キリト・イン・ビーストテイマー R-18.ver 作:クジュラ・レイ
ようやくキリシノに戻った。
07.5:最初の場所でもう一度
「疲れたぁぁ……」
キリトが最初に発した声はそれだった。なんと情けないとも言われそうなものだったが、そう言わずにはいられなかった。
何気なくログインした朝から、今現在の時刻である夜十時三十分まで、ありとあらゆる事が起きて起きて、起きまくった。それは全てプレミアに関する事である。
自分達が仲良く接してきたNPCであるプレミアの持っていたクエストは、実はアイングラウンドからアインクラッドを作り出すためのもので、自分達はそれを意図せずに進めてしまっていた。このプレミアのクエストが完遂されたその時には、アイングラウンドは滅びてアインクラッドが誕生する厄災が起こる。
そのプレミアには双子の姉妹が居て、彼女の姉妹はあのジェネシスと行動を共にしていた。おまけにジェネシスが吹き込んだのか、アインクラッドを誕生させる厄災を望んでいると来ていた。
プレミアはアインクラッドを生み出す
午前中から昼間、夕方までびっしりと新情報、新事実の判明で埋め尽くされたものだから、流石のキリトも頭の中は既に
しかし忘れたり意識から零れさせたらいけない情報ばかりだったので、キリトは過熱状態の頭を動かしながらメモに今日の出来事、情報の全てを書き出ししてまとめあげた。
その作業はこの家に帰って来てからずっとやっていたが、開始した時刻が夜七時過ぎだったせいで、食事と風呂の為に一時ログアウトする必要が出た。結果書き出しは一時中断する事となり、再開できたのは食事、風呂、寝る準備を済ませた後の夜十時過ぎ。
二度目のログインから三十分経過した今で、ようやく要点のまとめ、重要情報の書き出しを終了する事が出来た。書き出すだけならばまだしも、内容は皆と共有する必要があるので、皆が読んでも理解できるように工夫もした。
そのおかげでただでさえ疲れている頭が更に疲れてしまい、キリトは今、だらしなく椅子の背もたれに寄り掛かっているしか出来なかった。
「……はぁ」
キリトは周囲を見回して溜息を吐いた。周りには誰もいない。
普段はリラン、ユイ、ストレア、そしてプレミアの四人が過ごしているけれども、今はその全員が家を空けている。キリトがログインしてきた時には既にこの状態であり、家の中は森閑としていた。
おかげでメモの書き出しに集中する事が出来た……が、どうしてこうなっているのかは、キリトは掴めていなかった。
確かプレミアは疲れ果て、二階のベッドで眠っていた。それは自分が一時ログアウトする時まで変わらなかったが、戻ってきた時にはいなくなっていた。彼女を看ていたリランも、ユイも、ストレアもだ。
リラン達ならばまだしも、疲労のあまり眠っていたプレミアが居なくなっているというのは、今更に気がかりになってきた。書き出しに集中しすぎてしまって、彼女達を思考の外へ追いやってしまったのはよくなかっただろう。
「どれどれ……」
キリトは背もたれに寄り掛かった姿勢のままウインドウを開き、メッセージウインドウを呼び出そうとしたが、すぐにその手を止める事となった。玄関のドアが開き、外から人が入ってきたのだ。すっかり夜の闇に包まれた外から来たのは、シノンだった。
「シノン」
キリトの呼びかけに応じ、彼女は玄関を閉めて歩み寄ってきた。そういえばシノンもそうだ。一時ログアウトする時には一緒に居たが、再度ログインした時にはいなくなっていた。
フレンドリストでログインしている事は確認できていたが、場所はここ《ジュエルピーク湖沼群最北部》と書かれているだけで、どこにいるのかわからなくなっていた。ジェネシスとの遭遇、プレミアの双子の姉妹との遭遇、そして厄災が起こるかもしれないという危機。それだけの事があった後なので心配だったが、杞憂で終わってくれた。
「どこか行ってきてたのか」
「えぇ、ちょっとね。あなたこそ外に出なかったの」
「あぁ、色々とまとめ上げをしてたら、外に出られなくってさ。ずっとここに居たんだ」
シノンはキリトの隣に座った。
彼女の服装は部屋着ではなく、戦闘用の軽装だった。腹部と脚を大きく露出し、胸元をハーネスのようなもので押さえている。それで長く青いマフラーを巻いているのが特徴的だ。いずれにしても身軽さを追求したデザインであり、それはALOでの彼女の衣装の傾向とそんなに変わりなかった。
そんな事を考えるキリトが着ているのも部屋着ではなく、戦闘用の黒いロングコートだ。家にいる時くらいは戦闘服を脱いで、違う服を着るようにしているが、今回はそれさえも忘れてしまっていた。
「ところでシノンは、俺より先にログインしてたのか」
「えぇ。夕飯を食べてお風呂入った後すぐに。あなたもそうじゃない?」
「そうだよ。けど、君の方が早かったみたいだな」
シノンならば、プレミア達がどこに行ったのかわかるかもしれない。思い付いたキリトは問うた。
「それなら、リラン達がどこに行ったかわからないか。いつもこの家にいるのに、居なくてさ」
シノンはきょとんとした。その反応にキリトもきょとんとし返してしまった。
「あなた、メッセージ見てないの? リランから連絡が来てるはずなんだけど」
「え?」
キリトは咄嗟にウインドウを展開、メッセージウインドウを見る。新着メッセージが着ていた。差出人はシノンの言うとおりリランで、
『今夜は家を空けて、近くの村の宿屋で寝る。色々あるだろうから、玄関と部屋の二重で鍵を掛けろ。朝の八時くらいになったら戻るから、その前に家を空けておけ』
と書いてあった。内容を把握したキリトは受信時刻を確認して「あ」と言った。このメッセージは自分がログインしてきてすぐに届いたものだ。
メモに情報を書き出す事に夢中になりすぎて、気付かないでいてしまったらしい。そんな見落としを見つけたキリトの、その様子を隣で見ていたシノンが溜息を吐く。
「ね? あったでしょ」
「……うん。全然気付かなかった」
しかし、そこでキリトは気になる事を複数見つけ出した。まず、何故リラン達はこの家から出ていて、更に何故シノンはリランがメッセージを送っている事を知っているのだろうか。それに、『玄関と部屋の二重で鍵を掛けろ』というのも引っかかる。まるで「この家に誰も入らないようにしろ」と言わんばかりだ。
そこまで考えを進めたところで、キリトは静かにはっとした。彼女達の行動の理由を見つけ出せた気がする。
その要因は――今、多分自分の隣にいる。そちらへ向き直ったキリトは、またしても問いかけた。
「シノン、もしかして君が頼んだ? リラン達が家を空けてくれてるのって」
シノンは「ふふん」と鼻を鳴らして前を見た。彼女特有の、肯定の意思表示である。
「ねぇ、キリト。ここってどこだったっけ?」
「え? ここ?」
「うん」
問われたキリトは咄嗟に答えを見つけ出そうとする。
ここはどこか? ここは《SA:O》の中、アイングラウンドの一角である《ジュエルピーク湖沼群最北部》の、一軒のログハウスの一階部分だ。その場所はかつてSAO、アインクラッドの第二十二層の元になったところであり、この家はかつて自分達が暮らした家が再現されたものだ。
だからこそ、この世界でもこの家を購入し、住居にして今に至っている。そのありのままを、キリトは話した。
「ここは俺達の家だ。SAOで一緒に暮してた家と同じ場所だよ」
「……それだけ?」
「え? えっとだな。初めて俺が買った家」
「それだけ?」
「俺とシノンとリランとユイで一緒に暮らして、一緒に飯を食って、一緒に寝て……」
「それだけかしら?」
「んぇぇ? ……ユイとリランと一緒に遊んで、川の字になって一緒に休んで……」
この家での思い出の数々を頭の中で再生していくが、どれもシノンが求めているものではない気がする。どれだ、どれがシノンの求める答えだ――思考を進めていくが、どれも貴重で楽しい思い出で、きらきらしている。それしかわからない。
やがてキリトは下を向いた。これ以上の事を求められても、答えようがない。
少しすまなく思いながら、キリトはシノンにまた問いかける。
「んー駄目だ。シノン、ここで何があったっけ。教えてくれないか」
キリトに問われるや否や、シノンは辺りをきょろきょろと見回した。誰かが見ていないかと少し警戒しているようにも見えた。
思わずキリトが首を傾げると――シノンは両手をキリトの後頭部に廻し、唇を重ねてきた。これまで彼女と何度もしてきた、所謂恋人らしいキスだ。互いを恋人同士、愛し合う者同士と認め合った男女がする、愛の喜びに満ちたキス。
けれど、それが予想しないところで来たものだから、キリトは少し驚いてしまっていた。ハラスメント警告のウインドウは出現してこない。このゲームがまだクローズドベータテストの段階であるからなのか。
或いは本当に恋人同士である事を示すステータスが密かに存在していて、それが一定値以上の男女同士のキスはハラスメントに当たらないという仕様になったのか。いずれにしてもシステムが水を差して来なかったのは、素直にありがたく感じた。
やがてシノンが唇を離すと、その瞳と自身の瞳が交差した。シノンの黒い瞳の中に顔がやや赤くなった自分が、そして自分の黒い瞳の中に同じく顔をやや赤くしたシノンが映し出される。
「……シノン」
「ここが最初の場所よ。ここが、私達が初めて繋がり合った場所……でしょ」
少し恥ずかしそうに言ったシノンに、キリトは目を丸くした。
これまで自分とシノン/詩乃がやってきた、キス以上の恋人らしい行為。本当に心の底から愛し合う男女だけがする事を許される、セックスと言われる行為。
その詩乃とセックスを初めてやったのは、この家の二階の、ベッドの上だった。あれからSAOの中、ALO、《SA:O》でもそれなりの回数やったものだが、言われてみればその一回目はこの家でやったのだった。
そしてそれからだ、キリト/桐ヶ谷和人が本気でシノン/朝田詩乃を守り、共に生きて行こうと心に誓ったのは。
「……そう、だな。ここで君と一緒に暮らして、君と一緒に過ごして……初めて君と繋がったんだ」
「思い出してくれた?」
「あぁ、思い出したよ。ここで初めて君の全てを見て……君を知った」
シノン/詩乃という一人の少女の全て。どういう見た目をしていて、どういう身体つきをしているか。その肌が持つ柔らかさ、温かさ、感触、心地よさ。
それまで触った事も感じた事もなかった女性の身体の事、詩乃という大切な人がどれだけ愛すべき人なのかというのを胸の内へ刻み込んだ一夜。
その時の事はSAO、ALO、《SA:O》と世界を渡り歩いてきた今もはっきりと思い出せる。それだけ、あの夜にこの家の二階で経験した事は、キリト/和人の中に深く深く刻まれていた。
「キリト、前に私言ったわよね。もう一度この家に行きたい、帰りたいって」
「うん、憶えてる。俺も同じ事を思ってた。アイングラウンドがアインクラッドの元になったところなら、きっとあの家もあるはずだって思って、見つかるまでアイングラウンド中を探し回るつもりでいたよ。けれど、こんなに早く見つけられて」
「本当に嬉しかったわ。ここは私達の思い出の場所で、私達家族の場所で……あなたの傍っていう、本当に安心できる場所を見つけられた家だったから」
途中でキリトは軽く首を傾げた。シノンにとって自分の傍が一番安心できる場所だという話を、彼女から既にされているが、この家がそれを見つけられた場所とはどういう事か。これはシノン/詩乃の記憶を探っても見つけられなかった。
「見つけられた家?」
「えぇ。実はねキリト、あなたがあの雨の中で私を受け入れてくれた後……本当にあなたの傍が安心できるか、疑ってた」
「え、あの時からじゃなかったのか?」
シノンは苦笑いする。しかし、すぐに穏やかな微笑みに顔が変わった。
「でもね、それは最初のうちだけ。ほら、二人で一緒に攻略を休んだけど、私のスキルのためにダンジョンに行った時があったじゃない?」
その日の事も勿論思い出せる。二人でダンジョンへ行ったが、罠に引っかかってシノン一人がボスモンスターの前に放り出されて――キリトは迷わずシノンの許へ駆けつけたのだ。
「あの時は本当に肝が冷えたよ。シノンが殺されるって本気で思ってたから……だからすごく必死になって。それで走ったら間に合って……君を助け出せた」
「あの時、本当に嬉しかったの。キリトが迷わずに助けに来てくれたから。キリトが駆け付けてきてくれて、本当に守ってくれたから。その後に私……あなたが大好きだって事に気付いた」
「俺もそうだよ。君が大好きだって、君が愛おしいって思った」
だからこそ、あの時キリトはシノンに求婚した。それをシノンは嫌な顔一つせずに受け入れてくれて――正式に恋人、システム上であるものの夫婦関係になったのだ。キリトがその時を思い出したころ、シノンの頬に赤が差した。
「その後、家に帰って……あなたと繋がった。その時なの、あなたの事が本当に大好きで、あなたの傍が一番落ち着けて、安心できる場所って思えるようになったのは」
キリトは思わず納得した。シノンにとって本当の安らぎの場所を見つけ出せたのは、この家で、二階で性行為をしたその時。この家はシノンにとって、そんな意味のある場所だったのだ。
そんな大切な事に気付けなかったのが悔しかったが、キリトはそれを顔には出さなかった。シノンが言葉を続けてきたからだ。
「だからね私、ずっと願ってたの。またここを見つけ出して、またあなたと、ユイとリランと一緒に暮らせるようになって……またあなたと繋がりたいって」
シノンにとって沢山の思い出と意味がある場所がこの家だ。そこに戻ってこれたのだから、かつての時のように暮らしたいだろうし、かつてのように楽しみたいだろうし――かつての時のように繋がりたくなって当然だろう。
「……叶えられたよな。この家を見つけて、ユイとリランと一緒にまた暮らせるようになるっていうの」
「けど、最後のはずっとお預けだったわ。あなたと繋がるっていうの」
確かにこの家を見つけて、また家族全員で暮らせるようになるというのは達成したが、それから様々な事が続けて起こりに起こり、中々二人だけの時間を作る事は出来なかった。これでは出来ないを延々と繰り返してしまうだろう――そう思ったからこそ彼女は、今日この家に二人だけの時間を作ってくれたのだ。
キリトとシノン、和人と詩乃――ただ二人だけが居るこの時間を。
「なるほどねぇ。やっぱり君の仕業だったか、この誰もいない静寂は」
悪戯っぽく笑えば、同じように笑ってくれるとキリトは思った。しかし彼女は予想に反し、表情を曇らせた。
「けど……あなた、今日はすごく疲れたでしょ。あっちに行って、こっちに行って、色々な事を知って……それでこんな遅くまで情報を書きまとめてて」
だから、ここまでやっても今日は無理でしょ――シノンの次の言葉がそうであるとキリトは瞬間的に察した。同時に自分の身体を
だが、それは攻略なのであって、シノンとのセックスは含まれない。その事をキリトは行動で示した。抱き締めてきているシノンを抱き締め返し――その唇に自身の唇を重ねてやった。
シノンはびっくりしたような反応をしていたが、キリトが唇を離した頃には、きょとんとしていた。
「姫様、見くびってもらっては困りますぞ。あなたの見てきた剣士は、この程度でへこたれる剣士ではありませぬ」
もう一度悪戯っぽく言い放つと、シノンは「ふふっ」と噴き出すように笑った。
「……この、一番最初の場所でまた……してもらえる?」
「……勿論だよ。またここで、しよう」
出来る限りの優しさを持って、包み込んでやるように言うと、シノンの顔がこれ以上なく穏やかな微笑みに変わった。彼女がシノンから詩乃に戻った瞬間だった。それはキリトが和人に戻った瞬間でもあった。玄関に鍵をかけて、二人で階段を昇って、寝室にも鍵を閉める。
寝室をしっかり二人だけの部屋にすると、倫理コードをオフ。性行為を可能にした和人は詩乃とキスをし、そのままベッドへ向かった。詩乃を仰向けに寝かせ、自分が覆いかぶさる形になる。
目線の先に、詩乃という一人の少女の全てがあった。
かつては常闇に閉ざされていた瞳は、今は気が強くも愛らしく、優しさ――対象は限定的だけれども十分――に満ちたものになっている。顔の部位全てが均一で美しいバランスに整えられていて、何回も重ね合った唇も混ざり気のない桃色だ。よく見ると少しだけ茶色の混ざっている黒い髪の毛はセミロング程度の長さで整えられていて、見れば見る程魅力を感じられた。
そんな詩乃の髪に手を伸ばして後髪を撫でてやると、詩乃はとても心地よさそうにした。すぐさま、お返しと言わんばかりに両手でゆっくりと和人の両頬を包み込んで来た。何度も感じた、詩乃だけが持つ温もりと気持ちよさが掌を伝って頬へ流れ、全身へ渡りゆく。
「和人の手……暖かい……」
「君の手だって、すごく暖かいよ……」
そのまま詩乃の手に導かれるように、和人はもう一度詩乃にキスをする。すると詩乃の唇が割れて、その舌が和人の口の中へ入ってきた。唾液に包まれた詩乃の舌を、自身の舌で迎えるように絡める。
「む、ふ、ぅ、んむ、むう、くむむ」
舌を動かすたびにくちゅくちゅ、むちゅむちゅと粘っこい音が鳴る。響くほどの音量でもない音の出し合いを堪能してから、和人は詩乃の口許から離れた。彼女は「ぷはぁ」と解放されるように息を吐き、とろんとした顔を見せてきた。
詩乃はいつもこんな感じだ。自分からしてくるくせに、終わった後は大体
そんな彼女の身体に、和人は目を向けた。全体的に露出度が高いと言える軽装であり、
この装備はハーネスのような紐を胸元に巻くデザインで、詩乃の乳房が二本のハーネスに平行に挟み込まれている。おかげで上部や下部が露出しているわけでもないのに、胸元が際立って見えた。
「やっぱ詩乃のこの装備、胸に目が行く」
「ちょっ、何言ってるの」
「だって、こんなきつそうな事になってるんだぜ。なんか苦しそうなんだよなぁ」
流石に衣装の事を聞かれるのは予想していなかったのか、焦っている詩乃の胸元へ和人は手をやった。一番敏感なところを避けるようにしつつ掌で包み込んでやると、好ましい柔らかさと暖かさが広がってきた。
大きくなく、寧ろ小さい方に入り――正直慎ましいという表現が合ってしまうくらいの大きさしかない詩乃の乳房を揉み込むと、彼女から声が出てきた。
「ん、んぅ、はぁ、んん……んぁ」
そこで和人は若干の違和感を感じた。いつものように詩乃の乳房が動いてくれない。ハーネスに縛られているせいだろうか。感じ方も少しぎこちないというか、若干苦しそうにも見える。
「詩乃、やっぱり胸元苦しいんじゃないのか」
「そんな事、ない……」
「いや、そんな事ありそう」
和人はついに詩乃の胸元を縛り付けるハーネスの二本を握り、引っ張った。ハーネスは丈夫なゴムで出来ているようで、引けばびんと伸びてくれた。それを詩乃の胸元から外し、腕の方まで持っていった。
和人の動作に詩乃も合わせて、両腕を上の方へ上げてくれた。おかげでするりと詩乃の身体からゴムのハーネスが外れ、そして詩乃の乳房は自由になった。
詩乃の胸元を覆う服は上着というよりインナーであり、すぐ下は裸だった。インナーはハーネスで固定する事が前提になっているらしく、ぶかぶかになっている。だからこそ、捲り上げるのはとても簡単だった。
ハーネスから、インナーから自由になった詩乃の身体が和人の目に映り込む。
「あ……」
とてもきめ細かで美しい色の肌。余計な贅肉や脂肪からは縁が遠いが、痩せすぎているわけではない。絶妙なバランス感覚で出来ている詩乃の身体は、綺麗としか言いようがなかった。その中で存在を主張しているのが乳房だ。
大きさは先程も思った通り、慎ましい方に入る。しかし形が崩れているわけでもなく、とても整った丸形をしていた。その中央では、肌色にほんの少しだけ赤色を混ぜ込んだような、可愛らしい色合いの乳首がぴんと姿を見せている。その乳首の、乳頭の形さえも綺麗に整っていた。
――あの夜、この場所で見つめた詩乃の身体。それが変わりなくこうして目の前に出てきてくれた事が、和人は喜ばしかった。
「詩乃、綺麗だよ」
「……本当に?」
「何回もそう言ってるだろ? 君はすごく綺麗な身体してる」
そう言って詩乃の乳房に手を伸ばし、揉み込み始める。大きさは変わっていない。その柔らかくて暖かく、好ましくて愛おしい感触を、掌いっぱいで和人は感じていった。
「ん、んふ、く、ふぅう、んん……」
揉まれているだけなのに、詩乃は甘い声を出し始めていた。そう言えばSAOで最初にした時は、乳房を揉んだくらいでは感じたり、声を出したりなどしなかったかもしれない。自分との回数を重ねる毎に、声を出して感じるようになっていったような気がする。
あの時から、詩乃は変わったのだ。
「ぅ、んぅう、かず、とぉ……んひゃああッ」
そこで和人は詩乃の急所に両手で触れた。その場所は乳首だった。詩乃はとても乳首が敏感で、少し愛撫されただけで大きな声を上げて、びくびくと反応する。それはSAOで一番最初にした時にわかった事であり、この場所で得た知識だった。
詩乃という愛する人の一番の弱点であり、性感帯であり、思い切り気持ちよくさせられるところ。和人は何も言わずに、詩乃の乳首を指先で撫で、転がした。
「んぁ、ぁう、ふぁあ、んあ、ひう、ひぅうう」
乳頭を指先で軽くこりこりするだけで、詩乃から声と反応が返ってくる。それはそれは大きな反応と声。
彼女は乳首が一番の性感帯と知ってから、セックスの際に和人は優先的に詩乃の乳首を愛撫するようにしていた。その回数を重ねる毎に、詩乃は感じ方が強くなっていき、今は軽い刺激だけで身体を弓なりにさせてしまうくらいになっている。
「詩乃、気持ちいいか」
「いう、んふぅ、ぁあ、き、もち、い」
感じているせいで途切れ途切れの返事だったが、気持ちよくて仕方がない事は確かのようだった。既に唇からは熱っぽい吐息が出ており、和人の顔に何度もかかっている。今、指でこれくらいならば、次は更にすごくできそうだ。
だからこそ和人は、詩乃の乳首を口に含んだ。指先で愛撫された詩乃の乳首は、つんと勃って存在をより主張しており――それはもっと触って、刺激して、愛撫してと頼んできているかのようだったのだ。
「んうああああッ」
乳首に吸い付かれた途端、詩乃はもっと大きな反応を示してきた。やはり、詩乃はこれに一番弱い。SAOで最初に交わった時よりも、もっともっと弱くなっているのだ。
「はぅ、んふぅ、んああ、あ、ああ、ひうぐぅうッ、かずっ、とぉ、そ、こぉぉ……」
その事実と、詩乃の甘ったるい声は和人の胸に膨大な熱を発生させた。たまらず和人は口の中の詩乃の乳頭をあらゆる方法で愛撫する。舌先でちろちろと舐め回し、軽く歯に当ててこりと噛んだり、力を抜いて吸い上げたり、出来る多くの手段で詩乃の乳首を刺激した。
刺激のたびに詩乃は大きく、甘く鳴き、和人が覆いかぶさっているにも関わらず身体を仰け反らせようとしてくる。
「かず、とぉ、だ、めぇ、だめっ、あぁ、んふぅあ、わた、しぃ、ひう、ちく、び、ほんとに、だめに、なってぇ」
詩乃は呂律が回っていない。思い切り感じているせいで、
「かずと、だめ、わた、し、わたしぃ、い、く、んぅ、んあああああああああッ」
がしりと和人の頭部を掴んだかと思いきや、詩乃は声を上げて身体を仰け反らせようとして、びくびくと痙攣を繰り返した。直後に甘い匂いを含んだ熱い息が何度も吐き出される。今ので絶頂を迎えたらしい。
乳首を離して顔を上げると、如何にも絶頂した後と言うべき真っ赤な顔をして、息を荒くする詩乃が認められた。
「詩乃ってば、乳首だけでいくようになったか」
「はぁ、は、はぁ、は、だれの、誰のせいだと思って、るの……」
「誰のせいかなぁ」
またまた悪戯っぽく言ってみると、詩乃は頬に掌を当ててきた。
「あなたのせいよ……あなたのおかげで、こんなに胸だけで気持ちよくなるように、なっちゃったんだからね……」
最初にやった時は胸だけで、乳首だけでいくような事はなかった。けれど今は乳首を愛撫され続けるだけでいくようになっている。その事を、詩乃は喜んで受け入れてくれているようだった。その証拠に、告げた際の表情は穏やかな笑みだった。
「だから……ね」
荒い息のまま、詩乃はウインドウを開いて操作を加えた。間もなく残っていた彼女の服が全て白い光に包まれて消え、詩乃の裸身が眼前に放り出されてきた。どこまでも整えられた美術品のような身体。その下腹部の更に下、女性にとっての秘部は今、粘っこい蜜に包み込まれてべったりとしていた。
湿っているどころではなく、べっとり、びしょびしょ。それはつい今の絶頂のためだったが、そうなっているのはつまり、愛する人を迎え入れる準備が出来たという合図だった。
「和人、もっと……ううん、一番気持ちよくしてくれるの、して……あの時みたい、に……」
「あぁ……繋がろう」
和人も同じようにウインドウを呼び出して操作し、装備を全解除し、裸になった。その際下半身のペニスはいきり立ち、先走り液で先端が濡れきっていた。もう少し詩乃の身体を愛撫していたら、勝手に達していたかもしれなかった。
「それじゃ、挿入れるよ……」
「うん、来て……」
亀頭の先端を詩乃の陰唇にくっ付け、そのまま前かがみになって詩乃と唇を重ねる。舌を入れてやりたいところだったが、それより前に和人の陰茎は詩乃の膣内へ入り込んだ。
「ん、くうううううう」
その際詩乃は唇をきゅっと閉じてしまったが、感じているためであり、和人を拒否したわけではなかった。
あの日のあの夜に知った、詩乃の膣内というモノ。牡を本能的に興奮させる匂いの愛蜜で溢れ返っていて滑るが、膣壁はきゅうきゅうと締め付けてきて、更に壁面の無数の小さな
言うなればむちむち。詩乃の身体は細く、少し小さい方に入る。守ってやりたいと率先して思えるくらいに華奢で儚げのくせ、膣内だけは肉がたっぷりとあって、むちむちとしている。しかしどんなにむちむちしていようとも広さがあるわけじゃなく、狭いと思う幅しかない。
狭いくせにむちむちしている詩乃の膣内。陰茎を入れればすぐにでも射精してしまいそうな感触に満ち満ちた場所だが、ここでピストン運動を繰り返さないと射精には辿り着けなくなっている。
どこまでも素直じゃないように見えてとても素直で、複雑で不思議。そんな膣内はまさしく詩乃という一人の少女そのものを表していた。
「んぁ、ぁ、かずとの、き、てぇ……かずとの、おく、までぇ……」
「と、どいたぞ……」
既に和人の亀頭は詩乃の膣内の最奥部、子宮口に辿り着いていた。彼女の膣はぎゅうぎゅうと締め付け、和人の陰茎に射精を促そうとしてきている。互いに下半身が快感で溢れ返っていた。
「かずと、の……和人の……やっぱり、丁度良い……」
「詩乃のもだよ……すごい丁度良い大きさだ……」
「私達、こういうところも、相性良いのね……ううん、相性良くなったんだわ、きっと……」
「え?」
挿入したまま和人は首を傾げた。詩乃は続ける。
「私……あなたに会うまで、男は危ないって、男なんか受け入れたくないって思ってた……全部が全部そうじゃないけど、それでも……やっぱり怖かったの」
初めて聞く話だったが、冒頭から既に納得できていた。
詩乃はまだ小学生だった頃、母親と一緒に街へ出掛けた際に、覚醒剤で頭を狂わせた暴漢に襲われたのだ。それが原因で詩乃はPTSDという重い病気を患う事になり、今でも苦しむ事がある。その後詩乃の治療に当たった精神科医達も男しかいなかったし、小学校で詩乃を苛めていた連中の中心も男子だった。
彼女は男というものにも苦しめられてきていたという事に、今更ながら和人は気が付いた。
「だから、男とのセックスとか、こういうのとか絶対無理だと思ってた……一生する事ないって……思い込んでた……」
「……詩乃」
思わず申し訳なさそうにするしかない和人の頬に、詩乃はまたしても掌を当ててきた。
「でも、それを変えてくれたのが、あなたよ……あなたが私を受け入れてくれて、私を大好きだって言ってくれて、私を愛してくれてるおかげで、何も怖くなくなったし……こうしてセックスするのも、出来るようになったの……」
自分が詩乃に出来ている事は、どのくらいなのか。和人は時折気になる事があった。精一杯、力一杯やっているつもりだけれども、実際どれくらいに詩乃を良く思わせ、その心の傷を癒す事が出来ているか。その心を支えてやれているか。その答えは、どんなに探しても掴めなかった。
それを今、詩乃が身をもって照らし出してくれていた。
「あなたが何回も私を受け入れてくれて、私に入れてくれたおかげで……私、こんなにあなたと相性良くなれた……全部あなたのおかげよ、和人……」
もう一度彼女の名を呼ぼうとするより前に、彼女は尋ねてきた。
「和人……あなたの、私の
優しげな声で問われた和人は、答えるより先に腰を動かした。陰茎を抜くように腰を引き、強く突き出して亀頭を子宮口にぶつける――それを繰り返し始めた。一突きするたびにぐちゅん、ぐちゅんと淫らな音が自分と詩乃を繋ぐ場所から鳴り響く。
「ふあっ、あんっ、あんっ、かず、ぁあんっ、ぁっ、とぉっ、あぁっ、ぁんっ、ああう、んぁっ、ひうあっ」
「気持ちいいに決まってる、だろっ。君と繋がってるのに、こんな深く一つになってるのにっ、気持ちよくないわけ、ないだろっ」
「いぁっ、ふぁあんっ、ひゃあんっ、あんっ、かあ、かっ、ずぅうっ、ぁあっ、とおぉっ」
「こんな、俺を受け入れてくれる君を、気持ちよくさせてくれるのが君なんだぞっ。その君が好きじゃないわけ、愛してないわけ、ないじゃないかッ」
ありったけの思いを告げつつ、陰茎で膣内を掻き回して、先端部で彼女の最奥部を突いて突いて突きまくる。自分の先走り液と、詩乃の愛液を混ぜ合わせて膣内を浸してやるだけじゃ足りない。同じ思いを抱いているかのように、詩乃の膣内はきゅうきゅうと締め付けてくるのをやめない。
「かず、とぉっ、あぁ、ひううああっ、わたしっ、わたしぃぃっ、かずとのっ、もっと、もっとほしいっ、だいっ、あぅうっ、だいすきっ、なぁぁっ、かずとのぉぉっ」
「俺も、もっとッ」
愛蜜ですっかり
あぁそうだ。俺のこれは君だけのものだ。君だけに捧げる物だよ――答えるように前後運動を繰り返す。かつてこの部屋で、同じようにしてやった時のように。いつの間にか和人は詩乃は、手を重ねて指を絡ませ合っていた。
それは俗にいう恋人繋ぎ。愛し合った二人だけがする繋ぎ方で、手を繋ぎ合う。そのままの形で、和人は思い切り陰茎の出し入れを繰り返した。
「んあっ、ああっ、かずとっ、かずとぉ、だいす、きぃっ、あいし、てるぅっ、ずっと、ずっとぉっ」
「おれも、ずっと、ずっと君が、大好きだっ、ずっと、愛して、るっ」
もう一度唇同士を重ねて、深く深く繋がり合う。間もなくして、和人は下半身の中心から込み上げてくるものを感じた。かなり早く上がってきているそれは、今にも陰茎に達しそうだ。
「詩乃、そろそろ、いや、もう、出るッ」
「来て、わたしも、わたしも、すごい、すごく、いっちゃ、いっちゃううッ」
詩乃の声を
「くうっ、はあッ」
「んくっ、あああああああああああはッ」
思い切り詩乃の膣内、その先の子宮に放出した。びゅくびゅくと音が出ているのがわかるくらいに勢いよく精液が放たれ、それは一気に詩乃の子宮の中に注ぎ込まれていった。
あまりの射精感に和人は下半身を中心に痙攣し、詩乃もまた同じように痙攣していた。二人揃っての絶頂。あの時迎えた夜の再現だったかもしれないが、その快感と没入感は明らかにその時を超えていた。
やがて和人は力尽きて詩乃の右隣に倒れる。ぬぷりと音を立てて陰茎が詩乃の膣内から抜けたが、そこから精液が零れてくる事はなかった。詩乃もすっかり力尽きて、仰向けで倒れているに等しかった。
「はぁ……はぁ……和人ぉ……」
「今、思い切り出したかも……詩乃、大丈夫か……?」
荒い息をして顔全体を赤く染めながらも、詩乃は微笑んだ。
「えぇ……すごく、幸せ……あなたので、おなかの中がいっぱいになって……あの時よりも気持ちよくて……嬉しくて……」
「あぁ……あの時よりも、すごく気持ちよかった……最高だ、本当……」
二人でそうなれるのは、相手が詩乃だからだ。和人の思った事は、既に詩乃に通じていた。
「和人……これからも、ここで……また……あなたと……」
「あぁ、これからもしよう……何回でも、やろう……」
これからは、このセックスをする事も日常の一つとなっていくだろう。彼女と繋がり、互いをどこまでも感じ合う。そんな時間が作れるようにしていかなければ。
和人が胸にそう抱いた時には、詩乃はゆっくりと深呼吸をして、眠りに入ろうとしていた。
どこまでも愛おしいそんな様子を、和人は見ている事にして――眠りには入らなかった。
・この話を投稿した際、本編はオーディナル・スケール編第十話目。温度差は酷い事になってるでしょう。