DARKNESS FUR MOFUMOFU !!!! 〜僕はただモフモフしたいだけ〜 作:アンダーグラウンド
僕と帝は地方の温泉に入りに来た。電車に揺られ、途中で弁当を食べた。旅館に到着し、二時間貸し切りの大浴場に入り(書き入れ時に男二人だけ──帝が言うには、社員旅行で頻繁に来ているから、お得意様で特別……らしい)、夜になった。
「アル、多分もういいよ」
「うひょー」
電子体から実体になるアル。タッパーに入れておいた、料理の残りを渡す。
アルの毛が抜けるとややこしいので、人の姿だ。
「アルって、箸の持ち方知ってるんだね」
「んー、ギンのやり方を覚えてるだけだよ。ガツガツ……精通もギンのオナニーの後だったし」
「ギンは精通、オナニーだったのか」
帝は興味深々で聞いてくる。
「どっちも食後に見境いなさ過ぎ。ってか、普通にセクハラだよ、コレ」
男臭い話にウンザリしつつも、妙に安堵がこみ上げてくる。
アルはどんなオナニーしてんだ── 舌で舐めたり、脚の腹で擦ったり── へー──
さすがに聞いていられなくなってきたので、ロビーをうろつくことにする。
ロビーにはいくつか掛け軸が立ててあって、古い茶碗やら日本画やらが置いてある。アルの世界では、どんな書家が有名なんだろ。僕の父は古いものが好きで、日本家屋を買って、そこにいろんな創作家の作品を並べてある。そんな父の元で、僕は物心つく前から筆を持っていた。事故をきっかけに離れていた書は、アルが呼び戻してくれた。──ああ、ひたすら仮名だけ書いていた、子供の頃の記憶が蘇る。
「なにやらずっと見つめていますけど」
この旅館の女将さんだ。
「この掛け軸は、私の父が書いたんですよ。毎日飽きもせず、ひたすら書いていましてね。どうです、雪解けのような流れる線でしょう」
無名の書家。背景は女将さんが語るだけ。「どうぞゆっくりご覧になってください」早々に去ってしまう女将さん。後には雪に残った、足跡のような輪郭だけが浮かぶ。取り留めもない輪郭を頭の中でなぞる。そうすると、自分の体温で輪郭は溶けていってしまった。確かにそこに居たはずの人は、もう居ないんだな。
「あれ、銀嶺じゃん、偶然偶然」
「えーっと、誰だっけ」
「よく言われるんだよ、影が濃すぎて覚えていないって」
夕映暮葉──わずかな記憶を辿る。たしかあの時は、こんなに殺気立ってなかった。
「いーなぁー幸せそうで。おまえに憧れて、おまえ並ぶように、いや、おまえを超えるように努力したんだぜ」
夕映はさっと袖をめくると、刃物で直接刻まれた痕が見える。直感で分かる、アルと同じ影の魔法。
「日進月歩のおまえに置いていかれる恐怖。こうでもしないと拭えないんだ」
「影の魔法──」
「次に会った時は銀嶺が死んじゃってるかなー」
帝に呼ばれて気がつくと、後には影も形もなかった。
帝はものすごいニヤニヤしながら、大浴場に入りに行くと言って出て行った。
「アル、帝になに言ったのさ」
「別に、ただ恋人同士だって自慢しただけ」
さらりと流して、浴衣を脱がせてくる。全裸のアルに抱き寄せられて、キスを受ける。人の姿のアルもいいけど── 「後で電子世界でやろう」 キスもそこそこに、耳元で囁かれる。乳首の周りを指でなぞられて、僕は嬌声を上げる。胸から腹を手のひらでなぞってきて、腹全体を撫で回され、上下してくる。アルの胸が密着して、熱が伝わってくる。腰、尻、太ももをさっと撫でられ、身体が離れる。無言で見つめ合い、再びのキス。互いに舌を絡ませたり、押したり引いたり。そうしていると、アルの勃起したチンポの先が、自分のチンポの先に当たる。お互いに指で完全に剥いて擦り合う。「アル、痛い」「我慢しろ、もう直ぐ濡れる」やがてぬるぬるとした感触が強くなる。
「あ、アル──」
僕はアルに想いを吐き出す。アルはそれを受け取って、強く擦り付けてくる。
「アルの、熱い」
「ギンのもな」
ティッシュで処理して、ポリ袋に入れる。アルが自身のモノをティッシュで処理している光景に、興奮する。
「精液まみれのアル、かわいい」
「それを見てるギン、すっげーかわいい」
僕の手を取って、頬にキスしてくる。
「さぁ、入ろう」アルが促す。
アルに湯をかけられて、汗を流される。股間の精液も流され、萎えたチンポをめくられると、再び起き上がってくる。「やだ、アル」亀頭に湯をかけられながら、指先でイジられる。「しっかり洗わないとな」桶に張った湯で、袋ごと洗われる。湯の熱さとアルに揉まれて、桶の中に射精してしまう。「いっぱい出たな」桶の中の湯をかき混ぜられて、羞恥心がこみ上げてくる。タンパク質の塊である精液が凝固し、湯の中に白く浮かんでいる。
「俺のも洗わなくちゃな」
アルも同じように袋ごと桶に漬ける。さっき僕が出した精液が浮かんでいる。手を引っ張られ、自然にアルのそれに指が動く。
「ふぅー」
片手でしばらくゆらゆらと桶を回して、感慨にふける。「一緒だな」「うん」性的な感情を超えて、愛情を感じる。
アルの身体は僕が流し、露天風呂に入る。
「あーーーーーあったけーーーー」
「あったかい、ね」
それからお互い無言で風呂に浸かる。言葉を超えたなにかが、湯の中に溶け出している。
「ギン」
「なぁに?」
「愛してる」
「うん」
気恥ずかしくて、素直に返答出来ない。僕は湯を見つめる。そういえば、アルから言ってきたのは初めてだ。
アルが僕に肩を寄せてくる。僕も肩を寄せ返す。
「僕も……愛してる」
「おっ、やっと言ったな」
うるさい、と言う気力は出なかった。温泉が熱くて、体力はそこに持って行かれていた。
アルの大きな二の腕を肩に感じる。手を伸ばすと、アルの手が触れる。アルが握り返してきて、互いにしばらくそうしていた。