にはこの街に来るとのことだ。
「焦る必要はないニャ。私ら無意識の住人が方を付けるニャ。ギンはここに来る、雑魚を散らしてくれればいいニャ」
先のクルクルと回った三角帽子、ローブを羽織った巨大なネコ。若干見上げる形で、そのネコの話を聞く。
「いい機会ニャ、剣の達人にビシバシ鍛えて貰うニャ」
父さんの無意識は、手のひらを舐めて、顔を洗う。それから顔を上げて、「もう行くニャ」と言って、去って行く。
「君かな、剣を心に立てて、間もない戦士というのは」
もうあちこち裂けたボロボロの着物を着て、三度笠を被っている。腰に下げたのは刀ではなく剣。
「ふはは。コレに目線が行かない奴を、私は見たことがないよ」
腰に下げた剣をポンポンと叩き、三度笠を上げる。そこには如何にもな、年老いた狐の顔があった。しかしその目には鋭さがあり、半歩でも動こうとする者を、いなす威圧感があった。
三度笠が投げられ、横に伸ばした右腕に、薄水色の鳥が停まる。その鳥が羽ばたくと、クチバシから尾羽にかけて黄色く変わり、瞬く間に狐の姿に成る。
「まずは案山子からだな」
さっきの狐はもう『へのへのもへじ』に変わっていた。
「とと、すまん、すまん」照れるその人は、「怪我が完治していないのだったな」と言い、自己紹介をする。名前は「三朗」──さすらう者には必要ないのだがな──と言った。
それでも三朗さんにみっちり構えを取らされ、「腰が浮いておる」と、尻を叩かれる。
帰る頃には身体が固まってしまい、アルの背に乗り、マンション前で降りる。
修行の間の目覚ましは、アルの奉仕から始まることになる──。