子供たちみんなからの『水着褒めて攻め』を何とか耐えきった。むしろ天国だった。もうロリコンになりそうなくらい、一生分小さい女の子と触れ合った気がする。
そんな子供たちは今、川を縦横無尽に泳ぎ回っていた。対岸まで普通に泳ぐだけに留まらず、岩場から飛び込み、水中バレーをして、水の抵抗を物ともせず格闘技の型をきめている。
その泳ぎたるや、アインハルトやクロでさえもついていくのがやっとといった具合だ。意外だったのはティナもついていけていることだな。ヤミはすいすいとマイペースだ。それでもついていっているのは凄い。
なんでもノーヴェさんは、ストライクアーツ(格闘技)の訓練の合間にプールにも連れて行っているらしい。そうすると、全身の筋肉を柔らかく鍛えることが出来るのだとか。
俺はと言うと、
「ほら! バタ足弱くなってるぞ」
「は、わぷっ、はいっ!」
綺凛の腕を引いて泳ぎの指導をしていた。顔を水につけるのはさすがに出来ていたので、今度はバタ足だ。ほどほどの深さで、流れも速くないこの川は泳ぎの練習には最適だ。水もきれいだしな。
しばらくして、少し休憩しようと岸に上がってきた。
「すみません、蹴伸びの姿勢が上手く出来なくて」
「これから練習するしかないよ」
そりゃそんな大きな浮袋を2つも抱えてればね。目の前でぷかぷかとされたら、目の毒にしかならないよ。
本音を口にすることはない。
「ハァ、ハァ」
アインハルトも息を切らして上がってきた。ちびっ子集団はまだまだ元気みたいだな。
「どうよ。チビ共の泳ぎは?」
「元気いっぱいと言いますか、元気すぎると言いますか……」
「ははは、ついていくのがやっとか?」
「体力には自信があったんですが……」
「翔も参加してみるか?」
「あんたずっと楽しんでただろ」
ノーヴェさんが近くに寄ってくる。この短い間に仇敵と言っていい関係になった(一方的に思っているだけ)が、彼女は何も知らずに俺の間合いに踏み込んでくる。
「おっと、そんなに殺気を出すなよ。悪かったって! 身内にはそんな話題全くないから少し面白くってな。ついやっちまった」
「こっちはつい殺っちまいそうですよ」
「やめてくれよ。あたしじゃお前には勝てないだろ」
パタパタと腕を振って躱される。
「俺だって、あの元気には敵いませんよ」
俺は元気っ子達に目を向けた。クロだけではなく、ティナも馴染めていて良かったと思う。
「水の中で瞬発力を出すには、普段はあんまり使わない筋肉が必要だからな。それを踏まえて、せっかくだしいいもん見せてやるよ」
そう言い、いまだ泳ぎ回っているヴィヴィオたちに声をかけた。
「おーい! ちょっと『水斬り』やって見せてくれよ!」
「『水斬り』、ですか? わかりましたー!」
アインハルトも綺凛も聞いたことがないのか、きょとんとしている。
「なーに、ちょっとしたお遊びだよ。おまけで打撃のチェックも出来るんだけどな」
そう答えると、ヴィヴィオ、リオ、コロナ、クロ、ティナは水中で腰を落とした。
「やあっ!」
コロナちゃんが拳を繰り出すと、その拳圧で川の水がはね上げられ、水柱が上がった。
次いで、リオちゃん、クロ、ティナの順に、最後はヴィヴィオちゃんだ。ルーテシアは不参加。
「行きますっ!」
ヴィヴィオちゃんは他の4人よりも、格段に大きな水柱を作り上げた。
「どうだ? お前らもやってみるか?」
「アインハルトなんか、格闘技が強いんでしょう? やってみたら?」
「はい。すこし、やってみます」
「私はちょっと……剣があればいいんですけれど」
ノーヴェとルーテシアに誘われ、アインハルトが水の中に入っていく。
「剣かぁ……木の枝とかじゃダメ?」
「や、さすがにそれは……」
「あ、それならいけますよ」
「いけるのか!?」
マジかよ! 刀藤流すげーな!
「はい。修行の中に竹刀で岩を切り倒すっていうものがあるんです」
「そんなこと出来んのか……」
「はい、じゃあコレね」
綺凛はその辺りに落ちていた手ごろな木の枝を持って川に入ってく。俺が慄いていると、2つの方向から視線が注がれていることに気が付いた。
「何か?」
「何か? そんなの決まってるだろ? お前はやらないのかって話だ」
ノーヴェさんが当然だろうと言ってくる。川にいる娘達も俺の方を見ている。全員そろってやるものだと思っているらしい。
「しょうがない。やってみますよ」
俺は立ち上がって川に入る。
俺の格闘技はアリアの見様見真似だ。格闘技とはちょっと目的が違うから、そこまでいい感じにはならないと思う。基本は犯人の押さえつけだからね。アリアさんは殴りつけることが多いけど。
まず挑戦するのはアインハルトだ。覇王流の使い手の記録はいかに。
「はあっ!」
一番の記録を残していたヴィヴィオと同じくらいの水柱を打ち上げた。しかし、あまり拳圧が前に飛んでいないのか、すぐに水柱がなくなってしまう。
次は綺凛だ。刀藤流の若き天才剣士の実力はいかに。
「はっ!」
振った木の棒は途中からへし折れてしまっていた。そのせいか、水柱がほとんど立たない。いつもの獲物と同じ意識で振るった結果だろう。
「綺凛はまぁ、しゃーないとしてだ。アインハルトの方は初速が早すぎるな。最初は脱力して……途中から速度を出す。こうだッ!」
ノーヴェさんが川に入り、お手本と言わんばかりに蹴りで水を切り裂いた。川底が見えるほどの水柱が上がる。
そのお手本にアインハルトは熱心に頷いていた。何か掴み取ったのかな。
「さて、ここで真打登場だな」
だから、何でそんなに期待させるような言い回しになる。
「お兄さんもやるんですね!」
「私たちよりもうまくできるかなぁ?」
「初めてだし、どうだろうね……?」
「お兄ちゃんは色々と規格外だからね」
「はい。きっとすごいです」
子供たちは思い思いの感想を述べている。そこまで期待されると、半端な結果は残せないな。本気でやってみよう。
とりあえずは
「ふぅ……」
ゾワッ
「「「「ッ!!」」」」
周りの空気が変わった。
黒いオーラを纏った俺は構え、
「ハッ!!」
拳を放った。
水柱は上がらなかった。
その代わりに対岸の小石が吹き飛んだが川の形が変わってしまった。言い訳をすると、水斬りは失敗だ。
「「「「「……」」」」」
全員が無言になる。
「ま、まあね! パワーがあっても当たらなかったら意味がないから!」
とりあえずフォローしておく。自分で。でもみんな固まったままだ。ようやく稼働したのはノーヴェさんだ。
「(あの黒いオーラ、ヤベー感じがしたが大丈夫なのか?)魔力を弾丸にして飛ばしたって訳か。大した威力だが、水斬り自体は全然だな」
「は、初めてでしたからね! 練習しないとですね、これは!」
取り繕ってくれた。急いで乗っかる。
「すごいですお兄さん! 私たちにも出来ますか、それ!?」
「私たちは水斬り教えるから、それ教えてー!」
「あ、あの、出来れば私にも……」
「よーしよーし。いいぞー」
ヴィヴィオたちに囲まれる。ああ、ダメだよこんなの。お仕置きを気にしないで小さい女の子と戯れることが出来るなんて。俺も適当にやったからもう一回できるかはわからないけどね! 頑張って教えるよ!
「これは報告ですね」
「羽目を外しすぎた夫を叱るのは嫁の役目だものね」
「そうですね、私たちの役目です」
「それだけはご勘弁を!」
しかし俺に自由はないようだ。こんなの報告されたらお尻ぺんぺんで尻が千切れてしまう。そして、いつの間にか俺はクロとティナの夫になっていたみたいだ。
俺は君たちが普通に水斬り出来ていることにびっくりだよ。
「ティナとか意味分かってないで言ってるだろ」
「そんなことないわ、一杯ちゅっちゅする人のことを夫と妻の関係って教えてるもの」
「教えられました。妻です」
その言い方だと、この2人といつもキスしてるみたいに聞こえるんだけど! クロとは確かに魔力補給をしてるけど! ティナとはまだしてないよね! 誤解する人が出てきちゃ―――
「先輩……」
「翔さん、本当ですか……?」
―――出てきちゃったじゃん!
アインハルトと綺凛が引いてしまっている。
「ええい! そんなことよりも水斬りだ! 水斬りするぞ!」
「そうですね。お手本を見せましょう。こうです」
「は?」
俺の体に向かい一直線に伸びる白刃。それを肘と膝で挟み込んで受け止める。その刃が通った後には綺麗な水柱が立っていた。
「すみません。すっぽ抜けました」
「殺す気か!」
「まさかそんな」
「や、きれいなもんだな。初めてでそれなのか?」
「アンタも感心してる場合じゃないだろ!?」
凶行の犯人はヤミだ。唯一の大人であるノーヴェさんは、顎に手を当てて頷いているだけだ。
「わざとではないので許してください」
「澄ました顔で嘘を吐くな」
「お兄さん、ヤミさんと仲が良いんですね!」
「殺し合うほど仲が良い、って言葉もあるからね」
ルーテシア君、そんな物騒な言葉は聞いたことがないよ。
「そのくらいじゃないと、旅行先で女の人と混浴なんて出来ないよね?」
「いや、何を―――」
冷たい水に入っているはずなのに、背中に流れる汗の量は尋常ではない。
「昨日、しかも2人とだなんてすごいよね」
「ッ!」
殺気だと!?
振り向かなくてもわかる。後ろにいる数名の女の子達から放たれているということが。
「ル、ルーテシア? 君はいったい何を?」
「お風呂掃除当番のガリューからは、報告されてるからね?」
ど、どこまで報告されているんですかね!? ま、まさか、行為までしているところまで報告されているとしたら、この上ない弱みを握られていることになる。
こ、ここは慎重に扱わなければ。
「プライバシーもあるから、何をしてたかまでは知らないけどね♪ どんなことしてたのかなぁ?」
「さ、さぁねぇ?」
小さい娘はキャーキャー言いだした。
ほ、本当なのか? でも確かに、あんなえぐい行為をしていたのを知っていたとすれば、こんなに平然として俺の前には来れないよな。
なんだかんだ言っても、ルーテシアは少女だ。耐性があるとは思えない。ここは少し反撃して様子を見てみるか。
「そんなに気になるんだったら、今日の夜、温泉に来てみるか?」
「へ?」
「同じことをしてやろうかって話だよ」
「ふ、ふぅ~ん? そういうこと言うんだ?」
ルーテシアは少し詰まりつつも腰に手を当ててこちらを見てきた。態度とは裏腹にその顔はほんのり染まっている。
「はいはい! そこまでそこまで! 翔もあんまりやりすぎると、叱られるぞ」
叱られるのを恐れていて、強襲科にいられるかよ。でもここは自重することにしよう。決して、怒る面子に恐怖したわけじゃないからな。
「絶対混浴以上のことしてたでしょ」
「……はい」
後ろからのクロの言葉が、首筋にナイフのように突きつけられた気分だった。
「ふーん、そう」
クロは一瞬考えた後、俺の腕を引っ張った。
「こっちに来て」
「ちょ、おい! 何処に行くんだよ!」
「ちょっとお話があるの!」
そう叫ぶクロに森の中に連れていかれるのだった。
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「おい、どこまで行くんだよ!」
すっかり川が見えなくなるくらい奥まで連れて来られてしまったところで、やっと放してくれた。
「魔力補給」
「はい?」
「今すぐして。ここで」
「ここ―――むぐっ」
飛びつかれ、唇を重ねられる。前準備のなど一切ない。いきなり舌が口内に侵入してくる。応戦する俺の舌と、ねっとりとした唾液を交換し合った。
胸に押し付けられる水着は、普通の衣服とは違う感触だ。お互い水着であるため、ほとんど裸同然で抱き合っている。
「ちゅぅ、れろ、れぉ、ちゅ、あぅ、ちゅぅる」
宣言通り、魔力が抜かれる感覚はある。しかし、それは微々たる量だ。すぐに魔力以外のものを貪る動きに変わっていった。
やがて唇が離れ、透明の橋が途切れた。
抱き着いていたクロが離れ、口を開いた。
「さっきの見たことない能力だった」
「さっきの……ああ」
この合宿に参加している人で知っているのは桜とフェイトさんだけだ。
「ヤな感じしたけど、危ない能力じゃないの?」
「うーん……」
そう言えばそうだったという気しかしない。使いたての時は少し危なかったけど、スタンドがACT3に進化してからというもの、全く苦も無く使っている。
「今のところは問題ない、かな。心配してくれてありがとな」
「うん……それで、誰とシて手に入れた能力なの?」
「それはプライバシーがあるから」
まさか、10年前の桜になめられた結果手に入れたとは言えない。小学生相手に、君よりも年下の娘としましたなんてな。
その時、草が揺れた。
だ、誰か来るのか?
「お二人とも、何をしているんですか?」
ティナだった。他の人に見られていたら、大変なことになっていた。や、素直なティナに見られたっていうのも結構やばいんじゃないのか。でも、何をしているんですかとか言ってるし―――
「どうしてみんなに隠れてちゅっちゅしてたですか?」
これはダメだ。
「はっ! これが逢引き、抜け駆け」
「なんか合ってるところがあって否定しにくい!」
「魔力補給よ。みんなの前だと出来ないでしょ?」
突っ込む俺に対して、クロはいたって冷静だ。ティナはクロが育てていると言っても過言ではない(どう考えても過言)から、扱いには慣れているんだろう。
「どうしてもっていうなら、お兄ちゃんに何してもいいから」
「分かりました」
「勝手に分からないでくれ」
「お兄さん、しゃがんで下さい」
「……はいはい」
拒否権がないようなので素直に従う。たぶん抱っこしてくれとかそんなことだろう。そのまま戻るのは……大丈夫だろうか。
「んっ」
右のほっぺたに柔らかい感触。正面ではなく少し右に見えるティナの顔が近い。すごく近い。
「お、おい! ティナ……っ!」
「どうしましたか?」
今しがた俺のほっぺにキスしたとは思えないくらい平然としている。
「クロさんとしてましたよね?」
「問題ないよ」
そのまま手を広げるティナを抱き上げ、飛びついてきたクロを背負って立ち上がる。
「ロリっ娘2人と続きがしたいなら、ここでもいいよ?」
「おい」
「ふふ、さすがに冗談!」
心臓に悪い冗談を言うのはやめてほしい。心の底からそう思うのだった。