DARKNESS FUR MOFUMOFU !!!! 〜僕はただモフモフしたいだけ〜 作:アンダーグラウンド
「そうねぇ、この巨大なバグは、大きなコロニーなのよ」
白と黒の反転したブラックタイガーが、ゆっくりと回廊を歩いて来る。
「な、なんで姉さんが……」
回廊に繋がる経路から、義姉が姿を現す。
「バーチャルゲームを初めて世に送り出せば、莫大なお金が手に入る」
「私のお兄さんが一度失敗してね、大きな借金を作ったのよ」
「もう一度バーチャルゲームを作って売る、そのためにも開発を阻止しなければ」
「あなたなら分かってくれるわよねえ、こんなに慕ってくれているんですもの」
後ろにいた、星宮さんが前に出る。
「も、もしかして、星宮エイジという人ですか?」
「あら、あなたは──そうそう、ヒカリちゃん、だったかしらね。随分と大きくなったのね」
どうせ大して保たないだろうから、アンテナを張れる人物に注目していなかったと──
「随分と喋り過ぎちゃうわね。貴方達二人には生きて欲しいから」
「オレは関係ねーな、先に進ませて貰うぜ」
帝はズンズンと前に歩き、義姉とブラックタイガーを抜ける。
「貴方はまた別に、知って欲しいことがあるのだけど──」
「なんだよ、オレは背伸びした生き方はしねー。このコロニーをぶっ潰すだけだ」
「私のお母さんの子供が、貴方なのよ。つまり私の弟。私たち家族は本当に貧しくてね、この好景気にもあまりお金がなかった。理由は父親のギャンブル依存症ね。私は兄の家に住まわせて貰っていたけど──」
「何が言いてえ」
「無理心中したのよ。父が、母も妹も殺して、自分自身も──」
帝の目が見開かれる──。
「第一発見者はあなた。小学校から帰って来たら──ね、その二匹の雌オオカミは母と妹の代わり──」
「だったらなんで、俺の親父のバーチャルゲーム開発を邪魔する」
「私には兄がすべてだからよ」
「こいつは俺が叩き斬る!!」帝は我を忘れて飛び出す。義姉はレイピアを出して応戦する。二匹のオオカミはブラックタイガーともつれ合う。
星宮さんは茫然自失で、僕の腕にすがる。一方に肩を持てば、一方が苦しみを味わい続ける。
「僕はゲームや漫画の主人公じゃない。誰かを救えるなんて、一度も思ったことがない」
星宮さんを振り解き、ライオン獣人の姿になる。身体を光に変えて、静止した義姉の元で足を止める。
「っは──銀嶺っ」
「うらぁっ!!」
義姉の顔に拳が叩き込まれ、ぐしゃっ、と鈍い音がする。
「おねーちゃん!!」
ブラックタイガーは人の姿に戻り、気を失った義姉に駆け寄る。
「あり、がとう、ございました……」
義姉を背に抱えて、再びブラックタイガーに戻り、コロニーの出口へと走り去る。
星宮さんはゆっくりと立ち上がり、「行こう」と僕の手を握る。──ますます惚れたな、アルにどう言い訳しよう──。帝も「柄にもないことしちまったな」──と鼻をこすり、照れ笑いを浮かべる。二匹のオオカミはスンスンと帝に寄る。「中々かっこ良かったぞ、レディ」と、レザーのパンツを穿いて仁王立ちのゲイドラゴンは、僕の方を見る。
アルの喉が鳴る音がする。僕はアルの頭に手をやる。
さあ、もう行こう──。