登場人物が多いから仕方がないね。
俺たちはみんなで車に乗り、出発した。流石に1台には乗れないので、荷物も含め3台に分乗して、だ。ドライバーは高町さん、テスタロッサさん、そして理子だ。
空港でさらに高町さんたちの同僚である『スバル・ナカジマ』さんと『ティアナ・ランスター』さんと合流することになっている。
この2人とも『リリカルなのは』の登場人物だ。今は特務六課で高町さん達と一緒に働いている。というか、これだけの人数が一気にいなくなってしまって、特務六課は機能不全になっていないのだろうか。みんなトップを張れるような人たちばかりなんだけど。もしかすると、他に誰かすごい人が六課に入るのかもしれない。
言っていなかったが、今回のオフトレーニングの舞台はこの島ではない。そのため、空港まで車で行き、そこから飛行機に乗ることになっている。着いた先でバスに乗り数十分で到着することになっている。移動時間は合計で3時間程度だ。
原作では別次元の無人世界という設定だったが、この世界ではこの島の近くのリゾート群島ということになっている。
実はこの島々、元の世界には存在しない島らしい。
少し調べておかしいと思って、世界地図を見てみたが、元の世界とはところどころ違うところがあった。そりゃ建造物にこの世界のモノ(現実世界にはない武偵の建物等)があるんだから当然だが、まさか島まで追加されているとは思わなかった。
ま、そんな地理設定はともかく、今回は旅行を楽しむんだ。この島に来てからずっと事件続きだったが、ようやくゆっくり満喫できるターンがやってきたのだ。
今回ばかりは、何の事件も起こらないだろう。起こってもメンバーがメンバーだ。全員集合、オールスター、最高戦力と言ってもいい。こんなメンバーが揃っているところに何かを仕掛けてくる奴なんていないだろうからな。
……よし、逆フラグはこんなもんでいいだろ。これだけわざとらしく言いまくったんだ。
イカン。『何も事件が起こらない』って普通の考えが出来なくなってきてる。職業病かな?
出発したのはお昼過ぎだったため、到着するのはおおよそ4時くらいになるだろう。予定では行ったらすぐにバーベキューが始まりその日は終わり。次の日は次の日で、各々に予定がたてられている。3日目はビッグなイベントがあるから少し頑張らないとな。
「翔君、どうしたの? なんか変だよ?」
「そうか?」
隣で運転している理子が横目でこちらを見てきた。
「ちょっと不吉な予感がしてな、それを振り払った」
「アハハ、やめてよー、翔君が行く所では事件が起こるんだからー、フラグになったらどうするのー」
「俺は名探偵コ〇ン君か」
そんな死神になった覚えはねーよ。真実はいつも一つ。俺は悪くない。むしろ超がんばってる。
「自分で言ったらお終いだと思うよ?」
「さいですか」
と、そうだ。
「理子さ、スタンドが発現したんだろ? それから調子はどうだ?」
「んー? 至って普通だよ。今でも自由に使えるし、体調に変化はないから」
「そっか。何かあったら言えよ」
過去に行って長かったから言えなかったが、ようやくブラドを倒して自由になれたんだ。ここで躓いてはいられない。
「くふ、そんなに気にしなくても、何かあったら絶対に頼るから。心配しなくてもいいよ……逃がさないしね」
「聞こえるように言うんじゃないよ」
そんな他愛のない会話をしつつも、車は着々と目的地まで近づいていくのだった。
――――――――――――――――――――――――――
飛行機を降りて車に乗ると、意外にも近い場所にその施設はあった。
飛行機から見た景色には、島の外側に空港があり、その周辺に高級ホテルや、食べ物のお店、現地の住人の家があった。川や小さい湖もあり、島の真ん中に行くほど開拓が進んでいない印象を受けたが、それは当たっていたらしい。
今日から数日は俺たちの貸し切りだからか、かなり空いているバスが通る道は木々のトンネルを縫うように進み、しばらくしたころには町の喧騒は全く聞こえなくなっていた。
バスが止まったのは小さい盆地のように山に囲まれた、しかし背の高い木が生えていない特殊な空間だった。その入り口でバスは止まる。
どうやらここからは歩きらしい。地面の舗装もなくなり、整備されてはいるが自然のままを意識しただろう、獣道と人工道の間くらいの道になった。
川が近くにあるのか水音もする。
高町さん達は前に来たことがあるらしく、まっすぐと歩いていく。俺もそれについていくと、すぐに丘の上にある一軒のペンションにたどり着くことが出来た。
「こんにちは~、メガーヌさんいますか~?」
「はーい! 今行きまーす!」
中に入り高町さんが一声上げると、すぐに奥の方から声が返ってきた。その声は女性……というよりも女の子と言ったほうが良いくらい幼いものだ。パタパタと音が聞こえ、声の主が姿を現した。
「みんな、いらっしゃ~い! お母さんは裏でバーベキューの準備をしててちょっと手が離せないって言っているから、先にこっちで手続しちゃいますね」
紫の長髪の先を少しなびかせつつ出てきた少女は、慣れている手つきで端末を操作する。
「こんにちは、今日からお世話になります。夜月 翔です」
今回の宿泊先はホテルというよりペンションだ。薄々感づいていたが、ここのペンション、めちゃくちゃ高級なところなんじゃないのか!? これだけ広い土地にこの大きさって……確かにペンションとしては大きい方なのかもしれないけど、それだって50人も泊まれないよな?
「こちらこそよろしくね~、私はルーテシア・アルピーノです。ここの住人で、ヴィヴィオの友達、14歳だから」
このペンションのオーナーの娘さん、そして俺も顔だけは知っている女性、原作キャラの『ルーテシア・アルピーノ』が出迎えしてくれた。
彼女も『魔法少女リリカルなのは』の登場人物だ。第3期の『StrikerS』から登場している。第3期ではラスボスに人質を取られ、なおかつ洗脳された状態だったため敵対関係だったが、事件解決後は諸々の更生プログラムを受けたのち、保護観察状態になった。
原作とは境遇が違うこともあるこの世界だが、その事件はしっかりと起こっていたようだ。しかも、ネットで調べれば簡単に出てくるレベルの大きな事件として。実際に聞くまではわからないが、この世界のルーテシアの境遇はそんなに変わらないだろう。
「あれ? エリオとキャロはまだ来てませんでしたか?」
「ああ、あの2人なら、夜用の薪を……」
「―――フェイトさん!」
ルーテシアの言葉を遮るように、1人の青年の声が聞こえた。そこには一組の男女が立っていた。しかもその傍らには小さいドラゴンもどきが浮かんでいる。ずいぶんと身長差があるカップルだ。男の身長が高いのか、女性の身長が低いのか。
「エリオ! キャロ!」
「2人とも元気だった?」
「うわ! また身長が伸びてんじゃねーかよエリオ!」
「私も伸びてますからね! ……1.5㎝」
どうやらどちらも正解だったようだ。
この2人も高町さん達の知り合いらしい。と言っても、例に漏れず俺も顔だけは知っている状態の方たちだ。
男の子のほうは『エリオ・モンディアル』、女の子の方は『キャロ・ル・ルシエ』だ。ルーテシアと同じく、リリカルなのは第3期の『StrikerS』からの登場人物だ。2人ともテスタロッサさんの被保護者。と言っても実の子供ではない。どちらものっぴきならない事情でそういう立場になったのだ。
原作では主人公サイドのメインキャラクターとして活躍した。したんだけど……そういえば、この世界ではどんな形になってるんだ?
「管理局は一応公務職……そんな小さい子を雇えるっけ……?」
全く調べてなかった。後で聞いてみるとしよう。
「みんな、紹介するね。2人とも私の家族で……」
「エリオ・モンディアルです!」
「キャロ・ル・ルシエと飛竜のフリードです」
「1人ちびっ子がいるけど、みんな同い年だから」
「ちょっと!? 私だって伸びてるんだからね!」
ルーテシアの茶々で一気に騒がしくなる。それと同時に3人の力関係もわかってきた。
その時、ザッ、と後ろに何か着地した音が聞こえた。
「「ッ!!」」
アインハルトと綺凛が反応して振り向くと、そこには2本足である虫、外殻は黒と紫で首に巻いた布も相まって忍者のような印象も受ける。よく見ればかっこいいデザインなのだが、初見でいきなり現れると……
アインハルトが構え、綺凛も刀を取り出そうと―――
「あ! 待って待って! ストップー!」
ルーテシアの静止の声で、アインハルトと綺凛が飛び出さずに済んだ。
「だ、大丈夫なんですよ、アインハルトさん、綺凛さん!」
「あの子は……」
「この子は私の召喚獣で大切な家族。ガリューっていうの」
紹介された召喚獣のガリューは礼儀正しく一礼する。
「し、失礼しました……っ」
「私とっさに……っ」
「あはは、みんなびっくりしますよねー。私もそうでしたよ」
そう、ルーテシアは召喚魔法を使うのだ。それも、虫の姿をしたものを使うことが多い。見る人によってはそれだけでダメージになりそうなものだ。
「先輩はどうして全然反応しなかったんですか?」
「あー、うん」
知ってたから。
「……敵意、無かったからね」
「そ、そういえば……」
「確かに、見た目だけでとっさに判断してました……流石翔さんです」
やめて! そんな異世界転生みたいなノリにならないで! あ、俺も異世界転移してるじゃん。じゃあ平気か。
「ごめんなさいね~、顔を出せなくって。あらら、スゴイ大所帯になったわね~」
「お世話になります」
ルーテシアをそのまま大きくしたような女性、この方がここのオーナーであり、ルーテシアの母親であるメガーヌ・アルピーノだ。
「みんなもうお腹は空いたかしら? だったらすぐに火をつけちゃうんだけど」
「バーベキューしたいです!」
「私も私もー!」
ヴィヴィオちゃんとその友達であるリオはバーベキューの1言で一気に沸き立つ。そりゃテンション上がるよなぁ。だってバーベキューだぜ?
「翔君、その手」
「おっとっと」
アスナに言われて気が付いた。いつの間にかガッツポーズを取っていた。
「ふふ、それじゃあ部屋に荷物を置いたら裏に集合しましょうか。いつもの場所で準備しているからね。部屋はどこを使っても大丈夫になっているからね」
「はい、わかりました。よーしみんな! 部屋割りきめよっか!」
「「「「はーい!!!」」」」
――――――――――――――――――――――――――
「で?」
「どうしよっか?」
部屋割りで悩むことになった。
今回ここに来たのは、俺、雪菜、クロ、アスナ、狂三、アリア、理子、ティナ、ヤミ、耀、桜、セイバー、セイバーオルタ、アインハルト、綺凛、高町さん、テスタロッサさん、ヴィヴィオちゃん、その友達のリオちゃん、コロナちゃん、スバルさん、ティアナさん、エリオ、キャロ、ヴィヴィオちゃんたちの師匠のノーヴェさんだ。え、なに、ひーふー……合計25人!? 数え間違ってないよな!?
とりあえず、子供たち(俺も未成年だが)は全員同じ部屋にすることになった。
なのはさんやフェイトさんも同じ部屋になり、スバルさんとティアナさん、スバルさんの姉妹であるノーヴェさんが同じ部屋に。その辺りは簡単に決まったんだけど……
「いやいや、さすがにダメでしょ」
「そうだよ。引率者として、男の子と女の子が一緒の部屋で寝るなんて絶対に許可できないからね」
「フン、なぜ貴様の指図を受けなければならない?」
オルタ、ステイ。やめなさいって。高町さんにたてつくのは。君が駄々こねてるせいで話が進まないじゃないか。あの理子ですら、おとなしく従ってるんだぞ? ……この場ではという一言が付くけど。
もしも俺が1人部屋になったりしたら一体どんなことになるのか……
「エリオ、同じ部屋でもいい?」
「はい! もちろんです!」
「俺もいいですよ」
そんなことはあり得ませんがね。この大所帯、男性はなんと俺たち2人だけだ。そこをまとめない理由がない。
みんなもそれはわかっていたらしく、ニコニコとしている。いったいその顔の奥でどんなことを考えているのだろうか。
「……そうか」
そしてオルタも何かを悟ったのか、急におとなしくなった。いったい何を悟ったというのだろうか。
(((((チャンスは自分で作るもの……無理矢理にでも)))))
何を考えているんだろうか。本当に怖くなってしまうよ。よよよ。少なくともここの人とか、事情を知らない人に迷惑をかけないようなことだとありがたい。
「それじゃ、下に行こうか」
高町さんは何も感じなかったのか、ごく自然に俺たちを下のバーベキュー会場へと誘導するのだった。